5 / 266
第一章 聖者降臨
〇〇四 オレ、この戦いが終わったら結婚するんだ
しおりを挟む
び、びっくりした! イケメンのどアップぱねえ!
近くで見ると迫力すげえのな!
掘り深いし、睫毛長ェし!
つーか、治癒に伴う代償が何故か予想より早く発動してきたみたいで、今触れられると俺色々とヤバイんだけど……!
人肌に触れただけで背中がこうゾクゾクッとして、俺の息子さん明らかに元気になっちゃってるよな?
まだ五分も経っていないはずだけど、発動時間見誤ったか?
おかしいな。人数は十数人程度だから三十分後くらいだと思ったんだけど。
あ……もしかして、アレか?
患者さんだと思って頭数に入れてた人が実は付き添いの人だったか?
欠損の人とか盲目の人とか病気の子を連れた一家とか……考えてみたら他にも付き添いが必要な人ばかりだったような気がする!
だとすれば計算は合うな。ヤベエどうしよ。やっちまった。
お茶がいらないなら早く用件だけ言って帰ってくれないかな?
ていうか手を離してくださいお願いします!
俺は下肢にずくん、と熱が集まるのを感じて、どうにかエリアスの手を振り払おうと試みるも、掴まれた手はびくともしない。
エリアスは何やら思い詰めた顔をしているし、心なしか声も低い気がする。
それにいつも俺のことを「聖者様」と呼ぶ勇者に「ナナセ」と名前を呼ばれたのは多分これが初めてのことだ。
なんか俺、今結構な窮地に陥ってる感じ?
勇者様とか勝てる気がしないし、魔王ですら負けたくらいだし、どうしろってんだよこの状況!?
そんなことより切実な問題はチンコ爆発しそうってことだ!
俺は自分を落ち着かせるように深呼吸すると、なんだか一人で勝手に盛り上がっちゃってる様子のエリアスをなるべく刺激しないように、どうにかこうにかゆっくりと視線を外して俯くと自分の盛り上がった股間が目に入る。
いや、盛り上がっちゃってるのは俺の息子もだからひとりじゃないな。
訂正。俺を置いて二人で勝手に盛り上がらないで!
「な、なんでしょう」
「ナナセ」
勇者様、さっきから何故急に俺を名前で呼ぶんです?
今までずっと「聖者様」呼びだったのに突然距離なしかよ。
段階を踏もうぜ段階を。
エリアスはもう一度俺を名前で呼ぶと掴んだ手はそのままに、その場で左膝をついた。
騎士が左膝をつくのは左腰に佩いた剣を抜き難くして相手に対して害意がないことを示すためである。
もしかしたらエリアスは俺の様子がおかしいのを察知して害意がないと伝えるために跪いたのかもしれない。
しかし恐らくそうではない。
ここまでされたら余程鈍いヤツでもわかるだろう。
この世界で同性愛は典雅で高貴な趣味とされていて、同性同士で気軽にセックスする。
セックスレス大国である現代の日本と比べると、こっちの人たちは性欲も恐ろしいほどに強くて、仕事帰りに同僚と一発ヤッてくとかもうほとんどスポーツ感覚だ。
ギルドの会合で留守にしている所長も今頃はギルド員たちと娼館でお楽しみに違いない。
それにこの国では異性間での結婚は一人ずつしか認められていないが、同性間であれば何人とでも重婚できるのがそれに拍車をかけている。
同性間なら子供が出来ないため一代限りで終わるからというのが理由らしい。
だからこそ子孫を残すという利害を求めない無償の愛として王侯貴族の間では崇高な関係の同性を正妻に迎え、子孫を残すための社会的な関係の異性を側室にするのが一般的だ。
特にこの世界で花形の職業である騎士ともなれば男の恋人が幾人もいるのが普通だし、噂によると避妊の手間がいらない手軽さから、娼館には娼婦の数より男娼の数の方が圧倒的に多いらしい。
まあ老若男女を問わずな非モテな俺に色恋なんぞ縁のない話だったんですけどね、ついさっきまでは。
できればその可能性だけは除外して考えたかったのだが、嫌な予感というのは往々にして当たるもので、エリアスは俺の手の甲にその形のいい唇を落とした。
その刺激だけでガマン汁が下着を濡らすのを感じて身を震わせたのも束の間、勇者様は会心の一撃を放つ。
「魔王を倒したら言おうと決めていました。愛しています、ナナセ。私と結婚してください」
――と、ここで冒頭のエピソードに繋がるわけなのだが……。
待って♡
全く記憶にないんだが、俺いつ勇者様のフラグ立てたんだよ?
なんかそれっぽいイベントあったか?
勇者様に対しても自分に対しても突っ込みどころが多すぎて理解が追い付かない!
だいたいそれ、「オレ、この戦いが終わったら結婚するんだ」って所謂「死亡フラグ」だからな!
勇者様がそんなベタな死亡フラグを立てて魔王討伐に赴いたことも驚きだが、それを見事に回避して無事帰還したことはもっと驚きなんだぜ!
そしてもっと驚きなのは相手がなんで俺ー!?
その顔と勇者の肩書があったら相手なんて選り取り見取りだろ!?
同性とのセックスがスポーツ感覚の世界でもモテるのはやっぱりエリアスみたいなイケメンで、間違っても俺みたいな「フツメンの擬人化」という言い得て妙な二つ名を欲しいままにしているキング・オブ・フツメンのミジンコではない。
だからさ、わざわざミジンコ選ばなくても、せめて人類で済まそうよ?
人類、飽きちゃったのかよ?
そっかー、でもなんだか獣姦みあるぞ、勇者だな。
あっ、そうかこの人、本物の勇者だった。
それともあれか?
なんかの罰ゲームで告って来いって言われたのか?
いや、この勇者様って正義感強くて俺なんかよりずっと聖人君子って感じだし、そういう残酷な遊びするタイプじゃないからそれも違うか。
何故エリアスが自分をという疑問が大きいが、考えるまでもなく俺の返事は決まっていた。
二人の間に特別何かあったわけでもないし、それらしき雰囲気になったこともない。今までもこれからも。
こういうことで気を持たせるのはよくないのだ。
俺は間髪を入れずエリアスに頭を下げる。
「ごめんなさいお断りします!」
近くで見ると迫力すげえのな!
掘り深いし、睫毛長ェし!
つーか、治癒に伴う代償が何故か予想より早く発動してきたみたいで、今触れられると俺色々とヤバイんだけど……!
人肌に触れただけで背中がこうゾクゾクッとして、俺の息子さん明らかに元気になっちゃってるよな?
まだ五分も経っていないはずだけど、発動時間見誤ったか?
おかしいな。人数は十数人程度だから三十分後くらいだと思ったんだけど。
あ……もしかして、アレか?
患者さんだと思って頭数に入れてた人が実は付き添いの人だったか?
欠損の人とか盲目の人とか病気の子を連れた一家とか……考えてみたら他にも付き添いが必要な人ばかりだったような気がする!
だとすれば計算は合うな。ヤベエどうしよ。やっちまった。
お茶がいらないなら早く用件だけ言って帰ってくれないかな?
ていうか手を離してくださいお願いします!
俺は下肢にずくん、と熱が集まるのを感じて、どうにかエリアスの手を振り払おうと試みるも、掴まれた手はびくともしない。
エリアスは何やら思い詰めた顔をしているし、心なしか声も低い気がする。
それにいつも俺のことを「聖者様」と呼ぶ勇者に「ナナセ」と名前を呼ばれたのは多分これが初めてのことだ。
なんか俺、今結構な窮地に陥ってる感じ?
勇者様とか勝てる気がしないし、魔王ですら負けたくらいだし、どうしろってんだよこの状況!?
そんなことより切実な問題はチンコ爆発しそうってことだ!
俺は自分を落ち着かせるように深呼吸すると、なんだか一人で勝手に盛り上がっちゃってる様子のエリアスをなるべく刺激しないように、どうにかこうにかゆっくりと視線を外して俯くと自分の盛り上がった股間が目に入る。
いや、盛り上がっちゃってるのは俺の息子もだからひとりじゃないな。
訂正。俺を置いて二人で勝手に盛り上がらないで!
「な、なんでしょう」
「ナナセ」
勇者様、さっきから何故急に俺を名前で呼ぶんです?
今までずっと「聖者様」呼びだったのに突然距離なしかよ。
段階を踏もうぜ段階を。
エリアスはもう一度俺を名前で呼ぶと掴んだ手はそのままに、その場で左膝をついた。
騎士が左膝をつくのは左腰に佩いた剣を抜き難くして相手に対して害意がないことを示すためである。
もしかしたらエリアスは俺の様子がおかしいのを察知して害意がないと伝えるために跪いたのかもしれない。
しかし恐らくそうではない。
ここまでされたら余程鈍いヤツでもわかるだろう。
この世界で同性愛は典雅で高貴な趣味とされていて、同性同士で気軽にセックスする。
セックスレス大国である現代の日本と比べると、こっちの人たちは性欲も恐ろしいほどに強くて、仕事帰りに同僚と一発ヤッてくとかもうほとんどスポーツ感覚だ。
ギルドの会合で留守にしている所長も今頃はギルド員たちと娼館でお楽しみに違いない。
それにこの国では異性間での結婚は一人ずつしか認められていないが、同性間であれば何人とでも重婚できるのがそれに拍車をかけている。
同性間なら子供が出来ないため一代限りで終わるからというのが理由らしい。
だからこそ子孫を残すという利害を求めない無償の愛として王侯貴族の間では崇高な関係の同性を正妻に迎え、子孫を残すための社会的な関係の異性を側室にするのが一般的だ。
特にこの世界で花形の職業である騎士ともなれば男の恋人が幾人もいるのが普通だし、噂によると避妊の手間がいらない手軽さから、娼館には娼婦の数より男娼の数の方が圧倒的に多いらしい。
まあ老若男女を問わずな非モテな俺に色恋なんぞ縁のない話だったんですけどね、ついさっきまでは。
できればその可能性だけは除外して考えたかったのだが、嫌な予感というのは往々にして当たるもので、エリアスは俺の手の甲にその形のいい唇を落とした。
その刺激だけでガマン汁が下着を濡らすのを感じて身を震わせたのも束の間、勇者様は会心の一撃を放つ。
「魔王を倒したら言おうと決めていました。愛しています、ナナセ。私と結婚してください」
――と、ここで冒頭のエピソードに繋がるわけなのだが……。
待って♡
全く記憶にないんだが、俺いつ勇者様のフラグ立てたんだよ?
なんかそれっぽいイベントあったか?
勇者様に対しても自分に対しても突っ込みどころが多すぎて理解が追い付かない!
だいたいそれ、「オレ、この戦いが終わったら結婚するんだ」って所謂「死亡フラグ」だからな!
勇者様がそんなベタな死亡フラグを立てて魔王討伐に赴いたことも驚きだが、それを見事に回避して無事帰還したことはもっと驚きなんだぜ!
そしてもっと驚きなのは相手がなんで俺ー!?
その顔と勇者の肩書があったら相手なんて選り取り見取りだろ!?
同性とのセックスがスポーツ感覚の世界でもモテるのはやっぱりエリアスみたいなイケメンで、間違っても俺みたいな「フツメンの擬人化」という言い得て妙な二つ名を欲しいままにしているキング・オブ・フツメンのミジンコではない。
だからさ、わざわざミジンコ選ばなくても、せめて人類で済まそうよ?
人類、飽きちゃったのかよ?
そっかー、でもなんだか獣姦みあるぞ、勇者だな。
あっ、そうかこの人、本物の勇者だった。
それともあれか?
なんかの罰ゲームで告って来いって言われたのか?
いや、この勇者様って正義感強くて俺なんかよりずっと聖人君子って感じだし、そういう残酷な遊びするタイプじゃないからそれも違うか。
何故エリアスが自分をという疑問が大きいが、考えるまでもなく俺の返事は決まっていた。
二人の間に特別何かあったわけでもないし、それらしき雰囲気になったこともない。今までもこれからも。
こういうことで気を持たせるのはよくないのだ。
俺は間髪を入れずエリアスに頭を下げる。
「ごめんなさいお断りします!」
10
異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨
📖文庫版(紙の書籍)
📖Kindle(電子書籍)
📖BOOK☆WALKER(電子書籍)
次章続巻も順次刊行予定
OLOLON
※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
第一章 聖者降臨
📖文庫版(紙の書籍)
📖Kindle(電子書籍)
📖BOOK☆WALKER(電子書籍)
次章続巻も順次刊行予定
OLOLON
※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
お気に入りに追加
1,326
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)


怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

ある日、人気俳優の弟になりました。
雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。
「俺の命は、君のものだよ」
初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……?
平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる