異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが

マハラメリノ

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第三章 黎明と黄昏

〇〇三 この泥棒猫!②

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そこまで考えたところで俺はひとつの可能性に思い至る。
もしかしてこの部屋、エリアスが密会に使ってた?
城や宮殿には、隠し扉や隠し通路、隠し部屋なんてものが無数に存在するのだ。
俺もこの部屋に住むことになったとき、避難口として地下通路へと繋がる隠し扉をエリアスから教えて貰った。
因みに通路の先は王都の外れの墓地に通じているらしいが、歩くと二時間くらい掛かるそうなのでまだ試してみたことはない。
その隠し扉は地下通路側からは開かないようになっているから外から侵入するのは不可能だけど、他にも俺の知らない通路があってもおかしくはないだろう。
俺と同じようにエリアスから別の通路の存在を聞いて知っていたとしたら入り込むのも楽勝に違いなく――。

胸の奥でチクリと刺すような痛みを覚えた刹那、件の女が何を思ってか俺に向かって満面の笑みを浮かべて小さく手を振った。

えっ、そういうノリ!?
エリアスの背後から顔を出したはいいが、虚を突かれて次のリアクションに困る。
どうしよう!?
人間だとしたら挨拶しといたほうがいいのかこれ!?

「……え、えっと、エリーの元カノさん……ですか?」
「違うっ!」
「あらぁ♡」

途端に女が嬉しそうに自分の両頬に手を当て、エリアスから即答の否定が返ってきた。
違うのか?
元カノじゃない?
ほっと安堵する一方で、「この泥棒猫!」みたいなベタな科白で罵られるチャンスを失って、ちょっとがっかりしている俺がいる。

「私は今も昔もこの女とは何の関係もない。不貞を働いたこともないし、疚しいことは何もない。信じてくれ」

だったら説明してくれと思うが、そのつもりはないらしい。
しかしエリアスのこんな必死な姿を見るの初めてってくらいその訴えは必死だった。
俺は不貞とかそういうことを疑ってたわけじゃないんだが、今も昔も関係ないと言い張るエリアスの言に嘘があるようには見えない。
それは女の反応を見ても明らかだ。

「お、おう? 俺は別に浮気を疑ってたわけじゃなくて、ほら、エリーは勇者で救世の英雄だし、格好良いからモテるだろ? なのに俺が独り占めしてるから、知らないうちに知らないところで知らない奴に恨まれててもおかしくないなって思って……」
「それを言うなら、聖者ナナセを独り占めしている私の方が余程恨まれているだろう」
「それはどうかな……」

苦笑いで答えるしかない俺に、エリアスは口を閉じ眉を顰める。

「ナナセ、寝室とはいえ今はその格好はいただけない」

そう言いながらエリアスはさっき自分で脱がせたばかりのバスローブを再び着せ付けて前をきっちり閉じた。
下は隠していたからいいと思ったが、エリアス的にはNGだったらしい。
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異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨


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次章続巻も順次刊行予定
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