異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが

マハラメリノ

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第二章 魔王復活

〇〇三 キャトられる!③

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「ナナセッ!?」

このとき、俺は何でエリアスの言い付けを破ってまで、側を離れて飛び出してしまったんだろう。
後に振り返ってみて、これじゃあ、足手纏いキャラの行動まんまじゃないかと思ったものだ。

けれどもし、また同じような状況に陥ったとしても、俺は何度でも飛び出していくに違いない。
だって俺は想像力の足りない馬鹿で、目の前で魔獣に襲われそうになっている子供を見捨てるなんて出来ないから。

それが俺なんだって、認めろって言ったのは他ならぬエリアスだ。
だから、エリアスは貧乏くじを引いたと思って諦めて欲しい。

あの子供を見捨てたら俺は一生後悔する。
反省はしても、後悔はしたくない。

「もう大丈夫だ、こっちへ来い! 俺と一緒にエリーの側にいれば安全だか、ら……?」

駆け寄って子供の腕を掴んだ刹那、何かを踏んだ感触がしたが、脚の下には何も見当たらない。
というか、地面さえもなかった。
いや、正確にいうと地面はあるんだが遥か下の方で、所謂、地に足が付いていないというのの物理的な意味のほうのやつで――。

「えっ? えっ? ええっ!?」

子供が座り込んでいた位置を中心に青白い光の円柱が出来ていて、俺はその光の中で子供の腕を掴んだまま、宙に浮いていた。

俺これ知ってる!
マックでJKが言ってた!
キャトルミューティレーションだろこれ!?
UFOで攫われて全身の血液を抜かれて身体の一部を切除された後、死体を牧場へ遺棄されるやつ!

本来、キャトルミューティレーションとは、牛の身体の一部を切除する行為のことだけを指す言葉で、誘拐の方はエイリアン・アブダクションだけど、今はそんなことはどうでもいい!
剣と魔法の世界でUFOはないだろ!
空飛ぶ船だって空気読んで帆船なんだぞ!?
もうちょっと世界観考慮して自粛しろよ、宇宙人!

「ナナセ……ッ!?」

対峙していた魔獣三頭を倒し終えたエリアスが俺の方へ手を伸ばすが、すでに手の届く高度ではなかった。
急いで倒したため力加減が出来なかったのか、後ろの家屋の上半分が吹き飛んでいる。

「エリー、助けて! キャトられる!」
「キャト……ッ!?」

いや、そこは拘らなくていいから助けろよ!
なにも今このタイミングでポンコツになることないだろ!

光の柱の中で俺と助けた子供は尚もゆっくり上昇を続けていて、この高さで落ちたら死にはしないけど骨折はするだろう。
俺は子供を抱え込もうと腕を必死に掴んで手繰り寄せた。
すると、スローモーションのようにゆっくりと子供が顔を上げる。
黒髪に碧い瞳をした綺麗な男の子だ――そう思った刹那、その顔が悲しみに歪むのを見た。

「ご、ごめんなさいっ、聖者様っ」

待って♡
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異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨


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次章続巻も順次刊行予定
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