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第二章 魔王復活
〇〇一 ナナセハ チユ チョットデキル①
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白騎士隊の詰所は、ヴェルスパ王宮の敷地内の騎士団の部隊別の隊舎が立ち並ぶエリアにあった。
周辺の他の隊舎と比べても扱いが良いのが一目で分かる、ゴージャスなバースデーケーキの断面図みたいな外観をした建物で、王宮本棟と回廊の一辺で繋がった一棟を丸ごと使用している。
このヴェイラ王国に於いて、騎士とは国家君主から叙任される役職であり、身分の階級ではない。
なので、実力さえあれば平民でも騎士になれるし、実際に実力主義の白騎士隊では半数以上が平民階級の騎士で構成されている。
王宮の敷地内にあるこの隊舎は、主にその平民階級の隊員たちの宿舎で、貴族階級の隊員は通常、王都内に邸を構えていて、有事の際に召集が掛けられない限り隊舎には顔を出さないのだという。
エリアスも普段は王都内にある辺境伯家の別邸に住んでいるが、このほど俺と一緒に詰所内の隊員宿舎に住むことになった。
エリアスは俺と一緒に自分の邸に住みたかったらしいが、俺がいた診療所には今も連日人が押し掛けて来ているようで、そうすると診療所同様に邸にまで見知らぬ人が押しかけてくる危険がある。
その上、出動時には王宮まで馬車での移動になり、そこを民衆に囲まれると身動きが取れなくなるため已む無く断念したんだそうだ。
なんだか貴族のエリアスに付き合わせちゃったみたいで悪い気もするけど、俺には正直こっちのほうが気楽でいい。
一階の談話室にはバーカウンターやピアノやビリヤード台なんかも置いてあってなんだか楽しそうな雰囲気だしな。
そして現在、俺はというと、その宿舎に設けられた私室で、さっき届けられたばかりの白騎士隊の制服の試着をしていた。
光沢のある白地に金糸の刺繍の入ったスカプラリオ風の隊服は太腿の中ほどまでの丈で、下に同じくらいの丈の同色の幅の広い袖のチュニックと細身のパンツを合わせてニーハイブーツを履き、一番上にやはりこれも同色のフード付き全円ケープを羽織る。
一見すると全身白一色だが、スカプラリオとケープの裏地がセルリアンブルーなので、白騎士隊の識別色だということを知らしめていた。
他の隊員たちとは違う俺だけのデザインの制服なのは、俺が非戦闘員の治癒術士だからなのと、俺がみんなと同じ制服を着ても、身長と手足の長さが足りないせいで、並んだ時に俺だけ惨めなことになるからだろう。
その点この制服は、足りない部分を上手く隠してくれていると思う。
「どうかな……?」
着替え終わって、衝立の後ろから出て姿見の前に立つと、エリアスを突き飛ばす勢いで仕立て屋が前に飛び出して来て、俺の制服の裾や襟を直し出した。
「これはまた、なんともよくお似合いでっ! 今回は聖者様専用の制服をご依頼頂きまして、わたくしを始め職人一同の気合と熱量が違いましたっ!」
「とてもよく似合っている。やはり私の見立てに間違いはなかった」
出遅れたエリアスが不機嫌も露に仕立て屋を押し退けて割り込んで来て、俺の腰を自分の方へ抱き寄せる。
こんな風にエリアスが仕立て屋を目の敵にするのには、訳があるのだ。
あれは忘れもしない採寸の日、仕立て屋に胸囲を測って貰っているときだった。
出来る限り薄着がいいというので、上はシルクのシャツ一枚、下はトラウザーズという姿で採寸して貰っていたのだが、エリアスの手によって開発が完了していた俺の乳首は感じ易く、メジャーが触れる僅かな刺激だけでコリッコリに硬くなってプツンと立ち上がり、その存在を主張し始めてしまったのだ。
シャツの上からメジャーで両乳首をやんわりと圧し潰されながら、俺は息を詰めて採寸が終わるのを待った。
そうして悲劇はその後で起こる。
仕立て屋が外そうとしたメジャーがうっかり俺の勃ちあがった乳首に引っ掛かり、思い切り弾いていったのだ。
刹那、俺は「ひゃんっ!」と変な声を上げて達してしまった。
エリアスが見ている前で、仕立て屋にイかされたのである。
その後のエリアスはちょっと怖かった。
だが、これには流石に俺も理不尽だと思ったので「誰のせいだと思ってるんだよ!」って言ったら、エリアスは少し考えた後で「私のせいだな」って呟いて、打って変わってご機嫌になったが。
そんなこともあり、俺の気のせいかもしれないけど、最近ちょっとエリアスの執着が激しい気がするんだよな。
この間も髪を切ろうとしたら難色を示されたし。
髪型くらい好きにさせろってんだよ――と、言いつつも、あの淡褐色と淡緑色の混ざり合う榛色の瞳に悲しそうな光を滲ませて見詰められると、我を押し通すことが出来なくなってしまう俺がいる。
周辺の他の隊舎と比べても扱いが良いのが一目で分かる、ゴージャスなバースデーケーキの断面図みたいな外観をした建物で、王宮本棟と回廊の一辺で繋がった一棟を丸ごと使用している。
このヴェイラ王国に於いて、騎士とは国家君主から叙任される役職であり、身分の階級ではない。
なので、実力さえあれば平民でも騎士になれるし、実際に実力主義の白騎士隊では半数以上が平民階級の騎士で構成されている。
王宮の敷地内にあるこの隊舎は、主にその平民階級の隊員たちの宿舎で、貴族階級の隊員は通常、王都内に邸を構えていて、有事の際に召集が掛けられない限り隊舎には顔を出さないのだという。
エリアスも普段は王都内にある辺境伯家の別邸に住んでいるが、このほど俺と一緒に詰所内の隊員宿舎に住むことになった。
エリアスは俺と一緒に自分の邸に住みたかったらしいが、俺がいた診療所には今も連日人が押し掛けて来ているようで、そうすると診療所同様に邸にまで見知らぬ人が押しかけてくる危険がある。
その上、出動時には王宮まで馬車での移動になり、そこを民衆に囲まれると身動きが取れなくなるため已む無く断念したんだそうだ。
なんだか貴族のエリアスに付き合わせちゃったみたいで悪い気もするけど、俺には正直こっちのほうが気楽でいい。
一階の談話室にはバーカウンターやピアノやビリヤード台なんかも置いてあってなんだか楽しそうな雰囲気だしな。
そして現在、俺はというと、その宿舎に設けられた私室で、さっき届けられたばかりの白騎士隊の制服の試着をしていた。
光沢のある白地に金糸の刺繍の入ったスカプラリオ風の隊服は太腿の中ほどまでの丈で、下に同じくらいの丈の同色の幅の広い袖のチュニックと細身のパンツを合わせてニーハイブーツを履き、一番上にやはりこれも同色のフード付き全円ケープを羽織る。
一見すると全身白一色だが、スカプラリオとケープの裏地がセルリアンブルーなので、白騎士隊の識別色だということを知らしめていた。
他の隊員たちとは違う俺だけのデザインの制服なのは、俺が非戦闘員の治癒術士だからなのと、俺がみんなと同じ制服を着ても、身長と手足の長さが足りないせいで、並んだ時に俺だけ惨めなことになるからだろう。
その点この制服は、足りない部分を上手く隠してくれていると思う。
「どうかな……?」
着替え終わって、衝立の後ろから出て姿見の前に立つと、エリアスを突き飛ばす勢いで仕立て屋が前に飛び出して来て、俺の制服の裾や襟を直し出した。
「これはまた、なんともよくお似合いでっ! 今回は聖者様専用の制服をご依頼頂きまして、わたくしを始め職人一同の気合と熱量が違いましたっ!」
「とてもよく似合っている。やはり私の見立てに間違いはなかった」
出遅れたエリアスが不機嫌も露に仕立て屋を押し退けて割り込んで来て、俺の腰を自分の方へ抱き寄せる。
こんな風にエリアスが仕立て屋を目の敵にするのには、訳があるのだ。
あれは忘れもしない採寸の日、仕立て屋に胸囲を測って貰っているときだった。
出来る限り薄着がいいというので、上はシルクのシャツ一枚、下はトラウザーズという姿で採寸して貰っていたのだが、エリアスの手によって開発が完了していた俺の乳首は感じ易く、メジャーが触れる僅かな刺激だけでコリッコリに硬くなってプツンと立ち上がり、その存在を主張し始めてしまったのだ。
シャツの上からメジャーで両乳首をやんわりと圧し潰されながら、俺は息を詰めて採寸が終わるのを待った。
そうして悲劇はその後で起こる。
仕立て屋が外そうとしたメジャーがうっかり俺の勃ちあがった乳首に引っ掛かり、思い切り弾いていったのだ。
刹那、俺は「ひゃんっ!」と変な声を上げて達してしまった。
エリアスが見ている前で、仕立て屋にイかされたのである。
その後のエリアスはちょっと怖かった。
だが、これには流石に俺も理不尽だと思ったので「誰のせいだと思ってるんだよ!」って言ったら、エリアスは少し考えた後で「私のせいだな」って呟いて、打って変わってご機嫌になったが。
そんなこともあり、俺の気のせいかもしれないけど、最近ちょっとエリアスの執着が激しい気がするんだよな。
この間も髪を切ろうとしたら難色を示されたし。
髪型くらい好きにさせろってんだよ――と、言いつつも、あの淡褐色と淡緑色の混ざり合う榛色の瞳に悲しそうな光を滲ませて見詰められると、我を押し通すことが出来なくなってしまう俺がいる。
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