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第二章 魔王復活
〇〇九 ナナセ②
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肺の中の空気が押し出され、一瞬呼吸が止まる。
その感覚には覚えがあった。
一度目は、獣人領で治癒を施した帰り、白騎士隊の隊員たちとのじゃれ合いの中で。
二度目は、俺が隊員になって初めての出動で、船から飛び降りて着地する際。
どちらもエリアスが放った衝撃波に依るものだ。
驚いて目を開けると視界にエリアスのブーツの先が映る。
弾かれたように顔を上げてエリアスを見れば、聖剣を手にしたまま表情が消えて光のない瞳で首を傾げて俺を見ていた。
――どうなったんだ?
身を捩って恐る恐る背後を振り返ると、魔王の菫色の瞳が驚愕に見開かれたまま固まっている。
刹那、魔王の喉元に一直線に赤い筋が走り、そこから上がゆっくりと傾いだ。
CGみたいに整った魔王の頭部が、俺の見ている前で床に落下し、聞くに堪えない音を立てる。
残る玉座には首のない魔王の身体だけが鎮座していた。
「ヒッ……!」
俺の雄膣に男根を挿入したままの状態で、魔王が事切れていたのだ。
――魔王を瞬殺って……!?
瞬殺できるのにエリアスは射線上にいた俺が伏せるのを待っていたのか。
状況を理解した俺は白とセルアンブルーのマントに包まれ、エリアスに抱え起こされる。
「……遅くなって済まない、ナナセ」
「あっ、エリー、魔王の、まだ入ってっ……か、らっ……! あっ……!」
抱き起されて体内から引き抜かれるとき、俺はエリアスにしがみつきながら、ビクビクッと身体をしならせ、最期に魔王のモノでメスイキした。
最悪だ――。
最早エリアスを見られなくて顔を背けていると、両手で両頬をそっと挟まれる。
俺の顔を上向かせようとするその手が、ただ添えられているだけ程度のごく優しいものだったからこそ、俺は逆らうことが出来なかった。
力尽くで強引に自分の方を向かせることだって容易かっただろうに、エリアスはそうはしなかったのだ。
上向かされたその先で、淡褐色と淡緑色が混ざり合う榛色の瞳と視線が合う。
だがそこに、いつもの金色の光が揺れているのを見つけて心の底からじわじわと安堵が広がった。
魔王を倒した直後のあの、瞳から光を消し去ったエリアスではない。
俺の知る、いつものエリアスだ。
でも、エリアスがガチギレすると、ああなるんだな。覚えておこう。
あれは、怖いと言うより寧ろ、今にも壊れてしまいそうで――だから、俺はもう二度とエリアスにあんな顔させちゃいけない。
エリアスは俺が護らないと。
「終わったよ、ナナセ。もう終わったんだ」
――終わったんだ。
胸に響いたその言葉に、再び涙がポロリと零れ落ちる。
散々泣いて緩くなっていた涙腺は決壊してしまえば、後はなし崩しだ。
俺は声も殺さずガキみたいにわんわん泣いた。
大丈夫じゃない。
全然大丈夫じゃなかった。
だって俺、魔王にレイプされたんだ。
何度も何度も繰り返し、一方的に性を搾取された。
嫌だって言ったのに。
エリアスを呼んだのに。
助けてって言ったのに。
俺は穢されてしまった。
それで大丈夫なわけがない。
もっと最悪なのは、魔王にレイプされながら、気持ち良くって何度もイッってしまったことだ。
心ではエリアスだけを求めているのに、身体のほうは男なら誰でもいいのだという現実を突き付けられて、自分が穢らわしいものに思えて仕方がなかった。
早くこの穢れを祓って欲しい。
それはきっとエリアスにしかできないことだ。
身も世もなく泣きじゃくる俺を、エリアスはしっかりと抱き締めて、ずっと背中を撫でていてくれた。
その感覚には覚えがあった。
一度目は、獣人領で治癒を施した帰り、白騎士隊の隊員たちとのじゃれ合いの中で。
二度目は、俺が隊員になって初めての出動で、船から飛び降りて着地する際。
どちらもエリアスが放った衝撃波に依るものだ。
驚いて目を開けると視界にエリアスのブーツの先が映る。
弾かれたように顔を上げてエリアスを見れば、聖剣を手にしたまま表情が消えて光のない瞳で首を傾げて俺を見ていた。
――どうなったんだ?
身を捩って恐る恐る背後を振り返ると、魔王の菫色の瞳が驚愕に見開かれたまま固まっている。
刹那、魔王の喉元に一直線に赤い筋が走り、そこから上がゆっくりと傾いだ。
CGみたいに整った魔王の頭部が、俺の見ている前で床に落下し、聞くに堪えない音を立てる。
残る玉座には首のない魔王の身体だけが鎮座していた。
「ヒッ……!」
俺の雄膣に男根を挿入したままの状態で、魔王が事切れていたのだ。
――魔王を瞬殺って……!?
瞬殺できるのにエリアスは射線上にいた俺が伏せるのを待っていたのか。
状況を理解した俺は白とセルアンブルーのマントに包まれ、エリアスに抱え起こされる。
「……遅くなって済まない、ナナセ」
「あっ、エリー、魔王の、まだ入ってっ……か、らっ……! あっ……!」
抱き起されて体内から引き抜かれるとき、俺はエリアスにしがみつきながら、ビクビクッと身体をしならせ、最期に魔王のモノでメスイキした。
最悪だ――。
最早エリアスを見られなくて顔を背けていると、両手で両頬をそっと挟まれる。
俺の顔を上向かせようとするその手が、ただ添えられているだけ程度のごく優しいものだったからこそ、俺は逆らうことが出来なかった。
力尽くで強引に自分の方を向かせることだって容易かっただろうに、エリアスはそうはしなかったのだ。
上向かされたその先で、淡褐色と淡緑色が混ざり合う榛色の瞳と視線が合う。
だがそこに、いつもの金色の光が揺れているのを見つけて心の底からじわじわと安堵が広がった。
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俺の知る、いつものエリアスだ。
でも、エリアスがガチギレすると、ああなるんだな。覚えておこう。
あれは、怖いと言うより寧ろ、今にも壊れてしまいそうで――だから、俺はもう二度とエリアスにあんな顔させちゃいけない。
エリアスは俺が護らないと。
「終わったよ、ナナセ。もう終わったんだ」
――終わったんだ。
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散々泣いて緩くなっていた涙腺は決壊してしまえば、後はなし崩しだ。
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大丈夫じゃない。
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それで大丈夫なわけがない。
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