ー竜の民ー 

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火竜再来

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俺は第4飛行隊のメンバー全員と、なんとか挨拶を済ませた。

いちいち格好つけて喋る人とか、顔はいいんだけど常に唇カサカサの人とか、アフロの人とかが居て、なんというか皆独特だった。
ただ、全員仲が良くて、信頼しあってるのは伝わってきた。


それから五日後の夜のことだった

「ヒュー…ドドーン…」

遠くで信号弾の音が聞こえた。

第4飛行隊の皆が、本部の屋上へ駆け上がる。

「アレ、なんですかね?」

フォルナが指さした方向に、全員が目を向ける

見えるかどうか怪しいくらいの遠方に、赤い狼煙(のろし)が上がっていた。

「狼煙がたっている小島、あそこは恐らくザギート領の砦がある場所だ。」
バルトさんが的確に話す。

「アクイラ、フローラへの攻撃開始を意味していたらどうしましょう…」
シャルドが怯えている。

「分からない、だが、警戒しておけ…と、部隊長が言っている。」

(ランサーさんと部隊長は心が通じているのか?)

さらに遠くで、鋭い光が点滅する。

………ドゴ、ドドドドドドドドドド

大砲の発射音が遅れてやってくる。

ドドドドドドドドドドドド

大砲の音は鳴り止まない

ピカッ
赤い閃光が非常に眩しい。一体なんだ?

「今の光…」

急に静かになった。大砲の音が鳴り止んだ。

少しずつザギートの街が赤く染まっていくのが見えた。

「燃えている…」

「竜だ。また竜が攻めてきたのだ。」
ランサーさんが冷静に言う。

「ザギート領ということは、こちらとしては下手に動けないな…」

「奴らなら、きっと大丈夫さ。」


ダダダッ

すぐ近くで、誰かが走るような音がした。

「軍司令部からの命令です‼」
伝令兵が駆け込んできた。

「ザギート帝国上空に火竜の姿を確認。直ちに現場へ急行し、目標を殲滅せよ。」

「何だって⁉ザギートとは敵対関係だろ‼奴らの為に命かけろって言うのか⁉」
ヴィルゴが動揺する。

「司令部からの命令だ。従うしかない。各員、戦闘準備開始!」
ランサー副部隊長の命令で一斉に動き出す。

「部隊長を先頭に奴のもとへ向かう。総員離陸せよ!」

50名の兵士が綺麗に隊列を組んで飛行する。

周囲を見渡すと、他の部隊も現場へ急いでいた

ザギートまではかなりの距離だ。

「ザギートまでは時間がかかりそうですが、もちますかね?」
左隣を飛んでいたリビアさんに聞いてみた。

「わからねぇ。奴らは飛行戦力が不足してるだろうからな…きっと苦戦するだろうぜ。ただし、俺は奴らの実力を信じてる。万が一負けちまいそうになった時は…俺が奴の息の根を止めてやるぜ…」


(半分くらいの距離まで来たか。愛鳥のモサキチも少し疲れてきているみたいだ。)

「奴に近づいてきた。いつ竜がこちらに向かってくるかわからない。全員軍刀を抜いておけ!」

ドン!…ドン!…

「これは高射砲の音だ。ザギートの連中も、何とか踏ん張っているみたいだな。と、部隊長が言っている。」

(ん?今、部隊長サイン出してた?ランサーさん自分の意見言ってるだけじゃない?)

「もうすぐだ!」

アクイラの時より酷いな…

下には燃え盛る火の中で、必死に抗うザギートの陸上部隊が見えた。

「あわれなもんだな…政府の都合で俺たち兵士はこんなにも酷い目にあっちまうんだな」
ヴィルゴが悲しそうに言う。

「確かにそうだね、飛行兵力が満足にあったら、こんなに酷くはならなかったかも…」
サニーも辛そうな表情だ。

「ブゴォォォォオ」
竜が火を吹く。

下にいたザギート兵の姿が一瞬で火にかきけされた。

第4飛行隊の皆は目を背ける。
「酷い…」

竜に突撃する飛行部隊が見えた。

「あれは第3飛行隊だ!先を越される前に、俺たちも行くぞ‼」

部隊長がサインを出した。

「長剣の魔法をもって、奴の右翼を狙う!きっと前回の戦闘で傷ついている筈だ!」

「総員、攻撃開始‼」

前にいた先輩の兵士が凄い勢いで突撃する。
俺たちはついていくのもやっとだった。

(あれ?おかしいぞ、奴の右翼の付け根、傷痕こそ残ってはいるが、傷口が綺麗に閉じている…投擲弾魔法で爆破してやったんだ、きっと複雑な傷をおったはず。それなのに…)

シュバ…シュバババッ…

「グォォォオン」
一瞬で竜の翼がボロボロになる。

別の部隊も飛びかかる。
竜は全身に傷をおった。

「強い…これが先輩たちの実力…」 

「チッ…あいつの傷口綺麗にふさがってやがったな、竜は驚異の回復力を持っているのかもしれん。」
バルトさんが冷静に分析する。

怒った竜が飛び回る。

「一旦距離をとれ‼今近づくのはまずい‼」

どの部隊も竜から距離をとっていた。
竜を囲むようにバラけている。

サニーが射撃の構えをとる。

「よせ!サニー、今うてば味方に命中する可能性がある!」
リビアさんが警告する。

「大丈夫です!」

ピシューッ

「グガァァァァア‼」
動き回る竜の左目に完璧に命中する。

いきなり竜の動きが鈍くなる。

「今だ‼総員、奴をしとめろ‼」


兵士たちの一斉攻撃が、竜の体を貫いた。

竜は絶命し、ザギートの燃え盛る街の上に落ちた。

もの凄い地響きと轟音が、ザギートの夜の街を襲った。


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