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第三章 黎明と黄昏
〇〇一 こんな最高の誕生日①
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七月七日――何を隠そう今日は俺の二十歳の誕生日だ。
前日の夕方に救護院で治癒をした後、早めの夕食を食べて、真夜中近くまでエリアスとセックスして過ごした。
これは闇魔法の贄を捧げるためのセックスであって俺にとっては通常業務の一環だ。悪く思うな。
そんで、いつも通り一緒に風呂に入ってバスローブを羽織り、火照った身体でベッドへダイブすると、エリアスが「準備してくるから少し待っていてくれ」と言い残して寝室を出て行ってしまう。
そこで俺は暖炉のマントルピースの上に置かれた時計にちらりと目を遣った。
この世界の時計には針がなく、金属製の輪を幾本も球状に組み合わせた天球儀のような形をしていて、時間を知らせるだけでなく月齢やカレンダーの役割まで一度に果たす。
時刻を示す輪が〇時を示す位置に重なるまで幾許かの猶予があった。
何しに行くのかなんて無粋なことは訊かないぜ。
だって、あともう少しで日付が変わる。
そしたら俺の誕生日だ。
エリアスは結構前からあからさまにソワソワしてたし、俺の従僕のヒューと陰でコソコソしている風だったから、きっと何かサプライズを用意しているに違いない。
俺は幸せな気分でベッドに寝転んでワクテカしながらエリアスが戻るのを待った。
「すまない。待たせてしまったな」
そう言って現れたエリアスは、なんと白騎士隊の礼装フル装備という出で立ちで俺は完全に意表を突かれる。
しかも、いつぞやの祝勝祭の前日にリハーサルを抜け出してきたエリアスに初めて求婚されたとき着ていた礼装とも、獣人領の舞踏会のとき着ていた礼装とも違う。初めて見るデザインのやつだ。
礼装だけで何着あるんだよって思うが、貴族ってのは最低でも一日三回は着替えるし、酷いときには一日に五回も六回も着替えるから実際どんだけ持ってても困らない。
それにこういった騎士団の制服は、エリアスのような貴族の隊員になると支給された物には袖を通さず自分で贔屓の仕立て屋にオーダーするので、大抵仕立て屋独自のアレンジが付け加えられているのが常だ。
平隊員の制服のデザインが大幅に違ってしまうのは困るが、隊長のエリアスに限っては一目でそれと分かるように元々一人だけデザインが違うので揺れ幅が広くても構わないだろうし、エリアスは見栄えがするから仕立て屋も相当張り切ったに違いない。
つまり何が言いたいかって言うと、礼装姿のエリアスは滅茶苦茶格好良かったのだ。
俺が言葉を失ってベッドの上で飛び起きた姿勢のまま見惚れていると、エリアスは優雅な足取りでベッドの脇まで来て洗練された所作でペリースを肩の上に捲り上げその場に片膝をつく。
「今更かも知れないが、やり直しをさせて貰えないだろうか」
前日の夕方に救護院で治癒をした後、早めの夕食を食べて、真夜中近くまでエリアスとセックスして過ごした。
これは闇魔法の贄を捧げるためのセックスであって俺にとっては通常業務の一環だ。悪く思うな。
そんで、いつも通り一緒に風呂に入ってバスローブを羽織り、火照った身体でベッドへダイブすると、エリアスが「準備してくるから少し待っていてくれ」と言い残して寝室を出て行ってしまう。
そこで俺は暖炉のマントルピースの上に置かれた時計にちらりと目を遣った。
この世界の時計には針がなく、金属製の輪を幾本も球状に組み合わせた天球儀のような形をしていて、時間を知らせるだけでなく月齢やカレンダーの役割まで一度に果たす。
時刻を示す輪が〇時を示す位置に重なるまで幾許かの猶予があった。
何しに行くのかなんて無粋なことは訊かないぜ。
だって、あともう少しで日付が変わる。
そしたら俺の誕生日だ。
エリアスは結構前からあからさまにソワソワしてたし、俺の従僕のヒューと陰でコソコソしている風だったから、きっと何かサプライズを用意しているに違いない。
俺は幸せな気分でベッドに寝転んでワクテカしながらエリアスが戻るのを待った。
「すまない。待たせてしまったな」
そう言って現れたエリアスは、なんと白騎士隊の礼装フル装備という出で立ちで俺は完全に意表を突かれる。
しかも、いつぞやの祝勝祭の前日にリハーサルを抜け出してきたエリアスに初めて求婚されたとき着ていた礼装とも、獣人領の舞踏会のとき着ていた礼装とも違う。初めて見るデザインのやつだ。
礼装だけで何着あるんだよって思うが、貴族ってのは最低でも一日三回は着替えるし、酷いときには一日に五回も六回も着替えるから実際どんだけ持ってても困らない。
それにこういった騎士団の制服は、エリアスのような貴族の隊員になると支給された物には袖を通さず自分で贔屓の仕立て屋にオーダーするので、大抵仕立て屋独自のアレンジが付け加えられているのが常だ。
平隊員の制服のデザインが大幅に違ってしまうのは困るが、隊長のエリアスに限っては一目でそれと分かるように元々一人だけデザインが違うので揺れ幅が広くても構わないだろうし、エリアスは見栄えがするから仕立て屋も相当張り切ったに違いない。
つまり何が言いたいかって言うと、礼装姿のエリアスは滅茶苦茶格好良かったのだ。
俺が言葉を失ってベッドの上で飛び起きた姿勢のまま見惚れていると、エリアスは優雅な足取りでベッドの脇まで来て洗練された所作でペリースを肩の上に捲り上げその場に片膝をつく。
「今更かも知れないが、やり直しをさせて貰えないだろうか」
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