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第三章 黎明と黄昏
〇二三 ゆめかわなお菓子①
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遊具を満喫するはずが不覚にもエリアスの格好良さを満喫してしまった後、再び露店を眺めていると、不図、赤い色に目が留まる。
りんご飴の屋台だ。
紅白ストライプの屋根と金色の車輪のついた屋台には、装飾された林檎にカラフルなスパイラル模様のスティックを差して陳列していて周囲に熟れた林檎の芳醇な甘い匂いを放っている。
「りんご飴だ! エリー、俺あれ食いたい!」
この世界の果物は大抵サイズが大きくて、普段市場で見かける林檎は小玉西瓜サイズなんだが、この林檎は片手で掴めるくらいのサイズだった。
日本の屋台で見かける赤い林檎に赤い水飴を掛けただけのものではなく青林檎や黄色の林檎のもあるし、白やピンクのカラフルなチョコレートやカラメルを掛けてクラッシュピスタチオやプラリネやアラザンでデコレーションしてあるものや、マカロンやマシュマロやトリュフチョコレートをトッピングしてあるものまである。
欧州の方の感謝祭やクリスマスマーケットで売ってるようなやつだ。
これはアガるだろ!
「アルビオンにもあるのか?」
「うん。こんなにカラフルなのは外国にしかなかったけど、祭りのときは絶対食べてたんだ」
「そうか。ナナセはどれが好きなんだ?」
「それが問題なんだよ。チョコのもいいけどカラメルも旨そうだし、どれにしようか迷う。一周回ってデフォなのから試してみるべきか? いやいやいや、折角だしここは冒険して……」
アラザンは砂糖とコーンスターチで出来た数ミリほどの細かい粒状の糖衣菓子を金箔や銀箔で包んだもので、これが掛かってるとどんなゆめかわなお菓子でも一気にメタリック感が出る。
だからアラザンの掛かっているものの中から絞り込もうとしてるんだが、目移りしてしまって悩ましい。
後半はもうほぼ独り言だったが、俺が悩んでいる横でエリアスが密やかな笑いを漏らす気配がして、隣を見ればエリアスが店主に硬貨を差し出すところだった。
「主人、全種類ひとつづつ貰おう」
「ちょ!? 今の注文ナシナシ! 駄目だってエリー! 俺そんなに食いきれねーよ!」
「残せばいいだろう」
「勿体ないだろ! 食べ物を粗末にすんなよな!」
「モッタイナイダロ……?」
そこだけ日本語だったから案の定エリアスの興味を惹いたようだ。
「勿体ない」って日本語独特の表現だから、英語や他の国の言葉にもないし、当然ルヴァの公用語にもない。
訳すとしたら「不都合だ」とか「妥当ではない」みたいな言葉で代用するしかないが、どうやっても本来のニュアンスは伝わらないだろう。
「意味は帰ったら教えてやるよ。それに、こうやって選ぶのも楽しいんだから選ばせてくれよ」
俺はなんとかエリアスを抑え込むのに成功して、悩みに悩んだ末、カラメル掛けの青林檎の下半分を更にミルクチョコレートとラズベリーチョコレートでマーブルコーティングしてあって、全体を金銀のアラザンと宝石の裸石のようにカットされた色とりどりの飴細工でデコレーションしてあるやつをチョイスしたら、店の主人がおまけでホイップクリームを乗せ、そこにラズベリーのマカロンとトリュフチョコレートとマシュマロをトッピングしてくれた。
おいおい、りんご飴にホイップクリームは反則じゃないか。いいぞもっとやれ。
なんだよこの全部のせみたいなの。最高オブ最高。
りんご飴の屋台だ。
紅白ストライプの屋根と金色の車輪のついた屋台には、装飾された林檎にカラフルなスパイラル模様のスティックを差して陳列していて周囲に熟れた林檎の芳醇な甘い匂いを放っている。
「りんご飴だ! エリー、俺あれ食いたい!」
この世界の果物は大抵サイズが大きくて、普段市場で見かける林檎は小玉西瓜サイズなんだが、この林檎は片手で掴めるくらいのサイズだった。
日本の屋台で見かける赤い林檎に赤い水飴を掛けただけのものではなく青林檎や黄色の林檎のもあるし、白やピンクのカラフルなチョコレートやカラメルを掛けてクラッシュピスタチオやプラリネやアラザンでデコレーションしてあるものや、マカロンやマシュマロやトリュフチョコレートをトッピングしてあるものまである。
欧州の方の感謝祭やクリスマスマーケットで売ってるようなやつだ。
これはアガるだろ!
「アルビオンにもあるのか?」
「うん。こんなにカラフルなのは外国にしかなかったけど、祭りのときは絶対食べてたんだ」
「そうか。ナナセはどれが好きなんだ?」
「それが問題なんだよ。チョコのもいいけどカラメルも旨そうだし、どれにしようか迷う。一周回ってデフォなのから試してみるべきか? いやいやいや、折角だしここは冒険して……」
アラザンは砂糖とコーンスターチで出来た数ミリほどの細かい粒状の糖衣菓子を金箔や銀箔で包んだもので、これが掛かってるとどんなゆめかわなお菓子でも一気にメタリック感が出る。
だからアラザンの掛かっているものの中から絞り込もうとしてるんだが、目移りしてしまって悩ましい。
後半はもうほぼ独り言だったが、俺が悩んでいる横でエリアスが密やかな笑いを漏らす気配がして、隣を見ればエリアスが店主に硬貨を差し出すところだった。
「主人、全種類ひとつづつ貰おう」
「ちょ!? 今の注文ナシナシ! 駄目だってエリー! 俺そんなに食いきれねーよ!」
「残せばいいだろう」
「勿体ないだろ! 食べ物を粗末にすんなよな!」
「モッタイナイダロ……?」
そこだけ日本語だったから案の定エリアスの興味を惹いたようだ。
「勿体ない」って日本語独特の表現だから、英語や他の国の言葉にもないし、当然ルヴァの公用語にもない。
訳すとしたら「不都合だ」とか「妥当ではない」みたいな言葉で代用するしかないが、どうやっても本来のニュアンスは伝わらないだろう。
「意味は帰ったら教えてやるよ。それに、こうやって選ぶのも楽しいんだから選ばせてくれよ」
俺はなんとかエリアスを抑え込むのに成功して、悩みに悩んだ末、カラメル掛けの青林檎の下半分を更にミルクチョコレートとラズベリーチョコレートでマーブルコーティングしてあって、全体を金銀のアラザンと宝石の裸石のようにカットされた色とりどりの飴細工でデコレーションしてあるやつをチョイスしたら、店の主人がおまけでホイップクリームを乗せ、そこにラズベリーのマカロンとトリュフチョコレートとマシュマロをトッピングしてくれた。
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