異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが

マハラメリノ

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第三章 黎明と黄昏

〇〇六 光が強くなれば闇も深くなる①

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俺が四大属性の魔法がひとつも使えないのは、四大精霊に嫌われているせいではなく、寧ろ好かれているが、俺が元いた世界の精霊とすでに契約を交わしているから、この世界の精霊は俺に力を貸せないのだとヴェイラは言う。
更に、その精霊とは金属か鉱物ではないかと言うのだ。

「えっと、金属か鉱物……? 五行の金属性……とか?」

精霊に心当たりはないけど金属性ということなら思いつくのは五行思想だろう。
西洋のエンペドクレスの四元素説やパラケルススの四大精霊と並び、東洋には五行説、または五行思想という自然哲学の思想がある。
日本の年表に照らし合わせれば戦国時代辺りに中国で発生した比較的新しい思想だが、陰陽道に取り入れられ、陰陽五行説となり広まった。
五行という言葉自体に馴染みがなくても、「青春、朱夏、白秋、玄冬」という言葉は聞いたことがあるだろう。それらは五行を起源とする言葉だ。
そんな風に、五行思想は日本人の文化の中に自然に入り込んでいる。

具体的に五行とはどのようなものかざっくり説明すると、万物は火・水・木・金・土の五種類の元素から成るという思想だ。
ここで中二病的に面白いのは、五つの属性が五芒星の形に配置され、それぞれ「相生」「相剋」「比和」「相乗」「相侮」という相関図で表される点だ。
例えば「相生」で言えば、木は燃えて火を生むという意味の「木生火もくしょうか」などがそうだ。
四大精霊の相関図と違って複雑なんだが、この俺が履修してない訳がない。

五行の話は語り出すときりがないので話を戻して、ヴェイラは、俺がすでにアルビオンの金属の精霊と契約しているのだという。
確かに俺は金属が異常に好きだが、本当に覚えがない。

それよりもここで重要なのは、俺が四大精霊ではなく五行に属しているから、四大精霊の力を貸して貰えないのではないかという点なのだ。
それならば四大属性の魔法が使えなかった理由に得心が行く。

「ゴギョウ? アルビオンの精霊はそう言うのね? それにこの宇宙はルヴァの金属から作られていることもあって、そのゴギョウの金属の精霊と契約している聖者君に精霊たちは干渉できないようなのよ」

ユリゼンがルヴァを炉に放り込んで、燃え滓の金属からこの宇宙が作られたっていう例のハートフルボッコサイコパスストーリーっすね。
金属好きな俺としては、それがどんな金属だったのか気になるところではある。

「尤も、聖者君の場合は精霊どころか、この世界が誕生するよりもっと古くから存在する『闇』そのものと契約した一族の血が流れているから、精霊の力なんて必要ないと言えば必要ないのだけれどね」

ゾアともなれば俺が闇魔法を使えることくらいお見通しなのか、ヴェイラはさらりと言ってのけた。

「ということは『闇』は精霊ではないんですか?」
「その通り。精霊ではないわ。『闇』は総ての始まりであり、終わりでもある。世界の始まりは、ただ闇があるばかり。『光』が生まれたのだってその後よ。一番新しいのは異世界から持ち込まれた『聖』かしら」

まさかの光!?
そんでもって聖!?
始まりの終わりで、終わりの始まり!?
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異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨


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次章続巻も順次刊行予定
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