異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが

マハラメリノ

文字の大きさ
上 下
52 / 266
第一章 聖者降臨

〇四四 その手でナナセを殺してから死ね①

しおりを挟む
「迎えに来てくれたんなら、なんで助けてくれなかったんだよ!?」

その事情について母から齎された情報によると、こうだ。
俺を追いかけてヴェイラの王都へ赴いた両親は、息子の「初めてのお使い」ならぬ「初めての異世界転移」なんて滅多に見られるものじゃないし、なんと後を付けて暫く様子を見ることにしたらしい。

そうしたら、旧知の仲である診療所の所長に見つかり、事情を話すと協力してくれると言うので、当人の与り知らぬところでホームステイが決まっていたという。
俺、実は異世界ホームステイ中だったのか。知らなかったぜ。
あの所長、うちの親とも知り合いだったなんてマジで何者なんだよ。
ラスボス感半端ないぞ。

親父たちから見ても俺は初めての異世界で結構上手くやっていて、自分たちの英才教育の成果を実感できたのだと言う。
あれ、中二病の英才教育だと思ってたんだが、異世界で暮らすための英才教育だったらしい。
お陰で親世代の英才教育を施された俺は、同世代の中二病患者との間に深刻なジェネレーションギャップが生まれるという酷い結果になってるんだが、どう責任とってくれるんだよ。

しかし親父たちが何故そこまでしたのかというと、三十年前に母が異世界転移を経験していてとても苦労したから、いつか俺にもそういう日が来るんじゃないかと想定していたんだそうだ。
……なんて言っているが、俺は騙されないぞ。
「アリババと四〇人の盗賊」の絵本まで置いて、罠を張っていたのは他ならぬ親父だろうが。

だが、新事実がどんどん明らかになるな。
テーブルマナーは全く役に立たなかったが、確かに、ラテン語とドイツ語を履修していたことはとても役に立った。
語学の地盤がなければ異世界での会話にもっとずっと苦労していたことだろう。
剣と魔法の世界にも中世文化にも知識があったからスッと馴染んだしな。
そして親父たちは俺が治癒能力に目覚めたことをとても喜んでいた。

「変装して何度も様子を見に行ったのに、ナナセったら全然気付かないんだもん」
「バカスwwwww」

親父イラつく!
しかしそこまで黙って聞いていたエリアスがハッとしたように口を開いた。

「もしや、わざと負傷して何度も来ていた、あの……?」
「そうそう、あんときの! いやあオレ、勇者様に牽制されちゃって! あんときゃ参っちゃったよな~!」
「ナナセのご両親とは知らず、失礼致しました」
「やだなあ、そういうのは止めてくれよ! ああやって勇者様がうちのナナセを護ってくれていたからこそ安心してホームステイに出せたんだからよ! これでも感謝してるんだぜ?」

いや、護ってくれていたかも知れないけど、俺その勇者様に食われてんですけどね。性的な意味で。

「それはそうと、急なことで申し訳ないが、次は何時お会い出来るかわからないため、今この場をお借りしてナナセのご両親にお願いしたいことがあります」
「なんだよ急に改まって?」
「スバル殿、ホシナ殿、私とナナセの結婚をお許し頂きたい」
「それは構わねーんだけどよ勇者様よ? ナナセの治癒術が闇魔法であることは知ってるんだよな?」
「……ッ! はい。存じています」
「その様子を見るとやっぱり子種を生贄にしていたか。どうも生贄を捧げている様子がないもんで、そうじゃないかと思ってはいたんだがな」
「……はい。言い訳は致しません。未成年のご子息と婚前交渉したこと、誠に……」
「待て待て。オレはそんなことを責めてるんじゃない。コイツのシモ事情なんてクッソ興味ねえよ。闇魔法についてお前たちに話しておくことがあるから、その確認のために訊いただけだ」
「ということは、スバル殿はやはり数世紀前にルヴァから姿を消した闇魔法士の末裔……まさかアルビオンに渡っておられたとは……」

え、どういうことだ?
うちのご先祖様ってルヴァ出身だったの!?
しおりを挟む
異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨


📖文庫版(紙の書籍)
📖Kindle(電子書籍)
📖BOOK☆WALKER(電子書籍)

次章続巻も順次刊行予定
OLOLON

※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
感想 21

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

ある日、人気俳優の弟になりました。

雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。 「俺の命は、君のものだよ」 初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……? 平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

処理中です...