異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが

マハラメリノ

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第一章 聖者降臨

〇二〇 ナナセは私の婚約者です

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エリアスは最後にあった時の礼服ではなく、もうちょっと実用的な白騎士隊の制服を身に着けていた。
なんでここにエリアスがいるのか分からないが、逃げていたつもりが先回りされてたとか間抜けすぎるだろ俺。
周囲の者たちにあれこれと指示を出していたフリッツことフリードリヒ陛下が俺の呟きに気付いて目線を追うように、不図、エリアスを注視しする。

「勇者エリアスか。出迎えご苦労。……この者と知り合いか?」
「陛下も殿下もご無事で何より。彼は……ナナセは私の婚約者です」

いや、だから俺それ断ったよな!?
何時の間に婚約者!?
どうやら俺の渾身の「お断りします!」は、エリアスの中ではなかったことになっているらしい。
最早話が通じないレベルでポジティブシンキングすぎる。

このときエリアスは、俺を護るために婚約者であると対外的に公言していたのだが、今の俺にそんなことは知る由もない。

そしてこのとき、俺のじゃない意思に割り込まれてどうやら記憶が数秒おきに飛んでたらしい俺は反応が遅れ、気付けば否定する機会を失っていた。

「そうだったか。ナナセは私の命の恩人だ」

ちょ、黙ってたから婚約者だって認めたみたいになってるけど違うからな!
俺は慌ててぶんぶんと首を左右に振ったが、時既に時間切れ。
これ絶対、命の恩人じゃないと謙遜してるみたいに受け取られてるよな?

「……そのようですね」

エリアスは俺が発情状態にあることに気付き、また闇魔法を使ったのだと分かったようだ。

「陛下、ナナセを私にお返し頂いても宜しいですか」

待って♡
返さないで!
俺そいつから逃げて来たんだって!
いや、でも陛下や殿下のとこより勇者様のほうがまだマシなのか……?
確かにエリアスには一度助けられている。
そう考えたら隙が出来たのか、また自分のじゃない意思が湧いてきて、そっちへ引き摺られていく。

「訳知り顔なのが気に食わんな」
「前回は私が処置致しました」

刹那、俺を挟んで二人の間に一体どんな意思の疎通があったのかは分からないが、エリアスはつかつかと歩み寄り、フリードリヒ陛下の腕から奪うように俺を抱き取った。
どうやら陛下は事情を知っているらしいエリアスに託すのが最善と判断したようだ。
俺のこの数日間の旅は何だったのか。
一周回って、結局俺はエリアスの手に落ちてしまった。
頭を胸に押し付けるように抱き込まれ、すんと息を吸い込む。
エリアスの匂いだ。
このまま俺またエリアスの抱かれるのかな。
ぼんやりとそう思う傍から何かに意思を引き摺られて分からなくなる。
俺の頭がまともな状態だったら、この辺で断固拒否して抵抗くらいはしてたんだけど、このとき既に俺はまともじゃなかった。
俺じゃない別の誰か――或いは別の何かの意思が俺を支配していたのだと思う。

「陛下、湯殿と部屋をお借りできますか」
「回廊の先にある湯殿を使え。その間に部屋を用意させる」
「ありがとうございます、陛下」
「……後で説明を求めるぞ」
「如何様にも」

俺を含め、その場にいたほとんどの者がどういう状況なのか分かっていなかったと思うが、王の識別色ティンクチャーである白貂の毛皮アーミンに包れていた俺と、その俺を抱いた勇者エリアスを咎められるものはいない。

近衛騎士らしき獣人に先導され、空中庭園――といっても空中に浮いてるわけじゃないからな。建物の上の方に造られた庭園を一般的にそう呼ぶ。アルビオンならモン・サン・ミッシェルの最上階にある空中庭園なんかが有名だ。ちな、浮いてるやつは浮遊庭園っていってこっちにはあるらしいけど俺はまだ見たことがない――を囲む回廊を抜けると、すぐに水音が聞こえてきて湯殿に到着したことを知る。

未だ発情状態の続く俺はというと、南の城砦であれだけ見たがっていた本物の城の内部を楽しむ余裕もなく、エリアスが歩く振動で乳首やチンコに毛皮が擦れて気持ち良くってひんひん泣きながらエリアスのしがみついて何度もメスイキしていたのは言うまでもないだろう。
エリアスはそんな俺を一瞥して慌てて視線を逸らすと、それきり始終無言で怒ってんのかと思ってちょっと怖かったんだが、無駄に整った顔は無表情で感情は全く読めない。

王城の風呂らしく瀧のあるプールといおうか噴水といおうか、ローマ風の美しい石造りの湯殿は、横になって身体を洗う大理石の寝台までついていて、そこはちょっとハマムっぽい。
多種族の文化が混交する惑星ヴェイラらしい造りだ。

「色々お訊きしたいことはありますが、まずはその状態を解決するのが先でしょう」

解決とは即ち、セックスするってことだ。
俺もなんでエリアスがここにいるのかとか、訊きたいことはたくさんあったが、現状を解決する方法といえばそれしかない。
エリアスは、蒸気で暖められた大理石の寝台に俺の上半身だけを俯せに横たえ、下半身は尻を突き出す格好で床に下ろさせた。
この体勢は後ろから掘る気か。
今は顔見るの気まずいからありがたいけどな。
それからエリアスは、指で俺の雄膣を割り開き、中を探って具合を確かめてから自身の前を寛げる気配がした。

「このままいけそうですね」

それに期待した腹の奥がきゅうっと締まって、溢れ出たルッツことルートヴィヒ殿下のだかフリードリヒ陛下のだか分からない精液が俺の内股を伝う。
悲しいことに、さっきまでオナホ妖精やってた俺は、それだけの刺激でまたもやイッてしまった。
爪先がピンと伸びて反り返った身体に熱いものが宛がわれる。

「入れますよ、ナナセ」

前のときもエリアスは、挿入するときも射精するときも、いちいち律儀に告知してたよな。
その告知通り、エリアスのチンコが俺の中にヌプヌプと入ってくる。

「……っん、あっ、あんっ……あ……」

俺、またエリアスに犯されてる……。
エリアスとセックスするのは二度目だけど、前回は二回やってどっちも正常位だったから、こんな風に顔を見ずに後ろから犯されるのは初めてだ。
この体位だと当たるとこも前と違う。
雁首の部分まで挿入すると、エリアスは俺の腰を浮かせるように掴んで一気に奥まで貫いた。

「ひぐっ……!」

どうにかなっちゃってるらしい俺の身体は、散々子種を貰った後なのにそれでもまだ足りないと訴えていて、最奥に届いている亀頭に射精を促すように結腸がじゅぽじゅぽ吸い付いて離さない。

「……っ、ナナセ? 痛くはないですか?」
「あっ……あっ、いっ……いいっ、いいっ……!」
「……良さそうですね。動きますよ、ナナセ」

多分、チンコ突っ込まれたあたりからまた俺の記憶は飛び飛びだったけど、エリアスは性急に抽挿を開始して射精感が高まると焦らさずすぐに吐精した。

「……っく!」
「んっ……っあ……!」

俺の中でどくどくと熱く脈打つエリアスのチンコから呆気なく子種が放出される。
待ち侘びていたものを与えられ、全身が歓喜に打ち震えた刹那、ずっと俺を支配していた例の俺のじゃない意思が憑き物が落ちたように消え去っていることに気付く。
今ので闇魔法の贄を捧げ終えたらしく、俺は漸く発情状態から解放されたのだった。
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異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨


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次章続巻も順次刊行予定
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