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第二章 魔王復活
〇一三 「フツメンの擬人化」② ※エリアス視点
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「ヒジリの記憶を失っても、この気持ちだけは失わなかったのは、恐らく私の愛が魔王の呪いよりも勝っていたからだろう。まさしく愛の勝利だな」
この愛を疑われることのないよう、確信を持ってそう言うと、ナナセは何故か私の頭を撫でてきた。
その行動の意味は分からないが、私の頭を撫でるナナセの手は限りなく優しくてなんとも心地良い。
何時しか私はナナセの膝枕で愛撫を受けていた。
言葉もなく、直接的な性交渉をしているわけでもない。
けれど、このまま時が止まってしまえばいいのにと思うほど、穏やかで甘く幸せな時間が続いた。
従僕のエミールが食事を持って邪魔に入ってくるまでは。
この日は、ナナセの好物だという海老をメインにしたメニューだったので、ナナセはエミールの持ってきた銀のトレーの上を見て目を輝かせた。
どうやら私にとって最強のライバルは海老らしい。
私はちょっとむきになって、ベッドの上でナナセを背後から抱き締める格好で座った。
「どれから食べたい?」
「これ!」
ナナセが真っ先に指さしたのは、涼やかな硝子の器に品よく盛られた海老のマリネだ。
私は器を手に取ると、受け取るために差し出されたナナセの手を敢えて無視し、海老をフォークに刺してナナセの口元へ持ってゆく。
僅かに逡巡した後、開かれた口に海老を入れる。
たったそれだけだというのに、なんと倒錯的な行為だろう。
いっそ、こうして何をするにもとことん甘やかして、私なしでは生きて行けないくらいになればいい。
そう思った矢先、ナナセもフォークを取り、同じように海老を刺して私の口元へ持ってくる。
私にも食べさせてくれるのだろうか。
しかし、海老は全部ナナセが食べればいいと思っていたので躊躇っていると、咀嚼して飲み込み終わったナナセが口を開けろと急かす。
「あーん、だ。ほら、エリー、あーん」
戸惑いながらも口を開けると、海老が放り込まれる。
今まで私が食べていたのは何だったのだというくらい旨い海老だった。
なるほどこれならナナセが夢中になるのも分かるが、私の場合はナナセが手ずから食べさせてくれたからだろう。
「……旨いな」
思わず零れた感想に、ナナセは満足そうに頷く。
「だろ? 海老だからな!」
その後も互いに食べさせ合って、ナナセをとことん甘やかすはずが、気付けば甘やかされていたのは私の方だった。
きっと、ナナセなしで生きて行けないのは私の方なのだ。
今このときも、頭痛が治まっているのはナナセのお陰だろう。
「……」
「エリー? どうかしたか?」
背後から抱き締めながらナナセの肩に顔を埋めた私に、ナナセは不思議そうに訊き返してくる。
「いや、実は呪いを掛けられてから酷い頭痛に苛まれていたんだが、こうしてヒジリに触れている間だけは不思議と治まっている」
「なんだよそれ!? そういうことはもっと早く言えよ! 治癒……は効かなかったのか。ええと、じゃあ俺がずっと触れていればいいんだな?」
「ヒジリはそれでいいのか?」
「今までも、ずっと一緒に行動してたんだから変わんねーよ。触れる場所はどこでもいいのか?」
「ああ、恐らく」
「手を繋いでみるか?」
ナナセは一旦身体を離すと、私の手を取って指を絡めて手を繋いだ。
「これでどうだ?」
「痛くない」
「ホントか?」
「ああ」
その日は繋いだ手を離さずにいた。
この愛を疑われることのないよう、確信を持ってそう言うと、ナナセは何故か私の頭を撫でてきた。
その行動の意味は分からないが、私の頭を撫でるナナセの手は限りなく優しくてなんとも心地良い。
何時しか私はナナセの膝枕で愛撫を受けていた。
言葉もなく、直接的な性交渉をしているわけでもない。
けれど、このまま時が止まってしまえばいいのにと思うほど、穏やかで甘く幸せな時間が続いた。
従僕のエミールが食事を持って邪魔に入ってくるまでは。
この日は、ナナセの好物だという海老をメインにしたメニューだったので、ナナセはエミールの持ってきた銀のトレーの上を見て目を輝かせた。
どうやら私にとって最強のライバルは海老らしい。
私はちょっとむきになって、ベッドの上でナナセを背後から抱き締める格好で座った。
「どれから食べたい?」
「これ!」
ナナセが真っ先に指さしたのは、涼やかな硝子の器に品よく盛られた海老のマリネだ。
私は器を手に取ると、受け取るために差し出されたナナセの手を敢えて無視し、海老をフォークに刺してナナセの口元へ持ってゆく。
僅かに逡巡した後、開かれた口に海老を入れる。
たったそれだけだというのに、なんと倒錯的な行為だろう。
いっそ、こうして何をするにもとことん甘やかして、私なしでは生きて行けないくらいになればいい。
そう思った矢先、ナナセもフォークを取り、同じように海老を刺して私の口元へ持ってくる。
私にも食べさせてくれるのだろうか。
しかし、海老は全部ナナセが食べればいいと思っていたので躊躇っていると、咀嚼して飲み込み終わったナナセが口を開けろと急かす。
「あーん、だ。ほら、エリー、あーん」
戸惑いながらも口を開けると、海老が放り込まれる。
今まで私が食べていたのは何だったのだというくらい旨い海老だった。
なるほどこれならナナセが夢中になるのも分かるが、私の場合はナナセが手ずから食べさせてくれたからだろう。
「……旨いな」
思わず零れた感想に、ナナセは満足そうに頷く。
「だろ? 海老だからな!」
その後も互いに食べさせ合って、ナナセをとことん甘やかすはずが、気付けば甘やかされていたのは私の方だった。
きっと、ナナセなしで生きて行けないのは私の方なのだ。
今このときも、頭痛が治まっているのはナナセのお陰だろう。
「……」
「エリー? どうかしたか?」
背後から抱き締めながらナナセの肩に顔を埋めた私に、ナナセは不思議そうに訊き返してくる。
「いや、実は呪いを掛けられてから酷い頭痛に苛まれていたんだが、こうしてヒジリに触れている間だけは不思議と治まっている」
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