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第二章 魔王復活
〇一一 「俺のフラグ折れてるぞ」② ※エリアス視点
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特定の誰かひとりの記憶だけを失うなど俄かには信じ難いが、ナナセと隊員たちが私に対して嘘を吐いたり騙したりするような動機も利点もないので、真実なのだろう。
ついでに、私はナナセの名前を呼べなくなっていたことも発覚した。
こうして頭の中でなら呼べるのだ。
だが、どうしても口に出して発音できない。
その名だけが言えないのだ。
これは正しく呪いに違いなかった。
名前を呼べず、ナナセを「君」と呼ぶ度に少しの困惑と落胆したような表情が胸に焼き付く。
そんな顔をさせたいわけじゃない。
また、頭が割れるように痛んだ。
これまで、私が恋愛に積極的だったことはなく、交際を申し込むのも別れを切り出すのも相手からという付き合いしかしたことがない。
皆、私に勝手に期待して、勝手に失望して、勝手に去っていくのだ。
私は他者に共感することが出来ないから、そのせいだろうとは思うが、大体の事情を知る副隊長のヒルデブラントからは「事故物件」という有難くない二つ名まで付けられた。私は認めてはいないが。
勿論、私も好きでそういった評価を受けているわけではない。
私だって人並みの幸福を望む。
そして、呪いを受ける前の私は、自分を幸せにしてくれる相手をちゃんと見つけていたようだ。
思い過ごしや自惚れでなければ、私はナナセに愛されている。
一切のナナセの記憶を失っていて、名前も呼べないというのは口惜しいが、それでも私にこんな美しい婚約者がいたという事実は今の私にとって僥倖でしかなかった。
まるで、頭の中が花畑になったような気分だ。
私たちは形ばかりの婚約者というわけではなく、相当に親密な間柄だったことがナナセの態度や仕草から伺える。
瓦礫や硝子の破片の散らばる城内でナナセを裸足のまま船まで歩かせるわけにはいかないので、抱きかかえることを提案したときも、私のタイミングに合わせてすんなりと首の後ろに腕を回してきて、膝裏を掬われるのも危なげなかった。
ナナセは、こうして私に抱きかかえられて移動することに慣れているようだ。
私の性格を誰よりもよく知っているはずの私から見ても、正気を疑うような執心振りだと思う。
呪われる前の私が、何をどうやったらナナセのような相手を捕まえることが出来たのかは謎だが、よくぞやってくれたと過去の自分自身を誉め讃えたい。
更に自分を誉め讃えたい案件がもう一つ。
全裸にマントという出で立ちで救出されたナナセに、そんなこともあろうかと過去の私が用意してきていたのは私自身の服だった。
しかも丈の都合だろうか、上に着るものだけで、靴さえないという偏り具合だ。
最初は私も、どうせならナナセの服を用意しておけばよいものをと思い、これには我ながら何を考えているのか図りかねていたのだが、着替えてきたナナセを見てその意図を把握した。
靴など不要、移動するときは私が抱きかかえればいいし、ブラウスの裾から覗く艶めかしい太腿や生足も素晴らしい。
当人は不満そうだが、サイズの大きい私の服を着ているナナセは「私のもの」という感じがして非常に良い。よくやった、私。
このことから予想するに、どうやら私はナナセに関することには、相当な切れ者だったようだ。
だというのに、どうして肝心のナナセ本人のことを忘れてしまったのか。
頭が痛い――。
ついでに、私はナナセの名前を呼べなくなっていたことも発覚した。
こうして頭の中でなら呼べるのだ。
だが、どうしても口に出して発音できない。
その名だけが言えないのだ。
これは正しく呪いに違いなかった。
名前を呼べず、ナナセを「君」と呼ぶ度に少しの困惑と落胆したような表情が胸に焼き付く。
そんな顔をさせたいわけじゃない。
また、頭が割れるように痛んだ。
これまで、私が恋愛に積極的だったことはなく、交際を申し込むのも別れを切り出すのも相手からという付き合いしかしたことがない。
皆、私に勝手に期待して、勝手に失望して、勝手に去っていくのだ。
私は他者に共感することが出来ないから、そのせいだろうとは思うが、大体の事情を知る副隊長のヒルデブラントからは「事故物件」という有難くない二つ名まで付けられた。私は認めてはいないが。
勿論、私も好きでそういった評価を受けているわけではない。
私だって人並みの幸福を望む。
そして、呪いを受ける前の私は、自分を幸せにしてくれる相手をちゃんと見つけていたようだ。
思い過ごしや自惚れでなければ、私はナナセに愛されている。
一切のナナセの記憶を失っていて、名前も呼べないというのは口惜しいが、それでも私にこんな美しい婚約者がいたという事実は今の私にとって僥倖でしかなかった。
まるで、頭の中が花畑になったような気分だ。
私たちは形ばかりの婚約者というわけではなく、相当に親密な間柄だったことがナナセの態度や仕草から伺える。
瓦礫や硝子の破片の散らばる城内でナナセを裸足のまま船まで歩かせるわけにはいかないので、抱きかかえることを提案したときも、私のタイミングに合わせてすんなりと首の後ろに腕を回してきて、膝裏を掬われるのも危なげなかった。
ナナセは、こうして私に抱きかかえられて移動することに慣れているようだ。
私の性格を誰よりもよく知っているはずの私から見ても、正気を疑うような執心振りだと思う。
呪われる前の私が、何をどうやったらナナセのような相手を捕まえることが出来たのかは謎だが、よくぞやってくれたと過去の自分自身を誉め讃えたい。
更に自分を誉め讃えたい案件がもう一つ。
全裸にマントという出で立ちで救出されたナナセに、そんなこともあろうかと過去の私が用意してきていたのは私自身の服だった。
しかも丈の都合だろうか、上に着るものだけで、靴さえないという偏り具合だ。
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頭が痛い――。
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