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第三章 黎明と黄昏
〇一九 目標と手段①
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あしながおじさんから出された「魔導書を編纂する」という課題を熟すに当たって、俺はまず、エリアスと一緒にヴェイラ王国が誇るヴェルスパ王宮の図書館へ赴いた。
ルートヴィヒ殿下に申請していた閲覧願いの許可が下りたのだ。
この図書館、マジで格好良すぎる。
学校の体育館一棟分くらいはあろうかという吹き抜けの巨大な空間の床から天井まで聳え立つ本棚は壮観だ。
それに本棚からして、ただの木の板を組み合わせたようなやつじゃない。
棚板や横板など、見えるところほぼ全てに彫刻が施してあるのだ。
そしてそこに詰まった蔵書のラインナップがまた圧巻だった。
「『ソロモンの鍵』『レメゲトン』『ゴエティア』『アルマデル奥義書』『大アルベール』『小アルベール』に『ヘプタメロン』『アブラメリンの書』『黒い雌鶏』『ガルドラボーク』『天使ラジエルの書』まであるのかよ! それにこの『聖なる書』って『ホノリウスの誓いの書』のラテン語原題のほうのやつだろ!? すげえ……凄すぎる……! 本物か!? なあ、これ全部本物なのか!?」
俺がまず連れて行かれたのはアルビオンの貴重な魔導書が置かれた棚だったのだ。
中二病を殺す気かよ!?
「ナナセ、図書館では静かに」
ルートヴィヒ殿下にやんわりと窘められて俺は慌てて両手で自分の口を押えたが、出てしまった声は戻らない。
戴冠式の準備で忙しいはずのルートヴィヒ殿下御自らにご足労頂いているのだ。
エリアスから求婚された俺が王都から脱出した日、第一王子のマキシミリアン殿下がクーデターを企て、失脚したことで第二王子のルードヴィヒ殿下が立太子したのだが、いつまでも王太子を決めなかったことがマキシミリアン殿下を追い詰めてしまったのだと心を痛めた女王陛下が退位を決意され、ルートヴィヒ殿下が即位することが決定したのである。
立太子していない王子時代ならともかく、国王陛下になる方に失礼があってはならないと、久々に顔を見たルートヴィヒ殿下に俺は敬語で話したんだけど、笑い飛ばされていつも通り話すように命じられて今に至る。
しかし、立場上一応は注意はしたものの、ルートヴィヒ殿下も後ろに控えている図書館長も俺の反応に心なしか得意げだった。
「もう数百年も前のことですが、アルビオンで魔女狩りがありましたでしょう。そのとき焚書を免れて、多くの魔導書が当館の蔵書に加わりました」
腹まで届く白い髭を蓄えた好々爺風の館長の説明では、魔女狩り以降、ルヴァとアルビオン間で物資を入荷する確固たるルートが出来て今に至るのだという。
この世界「ゾア」で使われている公用語はラテン語に似ているけど、「東の宇宙ルヴァ」で使われている名詞はドイツっぽいものが多い。
このヴェイラ王国には、俺の元いた世界「アルビオン」と繋がる転移門はないが、ヴェイラ王国が同盟国として傘下に入っているルヴァ魔導帝国にはアルビオンとの転移門があり現在はイギリスに繋がっている。
それも第二次世界大戦の頃に転移先を変更してイギリスになったのだというから、俺の予想では以前は名詞が定着するほど遥かな昔からずっとドイツに繋がっていたのだろう。
魔女狩りが行われたのは十五世紀から十八世紀までだ。
二十世紀になって第二次世界大戦が勃発するまでは、ヴェイラ王国のアルビオンとの転移門はドイツに繋がっていたことは、以前、ルートヴィヒ殿下から聞いて知っている。
ドイツは魔女狩りが特に激しかったというから、当時の歴史を映す貴重な品々が異世界へ大量に流出したのも頷けるだろう。
「これ、見てもいいか?」
この中で一番偉いルートヴィヒ殿下に訊ねると無言で頷いたので、館長がそのうちの数冊を出して閲覧用の机の上に並べてくれた。
「貴重な書物ですが、状態保存の魔法が施してありますので素手で触れて構いませんよ」
状態保存の魔法って、魔王城で出された食事のクロッシュに掛けられていたのと似たようなやつだろうか。
けどこれは食べ物じゃないから直接本体に掛けてあるのかも知れない。
またとない機会に、俺は館長にあれこれ質問しながら時間をかけて一冊ずつ存分に堪能した。
ルートヴィヒ殿下に申請していた閲覧願いの許可が下りたのだ。
この図書館、マジで格好良すぎる。
学校の体育館一棟分くらいはあろうかという吹き抜けの巨大な空間の床から天井まで聳え立つ本棚は壮観だ。
それに本棚からして、ただの木の板を組み合わせたようなやつじゃない。
棚板や横板など、見えるところほぼ全てに彫刻が施してあるのだ。
そしてそこに詰まった蔵書のラインナップがまた圧巻だった。
「『ソロモンの鍵』『レメゲトン』『ゴエティア』『アルマデル奥義書』『大アルベール』『小アルベール』に『ヘプタメロン』『アブラメリンの書』『黒い雌鶏』『ガルドラボーク』『天使ラジエルの書』まであるのかよ! それにこの『聖なる書』って『ホノリウスの誓いの書』のラテン語原題のほうのやつだろ!? すげえ……凄すぎる……! 本物か!? なあ、これ全部本物なのか!?」
俺がまず連れて行かれたのはアルビオンの貴重な魔導書が置かれた棚だったのだ。
中二病を殺す気かよ!?
「ナナセ、図書館では静かに」
ルートヴィヒ殿下にやんわりと窘められて俺は慌てて両手で自分の口を押えたが、出てしまった声は戻らない。
戴冠式の準備で忙しいはずのルートヴィヒ殿下御自らにご足労頂いているのだ。
エリアスから求婚された俺が王都から脱出した日、第一王子のマキシミリアン殿下がクーデターを企て、失脚したことで第二王子のルードヴィヒ殿下が立太子したのだが、いつまでも王太子を決めなかったことがマキシミリアン殿下を追い詰めてしまったのだと心を痛めた女王陛下が退位を決意され、ルートヴィヒ殿下が即位することが決定したのである。
立太子していない王子時代ならともかく、国王陛下になる方に失礼があってはならないと、久々に顔を見たルートヴィヒ殿下に俺は敬語で話したんだけど、笑い飛ばされていつも通り話すように命じられて今に至る。
しかし、立場上一応は注意はしたものの、ルートヴィヒ殿下も後ろに控えている図書館長も俺の反応に心なしか得意げだった。
「もう数百年も前のことですが、アルビオンで魔女狩りがありましたでしょう。そのとき焚書を免れて、多くの魔導書が当館の蔵書に加わりました」
腹まで届く白い髭を蓄えた好々爺風の館長の説明では、魔女狩り以降、ルヴァとアルビオン間で物資を入荷する確固たるルートが出来て今に至るのだという。
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このヴェイラ王国には、俺の元いた世界「アルビオン」と繋がる転移門はないが、ヴェイラ王国が同盟国として傘下に入っているルヴァ魔導帝国にはアルビオンとの転移門があり現在はイギリスに繋がっている。
それも第二次世界大戦の頃に転移先を変更してイギリスになったのだというから、俺の予想では以前は名詞が定着するほど遥かな昔からずっとドイツに繋がっていたのだろう。
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異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨
📖文庫版(紙の書籍)
📖Kindle(電子書籍)
📖BOOK☆WALKER(電子書籍)
次章続巻も順次刊行予定
OLOLON
※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
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