71 / 266
第二章 魔王復活
〇〇二 賢者の顔をした勇者①
しおりを挟む
同じ王宮の敷地内に住んでいるが、ルッツことルートヴィヒ殿下とは俺の白騎士叙任式以来、めっきり顔を合わせることがなくなった。
それは普通のことで、王族にホイホイ会えていた今までの方が異常だったのだ。
それに、俺が白騎士隊に入ったことで、直属ではないにしてもルートヴィヒ殿下の部下ということになるため、王族が特定の部下と懇意にするのは余り宜しくないらしい。
エリアスは、ルートヴィヒ殿下を俺に極力近付けたくないみたいだから、多分それも全部エリアスの計算内だったと俺は睨んでいる。
とはいえ、白騎士隊に入るってことはとても名誉なことだし、仕事中もエリアスの側にずっといられるってことだ。
その辺りは俺も吝かではない。
ついでにいうと、つい一月前まで元の世界へ帰る資金を貯めるために倹約生活を余儀なくされていた俺にとっては、契約金と給料が破格だった。
それに、王立騎士団所属って、言ってみれば国家公務員みたいなもんだし、将来も安泰じゃねえか。
俺は渡された手付金を前に「手長海老の串焼きが一万本買える」と思わず呟いて、辺境伯領の市街地へエリアスと二人で微行で廻ったとき露店で食べた手長海老に想いを馳せていると、エリアスがそっと俺の頭を撫でてくる。旨かったな、あれ……。
そうだ、隊長のエリアスは、当然俺より貰ってるってことだよな?
エリアス、俺が思ってたよりすげえ金持ちなんじゃねえか!
このところ、ちょっとポンコツな姿ばかり見てるから忘れがちだけど、そういえばエリアスは勇者である前に超が何個も付くスーパーエリート貴族なんだよな。
しかもだ。魔王討伐の褒賞は俺のせいで残念ながら棒に振ったけど、俺を無事に連れ帰ったことでエリアスはちゃっかり受勲していた。
勲章ってそんなんで貰えるのかよって言ったら、あれだけ世間を騒がせたにも拘わらず公表できないことが多すぎて有耶無耶にしたから、何か偉業を果たしたことにしてこの一件を締めくくっておかないとマズイんだそうで、大体全部俺のせいだった。
これでエリアスも少しは報われてくれたなら良いと思うんだが、エリアスって金も名誉も持っていても邪魔なものじゃないって程度の薄い反応で、あんまり興味なさそうなんだよな。
俺のためにエリアスが魔王討伐の褒賞をふいにしちゃったことは、俺も結構気にしてるんだよ。
斯くして、流れに流れて漸く白騎士隊の隊舎に安住の地を見つけた俺は、魔王討伐後は暇で滅多に下りないという白騎士隊の出動命令が下りるまで、暇を持て余しているエリアス同伴で王宮内の救護院へ足を運んでは治癒を施す毎日だった。
なにしろ俺は単位を稼がなくちゃならないからな。
平時は、王宮に詰めているの騎士や兵士は平民階級の者が多く、獣人領のときのように蓋を開けたら貴族だけだったなんてことはない。
これは後で気付いたことだが、俺がエリアスと舞踏会を抜け出して一旦家に帰った時、母が「早かったわね」って出迎えたくらいだから、俺の行動は何もかも情報が筒抜けってことだよな。
だって、転移門でイギリスに渡り、商人伝手で日本に帰るっていう俺の帰還計画を知ってなきゃ、ああいう科白は出てこないだろ。
どういう情報網だよ。恐ろしすぎる。
特に俺の場合は治癒の回数イコール、セックスの回数なのによ。
実質セックスして単位貰ってるようなもんだぞ。
色々と酷すぎないか。
郊外の農村に派遣されていた部隊が全滅したとの一報が入ったのは、そんな折だった。
それは普通のことで、王族にホイホイ会えていた今までの方が異常だったのだ。
それに、俺が白騎士隊に入ったことで、直属ではないにしてもルートヴィヒ殿下の部下ということになるため、王族が特定の部下と懇意にするのは余り宜しくないらしい。
エリアスは、ルートヴィヒ殿下を俺に極力近付けたくないみたいだから、多分それも全部エリアスの計算内だったと俺は睨んでいる。
とはいえ、白騎士隊に入るってことはとても名誉なことだし、仕事中もエリアスの側にずっといられるってことだ。
その辺りは俺も吝かではない。
ついでにいうと、つい一月前まで元の世界へ帰る資金を貯めるために倹約生活を余儀なくされていた俺にとっては、契約金と給料が破格だった。
それに、王立騎士団所属って、言ってみれば国家公務員みたいなもんだし、将来も安泰じゃねえか。
俺は渡された手付金を前に「手長海老の串焼きが一万本買える」と思わず呟いて、辺境伯領の市街地へエリアスと二人で微行で廻ったとき露店で食べた手長海老に想いを馳せていると、エリアスがそっと俺の頭を撫でてくる。旨かったな、あれ……。
そうだ、隊長のエリアスは、当然俺より貰ってるってことだよな?
エリアス、俺が思ってたよりすげえ金持ちなんじゃねえか!
このところ、ちょっとポンコツな姿ばかり見てるから忘れがちだけど、そういえばエリアスは勇者である前に超が何個も付くスーパーエリート貴族なんだよな。
しかもだ。魔王討伐の褒賞は俺のせいで残念ながら棒に振ったけど、俺を無事に連れ帰ったことでエリアスはちゃっかり受勲していた。
勲章ってそんなんで貰えるのかよって言ったら、あれだけ世間を騒がせたにも拘わらず公表できないことが多すぎて有耶無耶にしたから、何か偉業を果たしたことにしてこの一件を締めくくっておかないとマズイんだそうで、大体全部俺のせいだった。
これでエリアスも少しは報われてくれたなら良いと思うんだが、エリアスって金も名誉も持っていても邪魔なものじゃないって程度の薄い反応で、あんまり興味なさそうなんだよな。
俺のためにエリアスが魔王討伐の褒賞をふいにしちゃったことは、俺も結構気にしてるんだよ。
斯くして、流れに流れて漸く白騎士隊の隊舎に安住の地を見つけた俺は、魔王討伐後は暇で滅多に下りないという白騎士隊の出動命令が下りるまで、暇を持て余しているエリアス同伴で王宮内の救護院へ足を運んでは治癒を施す毎日だった。
なにしろ俺は単位を稼がなくちゃならないからな。
平時は、王宮に詰めているの騎士や兵士は平民階級の者が多く、獣人領のときのように蓋を開けたら貴族だけだったなんてことはない。
これは後で気付いたことだが、俺がエリアスと舞踏会を抜け出して一旦家に帰った時、母が「早かったわね」って出迎えたくらいだから、俺の行動は何もかも情報が筒抜けってことだよな。
だって、転移門でイギリスに渡り、商人伝手で日本に帰るっていう俺の帰還計画を知ってなきゃ、ああいう科白は出てこないだろ。
どういう情報網だよ。恐ろしすぎる。
特に俺の場合は治癒の回数イコール、セックスの回数なのによ。
実質セックスして単位貰ってるようなもんだぞ。
色々と酷すぎないか。
郊外の農村に派遣されていた部隊が全滅したとの一報が入ったのは、そんな折だった。
0
異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨
📖文庫版(紙の書籍)
📖Kindle(電子書籍)
📖BOOK☆WALKER(電子書籍)
次章続巻も順次刊行予定
OLOLON
※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
第一章 聖者降臨
📖文庫版(紙の書籍)
📖Kindle(電子書籍)
📖BOOK☆WALKER(電子書籍)
次章続巻も順次刊行予定
OLOLON
※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
お気に入りに追加
1,326
あなたにおすすめの小説

身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)



転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…


オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい
椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。
その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。
婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!!
婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。
攻めズ
ノーマルなクール王子
ドMぶりっ子
ドS従者
×
Sムーブに悩むツッコミぼっち受け
作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる