94 / 266
第二章 魔王復活
〇一〇 グレイ②
しおりを挟む
事後処理は他の連隊に任せ、白騎士隊だけ一足先に帰投するべく乗り込んだ帰りの船では、出動時にも作戦会議で使った円形の部屋で緊急対策会議が行われた。
貸して貰ったエリアスの服に着替えた俺は、エリアスのブラウスを一枚着た上にエリアスのフロックを羽織った姿で出席しているので若干浮いている。
それらは、こんなこともあろうかと持ってきてくれていたものらしいのだが、エリアスが用意したのはなんとエリアスの服だったのだ。
しかも上に着るものだけしかないという偏り方だ。
まあ、脚の長さが違うのでエリアスのパンツ類を用意されても惨めな思いをするのは俺なんだが、問題はそこじゃない。
そこまで予想していたのなら、最初から俺の服を持ってきてくれ!
その上、攫われてから俺はずっと裸足だったので救出後もエリアスに抱きかかえられての移動だったんが、当然エリアスは靴も持ってきていないので船の中でも抱っこ移動だったのが更に解せぬ。
時々思うが、エリアスって実は馬鹿なんじゃないか?
なんでこう要所要所でポンコツ化するんだよ。
だがしかし、その件については俺のことを覚えていないらしい今のエリアスを責めるわけにもいかない。
船内で簡単な事情聴取を行った結果、やはりエリアスは、魔王に呪いを掛けられて俺の記憶だけ綺麗さっぱり失っていたのだ。
「ふむ。それではこちらの聖者様が私の婚約者というのは、全世界が知る事実ということで間違いないのか?」
エリアスの事実確認に対して、船に乗り合わせていた全員が間違いないと保証した。
最初に婚約者だと聞かされたとき、エリアスは相当驚いたようで、「えっ」という顔をした後、俺の股間の辺りをチラ見していたのを俺は見逃さなかったぞ。
すぐに他の隊員に「聖者様はこう見えて十九歳だから安心してください」と言われて、あからさまにホッとしていたが、やっぱりあのとき見たんだな。
魔王城で恥ずかしそうに俺のマントの合わせを掻き寄せていたあのときだ。
エリアスは見てしまったんだな。
俺の剃毛されてつるっつるの股間を。
それでまだ下の毛も生え揃っていないガキだと思っていたんだろう。
俺の記憶を失う前のエリアスも、ガキに手を出すような変態じゃないから、そこは安心してくれていい。
それはさておき、エリアスに掛けられた呪いは、今のところ俺に関する一切の記憶を失ったということだけで、一見して命に関わるような支障はないようだ。
とはいえ、これからどんな弊害が出てくるか分からないため、放っておくことも出来ない。
呪いの治癒というのは経験がないが、俺が治せるかも知れないからやってみようと言うと、隊員たちに「移動中はやめましょう!?」「治癒を試すのは戻ってからで!」「そうです、陛下に報告が終わって隊舎に戻ってからで!」「なんなら夜になってからで!」と口々に止められた。
この執拗な止め方は、治癒の後、毎回セックスしてるのやっぱり絶対にバレてる……。
「それなのに私は魔王に呪いを掛けられて、選りに選って聖者様の記憶だけ失ってしまったと……」
「その、聖者様ってのやめてくれないか。俺、自分からそう名乗ったことないし。出来れば『ナナセ』で頼む」
そうして、ここで新たな事実が発覚することになる。
「……」
刹那、エリアスは口を開いたまま驚愕の表情で固まった。
それからエリアスは何度か俺の名前を呼ぼうとして口を開いたり閉じたりしたが、肝心の名前が出てこない。
「待ってくれ。何かおかしい。何故か、君の名を呼べない」
――エリアスは俺の記憶を失うのと同時に、俺の名前を口にすることが出来なくなっていたのだ。
貸して貰ったエリアスの服に着替えた俺は、エリアスのブラウスを一枚着た上にエリアスのフロックを羽織った姿で出席しているので若干浮いている。
それらは、こんなこともあろうかと持ってきてくれていたものらしいのだが、エリアスが用意したのはなんとエリアスの服だったのだ。
しかも上に着るものだけしかないという偏り方だ。
まあ、脚の長さが違うのでエリアスのパンツ類を用意されても惨めな思いをするのは俺なんだが、問題はそこじゃない。
そこまで予想していたのなら、最初から俺の服を持ってきてくれ!
その上、攫われてから俺はずっと裸足だったので救出後もエリアスに抱きかかえられての移動だったんが、当然エリアスは靴も持ってきていないので船の中でも抱っこ移動だったのが更に解せぬ。
時々思うが、エリアスって実は馬鹿なんじゃないか?
なんでこう要所要所でポンコツ化するんだよ。
だがしかし、その件については俺のことを覚えていないらしい今のエリアスを責めるわけにもいかない。
船内で簡単な事情聴取を行った結果、やはりエリアスは、魔王に呪いを掛けられて俺の記憶だけ綺麗さっぱり失っていたのだ。
「ふむ。それではこちらの聖者様が私の婚約者というのは、全世界が知る事実ということで間違いないのか?」
エリアスの事実確認に対して、船に乗り合わせていた全員が間違いないと保証した。
最初に婚約者だと聞かされたとき、エリアスは相当驚いたようで、「えっ」という顔をした後、俺の股間の辺りをチラ見していたのを俺は見逃さなかったぞ。
すぐに他の隊員に「聖者様はこう見えて十九歳だから安心してください」と言われて、あからさまにホッとしていたが、やっぱりあのとき見たんだな。
魔王城で恥ずかしそうに俺のマントの合わせを掻き寄せていたあのときだ。
エリアスは見てしまったんだな。
俺の剃毛されてつるっつるの股間を。
それでまだ下の毛も生え揃っていないガキだと思っていたんだろう。
俺の記憶を失う前のエリアスも、ガキに手を出すような変態じゃないから、そこは安心してくれていい。
それはさておき、エリアスに掛けられた呪いは、今のところ俺に関する一切の記憶を失ったということだけで、一見して命に関わるような支障はないようだ。
とはいえ、これからどんな弊害が出てくるか分からないため、放っておくことも出来ない。
呪いの治癒というのは経験がないが、俺が治せるかも知れないからやってみようと言うと、隊員たちに「移動中はやめましょう!?」「治癒を試すのは戻ってからで!」「そうです、陛下に報告が終わって隊舎に戻ってからで!」「なんなら夜になってからで!」と口々に止められた。
この執拗な止め方は、治癒の後、毎回セックスしてるのやっぱり絶対にバレてる……。
「それなのに私は魔王に呪いを掛けられて、選りに選って聖者様の記憶だけ失ってしまったと……」
「その、聖者様ってのやめてくれないか。俺、自分からそう名乗ったことないし。出来れば『ナナセ』で頼む」
そうして、ここで新たな事実が発覚することになる。
「……」
刹那、エリアスは口を開いたまま驚愕の表情で固まった。
それからエリアスは何度か俺の名前を呼ぼうとして口を開いたり閉じたりしたが、肝心の名前が出てこない。
「待ってくれ。何かおかしい。何故か、君の名を呼べない」
――エリアスは俺の記憶を失うのと同時に、俺の名前を口にすることが出来なくなっていたのだ。
0
異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨
📖文庫版(紙の書籍)
📖Kindle(電子書籍)
📖BOOK☆WALKER(電子書籍)
次章続巻も順次刊行予定
OLOLON
※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
第一章 聖者降臨
📖文庫版(紙の書籍)
📖Kindle(電子書籍)
📖BOOK☆WALKER(電子書籍)
次章続巻も順次刊行予定
OLOLON
※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
お気に入りに追加
1,326
あなたにおすすめの小説


身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)



神官、触手育成の神託を受ける
彩月野生
BL
神官ルネリクスはある時、神託を受け、密かに触手と交わり快楽を貪るようになるが、傭兵上がりの屈強な将軍アロルフに見つかり、弱味を握られてしまい、彼と肉体関係を持つようになり、苦悩と悦楽の日々を過ごすようになる。
(誤字脱字報告不要)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる