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第三章 黎明と黄昏
〇二二 イケメンは何をしていてもイケメン②
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姿は見えるが気に留まらなくなるという目眩ましの魔法を掛けた竜騎兵が警護に当たってくれていたから、俺は気兼ねなく街を見て回ることが出来るが、エリアスは楽しんでいるように見えて常に周囲を警戒しているようだ。
俺を喜ばせるために一体どれほど心砕いてくれたのか。
エリアスの気持ちに報いるには、思いっきり楽しんで心からお礼を言うのが正解だろう。
「欲しいものがあれば何でも言ってくれ」
「俺、給料貰ってるし自分で買えるぞ」
「それは必要になった時のためにとっておいて、今は私に格好付けさせて欲しい」
そんな風に言われてしまえば俺が折れるしかない。
「じゃあ、今度いつかまた俺の実家に行くときは奢ってやるからな」
「ナナセがアルビオンを案内してくれるのか。それは楽しみだ」
桜も見せたいし、連れて行きたいところを挙げればきりがない。渋谷のスクランブル交差点とか驚くだろうな。
俺はエリアスの手を引っ張って、あれは何だこれは何だと質問しながら、気になる店に片っ端から入った。
俺一人で入るには敷居が高い店にもエリアスがいれば気後れせずに入れる。
あれこれと想いを馳せながら日本で言えば東京の銀座中央通り、フランスで言えばパリのシャンゼリゼ通りに当たるだろうと思われる高級店が軒を連ねる目抜き通りで、帰りの日程に合わせて貰えるように服や靴や髪留めを注文した後、もう少しカジュアルなエリアに移動した。
因みに移動の際に注文した店の前を再び通りかかったら、早くも「聖者様御用達の店」だの「勇者様御用達の店」だのという手書きの看板が出ていてこれには閉口せざるを得ない。
気を取り直して向かった先は、綺麗に整備された目抜き通りとは打って変わって、そこかしこに賑やかな露店が立ち並び、大道芸人や吟遊詩人がいて、道の真ん中に回転木馬や観覧車まであって滅茶苦茶楽しそうなところだった。
エリアスは何度も来たことがあるらしく大して珍しくもなさそうだったが、俺には視界に入るものすべてが面白い。
呪いの掛かった道具を背の高い戸棚に所狭しと並べている屋台、駄獣や輓獣を扱う店、見世物小屋、花屋やお菓子屋、雑貨店、肉や魚介類を焼いている露店。
行き交う人々の服装や持ち物も面白いし、見たこともない生き物を連れている人もいる。
なんで俺の目は二つしかないんだよ。
見るところが多すぎて全然足りない。
回転木馬と観覧車には勿論、真っ先に乗った。
これは俺が乗りたかったのが半分、乗ってるエリアスを見たかったのが半分だ。
だって木馬に乗る勇者とか面白すぎるだろ。
ところが俺の思惑とは裏腹に、ここへ連れて来た時点で覚悟を決めていたようで、諦めたように木馬に跨るエリアスは本人の心中はさておき非の打ちどころがないほど格好良かった。
俺は図らずも、イケメンは何をしていてもイケメンだと立証してしまったに過ぎなかったのだ。
俺を喜ばせるために一体どれほど心砕いてくれたのか。
エリアスの気持ちに報いるには、思いっきり楽しんで心からお礼を言うのが正解だろう。
「欲しいものがあれば何でも言ってくれ」
「俺、給料貰ってるし自分で買えるぞ」
「それは必要になった時のためにとっておいて、今は私に格好付けさせて欲しい」
そんな風に言われてしまえば俺が折れるしかない。
「じゃあ、今度いつかまた俺の実家に行くときは奢ってやるからな」
「ナナセがアルビオンを案内してくれるのか。それは楽しみだ」
桜も見せたいし、連れて行きたいところを挙げればきりがない。渋谷のスクランブル交差点とか驚くだろうな。
俺はエリアスの手を引っ張って、あれは何だこれは何だと質問しながら、気になる店に片っ端から入った。
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気を取り直して向かった先は、綺麗に整備された目抜き通りとは打って変わって、そこかしこに賑やかな露店が立ち並び、大道芸人や吟遊詩人がいて、道の真ん中に回転木馬や観覧車まであって滅茶苦茶楽しそうなところだった。
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異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨
📖文庫版(紙の書籍)
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📖BOOK☆WALKER(電子書籍)
次章続巻も順次刊行予定
OLOLON
※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
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