異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが

マハラメリノ

文字の大きさ
上 下
91 / 266
第二章 魔王復活

〇〇九 ナナセ②

しおりを挟む
肺の中の空気が押し出され、一瞬呼吸が止まる。
その感覚には覚えがあった。
一度目は、獣人領で治癒を施した帰り、白騎士隊の隊員たちとのじゃれ合いの中で。
二度目は、俺が隊員になって初めての出動で、船から飛び降りて着地する際。
どちらもエリアスが放った衝撃波に依るものだ。

驚いて目を開けると視界にエリアスのブーツの先が映る。
弾かれたように顔を上げてエリアスを見れば、聖剣を手にしたまま表情が消えて光のない瞳で首を傾げて俺を見ていた。

――どうなったんだ?

身を捩って恐る恐る背後を振り返ると、魔王の菫色の瞳が驚愕に見開かれたまま固まっている。
刹那、魔王の喉元に一直線に赤い筋が走り、そこから上がゆっくりと傾いだ。
CGみたいに整った魔王の頭部が、俺の見ている前で床に落下し、聞くに堪えない音を立てる。
残る玉座には首のない魔王の身体だけが鎮座していた。

「ヒッ……!」

俺の雄膣に男根を挿入したままの状態で、魔王が事切れていたのだ。

――魔王を瞬殺って……!?

瞬殺できるのにエリアスは射線上にいた俺が伏せるのを待っていたのか。
状況を理解した俺は白とセルアンブルーのマントに包まれ、エリアスに抱え起こされる。

「……遅くなって済まない、ナナセ」
「あっ、エリー、魔王の、まだ入ってっ……か、らっ……! あっ……!」

抱き起されて体内から引き抜かれるとき、俺はエリアスにしがみつきながら、ビクビクッと身体をしならせ、最期に魔王のモノでメスイキした。
最悪だ――。

最早エリアスを見られなくて顔を背けていると、両手で両頬をそっと挟まれる。
俺の顔を上向かせようとするその手が、ただ添えられているだけ程度のごく優しいものだったからこそ、俺は逆らうことが出来なかった。
力尽くで強引に自分の方を向かせることだって容易かっただろうに、エリアスはそうはしなかったのだ。

上向かされたその先で、淡褐色と淡緑色が混ざり合う榛色ヘイゼルの瞳と視線が合う。
だがそこに、いつもの金色の光が揺れているのを見つけて心の底からじわじわと安堵が広がった。
魔王を倒した直後のあの、瞳から光を消し去ったエリアスではない。
俺の知る、いつものエリアスだ。

でも、エリアスがガチギレすると、ああなるんだな。覚えておこう。
あれは、怖いと言うより寧ろ、今にも壊れてしまいそうで――だから、俺はもう二度とエリアスにあんな顔させちゃいけない。
エリアスは俺が護らないと。

「終わったよ、ナナセ。もう終わったんだ」

――終わったんだ。
胸に響いたその言葉に、再び涙がポロリと零れ落ちる。
散々泣いて緩くなっていた涙腺は決壊してしまえば、後はなし崩しだ。
俺は声も殺さずガキみたいにわんわん泣いた。

大丈夫じゃない。
全然大丈夫じゃなかった。
だって俺、魔王にレイプされたんだ。
何度も何度も繰り返し、一方的に性を搾取された。
嫌だって言ったのに。
エリアスを呼んだのに。
助けてって言ったのに。
俺は穢されてしまった。
それで大丈夫なわけがない。

もっと最悪なのは、魔王にレイプされながら、気持ち良くって何度もイッってしまったことだ。
心ではエリアスだけを求めているのに、身体のほうは男なら誰でもいいのだという現実を突き付けられて、自分が穢らわしいものに思えて仕方がなかった。
早くこの穢れを祓って欲しい。
それはきっとエリアスにしかできないことだ。

身も世もなく泣きじゃくる俺を、エリアスはしっかりと抱き締めて、ずっと背中を撫でていてくれた。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜

車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第二の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

一人の騎士に群がる飢えた(性的)エルフ達

ミクリ21
BL
エルフ達が一人の騎士に群がってえちえちする話。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

俺は触手の巣でママをしている!〜卵をいっぱい産んじゃうよ!〜

ミクリ21
BL
触手の巣で、触手達の卵を産卵する青年の話。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

処理中です...