137 / 266
第三章 黎明と黄昏
〇〇八 今日というこの日が良い②
しおりを挟む
この期に及んでこんなことを言うと嘘っぽく聞こえるが、これは嘘じゃない。
聖剣に命名なんて大それたこと、どう切り出していいか分からないし、なんだか照れ臭くて言い出せなかっただけなんだ。
「もう考えてあるなら是非今日欲しい。ナナセの二十歳の誕生日である今日に」
「え、いいのか? もっとこう、きちんとした場でなくて……俺こんな格好だし……」
俺は改めて自分が着ているバスローブとエリアスの礼服を見比べた。
こんなことならエリアスが準備してくるって言って引っ込んだとき、俺もせめて何かもうちょっとマトモな服を着てくればよかったな。
それに、何でも形から入る俺としては、実家の物置から消防のときに使ってた習字道具を取って来て半紙に毛筆で書いて渡したかったんだが。
俺がやると命名っていうよりちょっと勝訴感が出ちゃうかも知れないけど。
「格好はどうでもいい。私は今日というこの日が良い」
寝室の乱れたベッドの上でもいいのか。
バスローブのままでいいのか。
俺的にはナシだけど、エリアスの聖剣だし、エリアスがいいっていうならいいのか。そうか。
じゃあ――。
「『熄』ってどうかな? きえる、やむ、なくなる。火が消えるように滅びてなくなり、消え入るように終わる。この世の総てを終熄させることができる剣って意味なんだけど」
命名は難しい。
魔王でさえテキトーな名前付けて呼んだら弱体化しちまったわけだし、それはそれで結果としては良かったが、聖剣を弱体化させてしまうわけにはいないだろう。
だから俺は持てる知識を総動員して必死に考えたんだ。
これなら強化はされても弱体化はされないはずだ。多分。きっと。恐らくは。
ただ斬って捨てるだけじゃなく、対象を完全に消滅させられる剣にならないかなって思いを込めている。
戦いや争いを終わらせるだけじゃない。
エリアスの孤独や寂しさや憂いも終わらせることが出来ればいい。
そしていつか、俺の親父とエリアスが交わした「その手でナナセを殺してから死ね」という約束を果たすための剣なのだ。
俺の闇魔法には生贄が必要で、それはエリアスの子種のみで代替が利かない。
贄を捧げられなくなった闇魔法士の末路は悲惨だ。
エリアスは「死ぬときは一緒」だと約束してくれた。
この先もしもエリアスが俺よりも先に死ぬような状況に陥った時、俺を残して一人では逝かないように。
それは俺にとって、甘い誘惑であるのと同時に、この世の苦しみから解き放ち永久の安寧を齎してくれる終熄の剣でもあった。
聖剣に命名なんて大それたこと、どう切り出していいか分からないし、なんだか照れ臭くて言い出せなかっただけなんだ。
「もう考えてあるなら是非今日欲しい。ナナセの二十歳の誕生日である今日に」
「え、いいのか? もっとこう、きちんとした場でなくて……俺こんな格好だし……」
俺は改めて自分が着ているバスローブとエリアスの礼服を見比べた。
こんなことならエリアスが準備してくるって言って引っ込んだとき、俺もせめて何かもうちょっとマトモな服を着てくればよかったな。
それに、何でも形から入る俺としては、実家の物置から消防のときに使ってた習字道具を取って来て半紙に毛筆で書いて渡したかったんだが。
俺がやると命名っていうよりちょっと勝訴感が出ちゃうかも知れないけど。
「格好はどうでもいい。私は今日というこの日が良い」
寝室の乱れたベッドの上でもいいのか。
バスローブのままでいいのか。
俺的にはナシだけど、エリアスの聖剣だし、エリアスがいいっていうならいいのか。そうか。
じゃあ――。
「『熄』ってどうかな? きえる、やむ、なくなる。火が消えるように滅びてなくなり、消え入るように終わる。この世の総てを終熄させることができる剣って意味なんだけど」
命名は難しい。
魔王でさえテキトーな名前付けて呼んだら弱体化しちまったわけだし、それはそれで結果としては良かったが、聖剣を弱体化させてしまうわけにはいないだろう。
だから俺は持てる知識を総動員して必死に考えたんだ。
これなら強化はされても弱体化はされないはずだ。多分。きっと。恐らくは。
ただ斬って捨てるだけじゃなく、対象を完全に消滅させられる剣にならないかなって思いを込めている。
戦いや争いを終わらせるだけじゃない。
エリアスの孤独や寂しさや憂いも終わらせることが出来ればいい。
そしていつか、俺の親父とエリアスが交わした「その手でナナセを殺してから死ね」という約束を果たすための剣なのだ。
俺の闇魔法には生贄が必要で、それはエリアスの子種のみで代替が利かない。
贄を捧げられなくなった闇魔法士の末路は悲惨だ。
エリアスは「死ぬときは一緒」だと約束してくれた。
この先もしもエリアスが俺よりも先に死ぬような状況に陥った時、俺を残して一人では逝かないように。
それは俺にとって、甘い誘惑であるのと同時に、この世の苦しみから解き放ち永久の安寧を齎してくれる終熄の剣でもあった。
0
異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨
📖文庫版(紙の書籍)
📖Kindle(電子書籍)
📖BOOK☆WALKER(電子書籍)
次章続巻も順次刊行予定
OLOLON
※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
第一章 聖者降臨
📖文庫版(紙の書籍)
📖Kindle(電子書籍)
📖BOOK☆WALKER(電子書籍)
次章続巻も順次刊行予定
OLOLON
※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
お気に入りに追加
1,326
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)


怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

ある日、人気俳優の弟になりました。
雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。
「俺の命は、君のものだよ」
初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……?
平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる