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act.09
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[10]
「立ち聞き魔だな」
クリスがニヤニヤと笑う。
クリスは壁際に飾ってある小さく華奢な革張りの椅子を自分の座っていたシングルソファーの横に置くと、「ま、こっち来て座れよ」と言った。
ショーンは無言のままおずおずと足を進め、素直にストンと腰掛ける。
ショーンは俯いたまま。
そしてスコットも俯いたままだった。
「・・・いつから・・・起きてたんだ?」
遠慮がちにスコットが口火を切る。すぐに小さな声でショーンが答えた。
「スコットが部屋を覗いた時から」
互いに視線は合わさなかった。
そんな様子を見て、クリスが溜息をつく。
「もう最悪だな、お前さんらは。互いに相手のことを好きだ、好きだと言っておきながら、自分で垣根を作るなんて何様だ。まったく付き合ってられないね」
クリスが煙草を銜えながら席を立つ。
その気配を察して、ショーンもスコットも同時に顔を上げ、クリスを見た。
双方とも、ここでクリスにいなくなられたら大変と、必死な顔つきをしていた。
クリスは両側からそんな視線を受けて、ガリガリと頭を掻く。口をへの字に曲げた。
「・・・まったく・・・。ホント、やな性格してるね、お前さん達は」
目で語るところなんか、そっくり過ぎて涙が出てくるってもんだ・・・とクリスは小さく悪態をついた。
そうして再び、ソファーに腰掛ける。
彼は横柄に足を組んだ。
「俺の貴重な睡眠時間を削ってるんだ。是非とも実のある話し合いにしてくれよ」
それはもっともな話だった。
クリス・カーターは己の利益しか考えない偏屈男だと町中の噂だったのに、今はこうしてショーンととスコットのために時間を割いてくれている。そればかりか、昨日から家出同然で飛び出してきたショーンの面倒を手厚くみてくれた。
冷たい印象を与える美貌や自信に満ち溢れている物の言い方が、町に馴染まない雰囲気なので、そんな噂が立つのだろう。
今やクリスはショーンの頼みの綱のような存在で、おそらくスコットも同じようにクリスのことを見ていた。
そのことを考えると、何か奇妙な感じがして、ショーンは少し笑みを浮かべる。その笑みは次第に大きくなって、最後には声を上げて笑っていた。
スコットもクリスも、突然笑い出したショーンに目を丸くしている。
「何だよ。不気味なガキだな」
思わず毒づくクリスを、スコットが責めるような視線で見つめた。
その視線を見ても、スコットとクリスが、ショーンが思っている以上に“知った間柄”だと分かる。
ショーンはその疑問をストレートにぶつけた。
「ねぇ。二人ってさぁ、したの? セックス」
明らかに二人が全身硬直した。
スコットはクリスを見つめたまま。
クリスに至っては、煙草を銜え、鼻から煙を細く吐き出しながらという始末だ。
「やっぱ、そうなんだ。・・・だからスコットは俺にここには来るなってあれほど言ったんだね。何だっけ・・・確か『クリス・カーターは悪い噂の絶えない人間だ』」
「や・・・、それはな、ショーン・・・」
ショーンに向き合うスコットを今度はクリスが恨めしそうに睨み付ける。
「お前、俺のことを息子にそう教えてたのか・・・」
如何にも恩を仇で返しやがってという口調に、再びショーンは笑い声を噛み殺す。
ショーンの言ったことに慌てている大の大人二人の反応がおもしろかった。
「だから、悪かったって。あんなことがあったんだ、隠したいものだろ、普通」
スコットがそう言うと、
「誤魔化しきかない手前の不器用さが悪いんだろ? 俺のせいにするなよ」
とクリスが口を尖らせる。
同世代同士の飾らない会話。
そんな風に話しているスコットを、ショーンは初めて見た。
そしてショーンは、自分の中に渦巻いている苦しみを和らげる糸口がそこにあるような気がして、表情を和らげた。
「で、結局、どうしてそんなことになったの?」
ショーンが少し意地悪にそう訊くと、二人同時にショーンを見て言った。
「クリスの優しさについ甘えてしまったんだ」
「お前さんのパパがおいしそうで、弱みにつけ込んだんだ」
二人が声を重ねるように同時にそう言った後、一瞬の間が空いて、ショーンはプッと吹き出した。
そしてケタケタと笑った。
次第にクリスが笑い出し、スコットもやがて笑顔を浮かべる。
そして三人でしばらく笑いあった。
凄くおかしくて朗らかで、そしてちょっぴり切なかった。
目尻に浮かんだ涙を、ショーンは指で拭った。
「・・・スコットの気持ちはよく分かったよ、俺」
ふいに笑うのを止め、静かな声でショーンは切り出した。
「俺がどう足掻いても、親子としてしか見てもらえないってことも、スコットの正直な気持ちなんだよね。・・・それに、スコットが俺のことをどれだけ大事に思っていてくれているかも分かった」
「ショーン・・・」
今にも泣きそうな顔つきでスコットがショーンを見つめる。
「俺、嬉しかったよ。どんな思いであれ、スコットが何より俺のことを愛してくれているのは、やっぱり嬉しいもの。・・・だけど、すぐにまた元の親子に戻るのは、やっぱり難しい・・・・。自分が納得できるだけのきっかけが欲しいんだ」
ショーンは大きく息を吐くと、今度は真っ直ぐクリスを見た。
「だからクリス。スコットとセックスしてよ。今夜、ここで。その後、俺ともセックスをして」
ポロリ。
クリスの口から煙草が落ちる。
クリスの腹部に落ちたそれは、しばらくしてジジジとシャツを焦がした。
ようやくクリスがそれに気づき、「アチチチチ」と煙草を取り上げ、灰皿に押しつける。
「お前、それ本気で言ってるのか?」
クリスは声を荒げて言った。
全身真っ赤にして再び硬直しているスコットを横目で見ながら、クリスは眉間に皺を寄せた。
しかしショーンはいたって真面目だった。
「スコットとできないのは分かってる。そんなことで罪悪感を持たせたくないし・・・。それなら、スコットとセックスしたアンタとしたい。俺だって、これから先本気で好きかどうか分からない女の人と記憶にも残らない初体験をするのなら、自分が納得した相手と初めてのセックスがしたいもの。・・・確かに・・・確かにとんでもないことだと思う。非常識も甚だしいって思うかも知れない。けれど、俺にとっては必要なことなんだ。きっと、納得できる何かがそこにあると思う」
驚くほどの静寂が訪れた。
もう誰も、ショーンの事を茶化した表情で見てはいなかった。
それは、ショーンが必死に弾き出した答え。
成就しなかった思いを消化するために考え抜いた方法だった。
・・・突拍子もない考えだがな・・・。
やっぱ頭のいい奴は、考えることもぶっ飛んでるとクリスは心の中で呟きながら、パンと両手を叩き合わせた。
「よし。分かった。おい、スコット。一人でシャワー浴びられるか?」
スコットが目を丸くする。
「おっ、おい。本気でやる気か?」
「冗談だと思うか?」
クリスは立ち上がりながらスコットを睨み付ける。
「テメェの息子が腹カッ捌いて考えたんだ。お前のことを諦めるためにな。それぐらいのご褒美、くれてやれ」
クリスは寝室のドアを開けると、ドアのすぐ側にあるクローゼットを開けゴソゴソと中を探った。
クリスはバスローブと厚手のバスタオルを取り出すと、それをスコットに向かって放り投げた。
スコットはそれを受け取り、しばらくじっとそれを見つめている。
ショーンもクリスも黙ってスコットの返事を待った。
スコットがショーンを見る。
「お前の望まない結果となっても後悔しないか? 男同士のセックスは、男女のそれとは違って、グロテスクなところもある。お前が想像していた事とまったく違っていたら・・・」
「大丈夫だよ。嘘はいらないんだ。スコットが何を求めているのかが知りたい。それがどういうものなのかを知りたい。そこに何があろうと、これだけは断言できる。後悔はしない。絶対に。だから、スコットもそう思って。前みたいな親子には戻れないかもしれないけど、また新しい気持ちでスコットと向き合いたいんだ」
ショーンの言葉で、スコットの中でも躊躇いが吹っ切れたらしい。
スコットは僅かに微笑むと、小さく頷いた。
三十分ほどして、リビングのソファーに座っていたショーンは、寝室のドア越しクリスに呼ばれた。
もうスコットとセックスを済ませてしまったのだろうか、その割に静かだったのに・・・と訝しげに思ったショーンがドアを開けると、バスローブを羽織ったままベッドの上にいるスコットと目があった。
クリスも同じようにバスローブを着たままで、乱れた様子はない。
ショーンは怪訝そうにクリスを見つめると、彼は言った。
「声だけ聞いてたって意味あるか。そこで見て勉強しろ」
クリスは顎で寝室の片隅にある椅子を指す。
流石に見学することまでは許してもらえないと思っていたショーンは、「え、いいの?」と思わず訊き返した。
やはりスコットは酷く緊張した顔つきをしている。
そのスコットの首に手を回しながら、クリスがニヤリと笑った。
「心配しなくても、外野の存在なんて分からなくなるまで、ドロドロにさせるから」
そんなものなのか・・・?と思わず自問自答したショーンだったが、妙に探求心が刺激された。本当にそうなら、そうなる様を見てみたい。
ショーンは腕組みをして椅子に座った。
クリスがハハハと笑う。
「なかなか研究熱心な顔つきをしてやがる。どうせなら、パパの好みをダイレクトに知りたいだろう? よく見ておけよ・・・」
そう言ってクリスは、スコットの口を塞いだ。
のっけから、濃厚なキスだった。
道ばたで恋人達が交わすものとは全く違う、明らかに性的興奮を高めるためのキス。
最初は羞恥心もあってか、ただ受け身のスコットだったが、クリスのうまい責めに次第に応えるようになっていく。
二人の口の合間から、時折艶めかしい舌が見え隠れする。
飲み損なった唾液が二人の唇から零れ落ちた。
その間にも、クリスの手がスコットのバスローブの紐を外し、前を少しはだけさせる。
厚い胸板がちらりと見えた。
クリスが、胸板に手を這わせる。
バスローブの影に隠れている乳首を捕らえたのだろうか。
親指を押しつけてクリクリと動かしているのが分かる。その途端にスコットの身体がピクリと跳ね上がった。「・・・ん」と鼻を鳴らす。
しかしクリスは、なおもキスをやめない。
もう片方の空いた手が反対側の胸を撫でた後、脇腹をさすり、恐らく何も着けていない筈の股間に侵入していく。
ショーンの座っている位置からは、丁度スコットが痛めた右膝が邪魔をしていて確信部分は見えない。
「んん!」
スコットが唸り声を上げ、クリスのキスから逃れようとする。
それでもクリスは許さない。
まるで全身の力を奪い尽くすようにスコットの唇を貪る。
胸元と股間を愛撫する手は微妙な動きを繰り返し、ピクリピクリとスコットの身体が跳ねた。
堪らなくなったのか、スコットの手がクリスの背中に回され、バスローブをぐっと掴む。あからさまに爪を立てる仕草が色っぽい。
日頃、爽やかなスコットがまさかそんな表情を見せるなんて、思ってもみなかった。
ここまで来ると、ショーンも薄々分かってくる。
スコットは、責められる方が好みなのだ。
身体付きを比べると明らかにスコットの方が逞しい体躯をしているし、外見の男っぽさもスコットの方が勝っている。だが実際に主導権を握っているのは明らかにクリスで、「抱いている」のは、クリスの方だと言えた。
クリスがようやくスコットの唇を解放すると、その瞬間スコットは「あぁ!」と嬌声を上げた。その艶っぽい声にスコット自身赤面し、慌てて口を噤む。
「・・・何だ。まだ声を我慢する余裕があるのか・・・?」
低い声でそう囁くクリスは、言葉でもスコットを責める。
「ペニスの先をもうこんなにしておきながら、往生際が悪い・・・。前はもっと素直に感じていただろう?」
スコットが首を横に振る。
やはり息子が見ているという抵抗感が彼をまだ支配しているのだろう。
だが、耳を嬲られ、首筋に舌を這わされ、スコットは何度も背を仰け反らせた。
乱れたバスローブが肩から落ちる。
背中から尻のラインが現れた。
スレンダーだが、充実した大人の身体。
花形クォーターバックの頃の彼と全く変わっていない美しい筋肉。
まどろっこしそうにバスローブを脱いだクリスの身体がしなやかな若木のような身体だけに、余計スコットの逞しさが強調される。
だが、支配しているのはスコットより華奢なクリスなのだ。形勢が完全に逆転しているようで、刺激的である。そしてなお、純粋に美しく見えた。二人の整った肢体が絡んでいる様は、艶やかな空気を漂わせているにも関わらず、芸術作品のようにも見えた。
唇を噛みしめて声を押し殺しているスコットに焦れたのだろうか。股間を愛撫するクリスの動きが激しさを益す。
「ふっ・・・くっ!」
強い快感にスコットはベッドに倒れ込んだ。
それでも股間をショーンから隠そうと痛む筈の膝を立てる。
なおもクリスの手荒な愛撫は続いた。早いところスコットを高ぶらせて意識を飛ばすようにさせようという思いがあってのことか。
スコットの綺麗に割れた腹筋が大きく波打ち、僅かだがクチュクチュと濡れた音が聞こえてくる。
男同士だからショーンにも分かった。
スコットのそれは既に先走りを漏らして、クリスの手を濡らしているに違いなかった。
時折太股の陰から、赤く露出した先端が垣間見える。そこはやはりしっとりと濡れ光っていた。
クリスは刺激されて赤みを帯びた乳首に舌を這わす。
そして股間の手はペニスを愛撫するのを止め、尻を包むように手の位置を変えた。
ショーンが座っている位置から見ても、クリスが何をしているか分かる。
クリスの中指が、スコットのアヌスに押し込まれていく。
ビクリと大きくスコットの身体が跳ねた。
「ここまで濡れてるから、指もすんなり入る・・・」
クリスがそう言うと、スコットは目尻を益々ピンク色に染めた。嫌々をするように頭を左右に振るスコットの表情は、苦しそうだ。吐き出す呼吸が荒い。
クリスが指を動かす度に、また水に濡れた音がする。
クリスの長い指が一際奥まで突っ込まれた瞬間、スコットが身体を仰け反らせ、
「うあぁ・・・んん!」と遂に声を上げた。
ショーンは純粋に痛いのだと思った。
ショーンが眉間に皺を寄せると、ちらりとクリスがショーンを見る。ショーンの心配げな顔を見て、ショーンが何を考えているのか分かったのだろう。
クリスは笑みを浮かべると、
「お前のパパが一番好きなところなんだよ。痛いんじゃない。ほら、よく見てみろ」
と言って、左手でスコットの右膝を静かに割開いた。
「あぁ・・・! よせっ! 嫌だ・・・」
スコットが細い声を上げる。
スコットのそこは、クリスの指を深く銜え込んだまま、硬く勃起し続けていた。
スコットがクリスの手を逃れようともがく度に、ペニスの先から新たな先走りの透明な液が零れ落ちる。
スコットは顔を更に真っ赤にし膝を閉じようとするが、怪我をしている膝に思うように力が入らない。更に指を二本一気に増やされ、大きく喘ぐ。
── 凄い・・・あんなに大きくして・・・。本当に感じてるんだ。
ショーンは圧倒されてしまった。
男同士のセックスは、アヌスを使うということはショーンでも知っていたが、便宜上そうしているだけだと思っていた。まさか、そんなに気持ちいいものだとは。
自分もそうなのだろうか・・・とショーンの中でいろんな好奇心が沸き上がってくる。
「なぁ、どんな感じなんだ? ここはさっきからキュウキュウ締め付けてくる。そんなに入れられるのがいいのか? もっと大きいのが欲しいんじゃないのか?」
元々クリスの好みなのか、それともクリスがスコットの好みに合わせているのか。クリスはセクシーな声でスコットを責め立てる。
スコットはクリスの声に応えることはしなかったが、クリスが淫乱な言葉を吐く度にスコットのペニスがピクピクと震えた。
「はぁ・・あ・・・あぁ・・・ん・・・うぅ・・・」
喘ぎ声ももはや止めることもできず、次々と零れ落ちてくる。
「欲しいって言ってみな? これが欲しいって」
スコットの手を掴んで、クリスは自分の熱くそそり立ったペニスを掴ませる。
今まで目を閉じていたスコットが薄く目を開ける。
クリスのペニスをゆっくりと扱きながら、とろけた瞳で、クリスを見つめた。
酷く甘えた目の表情。
ああ、そうか、とショーンは思った。
スコットは、甘えているのだ、と。
普段は決して人に甘えることも頼ることもしないスコット。
一心不乱に働き、どんなことも我慢してきた。
そのスコットが唯一他人に甘えることのできる瞬間なのだ。
しかも、その瞬間を引き出すことができる人間は、限られている。
── 俺みたいな子どもじゃぁ、甘えられる筈がない・・・。
ショーンの中で憑き物が落ちたような気がした。
ああやっぱり、俺じゃ駄目なんだ。
素直にそう思えた。
スコットが、クリスの耳元で何かを囁く。
クリスが嬉しそうに微笑んだ。
今までの淫乱な表情とは違って、今までクリスが見せたことのない人なつっこい笑顔だった。
スコットのこめかみにキスを落としながら指を引き抜き自分のペニスにゴムを被せると、先をあてがう。
数回円を描くように擦り付けて、一気にくびれまで挿入した。
「あぁ!!」
ビクビクとスコットの身体が痙攣する。
それと同時に、スコットのペニスの先が爆ぜて夥しい量の精液が腹部に飛び散った。
スコットが絶頂を迎える間に、クリスは奥までペニスを進める。
そしてスコットが落ち着くまで、クリスは優しくスコットを抱きしめた。
「・・・はぁ・・・はぁ・・・ぁ・・・。すまん・・・我慢、できなくて・・・」
肩で息をしながらスコットが呟く。
クリスはスコットに軽く口づける。
「俺もさっき、そのまま持って行かれるかと思った・・・」
二人は顔を見合わせて少し笑いあう。
クリスが小さく腰を使い始めると、スコットは再び眉間に皺を寄せてシーツを握りしめた。
「あぁ・・・」
と素直な喘ぎ声が口から漏れてくる。
スコットは男同士のセックスは綺麗なものじゃないと言ったが、ショーンにはそう思えなかった。
ショーンの頼みでこんな羽目になったとはいえ、抱き合う二人には温かな気持ちの流れが互いにあった。
「・・・ん・・・」
クリスが、気持ちよさそうに目を閉じて少し鼻を鳴らす。
今やスコットのペニスも力を取り戻し、クリスの腹部にその先端を打ち付けている。
次第にクリスが腰の動きを早めた。
スコットが涙を浮かべながら大きく喘ぐ。
「スコット、凄く感じてるんだろう・・・。久しぶりだもんな。もう腰が抜けてきてる」
クリスの言うように、スコットの腰から下は力が入っていないようだ。
「あっ、あ、ん・・・はぁ・・・!」
パンパンと二人の身体が当たる音が響く。
「・・・も・・・熔ける・・・」
譫言のようにスコットが呟いた。
滴る液が揺れるペニスを伝い、金色のアンダーヘアを輝かせている。
感じ入っているスコットは、完全に意識を飛ばしている様子だった。
ふいにクリスが、ショーンを見る。
ショーンは思わず姿勢を正した。
「・・・来いよ」
クリスが言う。
「え?!」
ショーンが驚きの声を上げると、「戦闘準備はできてるんだろう? だったら来いよ」とクリスは繰り返した。
確かに、クリスの言う通り、ショーンもまた痛いほど勃起していた。
あんなに好きだったスコットの乱れる姿を目の当たりにしたのだ。勃たない訳がない。
クリスの強い瞳に見つめられ、ショーンは誘われるようにベッドに近づいた。
「脱げ」
ショーンは言われるがまま服を脱いだ。
その間にもクリスは腰を使うことを止めず、スコットを喘えがせている。
勢いよく服を脱いだものの、やはり恥ずかしくてソワソワしていると、クリスがふっと微笑んだ。
「安心しろ。十分魅力的だよ。お前も。・・・いっそのこと、一遍に済ましちまおう。今日は特別だからな」
クリスの汗ばんだ手がショーンの腕を掴んだ。
クリスは自分の背後にショーンを上げる。
「流石にスコットを抱かせる訳にはいかないからな。けど最初からアヌスを使われるんじゃ、楽しめもしないだろう・・・」
クリスはショーンのペニスを優しく握り、数回扱く。
「あ!」
ショーンが思わず声を上げると、ぼんやりとスコットが目を開いた。
クリスが更に奥深く突き上げる。クリスの空いた手でペニスの根本を押さえつけられているスコットは、もはや半狂乱で身体を仰け反らせた。
その痴態に、ショーンはゴクリと唾を飲み込む。その耳元に、クリスが囁いた。
「現金だな・・・。パパの恥ずかしい姿を見て、また大きくなったぞ」
ドキリとしてクリスを見ると、クリスは再び微笑んでショーンの唇を求めてきた。
ショーンもクリスの口づけを受け入れる。
思ったより優しげなキスだった。
キスは以前にも友達の女の子達としたことがあったが、心に染みいるようなキスをしたのは初めてだった。
「ちょっと横に立ってみな」
ショーンがクリスの肩を掴みながら立つと、クリスはショーンのペニスを口に含んだ。
なおも腰を使いスコットを責め立てながらも、器用にクリスはショーンのそこを舐め上げた。
「あっ、ああ・・・」
スコットとショーンの声が重なる。
想像を絶する気持ちよさだ。
このままイカされると思った矢先、解放された。
拍子抜けしてショーンがクリスを見下ろすと、ペニスにゴムを被せられた。
「童貞捨てたいんだろう? 挿れてくれよ・・・ここに」
ショーンのペニスを掴んでいた手で、クリスは自分のアナルを愛撫する。
突然壮絶な色香をクリスは撒き散らした。
どんな美女でも霞んでしまいそうな妖しさと艶やかさだった。
業界人が惑う魅力がそこにあった。
ショーンはドキリドキリと自分の心臓が跳ね上がるのを感じながら、クリスの背中に回る。
クリスの唾液に濡れたペニスをそこに押しつけると、スコットを責め立てるクリスの腰の動きで更に先端が擦られた。
痺れるような快感が背骨に響く。
危うくそれだけでイキそうになった。
「いいか・・・。俺の動きに併せるんだ。ぴったりと背中に身体を沿わせて・・・そう・・・そうだ・・・。いいぞ・・・、今だ」
ぐっと押し込む。
予想外に強い力で押し戻されそうになったが、「怯むな・・・突け・・・」というクリスの掠れ声に、思い切って腰に力を入れた。
「そう・・・そうだ・・・。奥まで・・・。あぁ、いいぞ。感じる・・・」
クリスが本当に感じてくれているか分からなかったが、甘い声だった。
「・・・お前の好きなように動いていいからな・・・」
そう言われて夢中になった。
クリスのソコは熱くとろけていて、強く締め付けてくる。
ショーンが腰を突き出すと、クリスが甘い掠れ声を上げると同時にスコットも鼻にかかった喘ぎ声を漏らす。スコットの肌に直接触れることはなかったが、まるでスコットを抱いているように思えた。
ショーンはクリスの身体にギュッと抱きつき、腰を振る。
「ああ! もう駄目・・・イキそう・・・」
すぐにショーンは弱音を吐いた。なんせ刺激が強過ぎる。
「・・・クソッ、俺が我慢してるのに、もう少し頑張れよ・・・」
クリスが悪態をついた。
確かに、両側から刺激を受けているのだからクリスが一番辛いだろう。
「イク時は・・・三人一緒がいい・・・だろう?」
荒い呼吸にまみれながら、クリスが微笑む。
「三人で・・・イキたい!」
感極まってショーンが大声を上げると、スコットが再び目を開いた。
スコットとショーンの目が合う。
スコットの手が宙を泳ぎ、ショーンの手がその手を握り返した。
クリスが一層激しく腰を叩き付ける。
ショーンもまた、クリスの動きに合わせてグラインドさせる。
「ああ! イキそうだ!!」
クリスが叫び、三人の荒い呼吸と身体がぶつかり合う音が響き渡る。
クリスが、スコットのペニスの戒めを解いた。
スコットの手が、ショーンの手を力強く握る。ショーンもそれに応えるように握り返した。
「んんっ・・・! あ! もう、駄目、だ・・・!! はぁっ! うぁっ!!」
スコットが激しく身体をビクつかせながら、そのまま白い飛沫を勢いよく放った。
クリスとショーンが絶頂に達したのも、ほぼ同時だった。
「ねぇ、大丈夫かな」
深く目を閉じてピクリとも動かないスコットを見つめながら、ベッドの上で裸のまま胡座をかいたショーンは呟いた。
グレイのカーペットの上には、バスローブを乱暴に羽織ったクリスが大の字に寝っ転がっている。クリスは、だるそうに頭を起こして、スコットの様子をちらりと見た。
「疲れて寝てるだけだ。どうせここのところろくに寝てなかったんだろう。あまりのことにぶっ飛んじまったのさ。まさか、三人でやることになるなんて夢にも思ってなかっただろうからな」
「・・・やだな。その露骨な言い方」
ショーンは、スコットと自分の身体の汚れを拭ったタオルをサイドボードの上に放り投げる。今度クリスは、頭を上げずにただ目線だけでショーンを見た。
「お前さんが言い出したことだぜ」
ショーンは顔を赤くする。
「言い出したって・・・! 俺は三人でだなんて言ってない。別々でもよかったんだ。それをアンタが・・・」
クリスはけだるそうに身体を起こすと、ショーンの姿がよく見えるように身体を横向きにした。その表情はニヤニヤと笑っている。
「何言ってやがるんだ。本当は、嬉しかったくせに」
ショーンは口を尖らせる。
実のところ、クリスの言ったことは図星だった。
もう一生見ることのできないスコットの姿を目に焼き付けることができた。そう思うと、純粋な感動が押し寄せてくる。
本当なら、もっと性的な興奮を覚えてもいい筈なのに、逆にそれが清々しく思えて。
やはり自分は、どこかがおかしいのかもしれないな、とショーンは思っていた。
「それで? ご感想は?」
「え?」
「だから、答えは見えたのか?」
そう訊くクリスの瞳は、もうショーンをからかったりなどしていなかった。そんな視線を受けるのが、なんだか照れくさい。
ショーンは、天を仰ぎながら大きく深呼吸をした。
「見えたよ。やっぱり、自分じゃ駄目なんだって理由がはっきりした」
「へぇ」
クリスの口調は軽々しかったが、その視線は温かかった。ショーンにも、この男の天の邪鬼ぶりがようやく心地よくなってくる。
ショーンはクリスを見て、微笑む。それは自然に浮かんだ何の飾り気もない穏やかな微笑みだった。
「スコットには、甘えられる相手が必要だったんだ。切ないけど、俺じゃ力不足だよ。どんなに頑張っても、スコットを追い越すことはできない。背伸びしたって、本当に支えることなんてできないし。スコット自身、ちゃんと気づいてないかもしれないけど、きっと心の奥底では分かっていたんだと思う。アンタに抱かれてるスコットを見て、そう思った」
ショーンはそう言いながら鼻の奥がツンと痛くなるのを感じた。
顔は微笑んでいたが、小さな涙が零れ落ちる。
まるでそれは、ショーンの中の最後の未練のような気がした。けれどそれは、決して嫌な涙ではなく。
ショーンは、テレくさそうに鼻を鳴らす。
「でも、後悔はしてないよ。スコットを好きになったことも、今夜のことも。スコットは、こうなったことを怯えてしまうかもしれないけれど、大丈夫。また、新しい一歩を踏み出せるよ、俺達。恋人同士なんかじゃなくて、互いに愛すべき存在として。愛の形は、いろいろある。そうなんだよね・・・」
クリスは、眩しそうにショーンを見つめていた。
やがて小さく溜息をつき、微笑む。
「お前・・・大人になったな」
「・・・そう?」
「ああ。・・・お前さんにあんまりいい男になり過ぎるられると困る。男前は俺一人で十分」
ショーンはクリスの言い草に大笑いした。
クリスも、クックッと喉を鳴らす。
そうして一頻り、笑い合った。
「立ち聞き魔だな」
クリスがニヤニヤと笑う。
クリスは壁際に飾ってある小さく華奢な革張りの椅子を自分の座っていたシングルソファーの横に置くと、「ま、こっち来て座れよ」と言った。
ショーンは無言のままおずおずと足を進め、素直にストンと腰掛ける。
ショーンは俯いたまま。
そしてスコットも俯いたままだった。
「・・・いつから・・・起きてたんだ?」
遠慮がちにスコットが口火を切る。すぐに小さな声でショーンが答えた。
「スコットが部屋を覗いた時から」
互いに視線は合わさなかった。
そんな様子を見て、クリスが溜息をつく。
「もう最悪だな、お前さんらは。互いに相手のことを好きだ、好きだと言っておきながら、自分で垣根を作るなんて何様だ。まったく付き合ってられないね」
クリスが煙草を銜えながら席を立つ。
その気配を察して、ショーンもスコットも同時に顔を上げ、クリスを見た。
双方とも、ここでクリスにいなくなられたら大変と、必死な顔つきをしていた。
クリスは両側からそんな視線を受けて、ガリガリと頭を掻く。口をへの字に曲げた。
「・・・まったく・・・。ホント、やな性格してるね、お前さん達は」
目で語るところなんか、そっくり過ぎて涙が出てくるってもんだ・・・とクリスは小さく悪態をついた。
そうして再び、ソファーに腰掛ける。
彼は横柄に足を組んだ。
「俺の貴重な睡眠時間を削ってるんだ。是非とも実のある話し合いにしてくれよ」
それはもっともな話だった。
クリス・カーターは己の利益しか考えない偏屈男だと町中の噂だったのに、今はこうしてショーンととスコットのために時間を割いてくれている。そればかりか、昨日から家出同然で飛び出してきたショーンの面倒を手厚くみてくれた。
冷たい印象を与える美貌や自信に満ち溢れている物の言い方が、町に馴染まない雰囲気なので、そんな噂が立つのだろう。
今やクリスはショーンの頼みの綱のような存在で、おそらくスコットも同じようにクリスのことを見ていた。
そのことを考えると、何か奇妙な感じがして、ショーンは少し笑みを浮かべる。その笑みは次第に大きくなって、最後には声を上げて笑っていた。
スコットもクリスも、突然笑い出したショーンに目を丸くしている。
「何だよ。不気味なガキだな」
思わず毒づくクリスを、スコットが責めるような視線で見つめた。
その視線を見ても、スコットとクリスが、ショーンが思っている以上に“知った間柄”だと分かる。
ショーンはその疑問をストレートにぶつけた。
「ねぇ。二人ってさぁ、したの? セックス」
明らかに二人が全身硬直した。
スコットはクリスを見つめたまま。
クリスに至っては、煙草を銜え、鼻から煙を細く吐き出しながらという始末だ。
「やっぱ、そうなんだ。・・・だからスコットは俺にここには来るなってあれほど言ったんだね。何だっけ・・・確か『クリス・カーターは悪い噂の絶えない人間だ』」
「や・・・、それはな、ショーン・・・」
ショーンに向き合うスコットを今度はクリスが恨めしそうに睨み付ける。
「お前、俺のことを息子にそう教えてたのか・・・」
如何にも恩を仇で返しやがってという口調に、再びショーンは笑い声を噛み殺す。
ショーンの言ったことに慌てている大の大人二人の反応がおもしろかった。
「だから、悪かったって。あんなことがあったんだ、隠したいものだろ、普通」
スコットがそう言うと、
「誤魔化しきかない手前の不器用さが悪いんだろ? 俺のせいにするなよ」
とクリスが口を尖らせる。
同世代同士の飾らない会話。
そんな風に話しているスコットを、ショーンは初めて見た。
そしてショーンは、自分の中に渦巻いている苦しみを和らげる糸口がそこにあるような気がして、表情を和らげた。
「で、結局、どうしてそんなことになったの?」
ショーンが少し意地悪にそう訊くと、二人同時にショーンを見て言った。
「クリスの優しさについ甘えてしまったんだ」
「お前さんのパパがおいしそうで、弱みにつけ込んだんだ」
二人が声を重ねるように同時にそう言った後、一瞬の間が空いて、ショーンはプッと吹き出した。
そしてケタケタと笑った。
次第にクリスが笑い出し、スコットもやがて笑顔を浮かべる。
そして三人でしばらく笑いあった。
凄くおかしくて朗らかで、そしてちょっぴり切なかった。
目尻に浮かんだ涙を、ショーンは指で拭った。
「・・・スコットの気持ちはよく分かったよ、俺」
ふいに笑うのを止め、静かな声でショーンは切り出した。
「俺がどう足掻いても、親子としてしか見てもらえないってことも、スコットの正直な気持ちなんだよね。・・・それに、スコットが俺のことをどれだけ大事に思っていてくれているかも分かった」
「ショーン・・・」
今にも泣きそうな顔つきでスコットがショーンを見つめる。
「俺、嬉しかったよ。どんな思いであれ、スコットが何より俺のことを愛してくれているのは、やっぱり嬉しいもの。・・・だけど、すぐにまた元の親子に戻るのは、やっぱり難しい・・・・。自分が納得できるだけのきっかけが欲しいんだ」
ショーンは大きく息を吐くと、今度は真っ直ぐクリスを見た。
「だからクリス。スコットとセックスしてよ。今夜、ここで。その後、俺ともセックスをして」
ポロリ。
クリスの口から煙草が落ちる。
クリスの腹部に落ちたそれは、しばらくしてジジジとシャツを焦がした。
ようやくクリスがそれに気づき、「アチチチチ」と煙草を取り上げ、灰皿に押しつける。
「お前、それ本気で言ってるのか?」
クリスは声を荒げて言った。
全身真っ赤にして再び硬直しているスコットを横目で見ながら、クリスは眉間に皺を寄せた。
しかしショーンはいたって真面目だった。
「スコットとできないのは分かってる。そんなことで罪悪感を持たせたくないし・・・。それなら、スコットとセックスしたアンタとしたい。俺だって、これから先本気で好きかどうか分からない女の人と記憶にも残らない初体験をするのなら、自分が納得した相手と初めてのセックスがしたいもの。・・・確かに・・・確かにとんでもないことだと思う。非常識も甚だしいって思うかも知れない。けれど、俺にとっては必要なことなんだ。きっと、納得できる何かがそこにあると思う」
驚くほどの静寂が訪れた。
もう誰も、ショーンの事を茶化した表情で見てはいなかった。
それは、ショーンが必死に弾き出した答え。
成就しなかった思いを消化するために考え抜いた方法だった。
・・・突拍子もない考えだがな・・・。
やっぱ頭のいい奴は、考えることもぶっ飛んでるとクリスは心の中で呟きながら、パンと両手を叩き合わせた。
「よし。分かった。おい、スコット。一人でシャワー浴びられるか?」
スコットが目を丸くする。
「おっ、おい。本気でやる気か?」
「冗談だと思うか?」
クリスは立ち上がりながらスコットを睨み付ける。
「テメェの息子が腹カッ捌いて考えたんだ。お前のことを諦めるためにな。それぐらいのご褒美、くれてやれ」
クリスは寝室のドアを開けると、ドアのすぐ側にあるクローゼットを開けゴソゴソと中を探った。
クリスはバスローブと厚手のバスタオルを取り出すと、それをスコットに向かって放り投げた。
スコットはそれを受け取り、しばらくじっとそれを見つめている。
ショーンもクリスも黙ってスコットの返事を待った。
スコットがショーンを見る。
「お前の望まない結果となっても後悔しないか? 男同士のセックスは、男女のそれとは違って、グロテスクなところもある。お前が想像していた事とまったく違っていたら・・・」
「大丈夫だよ。嘘はいらないんだ。スコットが何を求めているのかが知りたい。それがどういうものなのかを知りたい。そこに何があろうと、これだけは断言できる。後悔はしない。絶対に。だから、スコットもそう思って。前みたいな親子には戻れないかもしれないけど、また新しい気持ちでスコットと向き合いたいんだ」
ショーンの言葉で、スコットの中でも躊躇いが吹っ切れたらしい。
スコットは僅かに微笑むと、小さく頷いた。
三十分ほどして、リビングのソファーに座っていたショーンは、寝室のドア越しクリスに呼ばれた。
もうスコットとセックスを済ませてしまったのだろうか、その割に静かだったのに・・・と訝しげに思ったショーンがドアを開けると、バスローブを羽織ったままベッドの上にいるスコットと目があった。
クリスも同じようにバスローブを着たままで、乱れた様子はない。
ショーンは怪訝そうにクリスを見つめると、彼は言った。
「声だけ聞いてたって意味あるか。そこで見て勉強しろ」
クリスは顎で寝室の片隅にある椅子を指す。
流石に見学することまでは許してもらえないと思っていたショーンは、「え、いいの?」と思わず訊き返した。
やはりスコットは酷く緊張した顔つきをしている。
そのスコットの首に手を回しながら、クリスがニヤリと笑った。
「心配しなくても、外野の存在なんて分からなくなるまで、ドロドロにさせるから」
そんなものなのか・・・?と思わず自問自答したショーンだったが、妙に探求心が刺激された。本当にそうなら、そうなる様を見てみたい。
ショーンは腕組みをして椅子に座った。
クリスがハハハと笑う。
「なかなか研究熱心な顔つきをしてやがる。どうせなら、パパの好みをダイレクトに知りたいだろう? よく見ておけよ・・・」
そう言ってクリスは、スコットの口を塞いだ。
のっけから、濃厚なキスだった。
道ばたで恋人達が交わすものとは全く違う、明らかに性的興奮を高めるためのキス。
最初は羞恥心もあってか、ただ受け身のスコットだったが、クリスのうまい責めに次第に応えるようになっていく。
二人の口の合間から、時折艶めかしい舌が見え隠れする。
飲み損なった唾液が二人の唇から零れ落ちた。
その間にも、クリスの手がスコットのバスローブの紐を外し、前を少しはだけさせる。
厚い胸板がちらりと見えた。
クリスが、胸板に手を這わせる。
バスローブの影に隠れている乳首を捕らえたのだろうか。
親指を押しつけてクリクリと動かしているのが分かる。その途端にスコットの身体がピクリと跳ね上がった。「・・・ん」と鼻を鳴らす。
しかしクリスは、なおもキスをやめない。
もう片方の空いた手が反対側の胸を撫でた後、脇腹をさすり、恐らく何も着けていない筈の股間に侵入していく。
ショーンの座っている位置からは、丁度スコットが痛めた右膝が邪魔をしていて確信部分は見えない。
「んん!」
スコットが唸り声を上げ、クリスのキスから逃れようとする。
それでもクリスは許さない。
まるで全身の力を奪い尽くすようにスコットの唇を貪る。
胸元と股間を愛撫する手は微妙な動きを繰り返し、ピクリピクリとスコットの身体が跳ねた。
堪らなくなったのか、スコットの手がクリスの背中に回され、バスローブをぐっと掴む。あからさまに爪を立てる仕草が色っぽい。
日頃、爽やかなスコットがまさかそんな表情を見せるなんて、思ってもみなかった。
ここまで来ると、ショーンも薄々分かってくる。
スコットは、責められる方が好みなのだ。
身体付きを比べると明らかにスコットの方が逞しい体躯をしているし、外見の男っぽさもスコットの方が勝っている。だが実際に主導権を握っているのは明らかにクリスで、「抱いている」のは、クリスの方だと言えた。
クリスがようやくスコットの唇を解放すると、その瞬間スコットは「あぁ!」と嬌声を上げた。その艶っぽい声にスコット自身赤面し、慌てて口を噤む。
「・・・何だ。まだ声を我慢する余裕があるのか・・・?」
低い声でそう囁くクリスは、言葉でもスコットを責める。
「ペニスの先をもうこんなにしておきながら、往生際が悪い・・・。前はもっと素直に感じていただろう?」
スコットが首を横に振る。
やはり息子が見ているという抵抗感が彼をまだ支配しているのだろう。
だが、耳を嬲られ、首筋に舌を這わされ、スコットは何度も背を仰け反らせた。
乱れたバスローブが肩から落ちる。
背中から尻のラインが現れた。
スレンダーだが、充実した大人の身体。
花形クォーターバックの頃の彼と全く変わっていない美しい筋肉。
まどろっこしそうにバスローブを脱いだクリスの身体がしなやかな若木のような身体だけに、余計スコットの逞しさが強調される。
だが、支配しているのはスコットより華奢なクリスなのだ。形勢が完全に逆転しているようで、刺激的である。そしてなお、純粋に美しく見えた。二人の整った肢体が絡んでいる様は、艶やかな空気を漂わせているにも関わらず、芸術作品のようにも見えた。
唇を噛みしめて声を押し殺しているスコットに焦れたのだろうか。股間を愛撫するクリスの動きが激しさを益す。
「ふっ・・・くっ!」
強い快感にスコットはベッドに倒れ込んだ。
それでも股間をショーンから隠そうと痛む筈の膝を立てる。
なおもクリスの手荒な愛撫は続いた。早いところスコットを高ぶらせて意識を飛ばすようにさせようという思いがあってのことか。
スコットの綺麗に割れた腹筋が大きく波打ち、僅かだがクチュクチュと濡れた音が聞こえてくる。
男同士だからショーンにも分かった。
スコットのそれは既に先走りを漏らして、クリスの手を濡らしているに違いなかった。
時折太股の陰から、赤く露出した先端が垣間見える。そこはやはりしっとりと濡れ光っていた。
クリスは刺激されて赤みを帯びた乳首に舌を這わす。
そして股間の手はペニスを愛撫するのを止め、尻を包むように手の位置を変えた。
ショーンが座っている位置から見ても、クリスが何をしているか分かる。
クリスの中指が、スコットのアヌスに押し込まれていく。
ビクリと大きくスコットの身体が跳ねた。
「ここまで濡れてるから、指もすんなり入る・・・」
クリスがそう言うと、スコットは目尻を益々ピンク色に染めた。嫌々をするように頭を左右に振るスコットの表情は、苦しそうだ。吐き出す呼吸が荒い。
クリスが指を動かす度に、また水に濡れた音がする。
クリスの長い指が一際奥まで突っ込まれた瞬間、スコットが身体を仰け反らせ、
「うあぁ・・・んん!」と遂に声を上げた。
ショーンは純粋に痛いのだと思った。
ショーンが眉間に皺を寄せると、ちらりとクリスがショーンを見る。ショーンの心配げな顔を見て、ショーンが何を考えているのか分かったのだろう。
クリスは笑みを浮かべると、
「お前のパパが一番好きなところなんだよ。痛いんじゃない。ほら、よく見てみろ」
と言って、左手でスコットの右膝を静かに割開いた。
「あぁ・・・! よせっ! 嫌だ・・・」
スコットが細い声を上げる。
スコットのそこは、クリスの指を深く銜え込んだまま、硬く勃起し続けていた。
スコットがクリスの手を逃れようともがく度に、ペニスの先から新たな先走りの透明な液が零れ落ちる。
スコットは顔を更に真っ赤にし膝を閉じようとするが、怪我をしている膝に思うように力が入らない。更に指を二本一気に増やされ、大きく喘ぐ。
── 凄い・・・あんなに大きくして・・・。本当に感じてるんだ。
ショーンは圧倒されてしまった。
男同士のセックスは、アヌスを使うということはショーンでも知っていたが、便宜上そうしているだけだと思っていた。まさか、そんなに気持ちいいものだとは。
自分もそうなのだろうか・・・とショーンの中でいろんな好奇心が沸き上がってくる。
「なぁ、どんな感じなんだ? ここはさっきからキュウキュウ締め付けてくる。そんなに入れられるのがいいのか? もっと大きいのが欲しいんじゃないのか?」
元々クリスの好みなのか、それともクリスがスコットの好みに合わせているのか。クリスはセクシーな声でスコットを責め立てる。
スコットはクリスの声に応えることはしなかったが、クリスが淫乱な言葉を吐く度にスコットのペニスがピクピクと震えた。
「はぁ・・あ・・・あぁ・・・ん・・・うぅ・・・」
喘ぎ声ももはや止めることもできず、次々と零れ落ちてくる。
「欲しいって言ってみな? これが欲しいって」
スコットの手を掴んで、クリスは自分の熱くそそり立ったペニスを掴ませる。
今まで目を閉じていたスコットが薄く目を開ける。
クリスのペニスをゆっくりと扱きながら、とろけた瞳で、クリスを見つめた。
酷く甘えた目の表情。
ああ、そうか、とショーンは思った。
スコットは、甘えているのだ、と。
普段は決して人に甘えることも頼ることもしないスコット。
一心不乱に働き、どんなことも我慢してきた。
そのスコットが唯一他人に甘えることのできる瞬間なのだ。
しかも、その瞬間を引き出すことができる人間は、限られている。
── 俺みたいな子どもじゃぁ、甘えられる筈がない・・・。
ショーンの中で憑き物が落ちたような気がした。
ああやっぱり、俺じゃ駄目なんだ。
素直にそう思えた。
スコットが、クリスの耳元で何かを囁く。
クリスが嬉しそうに微笑んだ。
今までの淫乱な表情とは違って、今までクリスが見せたことのない人なつっこい笑顔だった。
スコットのこめかみにキスを落としながら指を引き抜き自分のペニスにゴムを被せると、先をあてがう。
数回円を描くように擦り付けて、一気にくびれまで挿入した。
「あぁ!!」
ビクビクとスコットの身体が痙攣する。
それと同時に、スコットのペニスの先が爆ぜて夥しい量の精液が腹部に飛び散った。
スコットが絶頂を迎える間に、クリスは奥までペニスを進める。
そしてスコットが落ち着くまで、クリスは優しくスコットを抱きしめた。
「・・・はぁ・・・はぁ・・・ぁ・・・。すまん・・・我慢、できなくて・・・」
肩で息をしながらスコットが呟く。
クリスはスコットに軽く口づける。
「俺もさっき、そのまま持って行かれるかと思った・・・」
二人は顔を見合わせて少し笑いあう。
クリスが小さく腰を使い始めると、スコットは再び眉間に皺を寄せてシーツを握りしめた。
「あぁ・・・」
と素直な喘ぎ声が口から漏れてくる。
スコットは男同士のセックスは綺麗なものじゃないと言ったが、ショーンにはそう思えなかった。
ショーンの頼みでこんな羽目になったとはいえ、抱き合う二人には温かな気持ちの流れが互いにあった。
「・・・ん・・・」
クリスが、気持ちよさそうに目を閉じて少し鼻を鳴らす。
今やスコットのペニスも力を取り戻し、クリスの腹部にその先端を打ち付けている。
次第にクリスが腰の動きを早めた。
スコットが涙を浮かべながら大きく喘ぐ。
「スコット、凄く感じてるんだろう・・・。久しぶりだもんな。もう腰が抜けてきてる」
クリスの言うように、スコットの腰から下は力が入っていないようだ。
「あっ、あ、ん・・・はぁ・・・!」
パンパンと二人の身体が当たる音が響く。
「・・・も・・・熔ける・・・」
譫言のようにスコットが呟いた。
滴る液が揺れるペニスを伝い、金色のアンダーヘアを輝かせている。
感じ入っているスコットは、完全に意識を飛ばしている様子だった。
ふいにクリスが、ショーンを見る。
ショーンは思わず姿勢を正した。
「・・・来いよ」
クリスが言う。
「え?!」
ショーンが驚きの声を上げると、「戦闘準備はできてるんだろう? だったら来いよ」とクリスは繰り返した。
確かに、クリスの言う通り、ショーンもまた痛いほど勃起していた。
あんなに好きだったスコットの乱れる姿を目の当たりにしたのだ。勃たない訳がない。
クリスの強い瞳に見つめられ、ショーンは誘われるようにベッドに近づいた。
「脱げ」
ショーンは言われるがまま服を脱いだ。
その間にもクリスは腰を使うことを止めず、スコットを喘えがせている。
勢いよく服を脱いだものの、やはり恥ずかしくてソワソワしていると、クリスがふっと微笑んだ。
「安心しろ。十分魅力的だよ。お前も。・・・いっそのこと、一遍に済ましちまおう。今日は特別だからな」
クリスの汗ばんだ手がショーンの腕を掴んだ。
クリスは自分の背後にショーンを上げる。
「流石にスコットを抱かせる訳にはいかないからな。けど最初からアヌスを使われるんじゃ、楽しめもしないだろう・・・」
クリスはショーンのペニスを優しく握り、数回扱く。
「あ!」
ショーンが思わず声を上げると、ぼんやりとスコットが目を開いた。
クリスが更に奥深く突き上げる。クリスの空いた手でペニスの根本を押さえつけられているスコットは、もはや半狂乱で身体を仰け反らせた。
その痴態に、ショーンはゴクリと唾を飲み込む。その耳元に、クリスが囁いた。
「現金だな・・・。パパの恥ずかしい姿を見て、また大きくなったぞ」
ドキリとしてクリスを見ると、クリスは再び微笑んでショーンの唇を求めてきた。
ショーンもクリスの口づけを受け入れる。
思ったより優しげなキスだった。
キスは以前にも友達の女の子達としたことがあったが、心に染みいるようなキスをしたのは初めてだった。
「ちょっと横に立ってみな」
ショーンがクリスの肩を掴みながら立つと、クリスはショーンのペニスを口に含んだ。
なおも腰を使いスコットを責め立てながらも、器用にクリスはショーンのそこを舐め上げた。
「あっ、ああ・・・」
スコットとショーンの声が重なる。
想像を絶する気持ちよさだ。
このままイカされると思った矢先、解放された。
拍子抜けしてショーンがクリスを見下ろすと、ペニスにゴムを被せられた。
「童貞捨てたいんだろう? 挿れてくれよ・・・ここに」
ショーンのペニスを掴んでいた手で、クリスは自分のアナルを愛撫する。
突然壮絶な色香をクリスは撒き散らした。
どんな美女でも霞んでしまいそうな妖しさと艶やかさだった。
業界人が惑う魅力がそこにあった。
ショーンはドキリドキリと自分の心臓が跳ね上がるのを感じながら、クリスの背中に回る。
クリスの唾液に濡れたペニスをそこに押しつけると、スコットを責め立てるクリスの腰の動きで更に先端が擦られた。
痺れるような快感が背骨に響く。
危うくそれだけでイキそうになった。
「いいか・・・。俺の動きに併せるんだ。ぴったりと背中に身体を沿わせて・・・そう・・・そうだ・・・。いいぞ・・・、今だ」
ぐっと押し込む。
予想外に強い力で押し戻されそうになったが、「怯むな・・・突け・・・」というクリスの掠れ声に、思い切って腰に力を入れた。
「そう・・・そうだ・・・。奥まで・・・。あぁ、いいぞ。感じる・・・」
クリスが本当に感じてくれているか分からなかったが、甘い声だった。
「・・・お前の好きなように動いていいからな・・・」
そう言われて夢中になった。
クリスのソコは熱くとろけていて、強く締め付けてくる。
ショーンが腰を突き出すと、クリスが甘い掠れ声を上げると同時にスコットも鼻にかかった喘ぎ声を漏らす。スコットの肌に直接触れることはなかったが、まるでスコットを抱いているように思えた。
ショーンはクリスの身体にギュッと抱きつき、腰を振る。
「ああ! もう駄目・・・イキそう・・・」
すぐにショーンは弱音を吐いた。なんせ刺激が強過ぎる。
「・・・クソッ、俺が我慢してるのに、もう少し頑張れよ・・・」
クリスが悪態をついた。
確かに、両側から刺激を受けているのだからクリスが一番辛いだろう。
「イク時は・・・三人一緒がいい・・・だろう?」
荒い呼吸にまみれながら、クリスが微笑む。
「三人で・・・イキたい!」
感極まってショーンが大声を上げると、スコットが再び目を開いた。
スコットとショーンの目が合う。
スコットの手が宙を泳ぎ、ショーンの手がその手を握り返した。
クリスが一層激しく腰を叩き付ける。
ショーンもまた、クリスの動きに合わせてグラインドさせる。
「ああ! イキそうだ!!」
クリスが叫び、三人の荒い呼吸と身体がぶつかり合う音が響き渡る。
クリスが、スコットのペニスの戒めを解いた。
スコットの手が、ショーンの手を力強く握る。ショーンもそれに応えるように握り返した。
「んんっ・・・! あ! もう、駄目、だ・・・!! はぁっ! うぁっ!!」
スコットが激しく身体をビクつかせながら、そのまま白い飛沫を勢いよく放った。
クリスとショーンが絶頂に達したのも、ほぼ同時だった。
「ねぇ、大丈夫かな」
深く目を閉じてピクリとも動かないスコットを見つめながら、ベッドの上で裸のまま胡座をかいたショーンは呟いた。
グレイのカーペットの上には、バスローブを乱暴に羽織ったクリスが大の字に寝っ転がっている。クリスは、だるそうに頭を起こして、スコットの様子をちらりと見た。
「疲れて寝てるだけだ。どうせここのところろくに寝てなかったんだろう。あまりのことにぶっ飛んじまったのさ。まさか、三人でやることになるなんて夢にも思ってなかっただろうからな」
「・・・やだな。その露骨な言い方」
ショーンは、スコットと自分の身体の汚れを拭ったタオルをサイドボードの上に放り投げる。今度クリスは、頭を上げずにただ目線だけでショーンを見た。
「お前さんが言い出したことだぜ」
ショーンは顔を赤くする。
「言い出したって・・・! 俺は三人でだなんて言ってない。別々でもよかったんだ。それをアンタが・・・」
クリスはけだるそうに身体を起こすと、ショーンの姿がよく見えるように身体を横向きにした。その表情はニヤニヤと笑っている。
「何言ってやがるんだ。本当は、嬉しかったくせに」
ショーンは口を尖らせる。
実のところ、クリスの言ったことは図星だった。
もう一生見ることのできないスコットの姿を目に焼き付けることができた。そう思うと、純粋な感動が押し寄せてくる。
本当なら、もっと性的な興奮を覚えてもいい筈なのに、逆にそれが清々しく思えて。
やはり自分は、どこかがおかしいのかもしれないな、とショーンは思っていた。
「それで? ご感想は?」
「え?」
「だから、答えは見えたのか?」
そう訊くクリスの瞳は、もうショーンをからかったりなどしていなかった。そんな視線を受けるのが、なんだか照れくさい。
ショーンは、天を仰ぎながら大きく深呼吸をした。
「見えたよ。やっぱり、自分じゃ駄目なんだって理由がはっきりした」
「へぇ」
クリスの口調は軽々しかったが、その視線は温かかった。ショーンにも、この男の天の邪鬼ぶりがようやく心地よくなってくる。
ショーンはクリスを見て、微笑む。それは自然に浮かんだ何の飾り気もない穏やかな微笑みだった。
「スコットには、甘えられる相手が必要だったんだ。切ないけど、俺じゃ力不足だよ。どんなに頑張っても、スコットを追い越すことはできない。背伸びしたって、本当に支えることなんてできないし。スコット自身、ちゃんと気づいてないかもしれないけど、きっと心の奥底では分かっていたんだと思う。アンタに抱かれてるスコットを見て、そう思った」
ショーンはそう言いながら鼻の奥がツンと痛くなるのを感じた。
顔は微笑んでいたが、小さな涙が零れ落ちる。
まるでそれは、ショーンの中の最後の未練のような気がした。けれどそれは、決して嫌な涙ではなく。
ショーンは、テレくさそうに鼻を鳴らす。
「でも、後悔はしてないよ。スコットを好きになったことも、今夜のことも。スコットは、こうなったことを怯えてしまうかもしれないけれど、大丈夫。また、新しい一歩を踏み出せるよ、俺達。恋人同士なんかじゃなくて、互いに愛すべき存在として。愛の形は、いろいろある。そうなんだよね・・・」
クリスは、眩しそうにショーンを見つめていた。
やがて小さく溜息をつき、微笑む。
「お前・・・大人になったな」
「・・・そう?」
「ああ。・・・お前さんにあんまりいい男になり過ぎるられると困る。男前は俺一人で十分」
ショーンはクリスの言い草に大笑いした。
クリスも、クックッと喉を鳴らす。
そうして一頻り、笑い合った。
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