160 / 266
第三章 黎明と黄昏
〇二二 イケメンは何をしていてもイケメン②
しおりを挟む
姿は見えるが気に留まらなくなるという目眩ましの魔法を掛けた竜騎兵が警護に当たってくれていたから、俺は気兼ねなく街を見て回ることが出来るが、エリアスは楽しんでいるように見えて常に周囲を警戒しているようだ。
俺を喜ばせるために一体どれほど心砕いてくれたのか。
エリアスの気持ちに報いるには、思いっきり楽しんで心からお礼を言うのが正解だろう。
「欲しいものがあれば何でも言ってくれ」
「俺、給料貰ってるし自分で買えるぞ」
「それは必要になった時のためにとっておいて、今は私に格好付けさせて欲しい」
そんな風に言われてしまえば俺が折れるしかない。
「じゃあ、今度いつかまた俺の実家に行くときは奢ってやるからな」
「ナナセがアルビオンを案内してくれるのか。それは楽しみだ」
桜も見せたいし、連れて行きたいところを挙げればきりがない。渋谷のスクランブル交差点とか驚くだろうな。
俺はエリアスの手を引っ張って、あれは何だこれは何だと質問しながら、気になる店に片っ端から入った。
俺一人で入るには敷居が高い店にもエリアスがいれば気後れせずに入れる。
あれこれと想いを馳せながら日本で言えば東京の銀座中央通り、フランスで言えばパリのシャンゼリゼ通りに当たるだろうと思われる高級店が軒を連ねる目抜き通りで、帰りの日程に合わせて貰えるように服や靴や髪留めを注文した後、もう少しカジュアルなエリアに移動した。
因みに移動の際に注文した店の前を再び通りかかったら、早くも「聖者様御用達の店」だの「勇者様御用達の店」だのという手書きの看板が出ていてこれには閉口せざるを得ない。
気を取り直して向かった先は、綺麗に整備された目抜き通りとは打って変わって、そこかしこに賑やかな露店が立ち並び、大道芸人や吟遊詩人がいて、道の真ん中に回転木馬や観覧車まであって滅茶苦茶楽しそうなところだった。
エリアスは何度も来たことがあるらしく大して珍しくもなさそうだったが、俺には視界に入るものすべてが面白い。
呪いの掛かった道具を背の高い戸棚に所狭しと並べている屋台、駄獣や輓獣を扱う店、見世物小屋、花屋やお菓子屋、雑貨店、肉や魚介類を焼いている露店。
行き交う人々の服装や持ち物も面白いし、見たこともない生き物を連れている人もいる。
なんで俺の目は二つしかないんだよ。
見るところが多すぎて全然足りない。
回転木馬と観覧車には勿論、真っ先に乗った。
これは俺が乗りたかったのが半分、乗ってるエリアスを見たかったのが半分だ。
だって木馬に乗る勇者とか面白すぎるだろ。
ところが俺の思惑とは裏腹に、ここへ連れて来た時点で覚悟を決めていたようで、諦めたように木馬に跨るエリアスは本人の心中はさておき非の打ちどころがないほど格好良かった。
俺は図らずも、イケメンは何をしていてもイケメンだと立証してしまったに過ぎなかったのだ。
俺を喜ばせるために一体どれほど心砕いてくれたのか。
エリアスの気持ちに報いるには、思いっきり楽しんで心からお礼を言うのが正解だろう。
「欲しいものがあれば何でも言ってくれ」
「俺、給料貰ってるし自分で買えるぞ」
「それは必要になった時のためにとっておいて、今は私に格好付けさせて欲しい」
そんな風に言われてしまえば俺が折れるしかない。
「じゃあ、今度いつかまた俺の実家に行くときは奢ってやるからな」
「ナナセがアルビオンを案内してくれるのか。それは楽しみだ」
桜も見せたいし、連れて行きたいところを挙げればきりがない。渋谷のスクランブル交差点とか驚くだろうな。
俺はエリアスの手を引っ張って、あれは何だこれは何だと質問しながら、気になる店に片っ端から入った。
俺一人で入るには敷居が高い店にもエリアスがいれば気後れせずに入れる。
あれこれと想いを馳せながら日本で言えば東京の銀座中央通り、フランスで言えばパリのシャンゼリゼ通りに当たるだろうと思われる高級店が軒を連ねる目抜き通りで、帰りの日程に合わせて貰えるように服や靴や髪留めを注文した後、もう少しカジュアルなエリアに移動した。
因みに移動の際に注文した店の前を再び通りかかったら、早くも「聖者様御用達の店」だの「勇者様御用達の店」だのという手書きの看板が出ていてこれには閉口せざるを得ない。
気を取り直して向かった先は、綺麗に整備された目抜き通りとは打って変わって、そこかしこに賑やかな露店が立ち並び、大道芸人や吟遊詩人がいて、道の真ん中に回転木馬や観覧車まであって滅茶苦茶楽しそうなところだった。
エリアスは何度も来たことがあるらしく大して珍しくもなさそうだったが、俺には視界に入るものすべてが面白い。
呪いの掛かった道具を背の高い戸棚に所狭しと並べている屋台、駄獣や輓獣を扱う店、見世物小屋、花屋やお菓子屋、雑貨店、肉や魚介類を焼いている露店。
行き交う人々の服装や持ち物も面白いし、見たこともない生き物を連れている人もいる。
なんで俺の目は二つしかないんだよ。
見るところが多すぎて全然足りない。
回転木馬と観覧車には勿論、真っ先に乗った。
これは俺が乗りたかったのが半分、乗ってるエリアスを見たかったのが半分だ。
だって木馬に乗る勇者とか面白すぎるだろ。
ところが俺の思惑とは裏腹に、ここへ連れて来た時点で覚悟を決めていたようで、諦めたように木馬に跨るエリアスは本人の心中はさておき非の打ちどころがないほど格好良かった。
俺は図らずも、イケメンは何をしていてもイケメンだと立証してしまったに過ぎなかったのだ。
0
異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨
📖文庫版(紙の書籍)
📖Kindle(電子書籍)
📖BOOK☆WALKER(電子書籍)
次章続巻も順次刊行予定
OLOLON
※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
第一章 聖者降臨
📖文庫版(紙の書籍)
📖Kindle(電子書籍)
📖BOOK☆WALKER(電子書籍)
次章続巻も順次刊行予定
OLOLON
※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
お気に入りに追加
1,326
あなたにおすすめの小説


身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)


ある日、人気俳優の弟になりました。
雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。
「俺の命は、君のものだよ」
初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……?
平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる