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第一章 聖者降臨
〇四四 その手でナナセを殺してから死ね①
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「迎えに来てくれたんなら、なんで助けてくれなかったんだよ!?」
その事情について母から齎された情報によると、こうだ。
俺を追いかけてヴェイラの王都へ赴いた両親は、息子の「初めてのお使い」ならぬ「初めての異世界転移」なんて滅多に見られるものじゃないし、なんと後を付けて暫く様子を見ることにしたらしい。
そうしたら、旧知の仲である診療所の所長に見つかり、事情を話すと協力してくれると言うので、当人の与り知らぬところでホームステイが決まっていたという。
俺、実は異世界ホームステイ中だったのか。知らなかったぜ。
あの所長、うちの親とも知り合いだったなんてマジで何者なんだよ。
ラスボス感半端ないぞ。
親父たちから見ても俺は初めての異世界で結構上手くやっていて、自分たちの英才教育の成果を実感できたのだと言う。
あれ、中二病の英才教育だと思ってたんだが、異世界で暮らすための英才教育だったらしい。
お陰で親世代の英才教育を施された俺は、同世代の中二病患者との間に深刻なジェネレーションギャップが生まれるという酷い結果になってるんだが、どう責任とってくれるんだよ。
しかし親父たちが何故そこまでしたのかというと、三十年前に母が異世界転移を経験していてとても苦労したから、いつか俺にもそういう日が来るんじゃないかと想定していたんだそうだ。
……なんて言っているが、俺は騙されないぞ。
「アリババと四〇人の盗賊」の絵本まで置いて、罠を張っていたのは他ならぬ親父だろうが。
だが、新事実がどんどん明らかになるな。
テーブルマナーは全く役に立たなかったが、確かに、ラテン語とドイツ語を履修していたことはとても役に立った。
語学の地盤がなければ異世界での会話にもっとずっと苦労していたことだろう。
剣と魔法の世界にも中世文化にも知識があったからスッと馴染んだしな。
そして親父たちは俺が治癒能力に目覚めたことをとても喜んでいた。
「変装して何度も様子を見に行ったのに、ナナセったら全然気付かないんだもん」
「バカスwwwww」
親父イラつく!
しかしそこまで黙って聞いていたエリアスがハッとしたように口を開いた。
「もしや、わざと負傷して何度も来ていた、あの……?」
「そうそう、あんときの! いやあオレ、勇者様に牽制されちゃって! あんときゃ参っちゃったよな~!」
「ナナセのご両親とは知らず、失礼致しました」
「やだなあ、そういうのは止めてくれよ! ああやって勇者様がうちのナナセを護ってくれていたからこそ安心してホームステイに出せたんだからよ! これでも感謝してるんだぜ?」
いや、護ってくれていたかも知れないけど、俺その勇者様に食われてんですけどね。性的な意味で。
「それはそうと、急なことで申し訳ないが、次は何時お会い出来るかわからないため、今この場をお借りしてナナセのご両親にお願いしたいことがあります」
「なんだよ急に改まって?」
「スバル殿、ホシナ殿、私とナナセの結婚をお許し頂きたい」
「それは構わねーんだけどよ勇者様よ? ナナセの治癒術が闇魔法であることは知ってるんだよな?」
「……ッ! はい。存じています」
「その様子を見るとやっぱり子種を生贄にしていたか。どうも生贄を捧げている様子がないもんで、そうじゃないかと思ってはいたんだがな」
「……はい。言い訳は致しません。未成年のご子息と婚前交渉したこと、誠に……」
「待て待て。オレはそんなことを責めてるんじゃない。コイツのシモ事情なんてクッソ興味ねえよ。闇魔法についてお前たちに話しておくことがあるから、その確認のために訊いただけだ」
「ということは、スバル殿はやはり数世紀前にルヴァから姿を消した闇魔法士の末裔……まさかアルビオンに渡っておられたとは……」
え、どういうことだ?
うちのご先祖様ってルヴァ出身だったの!?
その事情について母から齎された情報によると、こうだ。
俺を追いかけてヴェイラの王都へ赴いた両親は、息子の「初めてのお使い」ならぬ「初めての異世界転移」なんて滅多に見られるものじゃないし、なんと後を付けて暫く様子を見ることにしたらしい。
そうしたら、旧知の仲である診療所の所長に見つかり、事情を話すと協力してくれると言うので、当人の与り知らぬところでホームステイが決まっていたという。
俺、実は異世界ホームステイ中だったのか。知らなかったぜ。
あの所長、うちの親とも知り合いだったなんてマジで何者なんだよ。
ラスボス感半端ないぞ。
親父たちから見ても俺は初めての異世界で結構上手くやっていて、自分たちの英才教育の成果を実感できたのだと言う。
あれ、中二病の英才教育だと思ってたんだが、異世界で暮らすための英才教育だったらしい。
お陰で親世代の英才教育を施された俺は、同世代の中二病患者との間に深刻なジェネレーションギャップが生まれるという酷い結果になってるんだが、どう責任とってくれるんだよ。
しかし親父たちが何故そこまでしたのかというと、三十年前に母が異世界転移を経験していてとても苦労したから、いつか俺にもそういう日が来るんじゃないかと想定していたんだそうだ。
……なんて言っているが、俺は騙されないぞ。
「アリババと四〇人の盗賊」の絵本まで置いて、罠を張っていたのは他ならぬ親父だろうが。
だが、新事実がどんどん明らかになるな。
テーブルマナーは全く役に立たなかったが、確かに、ラテン語とドイツ語を履修していたことはとても役に立った。
語学の地盤がなければ異世界での会話にもっとずっと苦労していたことだろう。
剣と魔法の世界にも中世文化にも知識があったからスッと馴染んだしな。
そして親父たちは俺が治癒能力に目覚めたことをとても喜んでいた。
「変装して何度も様子を見に行ったのに、ナナセったら全然気付かないんだもん」
「バカスwwwww」
親父イラつく!
しかしそこまで黙って聞いていたエリアスがハッとしたように口を開いた。
「もしや、わざと負傷して何度も来ていた、あの……?」
「そうそう、あんときの! いやあオレ、勇者様に牽制されちゃって! あんときゃ参っちゃったよな~!」
「ナナセのご両親とは知らず、失礼致しました」
「やだなあ、そういうのは止めてくれよ! ああやって勇者様がうちのナナセを護ってくれていたからこそ安心してホームステイに出せたんだからよ! これでも感謝してるんだぜ?」
いや、護ってくれていたかも知れないけど、俺その勇者様に食われてんですけどね。性的な意味で。
「それはそうと、急なことで申し訳ないが、次は何時お会い出来るかわからないため、今この場をお借りしてナナセのご両親にお願いしたいことがあります」
「なんだよ急に改まって?」
「スバル殿、ホシナ殿、私とナナセの結婚をお許し頂きたい」
「それは構わねーんだけどよ勇者様よ? ナナセの治癒術が闇魔法であることは知ってるんだよな?」
「……ッ! はい。存じています」
「その様子を見るとやっぱり子種を生贄にしていたか。どうも生贄を捧げている様子がないもんで、そうじゃないかと思ってはいたんだがな」
「……はい。言い訳は致しません。未成年のご子息と婚前交渉したこと、誠に……」
「待て待て。オレはそんなことを責めてるんじゃない。コイツのシモ事情なんてクッソ興味ねえよ。闇魔法についてお前たちに話しておくことがあるから、その確認のために訊いただけだ」
「ということは、スバル殿はやはり数世紀前にルヴァから姿を消した闇魔法士の末裔……まさかアルビオンに渡っておられたとは……」
え、どういうことだ?
うちのご先祖様ってルヴァ出身だったの!?
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異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨
📖文庫版(紙の書籍)
📖Kindle(電子書籍)
📖BOOK☆WALKER(電子書籍)
次章続巻も順次刊行予定
OLOLON
※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
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