異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが

マハラメリノ

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第二章 魔王復活

〇一六 真・お清めセックスは若干延期された②

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久々に顔を出した救護院では、後ろにベールが付いたクロブークに似た筒状の帽子を被り、両脇を縫い合わせないエプロンっぽい用途を果たしているスカプラリオ風の俺と同じような治癒術士の装束に身を包んだ年齢不詳の女性の院長が出迎えてくれる。

「まあ! 聖者様! ようこそいらっしゃいました。もうお加減は宜しいのですか?」
「はい。お陰様でもうすっかり。なかなか顔を出せなくて申し訳ありませんでした」

具合が悪くて来られなかった訳じゃないので、居た堪れなさに俺が頭を下げると、院長は困ったように苦笑した。

「とんでもありません。あんなことがあった後ですから、また聖者様がこちらにおいでになるのは、もう何か月か先になると思っていました」

院長は目を潤ませてエリアスに向き直る。

「勇者様、よくぞ聖者様を救出してくださいました。感謝いたします」

エリアスはそれに対して目礼を返すだけに留めた。

「なにしろ、このヴェイラに三十年ぶりの聖者様ご降臨ですからね。以前の聖女様のようにまた失うようなことになったら……」
「前にも俺みたいな人がいたんですか?」
「ええ。流石にナナセ様ほどの圧倒的な治癒力はお持ちではありませんでしたが、前の聖女様もやはりアルビオンの方だったんですよ」

そんな話、初めて聞いた。
ちらりと隣を見れば、エリアスも知らないようだ。

「ご存じないのも無理はありませんわ。お二人がお生まれになる前のことですもの。それに聖女様を失うなんてヴェイラの醜聞ですからね。秘匿されているわけではないですが、喧伝もされていないんです」
「聖女を失うって、その人、亡くなったんですか?」
「いいえ、無事にアルビオンに帰られました」
「え?」

でも失ったって言わなかったか?
どういうことだ?

「前の聖女様は、神殿が独断で行った召喚術で突然こちらへ連れて来られてしまったんです。当時はまだ治癒術は神殿の管轄でしたから。神殿は聖女様を担ぎ上げて色々と画策していたようですけど、当の聖女様がアルビオンへ帰りたがっていることが露呈して、神殿の地位は一気に失墜し、治癒術士を統括する権限を剥奪されました。それを機に新たに設立されたのが、この救護院なんですよ」
「なるほど。だから獣人領では治癒術士は神殿にいて、ヴェイラの治癒術士は救護院にいるんですね」
「そういうことです。他国では今も昔も治癒術は神殿の管轄ですが、ヴェイラだけは救護院の管轄なんです」

以前、獣人領で治癒したときは治癒術士がいるのは神殿だったから、なんで救護院じゃなくて神殿なんだろうって思ったけど、そんな歴史があったんだな。
でもまあ、聖女様が無事に元の世界へ戻れたならよかった。

――なんて、呑気に考えていた俺が、その三十年前の聖女様っていうのが実は自分の母親だったと知るのは、もう少し先のことになる。
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異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨


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次章続巻も順次刊行予定
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