異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが

マハラメリノ

文字の大きさ
上 下
163 / 266
第三章 黎明と黄昏

〇二四 創造都市ゴルゴヌーザ①

しおりを挟む
楽しい思い出を胸に、俺たちはルヴァ魔導帝国を後にして転移門でロスへ飛んだ。
ロスの創造都市ゴルゴヌーザは、橙色の大地に真っ白な四角い建物が立ち並ぶ古代文明みたいな街並みの都市だった。
都市を囲む高い墻壁の外には「永遠の死の国」があると言われているが、墻壁の内側からはその様子を窺い知ることはできない。

ここは芸術家と研究熱心で職人気質な魔法士を多く抱えた商業都市で、全ての新しいものはここから生み出されると言われるほど、多岐にわたるな新商品が日々開発されている。

この都市は何処の国にも属さず政府は議会制で、出迎えてくれたのは議長や組合長といったこの都市の有力者たちだった。
まさかこの世界で民主主義というものにお目に掛かれるとはな。
とはいえ、社交という意味では彼らも貴族と大して変わらないので、ここでもやはり治癒を申し出て、治癒術後の消耗を理由に放っておいて貰う作戦で乗り切る。

因みに創造都市ゴルゴヌーザには騎士団がなく、街の治安は自警団のみで護っている。
ロスへ渡航出来る者は限られているから、それで充分なのだろう。
俺たちが外出する際には自警団から警護が付くが、二十四時間付きっ切りという訳にはいかない。
第一師団ディビジョン竜騎兵ドラグナー連隊まで出してきたルヴァ魔導帝国の厳重な警護と格差が激しいが、エリアスっていう最強の護衛がついてる俺にはぶっちゃけ誤差の範囲といえる。
それに俺にはこっちのほうが気楽だった。

滞在場所として案内されたのは古城を改装した金色に輝くタマネギ型の屋根の付いた白亜のホテルで、東欧と中東文化の融合する内装は砂糖菓子で出来たような白とパステルブルーで描き出された蔦模様がエキゾチックで美しい。

備え付けの家具も西洋式の椅子とテーブルではなく中東と東欧の文化が混ざり合った様式で、ソファーは窓際や壁に張り付くように設置されているが、絨毯を敷かれた床に卓袱台のような丸いローテーブルとクッションが幾つも置かれていて実家のような安心感がある。

おまけに各部屋の風呂に温泉を引いていて、魔法でどうにかしているらしく二十四時間源泉掛け流しの湯を楽しめるらしい。

だが、最も俺を喜ばせたのは部屋には壁の一部を繰り抜いて埋め込んだような中二病憧れの所謂アルコーブベッドだった。
寝室は奥にあるみたいだから、このアルコーブベッドはインテリアみたいなもんだが、俺ずっとこういうので寝てみたかったんだよ。
俺は部屋に入るなり一目散にベッドへ突進してダイブした後、転げ回った。

「エリー! この部屋最高じゃね!? 俺ここ超好き!」

直後にエリアスが膝から崩れ落ちたように見えたけど、絨毯の上に幾つも置かれたクッションの上に突っ伏して珍しくすっかり寛いでる様子なので俺の気のせいかもしれない。
可哀想に余程疲れていたんだな。
ルヴァではエリアスの苦手な夜会に連れ回して気疲れさせてしまったし、寛いでるならそっとしておこう。
しおりを挟む
異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨


📖文庫版(紙の書籍)
📖Kindle(電子書籍)
📖BOOK☆WALKER(電子書籍)

次章続巻も順次刊行予定
OLOLON

※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
感想 21

あなたにおすすめの小説

俺は触手の巣でママをしている!〜卵をいっぱい産んじゃうよ!〜

ミクリ21
BL
触手の巣で、触手達の卵を産卵する青年の話。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい

椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。 その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。 婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!! 婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。 攻めズ ノーマルなクール王子 ドMぶりっ子 ドS従者 × Sムーブに悩むツッコミぼっち受け 作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

処理中です...