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第三章 黎明と黄昏
〇〇五 君の理性と限界①
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召喚に応えて顕現したからには、召喚者の望みを叶えるまで契約に縛られる。
言ってみれば召喚術とは魔法を介した契約の一種なのだという。
何のために呼び出したのかは知らないが、エリアスはヴェイラの存在自体が気に入らないって感じだものな。
そりゃあ望みを叶えられないだろう。
しかし契約を交わしてしまった以上、ヴェイラはエリアスの望みを叶えるまでいつまでも永遠界へ帰れないままだ。
召喚術とはそういうものらしい。
そういえば、以前、救護院の院長が言っていた前の聖女のことが頭を過る。
確か彼女も神殿が勝手に行った召喚術でこの世界に転移してきたはずだ。
彼女も召喚者の願いを叶え、聖女になったから元の世界へ戻ることが出来たのだろうか。
「大体何故、私の召喚にお前が応えた? ユリゼンならまだしも、お前では私の役には立たないだろう」
「あら、言ってくれるわね。愛は私の専門分野なのよ? 私が来なくて誰が来るっていうのよ? 堅物のユリゼンじゃ話にならないいわ」
「私は愛や嫉妬に惑わされない理性的な回答を求めているんだが……」
堅物とか言っているが、ユリゼンはヴェイラの息子に当たる。
ゾアたちの関係性を知れば見えてくることもあるだろう。
エリアスが召喚術暴発させた理由と、ヴェイラが帰れない理由を俺はなんとなく把握した。
多分エリアスは、俺とのことで誰かに恋愛相談に乗って欲しかったんだな。
エリアス、友達らしい友達っていないもんな。知らんけど。
少なくとも俺はエリアスに友達がいる気配を感じたことはない。
エリアスと友達になるのは普通の人間にはちょっと荷が重いだろう。
人外しか選択肢がないとするなら召喚術に頼っても致し方ない。
そしたら、本人曰く愛の象徴ヴェイラが顕現してこの調子だから、エリアスのお気に召さないと。
ヴェイラの男性性であり双子の兄であり夫であるルヴァは「恋人」という意味の名を頂く愛の象徴だが、一方、南の宇宙ユリゼンは「君の理性と限界」という意味の名を頂く理性の象徴だと私塾で教わった。
創世神話では、ユリゼンが実の父であるルヴァを苦しみの炉に放り込み、燃え残った金属から宇宙を作ったと言われている。
それを理性的に淡々と行っていたユリゼンが一番ヤベー奴だし、サイコパス確定だろっていうストーリーだが、この話の教訓は、恋愛とは表裏一体である嫉妬を燃やし尽くして恋愛を理性でコントロールするというところにあるのだ。
サイコパスのユリゼンが出て来なくて良かったけど、実際、ヴェイラを見ているとユリゼンに同情を禁じ得ない。
マジで君の理性が限界きちゃったんだなって思う。
だがまあそんな逸話を持つユリゼンなら、確かにエリアスのお気に召す答えを用意できるだろうが、そもそも理性の象徴が例え勇者といえど人間の召喚に応えてくれるはずもない。
詰んでないかこれ?
「それに私、もっと早く聖者君に紹介して貰いたかったのに、勇者君ったら『ナナセの誕生日まで大人しくしていろ』なんて言うから今日まで出て来られなかったのよ」
「私は『ナナセの誕生日が終わるまでは』と言ったんだが!?」
「あら、そうだったかしら?」
ヴェイラはしれっと言ったが、アナタ一体何日前からどこに隠れてたんすか。
まさか俺とエリアスのあれやこれやをこっそり覗いてやしませんよね……。
俺の不安を他所に、エリアスはこの流れで話題が変わって追及から逃れられたことに心なしかほっとしたような顔をしている。
言ってみれば召喚術とは魔法を介した契約の一種なのだという。
何のために呼び出したのかは知らないが、エリアスはヴェイラの存在自体が気に入らないって感じだものな。
そりゃあ望みを叶えられないだろう。
しかし契約を交わしてしまった以上、ヴェイラはエリアスの望みを叶えるまでいつまでも永遠界へ帰れないままだ。
召喚術とはそういうものらしい。
そういえば、以前、救護院の院長が言っていた前の聖女のことが頭を過る。
確か彼女も神殿が勝手に行った召喚術でこの世界に転移してきたはずだ。
彼女も召喚者の願いを叶え、聖女になったから元の世界へ戻ることが出来たのだろうか。
「大体何故、私の召喚にお前が応えた? ユリゼンならまだしも、お前では私の役には立たないだろう」
「あら、言ってくれるわね。愛は私の専門分野なのよ? 私が来なくて誰が来るっていうのよ? 堅物のユリゼンじゃ話にならないいわ」
「私は愛や嫉妬に惑わされない理性的な回答を求めているんだが……」
堅物とか言っているが、ユリゼンはヴェイラの息子に当たる。
ゾアたちの関係性を知れば見えてくることもあるだろう。
エリアスが召喚術暴発させた理由と、ヴェイラが帰れない理由を俺はなんとなく把握した。
多分エリアスは、俺とのことで誰かに恋愛相談に乗って欲しかったんだな。
エリアス、友達らしい友達っていないもんな。知らんけど。
少なくとも俺はエリアスに友達がいる気配を感じたことはない。
エリアスと友達になるのは普通の人間にはちょっと荷が重いだろう。
人外しか選択肢がないとするなら召喚術に頼っても致し方ない。
そしたら、本人曰く愛の象徴ヴェイラが顕現してこの調子だから、エリアスのお気に召さないと。
ヴェイラの男性性であり双子の兄であり夫であるルヴァは「恋人」という意味の名を頂く愛の象徴だが、一方、南の宇宙ユリゼンは「君の理性と限界」という意味の名を頂く理性の象徴だと私塾で教わった。
創世神話では、ユリゼンが実の父であるルヴァを苦しみの炉に放り込み、燃え残った金属から宇宙を作ったと言われている。
それを理性的に淡々と行っていたユリゼンが一番ヤベー奴だし、サイコパス確定だろっていうストーリーだが、この話の教訓は、恋愛とは表裏一体である嫉妬を燃やし尽くして恋愛を理性でコントロールするというところにあるのだ。
サイコパスのユリゼンが出て来なくて良かったけど、実際、ヴェイラを見ているとユリゼンに同情を禁じ得ない。
マジで君の理性が限界きちゃったんだなって思う。
だがまあそんな逸話を持つユリゼンなら、確かにエリアスのお気に召す答えを用意できるだろうが、そもそも理性の象徴が例え勇者といえど人間の召喚に応えてくれるはずもない。
詰んでないかこれ?
「それに私、もっと早く聖者君に紹介して貰いたかったのに、勇者君ったら『ナナセの誕生日まで大人しくしていろ』なんて言うから今日まで出て来られなかったのよ」
「私は『ナナセの誕生日が終わるまでは』と言ったんだが!?」
「あら、そうだったかしら?」
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異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨
📖文庫版(紙の書籍)
📖Kindle(電子書籍)
📖BOOK☆WALKER(電子書籍)
次章続巻も順次刊行予定
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※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
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