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魔泉軍刀
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う~ん……… ハッ!今何時だ?…良かった…
昨晩は緊張でよく眠れなかった…
今日は大事な軍刀実技試験だ。この試験で良い成績を残せば、最短距離で兵士になれる。
今まで軍刀の使用法は兵団学校で習ってきたが、実際触ってみないと自分に扱えるのか分からない。
(頭では分かっていても、出来ないことってのはあるからな…自分に“素質”があるのかどうか…)
兵団学校へ向かう最中、ずっと余計な事をゴチャゴチャ考えた。緊張し過ぎて、足元がフワフワする感じだ。
「おぉ、そこにいるのはレインくんじゃないか!」
(この声は…)
「おはようございます、クラウドさん。」
(今の俺に長話を聞いている余裕はない。)
「今日は何やら大事な試験があるんだろぅ、頑張ってきなよ!またな!」
(お…!?今日はやけにあっさりと終わったな…
それにクラウドさんから会話を終わらせるなんてのは初めてだ。)
クラウドさんは、何処かへ急いでいるようだった。
そういえば最近、クラウドさんは鳥に乗ってよく出掛けているようだとお父さんに聞いた。
(もう60近いっていうのに…若いな。)
やべっ、急がなきゃ!
「これより魔泉軍刀の実技試験を始める!」
「はい‼」
「と、その前にこの軍刀についての知識をおさらいしたいと思う。」
「はい‼」
「この軍刀は、魔泉軍刀という。」
「魔泉とは、近年アクイラ~フローラあたりの地下から湧き出た青い液体のことだ。」
「生物の死骸や鉱石の成分が溶け込んでいると思われ、第一発見者によれば、触れた瞬間ガラスのように固まったというんだ。そしてその後、気体となって消えてしまったらしい。不思議だろう?」
(おい…軍刀の話するんじゃないのか…必要な事だけ話してくださいよ…)
「この魔泉はどうやら生物が発する僅かな電気信号によって変質するものと考えられている。それも様々な性質に変化するのだ。」
「その性質を生かして戦おうというのがこの軍刀のコンセプトさ!」
(やっと軍刀の話だ…)
「鍔についているこの“穴”を見てくれ」
「ここから変質した魔泉が吹き出て様々な攻撃を行える。まるで魔法のように。」
「柄の中は空洞になっている。」
「この空洞に魔泉が入ったカートリッジを差し込むことで、始めて攻撃を行えるのだ。」
「魔法を出すと魔泉は減っていく。魔法の種類によって消費量も違う。そして、何よりも大事なのが使い手の精神力と集中力だ。」
「柄を握り、出したい魔法を強くイメージすることで魔法を放てる。イメージが強ければ強い程、威力もあがる。」
「後は細かい工夫を聞いてくれ。この軍刀、逆さにしても刀身が鞘から抜け落ちない。鞘に納めた瞬間ロックが掛かるのだ。鍔を指で弾くことで解除される。これで空中戦も心配なしだ。それにここ、柄のところが透明になっている箇所があるだろう、ここから魔泉の残量を確認できる。どうだい?すばらしいだろう?」
(話長い…しかもどれも授業で何度も聞いた。)
レプス教官は生粋の武器マニアで、どうも武器の話になると熱が入ってしまうようだ。
「実際に見てみなければいくら説明しても仕方がない。誰か、前に出てきてくれないか?」
(これはチャンスだ!試験前に軍刀に触れることができれば、有利に働くかもしれない。)
俺は周りを気にせず、全力の挙手を繰り出した。
これには流石の教官も少し驚いた様子だった。
「おぉ…では、レイン=クライシスくん、前に来てくれ」
「はい。」
「へっ…確かに、運動もダメ、勉強もダメ、意気込みだけはいっちょまえのレインくんには、お似合いの仕事だな!」
(くっ…ヴィルゴの奴、いちいち俺にからむなよ)
「おい、やめとけよ」
(ありがとうトリアン…いい奴だ。)
レプス教官は俺をマネキンのように動かして、皆に軍刀の構え方を教えた。
「それでは、ちょっと使ってみるか」
(いよいよだ!)鼓動が速くなるのを感じる。
「まずは“長剣魔法”だ。5~6mはあろうかという光の刀身が産み出される。」
俺は必死に念じ続けた
(長い剣、長い剣、長い剣、……)
ブォン…
「素晴らしい!初めてにしては上出来だ‼」
「やった…出たぞ…俺も、やれば出来るんだ…」
「次は“盾”の魔法だ!」
これもなんとか成功した。小さめではあるが、しっかり刀身に透明な盾がくっついている。
「最後は“射撃魔法”だ。これは難しいぞ。」
「“遠くを攻撃する”と強く想い続けるんだ。」
(遠くを攻げk……) ……………。
一瞬だ。ほんの一瞬だけ見えたんだ。はっきりと。空の向こうに、雲と雲の間に、あの黒い塊を。
「…インくん、レインくん、」
はっ、と我にかえる。
「ほら、早くやってみたまえ。」
(えぇと、なんだっけ、盾?それはさっきやったか、射撃だっけ?えっと、えーっと)
「あっ、うわぁぁあ」
ポンッ…………カランカラン………
「ブッハハハハハハハハ」
一斉に笑いが起きる。もう何がなんだか分からない。
よく見ると、地面に小さな盾が転がっていた
「射撃と盾を同時にイメージしたのかい?盾を発射だなんてwなかなか出来たもんじゃないw興味深いものを見せてもらったよ、ありがとうw」
「そんなに笑わないでくださいよ、教官。」
「いや、悪いね、君はなかなかセンスがあるよ。この後の試験、頑張ってくれ。」
ハァ…なんだかもう疲れたよ……
昨晩は緊張でよく眠れなかった…
今日は大事な軍刀実技試験だ。この試験で良い成績を残せば、最短距離で兵士になれる。
今まで軍刀の使用法は兵団学校で習ってきたが、実際触ってみないと自分に扱えるのか分からない。
(頭では分かっていても、出来ないことってのはあるからな…自分に“素質”があるのかどうか…)
兵団学校へ向かう最中、ずっと余計な事をゴチャゴチャ考えた。緊張し過ぎて、足元がフワフワする感じだ。
「おぉ、そこにいるのはレインくんじゃないか!」
(この声は…)
「おはようございます、クラウドさん。」
(今の俺に長話を聞いている余裕はない。)
「今日は何やら大事な試験があるんだろぅ、頑張ってきなよ!またな!」
(お…!?今日はやけにあっさりと終わったな…
それにクラウドさんから会話を終わらせるなんてのは初めてだ。)
クラウドさんは、何処かへ急いでいるようだった。
そういえば最近、クラウドさんは鳥に乗ってよく出掛けているようだとお父さんに聞いた。
(もう60近いっていうのに…若いな。)
やべっ、急がなきゃ!
「これより魔泉軍刀の実技試験を始める!」
「はい‼」
「と、その前にこの軍刀についての知識をおさらいしたいと思う。」
「はい‼」
「この軍刀は、魔泉軍刀という。」
「魔泉とは、近年アクイラ~フローラあたりの地下から湧き出た青い液体のことだ。」
「生物の死骸や鉱石の成分が溶け込んでいると思われ、第一発見者によれば、触れた瞬間ガラスのように固まったというんだ。そしてその後、気体となって消えてしまったらしい。不思議だろう?」
(おい…軍刀の話するんじゃないのか…必要な事だけ話してくださいよ…)
「この魔泉はどうやら生物が発する僅かな電気信号によって変質するものと考えられている。それも様々な性質に変化するのだ。」
「その性質を生かして戦おうというのがこの軍刀のコンセプトさ!」
(やっと軍刀の話だ…)
「鍔についているこの“穴”を見てくれ」
「ここから変質した魔泉が吹き出て様々な攻撃を行える。まるで魔法のように。」
「柄の中は空洞になっている。」
「この空洞に魔泉が入ったカートリッジを差し込むことで、始めて攻撃を行えるのだ。」
「魔法を出すと魔泉は減っていく。魔法の種類によって消費量も違う。そして、何よりも大事なのが使い手の精神力と集中力だ。」
「柄を握り、出したい魔法を強くイメージすることで魔法を放てる。イメージが強ければ強い程、威力もあがる。」
「後は細かい工夫を聞いてくれ。この軍刀、逆さにしても刀身が鞘から抜け落ちない。鞘に納めた瞬間ロックが掛かるのだ。鍔を指で弾くことで解除される。これで空中戦も心配なしだ。それにここ、柄のところが透明になっている箇所があるだろう、ここから魔泉の残量を確認できる。どうだい?すばらしいだろう?」
(話長い…しかもどれも授業で何度も聞いた。)
レプス教官は生粋の武器マニアで、どうも武器の話になると熱が入ってしまうようだ。
「実際に見てみなければいくら説明しても仕方がない。誰か、前に出てきてくれないか?」
(これはチャンスだ!試験前に軍刀に触れることができれば、有利に働くかもしれない。)
俺は周りを気にせず、全力の挙手を繰り出した。
これには流石の教官も少し驚いた様子だった。
「おぉ…では、レイン=クライシスくん、前に来てくれ」
「はい。」
「へっ…確かに、運動もダメ、勉強もダメ、意気込みだけはいっちょまえのレインくんには、お似合いの仕事だな!」
(くっ…ヴィルゴの奴、いちいち俺にからむなよ)
「おい、やめとけよ」
(ありがとうトリアン…いい奴だ。)
レプス教官は俺をマネキンのように動かして、皆に軍刀の構え方を教えた。
「それでは、ちょっと使ってみるか」
(いよいよだ!)鼓動が速くなるのを感じる。
「まずは“長剣魔法”だ。5~6mはあろうかという光の刀身が産み出される。」
俺は必死に念じ続けた
(長い剣、長い剣、長い剣、……)
ブォン…
「素晴らしい!初めてにしては上出来だ‼」
「やった…出たぞ…俺も、やれば出来るんだ…」
「次は“盾”の魔法だ!」
これもなんとか成功した。小さめではあるが、しっかり刀身に透明な盾がくっついている。
「最後は“射撃魔法”だ。これは難しいぞ。」
「“遠くを攻撃する”と強く想い続けるんだ。」
(遠くを攻げk……) ……………。
一瞬だ。ほんの一瞬だけ見えたんだ。はっきりと。空の向こうに、雲と雲の間に、あの黒い塊を。
「…インくん、レインくん、」
はっ、と我にかえる。
「ほら、早くやってみたまえ。」
(えぇと、なんだっけ、盾?それはさっきやったか、射撃だっけ?えっと、えーっと)
「あっ、うわぁぁあ」
ポンッ…………カランカラン………
「ブッハハハハハハハハ」
一斉に笑いが起きる。もう何がなんだか分からない。
よく見ると、地面に小さな盾が転がっていた
「射撃と盾を同時にイメージしたのかい?盾を発射だなんてwなかなか出来たもんじゃないw興味深いものを見せてもらったよ、ありがとうw」
「そんなに笑わないでくださいよ、教官。」
「いや、悪いね、君はなかなかセンスがあるよ。この後の試験、頑張ってくれ。」
ハァ…なんだかもう疲れたよ……
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