ー竜の民ー 

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雲の下へ

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「いよいよだな…」

「あぁ、ついにこの日が来た。」


「これより、雲下調査を行う‼人類が、世界の謎に辿り着く日が来たのだ‼」

『オォーー‼』
そこにいる兵士全員が大いに高揚した。

「我々の下に広がる雲には果てがあり、そして、暗闇の最下層には地面がある。それを我々が証明するのだ!」

人類初の有人雲下調査は、第1、4、5、9飛行隊に託された。
三国で最も飛行経験が豊富なアクイラから部隊が選出された。
総員200名。
目標は地上に降り立ち雲の果てをその目で見ること。
食糧は15日分。大規模調査だ。
指揮は第9飛行隊隊長チャック=ゴルド。

「調査開始‼」
俺たちは一斉に雲の下へ飛び込んだ。

「想像以上の暗さだ…」
全員ランタンに点火し、光球魔法を使用することで視界を確保した。

俺たちは長い間ずっと下へ向けて降り続けた。

想像以上に精神がやられた。暗闇を永遠下に降り続けるのではないかという気がした。

ただ、「地上はある。」その言葉を信じるしかなかった。

食糧を運ぶのは4羽の鳥が息を合わせて下へおろした。
俺たち以上に神経が衰弱しただろう。

隣を見るとヴィルゴが震えていた。何か様子がおかしい。

「おいヴィルゴ、大丈夫か?震えてるぞ」

「あぁ、ピンピンしてるぜ。やっと人類は真実に辿り着こうとしてんだな。武者震いってやつだよこれは……」

でも、ヴィルゴの顔は恐怖に怯えている感じだった。

「総員、速度を落とせ‼」

「!?まさか…」

「これより“地上”に降り立つ‼」

その瞬間、人類は初めて地上に降り立った。
歴史上初の偉大な業績に兵士たちはわいた。
そこは天空の島々と違い、荒廃していた。

「ついに俺たちはここまで来た!俺は今地上にいる‼」
言葉では表しようのない感動がそこにはあった。

「そうか…ついにここまで来ちまったか…」
ヴィルゴが神妙な顔をしていた。

チャックさんが指示を出す
「まずは部隊毎にわかれ、この近辺を調査する。」

部隊毎に散開した。

「俺はこっちの方を見てきます。」

「待てヴィルゴ、単騎行動は危険だ!」
ランサーさんが止める。

「大丈夫ですよ」
ヴィルゴが飛び去る

「僕がついて行きます!」

「任せたぞトリアン。」

俺たちもバラバラになって調査した。

「おい、これ人工物じゃないか?」
俺は家の基礎のような物を見つけた。

「ほんとだ…なんで?」
サニーが問いかける

「これ相当古そうだよ…昔はここも人類の領地だったのかもね…」
シャルドの意見は間違いではないかも…

ーヴィルゴ方面ー

「待ってくれよヴィルゴ!」
ダメだ…追い付けない…

しばらくして、遠くにいたヴィルゴがこっちへ帰ってきた。

「ヴィルゴ…おいてかないでよ…」

「あぁ、悪い…」

「こんな暗いのに一人で行くなんて危なすぎるよ。」

「悪いな。心配かけて。」
「むこう見てきたんだがよ、特に何もなかったぜ。」

「ほんと?もっとちゃんと見た方が…」

ヴィルゴの表情が強張る
「俺の目が狂ってたっつうのか?」

「いや…そんなつもりじゃ…」

「冗談だよ、冗談。さ、皆の所へ戻ろうぜ!」

「う、うん。」

僕とヴィルゴは二人っきりで暗闇を飛んだ。

「ねぇ、ヴィルゴ。竜を操ったっていう犯人。もしもそれが僕ならどう思う?」

「え‼……まさかてめぇ‼」

「ち、違うよ‼もしもの話だよ。」
「僕は、もしもヴィルゴがその犯人だったら、凄くショックだな…だって僕たち、親友だもんね!」

「安心して良いぜトリアン、俺はその犯人ではない。そして、俺たちは親友だもんな!親友を悲しませるようなことはしねぇよ。」

「良かった…、これからもよろしくね!」

「おう!」

「今戻りました!」
僕とヴィルゴは隊へ戻った。

「家の基礎らしき物があったが、それ以外は何も無いな。」

二時間の部隊別調査が終わり、全部隊まとまって雲の果てを目指した。

「確かにさ…こんな暗くて深い場所に行こうなんて人はいないよね…なんで今まで誰も行かなかったのかなって思ってたけど、実際来てみて理解出来たよ…」

「そうだなシャルド…」

「前方、右手の方向に竜を発見‼」
兵士が叫ぶ。

「何!?」
兵士たちが一斉に光を竜に向ける。

竜は俺たちに気づくなり遠くへ逃げていった。

(なぜ襲って来ないんだ…?)

「ねぇ、レイン。」

「どうかしたかサニー。」

「今の竜、目が3つだったよ…」

『はぁ⁉』
皆も驚く。

「3つの目ってつまり、額にも、目があったってことなの?」
フォルナが聞く。

「うん…」

「街を襲う竜には宝石、襲わない竜には目…」
グレイも必死に考える。

「この前ランサーさんが言ってた、竜の侵攻は人の手によるものっていう考え。それと関係しているとしたら、竜は、額の目を宝石と入れ替えられて、それによって操られているってことになるね…」
シャルドが仮説を立てる。

「竜は、本来人を襲わないのかもな…」
真実は分からないけれど、俺はなんだか悲しくなった。

三日間歩き続けた。
鳥の体力を考えると、下手に飛べなかった。
暗闇の中では昼も夜も分からなかった。
正直鬱になりそうだった。

そして、4日目の朝、驚きの物を発見する。

それは錆び付いた巨大な金属の塊だった。
しかし、明らかに人工物である。
楕円形の塊から2つの細い筒が伸びていた。
どうやら何かの機械のようだ。
欠けた表面の隙間から中を照らして見てみると、長いベルトのような物と歯車が見えた。

「こんな巨大な物、よく作ったもんだな。ロスト・テクノロジーてやつかな」
チャックさんが嬉しそうだ。

そしてまた俺たちは暗闇を永遠歩き続けた。

7日目。遂に辿り着いた…
視線を真っ直ぐに向けると、そこには明るい世界が見えたのだ。

「雲の…果て…」

空には青空が見え、大地には植物を確認した。

「美しい…やっとここまで…」

無限に広がっていると思われてきた厚い雲には、果てがあった。それを証明した瞬間であった。

数人の兵士が望遠鏡で周囲を確認する。

すると、

そこに見つけたのだ。

大きな山の麓に、

要塞があったのだ。

それも太古の物ではない。

兵士たちはその時初めて、“地上人類”の存在を知った。

要塞の周りには数匹の竜を見た。

そこは紛れもなく、街を襲った竜が飛び立った場所であった。

あの惨劇の根源を、遂に天空人類は発見したのだ。

「ねぇ、あの巨大な要塞をおとしたらさ、俺たちは、平和を取り戻せるのかな?」
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