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第二章 魔王復活
〇〇三 キャトられる!②
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ジェットコースターで落下するときのような、マイナスGのエアタイムに最早悲鳴も出ない。
エリアスは落下しながら聖剣で衝撃波を放ち、村人を喰らっている魔獣に直撃させ大音響とともに吹き飛ばし、同時に着地の衝撃を緩和させて、俺を抱いたまま危なげなく地上に降り立った。
吹き飛ばされた魔獣は、頭が潰れて手足がおかしな方向へ折れ曲がって動かなくなっている。
マジかよ!?
あれだけの高さから飛び降りたのに、エリアスは物理しか使ってない。
ついでに魔獣も瞬殺した。
もしかしてエリアスって俺が想像していたよりずっと強い?
ちょっと人間離れしてない?
振り仰げば当のエリアスは整い過ぎていて感情の読めない顔で、喰われかけていた人を見下ろしている。
「まだ息はあるな」
呟きにも似たエリアスの声で俺は自分の役割を思い出した。
そうだ、治癒……! しないと!
「ま、任せろ!」
怪我人はこの人だけじゃない!
姿は見えないけど怪我して隠れてる人もいるはず!
出来るだけ広範囲に!
もっと、もっとだ、この村全体をカバーできるくらい広く、広く、広く!
そんな風に考えて治癒魔法を使うのは初めてで、上手く出来たかどうかも分からない。
どうして俺はもっとあらゆる可能性考えて練習しておかなかったんだ。
この期に及んでチートな能力に胡坐をかいて怠けていた自分を恥じたが、俺の周囲に出来た光の円は見る間に広がっていき、やがて村全体を覆い尽くした。
治癒の光が収まって、目の前で喰われかけていた村人がちゃんとした人間の姿になったのに安堵して膝から力が抜ける。
だが、それを半ば想定していたらしいエリアスが支えてくれた。
「掃討が完了したら、最後にもう一度、治癒魔法を施して貰うことになる。それまでは温存しておけ」
「わ、分かった」
獣人領で二連続で大量治癒したことはあったけど、三連続以上はまだしたことがない。
俺にとって未知の領域だから、いざというとき出来なくなったら困るということだろう。
エリアスは、治癒対象の人数と発情までの時間の関係を把握しているから、それまでに全てを終わらせて帰投する心づもりに違いない。
まだ膝がガクガク笑ってるけど、無理に着いてきたのは俺だし、ここからはちゃんと自分の脚で立たないと駄目だ。
エリアスの聖剣は両手剣だから、俺を支えているせいで片手を封じられることになると、威力が半減するどころじゃ済まないだろう。
戦力にならないのだから、せめて足手纏いだけにはなりたくない。
「私は魔族を探す。雑魚はお前たちに任せる」
その頃になって漸く小型のボートで降りてきた隊員に完治した村人を預けてしまうと、そこからエリアスのサーチ&デストロイが始まった。
エリアスは魔物の気配で正確な位置が分かるみたいで、迷いのない足取りで村の奥へ進み、魔獣を屠る。
俺がいるから多分自由に動けないんだろうけど、それでもエリアスは目を瞠るほど強かった。
一五〇センチもある聖剣の長さと重さによる遠心力を生かした流線形を描くような動きで、飛び掛かってくる魔獣に聖剣の斬撃を浴びせ、返り血は剣を引き抜き様に衝撃波で吹き飛ばし、ほとんど一撃で仕留めている。
すべての動作を、背中に俺を庇いながらやってのけているのだ。
一体倒すごとにドヤ顔でこっちを見なければ、最高に格好良かったのにな!
この勇者、こういうところが残念過ぎる!
しかも何かを期待した顔でこっちを見られても、初めて見る魔獣のグロ死骸を前にして、俺にはエリアスの求めているリアクションを取る余裕がない。
多分これ、俺がエリアスの喜ぶようなリアクション取ったら、調子に乗って張り切ったエリアスが一瞬で終わらせられるステージじゃないか?
自分では救護要員だと思ってたんだが、実は勇者様の接待要員だったのかよ俺。
エリアスの基準では、この程度の敵はヌルゲーなんだろう。
さっき隊員に「雑魚は任せる」とか言ってた癖に、実際ほとんどエリアス一人で倒していた。
魔族がなかなか見つからないから仕方ないけどな。
そうして大きな農家の家屋の裏へ回り、エリアスが巨大な蜘蛛みたいな脚の生えた甲虫のような魔獣三頭と対峙したときだった。
不図、人の気配を感じて振り返ると、納屋の脇に積んである雑多な荷物の物陰に子供が身を隠しているのを見つけたのだ。
そして、その向こうからやってくる黒い毛玉のような魔獣も。
「エリー、そこに子供が! あっちから魔獣も!」
魔獣の動きは遅く、まだ子供には気付いていない。
俺と子供の距離はほんの三、四メートルくらいだ。
ちょっと行って連れて戻ってくるだけなら数秒しか掛からないだろう。
迷っている暇はない。
考えるまでもなく俺は駆け出していた。
エリアスは落下しながら聖剣で衝撃波を放ち、村人を喰らっている魔獣に直撃させ大音響とともに吹き飛ばし、同時に着地の衝撃を緩和させて、俺を抱いたまま危なげなく地上に降り立った。
吹き飛ばされた魔獣は、頭が潰れて手足がおかしな方向へ折れ曲がって動かなくなっている。
マジかよ!?
あれだけの高さから飛び降りたのに、エリアスは物理しか使ってない。
ついでに魔獣も瞬殺した。
もしかしてエリアスって俺が想像していたよりずっと強い?
ちょっと人間離れしてない?
振り仰げば当のエリアスは整い過ぎていて感情の読めない顔で、喰われかけていた人を見下ろしている。
「まだ息はあるな」
呟きにも似たエリアスの声で俺は自分の役割を思い出した。
そうだ、治癒……! しないと!
「ま、任せろ!」
怪我人はこの人だけじゃない!
姿は見えないけど怪我して隠れてる人もいるはず!
出来るだけ広範囲に!
もっと、もっとだ、この村全体をカバーできるくらい広く、広く、広く!
そんな風に考えて治癒魔法を使うのは初めてで、上手く出来たかどうかも分からない。
どうして俺はもっとあらゆる可能性考えて練習しておかなかったんだ。
この期に及んでチートな能力に胡坐をかいて怠けていた自分を恥じたが、俺の周囲に出来た光の円は見る間に広がっていき、やがて村全体を覆い尽くした。
治癒の光が収まって、目の前で喰われかけていた村人がちゃんとした人間の姿になったのに安堵して膝から力が抜ける。
だが、それを半ば想定していたらしいエリアスが支えてくれた。
「掃討が完了したら、最後にもう一度、治癒魔法を施して貰うことになる。それまでは温存しておけ」
「わ、分かった」
獣人領で二連続で大量治癒したことはあったけど、三連続以上はまだしたことがない。
俺にとって未知の領域だから、いざというとき出来なくなったら困るということだろう。
エリアスは、治癒対象の人数と発情までの時間の関係を把握しているから、それまでに全てを終わらせて帰投する心づもりに違いない。
まだ膝がガクガク笑ってるけど、無理に着いてきたのは俺だし、ここからはちゃんと自分の脚で立たないと駄目だ。
エリアスの聖剣は両手剣だから、俺を支えているせいで片手を封じられることになると、威力が半減するどころじゃ済まないだろう。
戦力にならないのだから、せめて足手纏いだけにはなりたくない。
「私は魔族を探す。雑魚はお前たちに任せる」
その頃になって漸く小型のボートで降りてきた隊員に完治した村人を預けてしまうと、そこからエリアスのサーチ&デストロイが始まった。
エリアスは魔物の気配で正確な位置が分かるみたいで、迷いのない足取りで村の奥へ進み、魔獣を屠る。
俺がいるから多分自由に動けないんだろうけど、それでもエリアスは目を瞠るほど強かった。
一五〇センチもある聖剣の長さと重さによる遠心力を生かした流線形を描くような動きで、飛び掛かってくる魔獣に聖剣の斬撃を浴びせ、返り血は剣を引き抜き様に衝撃波で吹き飛ばし、ほとんど一撃で仕留めている。
すべての動作を、背中に俺を庇いながらやってのけているのだ。
一体倒すごとにドヤ顔でこっちを見なければ、最高に格好良かったのにな!
この勇者、こういうところが残念過ぎる!
しかも何かを期待した顔でこっちを見られても、初めて見る魔獣のグロ死骸を前にして、俺にはエリアスの求めているリアクションを取る余裕がない。
多分これ、俺がエリアスの喜ぶようなリアクション取ったら、調子に乗って張り切ったエリアスが一瞬で終わらせられるステージじゃないか?
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エリアスの基準では、この程度の敵はヌルゲーなんだろう。
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そして、その向こうからやってくる黒い毛玉のような魔獣も。
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ちょっと行って連れて戻ってくるだけなら数秒しか掛からないだろう。
迷っている暇はない。
考えるまでもなく俺は駆け出していた。
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異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨
📖文庫版(紙の書籍)
📖Kindle(電子書籍)
📖BOOK☆WALKER(電子書籍)
次章続巻も順次刊行予定
OLOLON
※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
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