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第一章 聖者降臨
〇四四 その手でナナセを殺してから死ね③
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「『死ぬときは一緒』か。フン、悪くはない。及第点だ。死の淵でもそうあることを願ってるよ。結婚に関しちゃ勇者様がオレの義理息子になるんだから歓迎しないわけがないだろ。というわけで闇魔法については以上だ」
「感謝します……!」
以上じゃねえよ。
まだだぜ親父よ。
「待てよコラ! 親父は何を贄にしてるんだよ?」
「オレか? オレは花だ。正確には花粉だがな」
花粉か!!
その手があったか!
ていうか、そんなんでよかったのかよ!
役に立たないテーブルマナーより何でそれを俺に教えてくれなかったんだよ!
「スバルさんは大量の花を使うから『花の闇魔法士』って呼ばれてるのよ」
「よせやい。照れるじゃねえか」
花の闇魔法士!?
なんだよその二つ名!
花の魔術師みたいで格好良いじゃねえか。王の話を聞かせろよ。
「スバルさん、杉花粉の季節は最強なんだから」
訂正。クソだせえ……。
「よせやい。よせやい」
親父は得意げに人差し指の背で鼻の下を擦っている。
ドヤ顔してねえでマーリンさんに謝れ。そんでその紛らわしい二つ名を返上しろ。
「……戻ろっか、エリー」
「そうだな……」
毒気を抜かれて提案するとエリアスもそれに頷いた。
まだまだ訊きたいことはたくさんあったが、今はお城の舞踏会を抜け出して来ている身なので、これ以上の長居は出来ない。
再び転移門でアルブム城へ戻ろうとすると、両親が物置まで送ってくれるというので、四人でぞろぞろとエレベーターへ乗り込む。
途中、行きも一緒になったOLさんがまた乗ってきた。
お財布だけ持ってたから一階のコンビニに行くんだろう。
行き掛けに俺の言った「ニッコリ笑っておいて」をエリアスがまだ忘れていなかったので、OLさん、今夜はストロングゼロコースだなと思った。
「それとオマエ、認定留学扱いになってるから、そのまま卒業までヴェイラに行ってても単位認めて貰えるぞ」
物置の入口で親父が、そんな超重要なことを後出ししてくる。
「どういうマジックで!?」
「ばっかオマエ、オレの勤め先どこだか知んねーのかよ。いろいろあんだよ付き合いがよー」
「親父、働いてたのか!?」
「ばっ……! テメ……! な……!?」
親父の動揺っぷりに今日初めてスカッとした。
いや俺だって流石に親父が無職だとは思ってなかったけどさ。
何やってるか知らねえんだもん。
このくらいの意趣返しはいいだろ。
「スバルさんのお勤めしている会社はね、異世界にも支社があって色々と手広くやっているのよ」
「働いてる様子が微塵もなかったぜ!?」
「うふふ。外資系は休みが多いからナナセがそう思うのも仕方ないわね」
「おーよ! そんでオマエ、向こうで無償で治癒術施し捲ってたろ? 何処の世界にもそういうの好きな金持ちは多いんだよ」
「どゆこと!?」
ボランティア活動が単位として認められるのは海外のみならず日本の学校でもよくあることだが、異世界での治癒が単位に変わるってどんな錬金術だよ。
闇魔法士の俺には専門外なので理解が追い付かない。
「ま、分かんなくてもいいんじゃねーの? オマエのあしながおじさんになりてえって奴らがいて。そいつらの心を動かしたのは他の誰でもなく、オマエ自身なんだからそこは胸張っていいとオレは思うぜ」
このとき俺は、この治癒が単位に変わる錬金術についての条件を詳しく訊いておかなかったことを激しく後悔するのだが、例え訊いていても結果を想定できなかったと思うし、仮に想定出来たとしても俺には選択の余地がなかったので栓無き事だろう。
だって、俺の治癒を単位に変えてくれる錬金術師のあしながおじさんが本気であしながおじさんをやろうとしていて、レポート提出と称した文通を余儀なくされるなんて誰が予想した上で回避行動とれるって言うんだよ。
転移門は親父が開いてくれた。
エリアスと手を握り合いながら、親父もちょっと優しいとこあんじゃんって見直したのも束の間、発動する直前、親父がニヤリと人の悪い笑顔を浮かべて言った。
「あとな、オマエの中二病が酷すぎるんで、スマホ取り上げて語学学校へぶちこんだ後に海外の大学に留学させたことになってるから、そのつもりでな。オマエのダチもみんな『あー……』って言って一瞬で信じたぞ」
くっそ……!
「感謝します……!」
以上じゃねえよ。
まだだぜ親父よ。
「待てよコラ! 親父は何を贄にしてるんだよ?」
「オレか? オレは花だ。正確には花粉だがな」
花粉か!!
その手があったか!
ていうか、そんなんでよかったのかよ!
役に立たないテーブルマナーより何でそれを俺に教えてくれなかったんだよ!
「スバルさんは大量の花を使うから『花の闇魔法士』って呼ばれてるのよ」
「よせやい。照れるじゃねえか」
花の闇魔法士!?
なんだよその二つ名!
花の魔術師みたいで格好良いじゃねえか。王の話を聞かせろよ。
「スバルさん、杉花粉の季節は最強なんだから」
訂正。クソだせえ……。
「よせやい。よせやい」
親父は得意げに人差し指の背で鼻の下を擦っている。
ドヤ顔してねえでマーリンさんに謝れ。そんでその紛らわしい二つ名を返上しろ。
「……戻ろっか、エリー」
「そうだな……」
毒気を抜かれて提案するとエリアスもそれに頷いた。
まだまだ訊きたいことはたくさんあったが、今はお城の舞踏会を抜け出して来ている身なので、これ以上の長居は出来ない。
再び転移門でアルブム城へ戻ろうとすると、両親が物置まで送ってくれるというので、四人でぞろぞろとエレベーターへ乗り込む。
途中、行きも一緒になったOLさんがまた乗ってきた。
お財布だけ持ってたから一階のコンビニに行くんだろう。
行き掛けに俺の言った「ニッコリ笑っておいて」をエリアスがまだ忘れていなかったので、OLさん、今夜はストロングゼロコースだなと思った。
「それとオマエ、認定留学扱いになってるから、そのまま卒業までヴェイラに行ってても単位認めて貰えるぞ」
物置の入口で親父が、そんな超重要なことを後出ししてくる。
「どういうマジックで!?」
「ばっかオマエ、オレの勤め先どこだか知んねーのかよ。いろいろあんだよ付き合いがよー」
「親父、働いてたのか!?」
「ばっ……! テメ……! な……!?」
親父の動揺っぷりに今日初めてスカッとした。
いや俺だって流石に親父が無職だとは思ってなかったけどさ。
何やってるか知らねえんだもん。
このくらいの意趣返しはいいだろ。
「スバルさんのお勤めしている会社はね、異世界にも支社があって色々と手広くやっているのよ」
「働いてる様子が微塵もなかったぜ!?」
「うふふ。外資系は休みが多いからナナセがそう思うのも仕方ないわね」
「おーよ! そんでオマエ、向こうで無償で治癒術施し捲ってたろ? 何処の世界にもそういうの好きな金持ちは多いんだよ」
「どゆこと!?」
ボランティア活動が単位として認められるのは海外のみならず日本の学校でもよくあることだが、異世界での治癒が単位に変わるってどんな錬金術だよ。
闇魔法士の俺には専門外なので理解が追い付かない。
「ま、分かんなくてもいいんじゃねーの? オマエのあしながおじさんになりてえって奴らがいて。そいつらの心を動かしたのは他の誰でもなく、オマエ自身なんだからそこは胸張っていいとオレは思うぜ」
このとき俺は、この治癒が単位に変わる錬金術についての条件を詳しく訊いておかなかったことを激しく後悔するのだが、例え訊いていても結果を想定できなかったと思うし、仮に想定出来たとしても俺には選択の余地がなかったので栓無き事だろう。
だって、俺の治癒を単位に変えてくれる錬金術師のあしながおじさんが本気であしながおじさんをやろうとしていて、レポート提出と称した文通を余儀なくされるなんて誰が予想した上で回避行動とれるって言うんだよ。
転移門は親父が開いてくれた。
エリアスと手を握り合いながら、親父もちょっと優しいとこあんじゃんって見直したのも束の間、発動する直前、親父がニヤリと人の悪い笑顔を浮かべて言った。
「あとな、オマエの中二病が酷すぎるんで、スマホ取り上げて語学学校へぶちこんだ後に海外の大学に留学させたことになってるから、そのつもりでな。オマエのダチもみんな『あー……』って言って一瞬で信じたぞ」
くっそ……!
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異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨
📖文庫版(紙の書籍)
📖Kindle(電子書籍)
📖BOOK☆WALKER(電子書籍)
次章続巻も順次刊行予定
OLOLON
※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
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