異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが

マハラメリノ

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第二章 魔王復活

〇一五 襟明日①

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「ヒジリ? どうした、なにかあったのか?」

振り返るとエリアスが副隊長のヒルデブラントと供に首実検から戻ってくるところだった。
魔王の首実検は現在安置されている神殿で行われたため、王宮や騎士団の用事で呼び出されたときとは違う方角から帰ってきたエリアスに、話しかけられるまで気付かなかったのだ。

「エリー……」
「ああ、エミールの代わりに制服を預かってくれたのか。そんな小間使いのようなことをさせてしまってすまなかった。私が持とう」

エリアスに制服を渡すと、そのまま自然な動作で手を繋いだ。

「エリー、俺、エリーに謝んなきゃいけないことがあるんだ」

俺がそう切り出すと、エリアスは僅かに驚いたような素振りを見せたが、ちらりとヒルデブラントに視線を送り、ヒルデブラントが頷いたのを確認してから改めて俺に向き直る。

「そうか。では私の部屋へ行こう」

エリアスに手を引かれて部屋に入ると、エリアスは扉を閉めるのもそこそこに、俺の肩口に頭を押し付けてぐりぐりしながら抱き着いてきた。

「……駄目だ、すまない。少しくらい離れていても大丈夫だと思っていたが、予想以上にきつい……」
「そんなに頭痛が酷いのか?」
「それもあるが……ヒジリは私と離れていて何ともないのか?」

さっき、エリアスがいないとき、何かを考えていても碌な結果に行きつかなかったことを思い出す。
エリアスも同じだったというのだろうか。
俺が黙っているのを肯定と受け取ったのか、エリアスは顔を上げる。

「それで、なにがあった? 誰かに何か言われたか?」
「……あしながおじさんが訪ねて来た」

これ以上、エリアスに不誠実でいたくなかったので正直に話すと、刹那、エリアスは淡褐色と淡緑色の混ざり合った榛色ヘイゼルの瞳に鋭い光を走らせる。

「……そうか。何を言われた?」
「勇者に掛けられた魔王の呪いを解けって、俺にしか解けないって、俺はもうその術を持ってるって言われた……でも俺、それが何だか分からなくて。それどころか俺、このままエリーの記憶が戻らなくてもいいなんて思ったりしてて、俺……だから、エリーに謝らないと、ごめんなさい……!」

一気に言ってしまってからエリアスに抱き着いた。
エリアスを――この世界に必要な勇者を俺の都合で呪いが掛かったままになんてしておいていいわけがない。
俺は結局、自分のことしか考えていなかった。
何より、エリアスは俺のことを思い出そうとしてくれていたのに、当の俺がこれではあんまりだ。
俺は事の重大さと罪の重さに、今更ながらに気付いた。

「ヒジリ、落ち着いてくれ。私はそんなことで怒ったりはしない。それに、このまま呪いが解けなれば、ヒジリを独占できると考えていたから私も同罪だ」
「けど、俺がエリーを独占するのと、エリーが俺を独占するのとじゃ、訳が違っ……」

そこで口付けによって物理的に口を塞がれたので続きは言えなかった。

「もう黙って」

息継ぎに唇を離した隙にそれだけ言うとエリアスは再び口付けて来て、さらに今度は俺の服を脱がしにかかっている。
と、そのとき、俺の服の間からぱさりと何かが落ちた。
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異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨


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次章続巻も順次刊行予定
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※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
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