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写真機
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三国同盟、凄いな…
(あの時俺たちがザギートの救済に向かわされたのも、きっと同盟のきっかけをつくるためなんだろうな…)
三国同盟によって、ザギートへ魔法技術を提供することになってしまったが、ザギートからは、沢山の工業製品が送られてきた。
どれも面白い物ばかりでなんだかとても楽しい。
ザギートの連中も、もしかしたら平和を望んでいたのかもしれない。
魔法技術を恐れるあまり、過剰になってしまっていただけなんだと思う。
今はザギートと、魔法技術を利用した大型兵器も共同開発しているらしい。
人類がまとまった今、竜を倒すのはそんなに難しいことではないはずだ。
そういえば、ザギートから送られてきた製品の中に、写真機というのがあった。
風景を紙に写しこむ物らしいが、そんなこと本当に可能なのか?
どうやら貴重品らしく、軍司令部の方へ送られたらしい。
(一度でいいから近くで見たかったなぁ~)
第9飛行隊がぞろぞろと街を歩いていた。
第9飛行隊は特殊任務を行う部隊として知られている。
隊列の中に、ザギートの技士らしき姿もあった。
面白そうだから皆でついていってみた。
島の端で止まり、何やら機械らしきものを取り出した。
第9飛行隊の周囲には、すっかり人だかりが出来ていた。
「押さないで、押さないで!作業の邪魔になります‼一般の方はお引き取りください‼」
第9飛行隊員が叫ぶ。
「ちっ、なんだよな~」
「少しぐらい見せてくれたって良いじゃんね~」
「軍の奴らは頭がかたくて面白くねーな!」
市民が愚痴を言いながら帰っていく。
「なんだい?君たちは?」
「第4飛行隊の者です。作業を見学してもよろしいですか?」
「あぁ、うーん…邪魔はするなよ…」
(ずいぶん優しいな。もっとお堅い連中かと思っていた。)
ザギートの技士が口を開く。
「では、作業を始めます。」
「これは“写真機”と言います。中のテープがある限り連写を続けます。最後に中のテープを取り出せば、そこに風景が写っているはず。しかし、画質はそこまで良くはありませんので、あまり期待なさらず。」
技士がダイヤルを巻く。
「始めてよろしいですか?」
「構いません、始めてください。」
カチッ
技士がスイッチを押す
パシャ…、パシャ…、
自動で写真がとられていく。
写真機はロープで繋がれ、雲の下へ落とされていく。
「“風景を写す”って、あれを使って雲の下を調査するのか⁉」
思わずグレイが声を出す。
「シッ!静かに!あまりうるさいと帰って戴きますよ!」
「っ……」
写真機はやがて雲の下へ消えていき、連写音も聞こえなくなった。
技士が話し始める
「ザギート帝国では、以前から写真機による雲下撮影を行っているのですが、どの写真も真っ暗闇しか映っておらず、今回なにかが撮影される可能性は低いと思われます…」
「了解した。作業を続けてくれ。」
ロープの動きが止まった。
一分ほど時間をおいてから、技士がロープの巻き取り機へ向かった。
「引き上げます。」
シャー!
結構な勢いでロープが巻き取られるが、なかなか写真機の姿は見えてこない。
5分ほどたったか?やっと姿が見えた。
写真機に第9飛行隊の兵士が群がる
「どうだ?何か写ったか?」
「最初の20枚は雲の上の写真だね、綺麗に写ってる。」
「次から32枚目までは雲の中かな?薄暗くなっていくね…」
「おぉ‼いきなり真っ暗になっているぞ‼きっとここは雲の下だね!」
「うーん、本当に真っ暗闇で何も見えないな。写真機の故障って訳じゃないんだろ?だとすると雲の下は“底無しの無の世界”っていう説は間違っていなかったことになるね。」
「永遠と暗闇の写真だ…どれ程の距離下へ進だのかも分からないな。」
「無限だ!無限に暗闇の写真だ!いい加減飽きちゃうよまったく‼」
「隊長、落ち着いて!」
「あー、ここでテープが終わってる。特別なものは写らなかったね。」
「ちょっと待ってください!」
一人の兵士が叫ぶ。
「最後の写真のここ、ここ見てください!」
兵士が指差して示す。
「本当に少しだけですが、青い空が写ってませんか?」
「本当だ‼写ってる!」
「ということは、つまり…、」
「果てしなく広がっていると思われてきた、我々の下にあるこの雲には、」
「“果てがある”ってことか…」
兵士たちが大いにざわついた。
その発見が何の役にたつのかは分からない。
しかし、「真実」を知った。
それが、人類にとって大きな一歩であったことは、言うまでもない。
(あの時俺たちがザギートの救済に向かわされたのも、きっと同盟のきっかけをつくるためなんだろうな…)
三国同盟によって、ザギートへ魔法技術を提供することになってしまったが、ザギートからは、沢山の工業製品が送られてきた。
どれも面白い物ばかりでなんだかとても楽しい。
ザギートの連中も、もしかしたら平和を望んでいたのかもしれない。
魔法技術を恐れるあまり、過剰になってしまっていただけなんだと思う。
今はザギートと、魔法技術を利用した大型兵器も共同開発しているらしい。
人類がまとまった今、竜を倒すのはそんなに難しいことではないはずだ。
そういえば、ザギートから送られてきた製品の中に、写真機というのがあった。
風景を紙に写しこむ物らしいが、そんなこと本当に可能なのか?
どうやら貴重品らしく、軍司令部の方へ送られたらしい。
(一度でいいから近くで見たかったなぁ~)
第9飛行隊がぞろぞろと街を歩いていた。
第9飛行隊は特殊任務を行う部隊として知られている。
隊列の中に、ザギートの技士らしき姿もあった。
面白そうだから皆でついていってみた。
島の端で止まり、何やら機械らしきものを取り出した。
第9飛行隊の周囲には、すっかり人だかりが出来ていた。
「押さないで、押さないで!作業の邪魔になります‼一般の方はお引き取りください‼」
第9飛行隊員が叫ぶ。
「ちっ、なんだよな~」
「少しぐらい見せてくれたって良いじゃんね~」
「軍の奴らは頭がかたくて面白くねーな!」
市民が愚痴を言いながら帰っていく。
「なんだい?君たちは?」
「第4飛行隊の者です。作業を見学してもよろしいですか?」
「あぁ、うーん…邪魔はするなよ…」
(ずいぶん優しいな。もっとお堅い連中かと思っていた。)
ザギートの技士が口を開く。
「では、作業を始めます。」
「これは“写真機”と言います。中のテープがある限り連写を続けます。最後に中のテープを取り出せば、そこに風景が写っているはず。しかし、画質はそこまで良くはありませんので、あまり期待なさらず。」
技士がダイヤルを巻く。
「始めてよろしいですか?」
「構いません、始めてください。」
カチッ
技士がスイッチを押す
パシャ…、パシャ…、
自動で写真がとられていく。
写真機はロープで繋がれ、雲の下へ落とされていく。
「“風景を写す”って、あれを使って雲の下を調査するのか⁉」
思わずグレイが声を出す。
「シッ!静かに!あまりうるさいと帰って戴きますよ!」
「っ……」
写真機はやがて雲の下へ消えていき、連写音も聞こえなくなった。
技士が話し始める
「ザギート帝国では、以前から写真機による雲下撮影を行っているのですが、どの写真も真っ暗闇しか映っておらず、今回なにかが撮影される可能性は低いと思われます…」
「了解した。作業を続けてくれ。」
ロープの動きが止まった。
一分ほど時間をおいてから、技士がロープの巻き取り機へ向かった。
「引き上げます。」
シャー!
結構な勢いでロープが巻き取られるが、なかなか写真機の姿は見えてこない。
5分ほどたったか?やっと姿が見えた。
写真機に第9飛行隊の兵士が群がる
「どうだ?何か写ったか?」
「最初の20枚は雲の上の写真だね、綺麗に写ってる。」
「次から32枚目までは雲の中かな?薄暗くなっていくね…」
「おぉ‼いきなり真っ暗になっているぞ‼きっとここは雲の下だね!」
「うーん、本当に真っ暗闇で何も見えないな。写真機の故障って訳じゃないんだろ?だとすると雲の下は“底無しの無の世界”っていう説は間違っていなかったことになるね。」
「永遠と暗闇の写真だ…どれ程の距離下へ進だのかも分からないな。」
「無限だ!無限に暗闇の写真だ!いい加減飽きちゃうよまったく‼」
「隊長、落ち着いて!」
「あー、ここでテープが終わってる。特別なものは写らなかったね。」
「ちょっと待ってください!」
一人の兵士が叫ぶ。
「最後の写真のここ、ここ見てください!」
兵士が指差して示す。
「本当に少しだけですが、青い空が写ってませんか?」
「本当だ‼写ってる!」
「ということは、つまり…、」
「果てしなく広がっていると思われてきた、我々の下にあるこの雲には、」
「“果てがある”ってことか…」
兵士たちが大いにざわついた。
その発見が何の役にたつのかは分からない。
しかし、「真実」を知った。
それが、人類にとって大きな一歩であったことは、言うまでもない。
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