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第一章 聖者降臨
〇三八 四年待って欲しい①
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長い夜だった。
俺の意識がはっきりしてきたのは夜も白々と明けようとする頃で、丸くて大きな窓から見える朝焼けの空にひとつ、一等星が輝いていた。
金星に見えるけど、あれは金星じゃない。
だってここは異世界だから。
「気が付いたか?」
頭上から声が降ってきて我に返る。
身動ぎすると水音がして、自分が風呂の中でエリアスに後ろから抱き締められる格好で湯に浸かっていることに気付いた。
エリアスは湯に浸かる習慣はなかったみたいだけど、俺がよくしてるから付き合いでするようになっていたのだ。
例の発情した感じは残ってないし、俺が朦朧としている間に贄は捧げ終わったらしい。
状況が分かって、ハァ~ッと息を吐いて身体の力を抜いて上を向くと、額に口付けが降ってくる。
すぐに離れていった唇が惜しくて、伸び上がってすりすりと頬擦りするとエリアスが喉の奥で笑う気配がした。
それから湯舟の中で暫くお互いの身体を触り合ったりキスしたりしてイチャイチャしていると、エリアスが俺の頭に顎を乗せてぐりぐりと旋毛を押しながら控えめに口を開く。
「その……確認なんだが、ナナセは私と結婚してくれると思っていいのか?」
あー、俺、考えて返事をするって言ったのに、いっぱいちゅき♡って気持ちが溢れて求婚の返事をするのすっかり頭から抜け落ちていた。
俺はこれからも治癒することを選んだ。
治癒の代償としてエリアスの子種を必要とする俺にとって、それは即ち、この世界でこれからもずっとエリアスと供に生きていくということと同義語だ。
エリアスの言う通り、それが自分なんだと認めたら本当に楽になった。
だから、そのための覚悟は出来ている。
俺はエリアスの不安を払拭するように力強く即答してやる。
「うん、する! 俺、エリーと結婚する! したい!」
「そ、そうか……! うん、そうか!」
エリアスはパァァァッと顔を綻ばせて俺の肩口に顔を埋めると、後ろからぎゅっと抱き締めて来たので、ぽんぽんと頭を撫でておいた。
エリアスって俺のことホント好きだよな。
そこだけが未だにミステリーだ。
「ナナセが帰郷するとき、出来れば私も一緒に行ってナナセのご両親にご挨拶をしたいんだが、アルビオンではルヴァの存在が認知されていないと聞くし、言語の問題もあるから難しいだろうか?」
それな。
そうなのだ。ルヴァではアルビオンという異世界の存在が広く周知されているが、アルビオン側はそうではない。
エリアスはアルビオンに戸籍もなければパスポートも何もないわけだし、転移門でイギリスまで行けたとしても飛行機にも乗れないだろう。
しかしそれも、夜会で紹介して貰う予定の商人がどの程度の力があるかによって難易度が大幅に変わってくる。
向こうで商売出来ているわけだから何か抜け道があって、例えば外交特権とか自家用ジェットを持ってるレベルだったら全てを飛び越えて大体のことが可能になるだろう。
だが、その件については今ここで自分ひとりで悶々とアレコレ考えていても机上の空論でしかないので夜会まで保留だ。
それよりも今はもっと根本的な問題についてエリアスに話しておかなければならない。
「そのことなんだけどさ、実は俺まだ学生なんだよ。大学――って言ってアルビオンの最終学府なんだけど、そこをちゃんと卒業して心置きなくこっちに来たいんだ」
俺の意識がはっきりしてきたのは夜も白々と明けようとする頃で、丸くて大きな窓から見える朝焼けの空にひとつ、一等星が輝いていた。
金星に見えるけど、あれは金星じゃない。
だってここは異世界だから。
「気が付いたか?」
頭上から声が降ってきて我に返る。
身動ぎすると水音がして、自分が風呂の中でエリアスに後ろから抱き締められる格好で湯に浸かっていることに気付いた。
エリアスは湯に浸かる習慣はなかったみたいだけど、俺がよくしてるから付き合いでするようになっていたのだ。
例の発情した感じは残ってないし、俺が朦朧としている間に贄は捧げ終わったらしい。
状況が分かって、ハァ~ッと息を吐いて身体の力を抜いて上を向くと、額に口付けが降ってくる。
すぐに離れていった唇が惜しくて、伸び上がってすりすりと頬擦りするとエリアスが喉の奥で笑う気配がした。
それから湯舟の中で暫くお互いの身体を触り合ったりキスしたりしてイチャイチャしていると、エリアスが俺の頭に顎を乗せてぐりぐりと旋毛を押しながら控えめに口を開く。
「その……確認なんだが、ナナセは私と結婚してくれると思っていいのか?」
あー、俺、考えて返事をするって言ったのに、いっぱいちゅき♡って気持ちが溢れて求婚の返事をするのすっかり頭から抜け落ちていた。
俺はこれからも治癒することを選んだ。
治癒の代償としてエリアスの子種を必要とする俺にとって、それは即ち、この世界でこれからもずっとエリアスと供に生きていくということと同義語だ。
エリアスの言う通り、それが自分なんだと認めたら本当に楽になった。
だから、そのための覚悟は出来ている。
俺はエリアスの不安を払拭するように力強く即答してやる。
「うん、する! 俺、エリーと結婚する! したい!」
「そ、そうか……! うん、そうか!」
エリアスはパァァァッと顔を綻ばせて俺の肩口に顔を埋めると、後ろからぎゅっと抱き締めて来たので、ぽんぽんと頭を撫でておいた。
エリアスって俺のことホント好きだよな。
そこだけが未だにミステリーだ。
「ナナセが帰郷するとき、出来れば私も一緒に行ってナナセのご両親にご挨拶をしたいんだが、アルビオンではルヴァの存在が認知されていないと聞くし、言語の問題もあるから難しいだろうか?」
それな。
そうなのだ。ルヴァではアルビオンという異世界の存在が広く周知されているが、アルビオン側はそうではない。
エリアスはアルビオンに戸籍もなければパスポートも何もないわけだし、転移門でイギリスまで行けたとしても飛行機にも乗れないだろう。
しかしそれも、夜会で紹介して貰う予定の商人がどの程度の力があるかによって難易度が大幅に変わってくる。
向こうで商売出来ているわけだから何か抜け道があって、例えば外交特権とか自家用ジェットを持ってるレベルだったら全てを飛び越えて大体のことが可能になるだろう。
だが、その件については今ここで自分ひとりで悶々とアレコレ考えていても机上の空論でしかないので夜会まで保留だ。
それよりも今はもっと根本的な問題についてエリアスに話しておかなければならない。
「そのことなんだけどさ、実は俺まだ学生なんだよ。大学――って言ってアルビオンの最終学府なんだけど、そこをちゃんと卒業して心置きなくこっちに来たいんだ」
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異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨
📖文庫版(紙の書籍)
📖Kindle(電子書籍)
📖BOOK☆WALKER(電子書籍)
次章続巻も順次刊行予定
OLOLON
※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
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