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第三章 黎明と黄昏
〇〇四 擬人化の先輩①
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ベッドの天蓋に張り付いてこっちを覗き込んでいた女を、エリアスは「ヴェイラ」だと言った。
お名前をお借りしたとかいう次元ではなくて、創世神話の登場人物本人であると――。
そんな創世神話の登場人物で、本来なら永遠界におわすお方がどうして現象界の俺のベッドの天蓋の上にいたのか訳が分からないし、俄かには信じ難いけどエリアスが言うなら本物なのだろう。
思わぬ大物の登場に、俺は慌ててベッドから降りてエリアスの隣に立った。
魔王のことをグレイだと勘違いしてたことといい俺の早とちりも大概だが、今回のはベッドの天蓋の上から髪の長い女が逆さまにこっちを覗いてたら俺じゃなくても百人が百人とも霊だと思うからセーフだろ。
「この惑星は私の名を冠しているから私が出てきたの」
「もしかしてあなたはこの世界を作った女神様……?」
「あら嬉しい♡ 女神様だなんて♡」
「ナナセ、それは創造神などではない。『ゾア』だ。神族というより、どちらかというと魔女に近い」
「失礼ね! 魔女なんかじゃないわ!」
「意味が分からないんだけど……」
「『ルヴァ』も『ヴェイラ』も神ではない『ゾア』だ。分からなくても、ただそういうものだと思っていればいい」
「う、う~ん?」
イマイチわからない。
神様ではない。
魔女でもない。
エリアスはただの「ゾア」だという。
「ゾア」っていうのは、「北の宇宙ウルソナ」、「南の宇宙ユリゼン」、「東の宇宙ルヴァ」、「西の宇宙サーマス」四つの世界であり、同時に、その創世主たる彼らの総称でもある。
「ゾア」と呼ばれるこの世界の創世主たちは、流出で女性性を生すか、婚姻によって全く別の性質を持った個体を生す。
「ヴェイラ」は「ルヴァ」から流出した存在だが、二人は兄妹であり夫婦でもある。
そういった近親婚は古代文明の神話では珍しくない。
人よりも遥かな太古より存在する彼らに人の常識や倫理観を当てはめることは出来ないだろう。
そもそも生物かどうかも怪しいわけだし、人の形をしていても少なくとも哺乳類ではないわけで、どっちかっていうと脊椎動物よりアメーバやゾウリムシみたいな単細胞生物に近いんじゃないだろうか。
そうなるとミジンコの俺に近い気もする。
といっても特に親近感は湧かないが。
そして目の前にいるこの「ヴェイラ」こそが、この世界そのものがひとつの意識となり、人の姿形をとったもの。
つまり「ヴェイラ」は、世界観の擬人化という認識でいいんだろうか?
フツメンの擬人化である俺にとっては擬人化の先輩にあたるってことなのか?
「ナナセとの対面を果たしてもう気は済んだだろう。だったらとっとと帰ってくれ」
「あらご挨拶ね。折角可愛い聖者君のお誕生日のお祝いに来たのに。『パーティーに呼ばれなかった魔女の呪い』を受けたいの?」
パーティーに呼ばれなかった魔女の呪い!
俺それ知ってる!
マックでJKが言ってた!
アンソロとかアフターとかに誘って貰えなかった腐女子が、魔女化して暴れるやつだろ!
でも、さっき自分で「魔女なんかじゃないわ!」って言ってませんでしたか!?
お名前をお借りしたとかいう次元ではなくて、創世神話の登場人物本人であると――。
そんな創世神話の登場人物で、本来なら永遠界におわすお方がどうして現象界の俺のベッドの天蓋の上にいたのか訳が分からないし、俄かには信じ難いけどエリアスが言うなら本物なのだろう。
思わぬ大物の登場に、俺は慌ててベッドから降りてエリアスの隣に立った。
魔王のことをグレイだと勘違いしてたことといい俺の早とちりも大概だが、今回のはベッドの天蓋の上から髪の長い女が逆さまにこっちを覗いてたら俺じゃなくても百人が百人とも霊だと思うからセーフだろ。
「この惑星は私の名を冠しているから私が出てきたの」
「もしかしてあなたはこの世界を作った女神様……?」
「あら嬉しい♡ 女神様だなんて♡」
「ナナセ、それは創造神などではない。『ゾア』だ。神族というより、どちらかというと魔女に近い」
「失礼ね! 魔女なんかじゃないわ!」
「意味が分からないんだけど……」
「『ルヴァ』も『ヴェイラ』も神ではない『ゾア』だ。分からなくても、ただそういうものだと思っていればいい」
「う、う~ん?」
イマイチわからない。
神様ではない。
魔女でもない。
エリアスはただの「ゾア」だという。
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「ヴェイラ」は「ルヴァ」から流出した存在だが、二人は兄妹であり夫婦でもある。
そういった近親婚は古代文明の神話では珍しくない。
人よりも遥かな太古より存在する彼らに人の常識や倫理観を当てはめることは出来ないだろう。
そもそも生物かどうかも怪しいわけだし、人の形をしていても少なくとも哺乳類ではないわけで、どっちかっていうと脊椎動物よりアメーバやゾウリムシみたいな単細胞生物に近いんじゃないだろうか。
そうなるとミジンコの俺に近い気もする。
といっても特に親近感は湧かないが。
そして目の前にいるこの「ヴェイラ」こそが、この世界そのものがひとつの意識となり、人の姿形をとったもの。
つまり「ヴェイラ」は、世界観の擬人化という認識でいいんだろうか?
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でも、さっき自分で「魔女なんかじゃないわ!」って言ってませんでしたか!?
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異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨
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※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
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