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第一章 聖者降臨
〇二四 エリ・エリ・レマ・サバクタニ
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フリッツことフリードリヒ陛下が獣人領の王城であるこのアルブム城内に用意してくれた部屋は、壁紙から家具に至るまで白とパステルカラーの所謂ユニコーンカラーで統一されたファンシーな内装だった。
天井と壁紙は夜空を模していて、金色に輝く七つの小星型十二面体の照明で星座が描かれ、天井から吊るされた、原宿で売ってるカラフルなコットンキャンディーみたいな雲からは、上質なシフォン生地のモスキートネットが幾重にも垂れ下がり、その下に置かれた円形のベッドをふんわりと覆っている。
……。
女子かよ!
どうして七つ星?
何かの嫌がらせかな?
だがしかし、部屋の女子力などものともしないエリアスのお清めセックスは、風呂からそのファンシーなベッドの上へ場所を移してまだ続いていた。
外はまだ若干明るいけど、この季節ここは欧州みたいに夜の九時くらいまで明るいから時間の感覚がおかしくてあれからどれくらい経ったのかは分からないが、エリアスは事前の告知通りサービスを展開する運営なので、今まさに俺のチンコを咥えてフェラチオをしている。
「エッ……リアスッ、も……出ッ……!」
如何ともしがたい衝動に、俺はエリアスの頭を掴んだ。
刹那、強く吸われて呆気なく吐精してしまう。
「あ……んっ……!」
イッたばかりで敏感になってるそこをじゅっと音を立てて吸い抜かれ、ビクンッと身体が反り返った。
射精の快感はメスイキと違って一瞬で終わってしまうのが惜しいが、エリアスの髪を掴んでしまっていたことに気が付いて慌てて手を離す。
「わ、悪い……」
謝りながら上半身を起こすと、エリアスが「何が?」という顔をしながら口の中のものをゴクンと嚥下されて更に慌てる。
「……飲んだ、の?」
「嫌でしたか?」
顔が熱くなるのを感じて、俺は咄嗟に両手でペチッと自分の顔を覆うと背面からばたりとベッドに沈む。
どうしよう、嬉しい。
エリアスには、もっと恥ずかしいこともいっぱいされていて今更なんだが、飲んでもらうのがこんなに嬉しいなんて知らなかったんだ。
ちょっと俺は飲みたいとは思わないけど、だからこそ余計に嬉しい。
俺いま多分、耳まで真っ赤だ。
「ナナセ、顔を見せてください」
「……」
無視していると、両手を外され、覗き込んできた。
笑ってやがる! くっそ!
両手を押さえつけられているので首だけで横を向くと、笑いを堪える気配がして両手を解放され、目の前にポーション瓶が差し出された。
「ポーションです。お疲れでしょう」
「あ、うん」
ポーション瓶を見つめて待つが、俺もエリアスも動かない。
前回は飲ませて貰ったから今回も飲ませてくれるものだと思っていたら違ったか。
当然のように飲ませて貰おうとするの恥ずかしいな俺。
「……なんだ。飲ませてくれるのかと思って待ってた」
照れ隠しにそう言って俺がポーション瓶を受け取ろうと手を伸ばした途端、エリアスが手を引っ込めた。
見上げると、さっきの俺よりも顔を赤くしたエリアスと目が合う。
白人っぽいからか赤くなると顕著で、俺は驚いて固まる。
「知りませんよ?」
そう断ってからエリアスはポーション瓶を豪快に煽り、前回同様、俺に口移しで飲ませてくれた。
……俺の精液味のポーションはクッソ不味かった。
だから飲ませてくれなかったのか……。
すぐにエリアスが甲斐甲斐しくサイドボードに置いてあった水差しからグラスに水を注いでくれたから飲み干したけど、まだ気持ちが悪い。
「だから知りませんと言ったでしょう」
「……返す言葉がない。よくこんなの飲めたな」
「ナナセのですから」
「……」
文字通り絶句して口元を押さえて悶えていると、エリアスが俺の隣に添い寝するみたいに座ってきて、枕と俺の首の間の隙間に腕をするりと滑り込ませた。
腕枕と肩を抱いてるのの中間みたいな体勢だ。
他人とこんな風に素肌を密着させて寝るのは初めてだけど、不思議と落ち着くのでそのままにさせておいた。
「あれって、この世界の星座なのか?」
ベッドに寝転ぶと視線の先には丁度、モスキートネットの割れ目から天井と壁紙に描かれた星座が見える。
そういう風に計算されて設計されているんだろう。
「そのようですね。星が七つありますから、あちらが惑星ヴェイラで、あちらが惑星ルヴァでしょう」
「そっか、ここも惑星が七つあるんだっけ」
「ナナセの故郷アルビオンも七つの星から成るのですか?」
「いや、昔は九つあって今は八つだけど、俺の名前『七星』は故郷の言葉で『七つの星』って意味だから、この部屋入った瞬間、何で知ってるんだろうって思ってたんだ。俺の勘違いだったけど」
「七つの星……良いお名前ですね。あながち勘違いとは言えないかも知れません。やはりナナセはこの東の宇宙ルヴァに来るべくして来た――いえ、遣わされたのではないでしょうか」
聖者じゃなくて闇魔法士だったし、それはないだろと思ったけど、そろそろ眠くて面倒だったので俺は話題を変えることにした。
ポーションで体力は回復したといっても、今日は本当に色々あり過ぎて流石に疲れた。
「……エリアスの名前は『神を讃えよ』って……?」
半分目を閉じてうつらうつらしながらそう言うと、エリアスはちょっと意外そうに俺の顔を覗き込んできた。
欧州のほうの名前で頭に「エリ」って付いてるのは大抵「おお、神よ!」みたいな意味だ。知らんけど。
新約聖書のマタイによる福音書でイエスが十字架に張り付けられ、死の淵で叫んだ「神よ! 神よ! 何故私を見捨てたのか!」というヘブライ語は余りにも有名。
何といっても聖書は世界で一番売れてる本だからな。
その勢いたるや他の追随を許さない推定総発行部数三八八〇億冊、更に毎年六億冊の重版が掛かり、三二〇〇の言語に翻訳されている。
異世界とはいえ、行き来は出来て、言葉や文化が伝わっているのにこれだけのベストセラー本が伝わっていないわけがなかった。
「私も正確な意味は知りませんが、大体そのような意味ですね……ナナセ……?」
まだ微睡んでいる状態だったが、瞼は完全に閉じていて、俺の呼吸が寝息に変わったのに気付いたのだろう。
エリアスがふっと微笑う気配がして、俺の肩を抱いていた腕が頭を抱き込み、ブランケットを掛け直される。
人肌ってなんでこんなに気持ち良いんだ。
頬を摺り寄せると心地よい眠りに落ちてゆく。
――この日を境に俺の意識はちょっと変わった。
必要以上に卑屈にならなくなった程度だが。
多分それはエリアスが俺の「フツメンの擬人化」を懇切丁寧にじっくりたっぷり手取り足取り腰取りで否定してくれたからだろう。
職業と違って種族は変更が利かないものだとよく勘違いされがちだが、種族も実は変更が利く。
日本人なら誰でも知っている例を挙げれば、元は人だったけど鬼や神になって神社に祀られている酒呑童子や菅原道真然り。
俺が「フツメンの擬人化」から「人族」へ種族変更出来たかどうかは定かじゃないが、少なくとも、エリアスから俺に向けられる好意に対して、以前のような獣姦みは感じられなくなった。
まあ、人族でも平たい顔族なのは変わらないんだが。
天井と壁紙は夜空を模していて、金色に輝く七つの小星型十二面体の照明で星座が描かれ、天井から吊るされた、原宿で売ってるカラフルなコットンキャンディーみたいな雲からは、上質なシフォン生地のモスキートネットが幾重にも垂れ下がり、その下に置かれた円形のベッドをふんわりと覆っている。
……。
女子かよ!
どうして七つ星?
何かの嫌がらせかな?
だがしかし、部屋の女子力などものともしないエリアスのお清めセックスは、風呂からそのファンシーなベッドの上へ場所を移してまだ続いていた。
外はまだ若干明るいけど、この季節ここは欧州みたいに夜の九時くらいまで明るいから時間の感覚がおかしくてあれからどれくらい経ったのかは分からないが、エリアスは事前の告知通りサービスを展開する運営なので、今まさに俺のチンコを咥えてフェラチオをしている。
「エッ……リアスッ、も……出ッ……!」
如何ともしがたい衝動に、俺はエリアスの頭を掴んだ。
刹那、強く吸われて呆気なく吐精してしまう。
「あ……んっ……!」
イッたばかりで敏感になってるそこをじゅっと音を立てて吸い抜かれ、ビクンッと身体が反り返った。
射精の快感はメスイキと違って一瞬で終わってしまうのが惜しいが、エリアスの髪を掴んでしまっていたことに気が付いて慌てて手を離す。
「わ、悪い……」
謝りながら上半身を起こすと、エリアスが「何が?」という顔をしながら口の中のものをゴクンと嚥下されて更に慌てる。
「……飲んだ、の?」
「嫌でしたか?」
顔が熱くなるのを感じて、俺は咄嗟に両手でペチッと自分の顔を覆うと背面からばたりとベッドに沈む。
どうしよう、嬉しい。
エリアスには、もっと恥ずかしいこともいっぱいされていて今更なんだが、飲んでもらうのがこんなに嬉しいなんて知らなかったんだ。
ちょっと俺は飲みたいとは思わないけど、だからこそ余計に嬉しい。
俺いま多分、耳まで真っ赤だ。
「ナナセ、顔を見せてください」
「……」
無視していると、両手を外され、覗き込んできた。
笑ってやがる! くっそ!
両手を押さえつけられているので首だけで横を向くと、笑いを堪える気配がして両手を解放され、目の前にポーション瓶が差し出された。
「ポーションです。お疲れでしょう」
「あ、うん」
ポーション瓶を見つめて待つが、俺もエリアスも動かない。
前回は飲ませて貰ったから今回も飲ませてくれるものだと思っていたら違ったか。
当然のように飲ませて貰おうとするの恥ずかしいな俺。
「……なんだ。飲ませてくれるのかと思って待ってた」
照れ隠しにそう言って俺がポーション瓶を受け取ろうと手を伸ばした途端、エリアスが手を引っ込めた。
見上げると、さっきの俺よりも顔を赤くしたエリアスと目が合う。
白人っぽいからか赤くなると顕著で、俺は驚いて固まる。
「知りませんよ?」
そう断ってからエリアスはポーション瓶を豪快に煽り、前回同様、俺に口移しで飲ませてくれた。
……俺の精液味のポーションはクッソ不味かった。
だから飲ませてくれなかったのか……。
すぐにエリアスが甲斐甲斐しくサイドボードに置いてあった水差しからグラスに水を注いでくれたから飲み干したけど、まだ気持ちが悪い。
「だから知りませんと言ったでしょう」
「……返す言葉がない。よくこんなの飲めたな」
「ナナセのですから」
「……」
文字通り絶句して口元を押さえて悶えていると、エリアスが俺の隣に添い寝するみたいに座ってきて、枕と俺の首の間の隙間に腕をするりと滑り込ませた。
腕枕と肩を抱いてるのの中間みたいな体勢だ。
他人とこんな風に素肌を密着させて寝るのは初めてだけど、不思議と落ち着くのでそのままにさせておいた。
「あれって、この世界の星座なのか?」
ベッドに寝転ぶと視線の先には丁度、モスキートネットの割れ目から天井と壁紙に描かれた星座が見える。
そういう風に計算されて設計されているんだろう。
「そのようですね。星が七つありますから、あちらが惑星ヴェイラで、あちらが惑星ルヴァでしょう」
「そっか、ここも惑星が七つあるんだっけ」
「ナナセの故郷アルビオンも七つの星から成るのですか?」
「いや、昔は九つあって今は八つだけど、俺の名前『七星』は故郷の言葉で『七つの星』って意味だから、この部屋入った瞬間、何で知ってるんだろうって思ってたんだ。俺の勘違いだったけど」
「七つの星……良いお名前ですね。あながち勘違いとは言えないかも知れません。やはりナナセはこの東の宇宙ルヴァに来るべくして来た――いえ、遣わされたのではないでしょうか」
聖者じゃなくて闇魔法士だったし、それはないだろと思ったけど、そろそろ眠くて面倒だったので俺は話題を変えることにした。
ポーションで体力は回復したといっても、今日は本当に色々あり過ぎて流石に疲れた。
「……エリアスの名前は『神を讃えよ』って……?」
半分目を閉じてうつらうつらしながらそう言うと、エリアスはちょっと意外そうに俺の顔を覗き込んできた。
欧州のほうの名前で頭に「エリ」って付いてるのは大抵「おお、神よ!」みたいな意味だ。知らんけど。
新約聖書のマタイによる福音書でイエスが十字架に張り付けられ、死の淵で叫んだ「神よ! 神よ! 何故私を見捨てたのか!」というヘブライ語は余りにも有名。
何といっても聖書は世界で一番売れてる本だからな。
その勢いたるや他の追随を許さない推定総発行部数三八八〇億冊、更に毎年六億冊の重版が掛かり、三二〇〇の言語に翻訳されている。
異世界とはいえ、行き来は出来て、言葉や文化が伝わっているのにこれだけのベストセラー本が伝わっていないわけがなかった。
「私も正確な意味は知りませんが、大体そのような意味ですね……ナナセ……?」
まだ微睡んでいる状態だったが、瞼は完全に閉じていて、俺の呼吸が寝息に変わったのに気付いたのだろう。
エリアスがふっと微笑う気配がして、俺の肩を抱いていた腕が頭を抱き込み、ブランケットを掛け直される。
人肌ってなんでこんなに気持ち良いんだ。
頬を摺り寄せると心地よい眠りに落ちてゆく。
――この日を境に俺の意識はちょっと変わった。
必要以上に卑屈にならなくなった程度だが。
多分それはエリアスが俺の「フツメンの擬人化」を懇切丁寧にじっくりたっぷり手取り足取り腰取りで否定してくれたからだろう。
職業と違って種族は変更が利かないものだとよく勘違いされがちだが、種族も実は変更が利く。
日本人なら誰でも知っている例を挙げれば、元は人だったけど鬼や神になって神社に祀られている酒呑童子や菅原道真然り。
俺が「フツメンの擬人化」から「人族」へ種族変更出来たかどうかは定かじゃないが、少なくとも、エリアスから俺に向けられる好意に対して、以前のような獣姦みは感じられなくなった。
まあ、人族でも平たい顔族なのは変わらないんだが。
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