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第三章 黎明と黄昏
〇〇一 こんな最高の誕生日②
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何のやり直しかなんてそんなこと分かり切っている。
エリアスは求婚のやり直しをしようとしているんだ。
礼装で片膝をつくエリアスは前にも見た光景だが、前回と違うのは聊か緊張した面持ちのエリアスの手にセルリアンブルーの天鵞絨で出来たリングケースが掲げてられているところだ。
パカッと蓋が開けられたそのリングケースの中には虹色に光るシンプルなデザインの指輪が鎮座している。
それが婚約指輪であることはすぐに分かった。
わざわざ俺の誕生日に合わせて作ってくれてたんだ。
婚約指輪を贈る習慣のないこの異世界では調べて情報収集するだけでも多大な苦労があったことも窺い知れる。
「今日のこの日のために北の宇宙ウルソナの鍛冶術士に造らせたんだ。気に入って貰えるといいのだが……」
そうして、時計の輪が〇時を示す位置に重なるのと同時にエリアスから指輪を贈られ、俺は再度求婚されたのだった。
「二十歳の誕生日おめでとう。ナナセ、私と結婚して欲しい」
……俺多分、今顔真っ赤だと思う。
だって顔が凄く熱い。
こんな最高の誕生日ってあるか?
エリアスが指輪を用意していたことを知らなかったのは勿論、最初の求婚は断ってしまったものの、その後想いが通じ合ってから結婚の意思確認はされたから、再度こんな風に求婚されるなんて思っていなかった俺は当然驚いたけど、返事は「はい」しかあり得ない。
強くて格好良くてエリート貴族なのに事故物件なところも含めて完璧な勇者に求婚されてるってことが俺の人生最大のミステリーなんだが、今は手を伸ばせば届く距離にある幸せを夢中で掴んだ。
それからちょっと照れ臭かったけど、相手に察して貰うことに頼らずちゃんと言葉にして伝えた。
嬉しいって。
愛してるって。
俺もエリアスのことが大好きだって。
一生忘れられない最高の誕生日だって。
自分の口で言った。
俺の返事を聞いたエリアスは、幸せそうに微笑って俺の左手を取ると、薬指に指輪を填めて、そこに唇を押し当てる。
まるで外れることのないように封印でもするかのごとく。
一連の動作はなんだか神聖な儀式のようで、俺は柄にもなく緊張してベッドの上だというのに居住まいを正して思わず正座してしまったけれど、この瞬間、俺たちは間違いなく世界で一番幸せだろう。
婚約指輪を左手の薬指に付けるのは、諸説あるが指の隙間を埋めてそこから幸せが零れ落ちるのを防ぐためだという一説がある。
でもそれだけでは完璧ではなくて、結婚指輪を貰ったら今度はそれを左手の薬指に付けて、婚約指輪は右手の薬指に付け替えるのだ。
だからまだ幸せを半分しか受け止め切れないはずなのだけれど、それでも今の俺には零れ落ちても尚身に余るほどの幸福だった。
エリアスがくれた婚約指輪は、この剣と魔法の世界では珍しいチタン合金製だというのも驚いたが、魔法抵抗も付与されているらしく、表面に特殊な焼き付け加工がしてあって、綺麗な虹色の酸化皮膜が出来ている。
金属表面の酸化皮膜とか実に俺好みの加工で、嬉しさのあまり滅茶苦茶興奮して喋り倒しちまったんだけど、エリアスはそんな話題には興味がないだろうに、相槌を打ちながら俺の話を最後まで聞いてくれて、それだけでもう俺は天にも昇るくらいご機嫌だったのに、それから二人で初めて乾杯をした。
エリアスは求婚のやり直しをしようとしているんだ。
礼装で片膝をつくエリアスは前にも見た光景だが、前回と違うのは聊か緊張した面持ちのエリアスの手にセルリアンブルーの天鵞絨で出来たリングケースが掲げてられているところだ。
パカッと蓋が開けられたそのリングケースの中には虹色に光るシンプルなデザインの指輪が鎮座している。
それが婚約指輪であることはすぐに分かった。
わざわざ俺の誕生日に合わせて作ってくれてたんだ。
婚約指輪を贈る習慣のないこの異世界では調べて情報収集するだけでも多大な苦労があったことも窺い知れる。
「今日のこの日のために北の宇宙ウルソナの鍛冶術士に造らせたんだ。気に入って貰えるといいのだが……」
そうして、時計の輪が〇時を示す位置に重なるのと同時にエリアスから指輪を贈られ、俺は再度求婚されたのだった。
「二十歳の誕生日おめでとう。ナナセ、私と結婚して欲しい」
……俺多分、今顔真っ赤だと思う。
だって顔が凄く熱い。
こんな最高の誕生日ってあるか?
エリアスが指輪を用意していたことを知らなかったのは勿論、最初の求婚は断ってしまったものの、その後想いが通じ合ってから結婚の意思確認はされたから、再度こんな風に求婚されるなんて思っていなかった俺は当然驚いたけど、返事は「はい」しかあり得ない。
強くて格好良くてエリート貴族なのに事故物件なところも含めて完璧な勇者に求婚されてるってことが俺の人生最大のミステリーなんだが、今は手を伸ばせば届く距離にある幸せを夢中で掴んだ。
それからちょっと照れ臭かったけど、相手に察して貰うことに頼らずちゃんと言葉にして伝えた。
嬉しいって。
愛してるって。
俺もエリアスのことが大好きだって。
一生忘れられない最高の誕生日だって。
自分の口で言った。
俺の返事を聞いたエリアスは、幸せそうに微笑って俺の左手を取ると、薬指に指輪を填めて、そこに唇を押し当てる。
まるで外れることのないように封印でもするかのごとく。
一連の動作はなんだか神聖な儀式のようで、俺は柄にもなく緊張してベッドの上だというのに居住まいを正して思わず正座してしまったけれど、この瞬間、俺たちは間違いなく世界で一番幸せだろう。
婚約指輪を左手の薬指に付けるのは、諸説あるが指の隙間を埋めてそこから幸せが零れ落ちるのを防ぐためだという一説がある。
でもそれだけでは完璧ではなくて、結婚指輪を貰ったら今度はそれを左手の薬指に付けて、婚約指輪は右手の薬指に付け替えるのだ。
だからまだ幸せを半分しか受け止め切れないはずなのだけれど、それでも今の俺には零れ落ちても尚身に余るほどの幸福だった。
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異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨
📖文庫版(紙の書籍)
📖Kindle(電子書籍)
📖BOOK☆WALKER(電子書籍)
次章続巻も順次刊行予定
OLOLON
※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
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