111 / 266
第二章 魔王復活
〇一五 襟明日①
しおりを挟む
「ヒジリ? どうした、なにかあったのか?」
振り返るとエリアスが副隊長のヒルデブラントと供に首実検から戻ってくるところだった。
魔王の首実検は現在安置されている神殿で行われたため、王宮や騎士団の用事で呼び出されたときとは違う方角から帰ってきたエリアスに、話しかけられるまで気付かなかったのだ。
「エリー……」
「ああ、エミールの代わりに制服を預かってくれたのか。そんな小間使いのようなことをさせてしまってすまなかった。私が持とう」
エリアスに制服を渡すと、そのまま自然な動作で手を繋いだ。
「エリー、俺、エリーに謝んなきゃいけないことがあるんだ」
俺がそう切り出すと、エリアスは僅かに驚いたような素振りを見せたが、ちらりとヒルデブラントに視線を送り、ヒルデブラントが頷いたのを確認してから改めて俺に向き直る。
「そうか。では私の部屋へ行こう」
エリアスに手を引かれて部屋に入ると、エリアスは扉を閉めるのもそこそこに、俺の肩口に頭を押し付けてぐりぐりしながら抱き着いてきた。
「……駄目だ、すまない。少しくらい離れていても大丈夫だと思っていたが、予想以上にきつい……」
「そんなに頭痛が酷いのか?」
「それもあるが……ヒジリは私と離れていて何ともないのか?」
さっき、エリアスがいないとき、何かを考えていても碌な結果に行きつかなかったことを思い出す。
エリアスも同じだったというのだろうか。
俺が黙っているのを肯定と受け取ったのか、エリアスは顔を上げる。
「それで、なにがあった? 誰かに何か言われたか?」
「……あしながおじさんが訪ねて来た」
これ以上、エリアスに不誠実でいたくなかったので正直に話すと、刹那、エリアスは淡褐色と淡緑色の混ざり合った榛色の瞳に鋭い光を走らせる。
「……そうか。何を言われた?」
「勇者に掛けられた魔王の呪いを解けって、俺にしか解けないって、俺はもうその術を持ってるって言われた……でも俺、それが何だか分からなくて。それどころか俺、このままエリーの記憶が戻らなくてもいいなんて思ったりしてて、俺……だから、エリーに謝らないと、ごめんなさい……!」
一気に言ってしまってからエリアスに抱き着いた。
エリアスを――この世界に必要な勇者を俺の都合で呪いが掛かったままになんてしておいていいわけがない。
俺は結局、自分のことしか考えていなかった。
何より、エリアスは俺のことを思い出そうとしてくれていたのに、当の俺がこれではあんまりだ。
俺は事の重大さと罪の重さに、今更ながらに気付いた。
「ヒジリ、落ち着いてくれ。私はそんなことで怒ったりはしない。それに、このまま呪いが解けなれば、ヒジリを独占できると考えていたから私も同罪だ」
「けど、俺がエリーを独占するのと、エリーが俺を独占するのとじゃ、訳が違っ……」
そこで口付けによって物理的に口を塞がれたので続きは言えなかった。
「もう黙って」
息継ぎに唇を離した隙にそれだけ言うとエリアスは再び口付けて来て、さらに今度は俺の服を脱がしにかかっている。
と、そのとき、俺の服の間からぱさりと何かが落ちた。
振り返るとエリアスが副隊長のヒルデブラントと供に首実検から戻ってくるところだった。
魔王の首実検は現在安置されている神殿で行われたため、王宮や騎士団の用事で呼び出されたときとは違う方角から帰ってきたエリアスに、話しかけられるまで気付かなかったのだ。
「エリー……」
「ああ、エミールの代わりに制服を預かってくれたのか。そんな小間使いのようなことをさせてしまってすまなかった。私が持とう」
エリアスに制服を渡すと、そのまま自然な動作で手を繋いだ。
「エリー、俺、エリーに謝んなきゃいけないことがあるんだ」
俺がそう切り出すと、エリアスは僅かに驚いたような素振りを見せたが、ちらりとヒルデブラントに視線を送り、ヒルデブラントが頷いたのを確認してから改めて俺に向き直る。
「そうか。では私の部屋へ行こう」
エリアスに手を引かれて部屋に入ると、エリアスは扉を閉めるのもそこそこに、俺の肩口に頭を押し付けてぐりぐりしながら抱き着いてきた。
「……駄目だ、すまない。少しくらい離れていても大丈夫だと思っていたが、予想以上にきつい……」
「そんなに頭痛が酷いのか?」
「それもあるが……ヒジリは私と離れていて何ともないのか?」
さっき、エリアスがいないとき、何かを考えていても碌な結果に行きつかなかったことを思い出す。
エリアスも同じだったというのだろうか。
俺が黙っているのを肯定と受け取ったのか、エリアスは顔を上げる。
「それで、なにがあった? 誰かに何か言われたか?」
「……あしながおじさんが訪ねて来た」
これ以上、エリアスに不誠実でいたくなかったので正直に話すと、刹那、エリアスは淡褐色と淡緑色の混ざり合った榛色の瞳に鋭い光を走らせる。
「……そうか。何を言われた?」
「勇者に掛けられた魔王の呪いを解けって、俺にしか解けないって、俺はもうその術を持ってるって言われた……でも俺、それが何だか分からなくて。それどころか俺、このままエリーの記憶が戻らなくてもいいなんて思ったりしてて、俺……だから、エリーに謝らないと、ごめんなさい……!」
一気に言ってしまってからエリアスに抱き着いた。
エリアスを――この世界に必要な勇者を俺の都合で呪いが掛かったままになんてしておいていいわけがない。
俺は結局、自分のことしか考えていなかった。
何より、エリアスは俺のことを思い出そうとしてくれていたのに、当の俺がこれではあんまりだ。
俺は事の重大さと罪の重さに、今更ながらに気付いた。
「ヒジリ、落ち着いてくれ。私はそんなことで怒ったりはしない。それに、このまま呪いが解けなれば、ヒジリを独占できると考えていたから私も同罪だ」
「けど、俺がエリーを独占するのと、エリーが俺を独占するのとじゃ、訳が違っ……」
そこで口付けによって物理的に口を塞がれたので続きは言えなかった。
「もう黙って」
息継ぎに唇を離した隙にそれだけ言うとエリアスは再び口付けて来て、さらに今度は俺の服を脱がしにかかっている。
と、そのとき、俺の服の間からぱさりと何かが落ちた。
0
異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨
📖文庫版(紙の書籍)
📖Kindle(電子書籍)
📖BOOK☆WALKER(電子書籍)
次章続巻も順次刊行予定
OLOLON
※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
第一章 聖者降臨
📖文庫版(紙の書籍)
📖Kindle(電子書籍)
📖BOOK☆WALKER(電子書籍)
次章続巻も順次刊行予定
OLOLON
※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
お気に入りに追加
1,326
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜
車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第二の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)


身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。


怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる