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第三章 黎明と黄昏
〇一一 痛いのは飛んでった②
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「この辺りか?」
エリアスは俺が落ち着いてきたのを見計らって、俺の左の乳首を摘まんだ。
惜しい。
確かにそこもきゅうっと痛くなるけど、勿論そこじゃない。
わざと間違えてるだろう。
そういうオヤジ臭い冗談はやめろ。
やってることはエロオヤジと変わりないのにエリアスがやると悪餓鬼の悪戯になる。
ただしイケメンに限るってやつだ。
「やっと笑ったな」
エリアスがそう言いながら微笑んだので俺は自分が笑っていることに気付いた。
ずるい。
俺が笑っていれば、いつでもそんな綺麗な笑顔が見られるなんて実証しないで欲しい。
「そこじゃねえし……」
でも痛かった場所を訊くってことは、まさか例のアレをやる気じゃないだろうな?
分かってんのか?
アレはお呪いとか言うと可愛らしいが、要は呪術の一種だぞ?
それでも俺は期待十割で自分の鳩尾のやや上辺りを拳でトントンと叩いて見せる。
「この辺……」
「ここだな?」
エリアスがそろりと俺の鳩尾の位置まで屈み込んできたの思わず仰け反ると、あろうことか舌でぺろりと舐めた。
「……ッ!?」
危うく変な声を出してしまうことだけは辛うじて堪えたが、金色に光る眼を眇めて俺を見据えながらエリアスは以前俺が教えたお呪いを唱える。
「ちちんぷいぷい、ちちんぷいぷい……」
やっぱりな!
そうくると思ったぜ!
こんなことしても赤ちゃんプレイにならないところがエリアスほんと凄い。
しかも勇者の呪術の効果は抜群で、痛いのは飛んでった。
「エリー、……ありがと」
「どういたしまして」
本当は俺だって分かってるんだ。
エリアスにとっては元カノや元カレなんて性欲処理の対象でしかなかったであろうことは想像に難くない。
エリアスが他人の性器に触れたり、ましてや舐めたりなんて出来るわけがないからな。
潔癖症という訳ではないけど、なんかそういうの本気で汚いって嫌悪してそうだ。
嫉妬でおかしくなっちゃってるところへ蟻の門渡り舐められてこれはもしやと思ってしまったけど、冷静に考えてみればエリアスだぞ。
大事なことだからもう一度言うけど、あのエリアスなんだぞ。
相手に自分で解させて、自分が射精したら「まだいたのか? もう下がっていいぞ」って言うタイプだ。
元カノや元カレの気配を微塵も感じないのは当然だろう。
相手はエリアスに勝手に期待して勝手に失望して勝手に去っていく。
……うわあ、それなら容易に想像できる。
エリアスがどうして俺なんかをっていうミステリーとの矛盾を承知の上での盛大な惚気になるが、だってエリアスが俺じゃない他の誰かとなんて、そもそも現実的な発想ではなかったんだ。
俺の知ってるエリアスは残念なイケメンで、事故物件で、ポンコツ勇者でしかない。
そしてそれは俺だけが知っていればいい真実なんだ。
俺は勝手に嫉妬して勝手に疑って勝手に自己完結してしまった。
「それよりさっきから俺ばっか気持ち良くなっててごめんな。エリーはあんまり気持ち良くなかっただろ」
「そんなことはない。ナナセが私の陰茎を使って自慰をしているようで興奮したし、どうすればナナセをもっと快楽に溺れさせられるか学ばせて貰った。乳嘴を愛撫しながら奥を突かれるのがいいのだろう」
自慰! それな! しっくりきたわ!
さっきのってセックスをしているようでいて、実はエリアスのチンコを使ったアナニーだったよな。
俺は何をムキになっていたんだろう。
もう二度と見失わないように、俺はあの大切な痛みを覚えている。
「それじゃあ勉強の成果を見せくれよ」
今度こそアナニーじゃなくセックスをするために俺はエリアスに体重を預けた。
エリアスは俺が落ち着いてきたのを見計らって、俺の左の乳首を摘まんだ。
惜しい。
確かにそこもきゅうっと痛くなるけど、勿論そこじゃない。
わざと間違えてるだろう。
そういうオヤジ臭い冗談はやめろ。
やってることはエロオヤジと変わりないのにエリアスがやると悪餓鬼の悪戯になる。
ただしイケメンに限るってやつだ。
「やっと笑ったな」
エリアスがそう言いながら微笑んだので俺は自分が笑っていることに気付いた。
ずるい。
俺が笑っていれば、いつでもそんな綺麗な笑顔が見られるなんて実証しないで欲しい。
「そこじゃねえし……」
でも痛かった場所を訊くってことは、まさか例のアレをやる気じゃないだろうな?
分かってんのか?
アレはお呪いとか言うと可愛らしいが、要は呪術の一種だぞ?
それでも俺は期待十割で自分の鳩尾のやや上辺りを拳でトントンと叩いて見せる。
「この辺……」
「ここだな?」
エリアスがそろりと俺の鳩尾の位置まで屈み込んできたの思わず仰け反ると、あろうことか舌でぺろりと舐めた。
「……ッ!?」
危うく変な声を出してしまうことだけは辛うじて堪えたが、金色に光る眼を眇めて俺を見据えながらエリアスは以前俺が教えたお呪いを唱える。
「ちちんぷいぷい、ちちんぷいぷい……」
やっぱりな!
そうくると思ったぜ!
こんなことしても赤ちゃんプレイにならないところがエリアスほんと凄い。
しかも勇者の呪術の効果は抜群で、痛いのは飛んでった。
「エリー、……ありがと」
「どういたしまして」
本当は俺だって分かってるんだ。
エリアスにとっては元カノや元カレなんて性欲処理の対象でしかなかったであろうことは想像に難くない。
エリアスが他人の性器に触れたり、ましてや舐めたりなんて出来るわけがないからな。
潔癖症という訳ではないけど、なんかそういうの本気で汚いって嫌悪してそうだ。
嫉妬でおかしくなっちゃってるところへ蟻の門渡り舐められてこれはもしやと思ってしまったけど、冷静に考えてみればエリアスだぞ。
大事なことだからもう一度言うけど、あのエリアスなんだぞ。
相手に自分で解させて、自分が射精したら「まだいたのか? もう下がっていいぞ」って言うタイプだ。
元カノや元カレの気配を微塵も感じないのは当然だろう。
相手はエリアスに勝手に期待して勝手に失望して勝手に去っていく。
……うわあ、それなら容易に想像できる。
エリアスがどうして俺なんかをっていうミステリーとの矛盾を承知の上での盛大な惚気になるが、だってエリアスが俺じゃない他の誰かとなんて、そもそも現実的な発想ではなかったんだ。
俺の知ってるエリアスは残念なイケメンで、事故物件で、ポンコツ勇者でしかない。
そしてそれは俺だけが知っていればいい真実なんだ。
俺は勝手に嫉妬して勝手に疑って勝手に自己完結してしまった。
「それよりさっきから俺ばっか気持ち良くなっててごめんな。エリーはあんまり気持ち良くなかっただろ」
「そんなことはない。ナナセが私の陰茎を使って自慰をしているようで興奮したし、どうすればナナセをもっと快楽に溺れさせられるか学ばせて貰った。乳嘴を愛撫しながら奥を突かれるのがいいのだろう」
自慰! それな! しっくりきたわ!
さっきのってセックスをしているようでいて、実はエリアスのチンコを使ったアナニーだったよな。
俺は何をムキになっていたんだろう。
もう二度と見失わないように、俺はあの大切な痛みを覚えている。
「それじゃあ勉強の成果を見せくれよ」
今度こそアナニーじゃなくセックスをするために俺はエリアスに体重を預けた。
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