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第三章 黎明と黄昏
〇一五 お高いんでしょう?②
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おじさんのプレゼントってだけで何か裏があるんじゃないかって構えちまってたけど、意表をついて粋なものをくれるじゃないか!
すっげえ使えるし便利だし、これは素直に嬉しいな!
「それだけではない。私も実物は以前一度だけ、ルヴァの前皇帝陛下のものを遠目にだが見たことがある。陛下のものは転移門の上の光のように、石が青白く光っていたから恐らくあれと同じように転移魔法の残滓をこの石に蓄積できるのだろう」
転移門は通常、発着地点は固定されている。
それは転移門の上に浮かんでいる青白い転移魔法の残滓に、位置情報を含んだ術式が残されているからで、術者はそれを頼りに魔法陣を起動するからだ。
俺は実家の物置に転移門があって、そこだけは誰にも教わらなくても行先を変更することが出来たけど、知らない場所や一度も行ったことがない場所に行先を変更しろって言われても多分無理だろう。
だけどこの石に、転移魔法の残滓であるあの青白い光を位置情報として記録しておけば、転移門の青白い光と同じように機能して、一度行った場所ならどこの転移門からでもまた行けるようになるってことか。
この石一つで何か所も記録してごっちゃにならないか心配だが、その辺は使ってみないとわからない。
しかし、どえらいもんを貰っちまったな。
「これがあれば事実上世界中どこへでも行ける。価値が途轍もなくて値段は付けられない」
「どうしようエリー、返した方がいいかな?」
何かのフェスのリストバンド型入場証みたいだなと思っていたら、バックステージパスだった的な。
そんな破格のブレスレットなんか着けてたら、強盗に腕を切り落とされかねない。
「いや、それを使って課題を熟せということなのだろう」
「そうか……。魔導書の編纂って、これを使わないと熟せないような課題なんだな」
そうだった。
全ては課題のためなのだ。
だったら持ち歩くときはエリアスに着けていて貰おう。そうしよう。
最強勇者のエリアスから盗める奴なんてこの世界にいないしな。
「じゃあ、落としたり盗まれたりしそうで怖いからエリーが持っててくれよ」
「その心配はない。盗んだところで売ることも出来ないし、落としても拾い主が謝礼目当てで届けてくれるからすぐに戻ってくるだろう。それに私が着けるには少し小さい」
そう言うとエリアスは袖を捲って腕を突き出し、俺の手首の横に並べて見せた。
おいやめろ。何しやがる。
日本男子としては標準的な俺の腕が貧弱に見えるから、勇者の腕なんてもんを隣に並べてくれるな。
俺が馬鹿でした。もうやめてください。ホントお願いします。
エリアス、なんかニヤニヤしてるし。
もうさ、こないだのヴェイラの襲撃で、ずっと前から企てていた俺の誕生日プランをぶち壊されたエリアスが凹むか腹を立ててリベンジに燃えるかと思いきや、あれ以来、気が付くと俺の方を見てニヤニヤニヤニヤニヤニヤしてんだよ。
理由は単純明快。
俺が怒ると思ってか口に出しては言わないが、その後の俺のやきもちが相当嬉しかったらしい。
あんまりニヤニヤしてるもんだから、エリアスの従僕のエミールに「気持ち悪いですよ」と言われていたが俺もそう思う。
そこまでハッキリ言われたら普通ならちょっとは堪えそうなもんなんだが、生憎とエリアスは普通とはほど遠い規格外な勇者だ。
生ハム原木テンプレばりに無言で「そんなこと言っていいのかな? 私はナナセに焼きもちを焼いて貰える男だぞ?」的な余裕の態度で返すんだよ。
あーもう苛つく!
半眼で黙り込んでしまった俺を見て満足してか、エリアスは腕を引っ込めてくれた。
筋肉以前に、この世界の人間は骨格から違うとしか思えない。
俺サイズで作られている腕輪の円周は、どう見てもエリアスの手首の円周より小さかった。
純金は柔らかい金属だから無理矢理広げれば着けられないこともないだろうが、そうすると石の台座が歪んで石が取れてしまうかも知れない。
どうもこの話題は俺の分が悪い。
捲り上げられたエリアスの袖を元に戻すのを手伝いながら俺はさりげなく話題を変える。
「それでさ、話は変わるんだけど、魔導書ってどんなものなんだ?」
一周回って結局そこに立ち返った。
やっぱまずはそれが分からないことには編纂しようがないだろう。
すっげえ使えるし便利だし、これは素直に嬉しいな!
「それだけではない。私も実物は以前一度だけ、ルヴァの前皇帝陛下のものを遠目にだが見たことがある。陛下のものは転移門の上の光のように、石が青白く光っていたから恐らくあれと同じように転移魔法の残滓をこの石に蓄積できるのだろう」
転移門は通常、発着地点は固定されている。
それは転移門の上に浮かんでいる青白い転移魔法の残滓に、位置情報を含んだ術式が残されているからで、術者はそれを頼りに魔法陣を起動するからだ。
俺は実家の物置に転移門があって、そこだけは誰にも教わらなくても行先を変更することが出来たけど、知らない場所や一度も行ったことがない場所に行先を変更しろって言われても多分無理だろう。
だけどこの石に、転移魔法の残滓であるあの青白い光を位置情報として記録しておけば、転移門の青白い光と同じように機能して、一度行った場所ならどこの転移門からでもまた行けるようになるってことか。
この石一つで何か所も記録してごっちゃにならないか心配だが、その辺は使ってみないとわからない。
しかし、どえらいもんを貰っちまったな。
「これがあれば事実上世界中どこへでも行ける。価値が途轍もなくて値段は付けられない」
「どうしようエリー、返した方がいいかな?」
何かのフェスのリストバンド型入場証みたいだなと思っていたら、バックステージパスだった的な。
そんな破格のブレスレットなんか着けてたら、強盗に腕を切り落とされかねない。
「いや、それを使って課題を熟せということなのだろう」
「そうか……。魔導書の編纂って、これを使わないと熟せないような課題なんだな」
そうだった。
全ては課題のためなのだ。
だったら持ち歩くときはエリアスに着けていて貰おう。そうしよう。
最強勇者のエリアスから盗める奴なんてこの世界にいないしな。
「じゃあ、落としたり盗まれたりしそうで怖いからエリーが持っててくれよ」
「その心配はない。盗んだところで売ることも出来ないし、落としても拾い主が謝礼目当てで届けてくれるからすぐに戻ってくるだろう。それに私が着けるには少し小さい」
そう言うとエリアスは袖を捲って腕を突き出し、俺の手首の横に並べて見せた。
おいやめろ。何しやがる。
日本男子としては標準的な俺の腕が貧弱に見えるから、勇者の腕なんてもんを隣に並べてくれるな。
俺が馬鹿でした。もうやめてください。ホントお願いします。
エリアス、なんかニヤニヤしてるし。
もうさ、こないだのヴェイラの襲撃で、ずっと前から企てていた俺の誕生日プランをぶち壊されたエリアスが凹むか腹を立ててリベンジに燃えるかと思いきや、あれ以来、気が付くと俺の方を見てニヤニヤニヤニヤニヤニヤしてんだよ。
理由は単純明快。
俺が怒ると思ってか口に出しては言わないが、その後の俺のやきもちが相当嬉しかったらしい。
あんまりニヤニヤしてるもんだから、エリアスの従僕のエミールに「気持ち悪いですよ」と言われていたが俺もそう思う。
そこまでハッキリ言われたら普通ならちょっとは堪えそうなもんなんだが、生憎とエリアスは普通とはほど遠い規格外な勇者だ。
生ハム原木テンプレばりに無言で「そんなこと言っていいのかな? 私はナナセに焼きもちを焼いて貰える男だぞ?」的な余裕の態度で返すんだよ。
あーもう苛つく!
半眼で黙り込んでしまった俺を見て満足してか、エリアスは腕を引っ込めてくれた。
筋肉以前に、この世界の人間は骨格から違うとしか思えない。
俺サイズで作られている腕輪の円周は、どう見てもエリアスの手首の円周より小さかった。
純金は柔らかい金属だから無理矢理広げれば着けられないこともないだろうが、そうすると石の台座が歪んで石が取れてしまうかも知れない。
どうもこの話題は俺の分が悪い。
捲り上げられたエリアスの袖を元に戻すのを手伝いながら俺はさりげなく話題を変える。
「それでさ、話は変わるんだけど、魔導書ってどんなものなんだ?」
一周回って結局そこに立ち返った。
やっぱまずはそれが分からないことには編纂しようがないだろう。
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異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨
📖文庫版(紙の書籍)
📖Kindle(電子書籍)
📖BOOK☆WALKER(電子書籍)
次章続巻も順次刊行予定
OLOLON
※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
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