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第三章 黎明と黄昏
〇〇八 今日というこの日が良い②
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この期に及んでこんなことを言うと嘘っぽく聞こえるが、これは嘘じゃない。
聖剣に命名なんて大それたこと、どう切り出していいか分からないし、なんだか照れ臭くて言い出せなかっただけなんだ。
「もう考えてあるなら是非今日欲しい。ナナセの二十歳の誕生日である今日に」
「え、いいのか? もっとこう、きちんとした場でなくて……俺こんな格好だし……」
俺は改めて自分が着ているバスローブとエリアスの礼服を見比べた。
こんなことならエリアスが準備してくるって言って引っ込んだとき、俺もせめて何かもうちょっとマトモな服を着てくればよかったな。
それに、何でも形から入る俺としては、実家の物置から消防のときに使ってた習字道具を取って来て半紙に毛筆で書いて渡したかったんだが。
俺がやると命名っていうよりちょっと勝訴感が出ちゃうかも知れないけど。
「格好はどうでもいい。私は今日というこの日が良い」
寝室の乱れたベッドの上でもいいのか。
バスローブのままでいいのか。
俺的にはナシだけど、エリアスの聖剣だし、エリアスがいいっていうならいいのか。そうか。
じゃあ――。
「『熄』ってどうかな? きえる、やむ、なくなる。火が消えるように滅びてなくなり、消え入るように終わる。この世の総てを終熄させることができる剣って意味なんだけど」
命名は難しい。
魔王でさえテキトーな名前付けて呼んだら弱体化しちまったわけだし、それはそれで結果としては良かったが、聖剣を弱体化させてしまうわけにはいないだろう。
だから俺は持てる知識を総動員して必死に考えたんだ。
これなら強化はされても弱体化はされないはずだ。多分。きっと。恐らくは。
ただ斬って捨てるだけじゃなく、対象を完全に消滅させられる剣にならないかなって思いを込めている。
戦いや争いを終わらせるだけじゃない。
エリアスの孤独や寂しさや憂いも終わらせることが出来ればいい。
そしていつか、俺の親父とエリアスが交わした「その手でナナセを殺してから死ね」という約束を果たすための剣なのだ。
俺の闇魔法には生贄が必要で、それはエリアスの子種のみで代替が利かない。
贄を捧げられなくなった闇魔法士の末路は悲惨だ。
エリアスは「死ぬときは一緒」だと約束してくれた。
この先もしもエリアスが俺よりも先に死ぬような状況に陥った時、俺を残して一人では逝かないように。
それは俺にとって、甘い誘惑であるのと同時に、この世の苦しみから解き放ち永久の安寧を齎してくれる終熄の剣でもあった。
聖剣に命名なんて大それたこと、どう切り出していいか分からないし、なんだか照れ臭くて言い出せなかっただけなんだ。
「もう考えてあるなら是非今日欲しい。ナナセの二十歳の誕生日である今日に」
「え、いいのか? もっとこう、きちんとした場でなくて……俺こんな格好だし……」
俺は改めて自分が着ているバスローブとエリアスの礼服を見比べた。
こんなことならエリアスが準備してくるって言って引っ込んだとき、俺もせめて何かもうちょっとマトモな服を着てくればよかったな。
それに、何でも形から入る俺としては、実家の物置から消防のときに使ってた習字道具を取って来て半紙に毛筆で書いて渡したかったんだが。
俺がやると命名っていうよりちょっと勝訴感が出ちゃうかも知れないけど。
「格好はどうでもいい。私は今日というこの日が良い」
寝室の乱れたベッドの上でもいいのか。
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じゃあ――。
「『熄』ってどうかな? きえる、やむ、なくなる。火が消えるように滅びてなくなり、消え入るように終わる。この世の総てを終熄させることができる剣って意味なんだけど」
命名は難しい。
魔王でさえテキトーな名前付けて呼んだら弱体化しちまったわけだし、それはそれで結果としては良かったが、聖剣を弱体化させてしまうわけにはいないだろう。
だから俺は持てる知識を総動員して必死に考えたんだ。
これなら強化はされても弱体化はされないはずだ。多分。きっと。恐らくは。
ただ斬って捨てるだけじゃなく、対象を完全に消滅させられる剣にならないかなって思いを込めている。
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エリアスの孤独や寂しさや憂いも終わらせることが出来ればいい。
そしていつか、俺の親父とエリアスが交わした「その手でナナセを殺してから死ね」という約束を果たすための剣なのだ。
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それは俺にとって、甘い誘惑であるのと同時に、この世の苦しみから解き放ち永久の安寧を齎してくれる終熄の剣でもあった。
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異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨
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次章続巻も順次刊行予定
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※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
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