異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが

第三章 黎明と黄昏

〇〇六 光が強くなれば闇も深くなる②

ちょっと待ってくれ！
情報量が多すぎて俺の頭では処理が追い付かないから整理させてくれ。

この世界では、竜族や一部の古代種を除いて獣人族や人族は基本的に無属性だが、魔物は生まれながらに闇属性を持つ。
同属性同士では威力は弱いが攻撃が通り、防御が出来ないという特徴はどの属性も共通だが、四大精霊の属性であれば、火には水を、水には土をと、相対する属性をぶつけてやれば有効な弱点となり得る。
闇魔法が失伝してからは、エリアスの持っている聖剣のような聖属性を備えた稀少な武器や道具を以て魔物に対抗していた。
この世界には聖属性の精霊というものが存在しないから、四大精霊のように契約して使役することが出来ず、道具に頼っているわけだ。
ただし、闇属性には聖属性が最も有効とされているものの、二者しかない相関関係では、互いに攻撃も防御も出来てしまうという欠点もある。

魔王クラスにもなれば聖属性攻撃でも完全に防がれてしまうこともあるようだが、魔王も生まれながらに闇属性を持つ魔族なので闇属性攻撃だけは防げないのだ。
エリアスがその特性を利用して闇属性を纏わせた防御無効な攻撃で魔王を倒したことはまだ記憶に新しい。

その聖属性という属性自体が異世界から持ち込まれたということは、聖剣も異世界から持ち込まれたということなのだろうか。
だから聖属性を備えた道具が稀少なのか。
エリアスは実家が辺境伯家だし、騎士団所属で宮廷仕えだから対魔物を想定した攻撃系魔法を基礎から学んでいるから聖属性と闇属性の知識もあるのだろうけど、俺のいた診療所がやってたような庶民の通う私塾では無属性と四属性の生産系魔法しか教えない。
聖属性と闇属性は事実上、王侯貴族や聖職者といった特権階級の者たちだけが知り得る知識となっている。

その上ヴェイラは、それら全属性の相関関係を全て覆す光属性の存在を持ち出したのだ。
この世界に、闇に相対する光という属性があるって言うのか！？
俺もう処理落ちしそう！

「この世界に光属性ってあったんですか？」

訊きたいことは山ほどあるが、まずはそこからだろう。

「あるわよ勿論。でも光は単体では存在しないの。始めに闇ありきだったけど、光が生まれた瞬間から、光と闇は互いに相反しながら表裏一体になるという他の属性には見られない状態に落ち着いてしまったのよね。だから聖者君の使う治癒術は闇魔法であるのと同時に光魔法でもあるのよ」

それで俺はハッとした。
俺が闇魔法を使うとき、いつも光が出ていたじゃないか。
治癒の範囲は、その光の届く範囲だった。
光と闇が表裏一体とはそういうことだったんだ。

光が強くなれば闇も深くなる。
俺の治癒術は闇魔法であるのと同時に光魔法だったから両属性が互いに高め合い、こんなにも出鱈目なチート級の効果を発揮出来ていたんだ。
闇を使ったからこそ光が出て、光があったからこそ闇が強くなれた。