41 / 57
act.41
しおりを挟む
レコーディングの段取りを進めていたはずのルイから電話がかかってきたのは、シンシアが部屋を後してから、ショーンが一人で夕食のサンドウィッチを頬張っている時だった。
『ごめん、ショーン。連絡が遅くなって・・・』
受話器から聞こえてくるルイの声は、少し焦っている様子だった。
「全然問題ないよ。それで、スタジオの方は・・・」
『それが・・・。きちんとした設備の整ってるスタジオは軒並みクローネンバーグの圧力がかかっていて、俺の名前じゃ借りれないようになってた』
ショーンは、その言葉に愕然とする。
── 俺の名前ならまだしも、ルイの名前でダメだなんて、ルイが制裁を受けているようなものじゃないか。
「ルイ、ごめん・・・! 俺、ルイに凄い迷惑かけてる・・・」
受話器の向こうから笑い声が聞こえてきた。
『迷惑? それはショーンがかけてる訳じゃないじゃないか。それに、俺の仕事が干されてるんじゃないよ。現にバルーンの事務所から仕事の依頼がきてるからね。ようは、俺単独で動くことに関しては、警戒されているらしい。ほら、何たってあのチャリティーコンサートの主催メンバーだったし』
イアンもクローネンバーグも、ショーンがルイを頼りにすることはお見通しだったという訳だ。
「そうか・・・。どうしよう」
ショーンは思わず唇を噛みしめた。
薄皮が剥げて、少しピリリとする。
しかしすぐに、ルイの返事が返ってきた。
『安心しろよ』
「え?」
『ショーンの協力者は、何も俺だけじゃないんだから』
「?」
ショーンは眉間に皺を寄せる。
ルイは、その沈黙を十分楽しんだようだった。
『カートだよ。カート・ヒルが、彼の別荘にあるスタジオを貸してくれるって。だからロスまで来られるか? 雑誌の締め切りとの兼ね合いもあるから、なるべく早くがいい』
「分かった。飛行機のチケット、手配してみる」
『この時期だから大丈夫だろう。朝一ならまだチケットが取れるかもしれない』
「分かった。エニグマの編集部に電話して、チケットが取れ次第向かうよ」
『待ってるぞ』
ショーンは心底ホッとして、受話器を置いた。
ルイ以外にも音楽業界にまだ自分の味方をしてくれる人がいるだなんて、なんて有り難いことなんだろうと思う。
── コウ、喜んでくれるかな・・・。
羽柴のいないキッチンを見つめ、ショーンはそう思った。
その日、羽柴が帰宅したのは深夜12時近くのことだった。
「先に寝ていてくれてよかったのに」
羽柴は、リビングで起きていたショーンを見つけ、戸惑った顔を見せた。少し酒の匂いがする。
「この時間ならまだ起きてるよ」
ショーンが肩を竦めると、「そうだよな」と羽柴は苦笑いした。
少し投げやりな笑顔に、ショーンは表情を曇らせる。
まるでショーンと顔を併せるのが苦しそうな感じで。
ふとショーンは羽柴が小脇に抱えているブリーフケースの留め金が壊れていることに気が付いた。
「どうしたの? これ」
よく見れば、黒い革に覆われた表面にも、擦り傷のようなものが幾筋もついている。
「何か、あった?」
ショーンは不穏なものを感じて、羽柴を見上げる。
羽柴は、鞄をテーブルの上に置いて首を横に振ると、ネクタイを緩めた。大きく息を吐き出す。
「ちょっと人とぶつかって、落としちゃったんだよ。新しいのを買わないと駄目なようだ」
ショーンは益々眉間に皺を寄せる。
この鞄の有様、ちょっと落としただけでつくような傷じゃない。
途端に、心配になってきた。
「ケガは? ケガはなかった?」
ショーンは立ち上がり、羽柴の身体を見回す。
羽柴は再び苦笑した。
「大丈夫。ケガなんかしてないよ。ケガしたのは、鞄だけ」
羽柴はそう言って、ソファーにどっかりと腰掛けた。
やはり少し疲れているようだ。
ふと羽柴は、ソファーの横にあるショーンの纏められた荷物に気が付いた。
「ショーン、これ・・・」
「明日、ロスに発つよ。そこでないとレコーディングができないんだ。ルイから連絡があった」
「ロスか・・・。大変だな」
羽柴が呟く。
今ショーンがいるC市は、ワシントンやニューヨークとほど近い東海岸にあるから、西海岸のロスまではまさにアメリカ大陸を横断していかねばならない。時差も3時間あるし、気候もまるで違うから、別の国に行くような感覚だ。
「もちろん、行く当てはあるんだろうね」
「うん」
ショーンは、羽柴の隣に腰掛ける。
「バルーンのアルバムのプロデュースをしてくれてる人が、別荘のスタジオを貸してくれるって。多分そこに泊まることになると思う」
羽柴は眉間に皺を寄せる。
「バルーンのプロデューサー? 大丈夫なのかい?」
「大丈夫だと思う。彼は凄く俺のこと可愛がってくれた人だし、今回の件を承知の上で申し出てくれた。もちろん、秘密裏に進めてくれる手はずになってる。── 実は、他の貸しスタジオはクローネンバーグ社長が全て圧力をかけていて、借りられなくなってた。だから、もうそこしかないんだ」
羽柴がじっとショーンを見つめてくる。その彼の表情には、驚愕と苦悩が浮かんでいた。
「── そんな・・・、そんなことまで・・・」
ショーンはふっと笑った。
「想像はしてたよ。イアンはやるといったら徹底的にやる。この分じゃきっと、全米中の音楽系事務所にも圧力がかかってると思う。契約はできないだろうね」
その台詞に、羽柴は更なる衝撃を受けたように見えた。
「なんてことだ、ショーン・・・。君は・・・」
「だからって俺、負けないよ。コウが考えてくれたこのアイデアなら、イアンからの妨害は受けない。コウは素晴らしいチャンスを俺に与えてくれた。だから俺は、それに精一杯答えなきゃ。── 大丈夫。きっと上手くいく。コウの努力は絶対に無駄にしない。また、皆の前で歌えるようになるまで、がんばんなきゃ。その姿を、コウとコウが愛する『彼』に見てもらいたいもの」
そう言って真っ直ぐ羽柴を見つめるショーンを見て、羽柴は何を感じたのだろう。
羽柴はまたもや苦しそうに目を細めると、胸元を押さえて俯いた。
ハッと息を吐き出す羽柴の目尻は、少し潤んでいるようにも見えて。
ショーンは再び眉間に皺を寄せた。
「・・・何? どうしたの、コウ。やっぱりケガしてるんじゃないの?」
ショーンが羽柴の背中に手を置くと、羽柴は俯いたまま、首を何度も横に振った。
今まで見せたことがないような苦悶の表情を浮かべる羽柴に、ショーンも不安げな表情を浮かべた。
「何? どうしたの、コウ。俺、やなこと言った? コウを傷つけること言った?」
「そうじゃない・・・」
「じゃ何? 怖いよ、コウ。どうしたの?」
「ショーンが悪いんじゃない・・・。俺が悪いんだ・・・」
ショーンは大きく目を見開いて羽柴の前に跪くと、彼の両肩を掴んだ。
「何言ってるの? コウ、こっち向いて・・・。俺の方を見て・・・」
羽柴はなおも俯いて、何度も首を横に振った。
「 ── 俺に今の君は見られない・・・。眩しすぎて、見れない・・・」
「何だよ、コウ。訳が解んない・・・。ねぇ、こっち向いて。向いて!!」
ショーンが羽柴の顔を両手で掴んで、無理矢理顔を上げさせた。
大きく苦しげに息を吐き出す羽柴の両目は、真っ赤になって涙を溜めていた。
ショーンは愕然とする。
それは、以前羽柴が見せた涙とはまったく異質のもので、益々ショーンを不安にさせた。
ショーンがあまりのショックに言葉を失っていると、羽柴は鼻の頭も真っ赤にして、ようやく吐き出すようにこう言った。
「もう、終わりにしよう。こういうのは」
しばらくの沈黙。
その間に、まるでスローモーションのように羽柴の瞳から涙が一筋はらりと落ちた。
「 ── 何・・・? 何を終わりにするの?」
ショーンが囁くように言う。
「こういうのって、何?」
羽柴は再び俯いて、首を横に振る。
「だから・・・。無理をして、一緒にいることを」
「無理? 無理って何? 俺が無理をしてるとでも?」
「 ── これ以上、君の気持ちを宙ぶらりんのままにしておくのは惨いことだろう? 君はこんなにも素晴らしい人なのに、その君に我慢をしいているなんて・・・」
「我慢なんてしてない! コウが好きだもの。コウの傍にいられたら、辛いことは何もないよ」
「俺は、君の気持ちに応えてもいないんだぞ。君の好意を知っておきながら、それを誤魔化して、利用してる」
「それでもいいって、言ったじゃないか! 覚えてないの? それでもいいって、納得したのは俺だよ。どうしてそれを、コウがダメだって決めるつけるの?」
羽柴はまた首を横に振る。
ショーンは、そんな羽柴の顔を覗き込んだ。だが、羽柴の表情なんて見えない。
「コウ、俺のためを思ってそう言ってるんならやめて。そんなの俺のためなんかじゃない。そんな優しさなんていらない。── でも、俺の想いがコウに負担をかけてるんなら、話は別」
羽柴が顔を上げる。
ショーンは、自分でも涙声になっているのが分かった。
自分の頬を熱いものが流れて行くのを感じたが、一歩も怯むつもりはなかった。
「あの日、告白した日から、考えなかったことはないよ。俺の想いが、コウに負担をかけてるって。重荷になってるって。俺は到底『彼』には適わないし、コウの抱えた深い穴を埋めることなんてできない。そんなの、とうに分かってた。けどね、コウ。待っていたいんだよ、俺は。埋めることはできなくても、寄り添うことはできるでしょ?! それもダメだっていうの?!」
「ショーン・・・」
「俺のことが負担だと思うのなら、そう言って。俺のことが嫌いになったんなら、そう言うべきだ。優しい言葉はいらない」
口を惹き結んだショーンの両目から、ポロポロと大粒の涙が零れる。
羽柴は、そのショーンの頬に触れた。
「 ── ショーン・・・。君はまだ、19歳なんだぞ。どうして・・・どうしてこんな苦しい目に合う必要がある。俺は、不甲斐ない男だ。俺のせいで、君は君のキャリアを犠牲にした。スタジオはおろか、他の事務所まで押さえられてるだなんて・・・。それがどんな意味を示してるか、君の方がよく分かってるだろう。まさか俺も、相手がそこまでだとは思ってなかった。考えが甘かった。俺の考えたアイデアなんて、単なる付け焼き刃なだけだ。ひょっとしたら、相手を余計に煽るだけかもしれない。相手がそこまでやる気なら、もうアメリカの地で歌うことができないぐらいに潰してくる覚悟なんだろう。そんな状況に追い込んだのは俺だ。若い君に、それを強いたのはこの俺だ・・・」
羽柴の震える指が、ショーンの涙を拭う。
「俺は・・・君から君の大切なものを奪うことしかできない男なのかもしれない。現にもう、大切なものをいくつも奪った」
「おかしいよ、コウ。・・・おかしいこと言ってる」
ショーンが羽柴の手を握った。
「コウが俺から奪ったものなんて何もない。あれは、俺がしたいからしたんだ。前にもそう言ったよ。俺はあの時、あの場で歌えたからこそ、改めて自分の存在価値を見い出すことができたんだ。そこから得るものは沢山あった。── 表面だけ見てちゃダメだよ、コウ! 確かに今のこの状況は厳しいけど、希望はある。なぜそれを見ようとしないの? 最初にそう言ったのはコウなのに・・・。本当の理由は別にあるんだろ? 正直に言って。俺のことが嫌いになったって。そうでしょ? どうしてその一言を言わないの?」
羽柴は再度首を横に振った。
「 ── 嫌いじゃない・・・。君のこと、嫌いじゃない・・・」
「じゃぁ何で?! コウは時間が欲しいといった。俺は待つと言った。その間にコウが俺のこと嫌いになったんなら、それはしょうがない。俺だって諦めるよ。けど、そうじゃないんでしょ? なぜ答えも出てないのに、焦るの? 本当の気持ち、聞かせてよ。そんなんじゃ納得できないよ」
乱れた羽柴の前髪の先に、彼の戦慄く唇が見える。
またしばらくの沈黙が流れた。
そしてショーンは、小刻みに震える羽柴の手を見つめた。
彼自身の膝を掴む手。力が入り過ぎて、白くなっている手。
「 ── 何を、怯えてるの?」
羽柴の肩がピクリと震える。
ショーンは、静かに、そして穏やかに息を吐き出した。
「俺、解ったような気がする。── コウ、怖がってる」
前髪の間から、羽柴がショーンを見る。
「次の一歩をどう出していいか分からなくて、震えてる。コウ、自分と向き合うのが、怖いんだ」
それはさっきまでの感情の高ぶったショーンの声とはまったく違う、達観した者の放つゴスペルのようだった。
「そうでしょ?」
「 ── ああ・・・。そうさ」
歯を食いしばった合間から、羽柴の苦々しい声が零れ出た。
「俺は、怖がってる。昔のことが、俺を傷つけ、そして君をも傷つけることを。俺は、5年もかけて、当たらず触らず、ようやくここまでやってきた。ようやく生き伸びてきたんだ。今でも、あの時のことを考えると、骨が軋む。身体の毛穴から血が突き出すような感覚を覚える。それはアイツを独り切りにしてしまった俺の罪だ。なぜ彼を置いてアメリカにきてしまったのか。なぜ彼の死期に気付くことができなかったのか。それが運命だったなんて、簡単な言葉なんかでは片づけられない・・・」
羽柴が、泣きながら自分の両手を見つめる。
「他人を本気で愛してしまうのが怖い。もう一度、チャレンジするのが怖い。真一の愛情を裏切ってるような気がするし、かといって君のことも嫌いになんかなれない。── 苦しいんだ、それが! どうしていいか分からないんだ! こんな調子じゃきっと君を傷つける。今でも俺は真一を愛してるし、それを忘れることなんてできない。それなのに、それなのに君は俺を愛してくれるというのか?! そんな報われない恋愛を望むとでも?! 片方で他の男を愛していながら、一方で君に愛を囁く。そんな不実な男がいいとでも? 君が・・・君がそんな苦労をする必要がどこにある? 君は、こんなにも素晴らしい人だ。強くて美しい魂をしてる。才能があって、いろんな可能性を秘めている。そんな君が、こんな俺のことを好きだなんて・・・。好きだなんて・・・」
羽柴は、頭を抱えて泣いた。
「 ── 自分が恥ずかしい生き方を重ねていることはよく分かってる。この5年間に、俺は随分卑怯な強さを手に入れたんだからね。それは何重にも硬い鎧を重ねて得た強さだ。とても狡猾で安易な鎧だよ。・・・この5年で笑えるようにもなった。普通に仕事もできるようになった。人を慰めることもできるようになったし、冗談も言えるようになった。『どうか前向きに生きて』と真一が最期にそう言い残した言葉通り生きていけるように、今はダメだったとしても、これからも努力していく。きっといつか、そう思える日まで、耐えていこうと思う。これが俺のできる精一杯のことだ。精一杯のことなんだ」
羽柴は、両手で顔を覆う。
「俺は、今のままで十分幸せだよ、ショーン。だから、君が同情して気にかけてくれる必要はない・・・」
「 ── 幸せなら、なぜ泣くの?」
羽柴が、ゆっくりと顔を上げてショーンを見た。
ショーンは涙に濡れた瞳を真っ直ぐ羽柴に向けていた。
「前に、コウ、俺の前で泣いたよね。彼のことを思って泣いた。まるで心が凍り付いた人みたいに、さめざめと。幸せなら、なぜ泣く必要があるの? 苦しいんじゃないの? 本当は」
「ショーン・・・・」
「確かに、愛を貫くことは美しいって思う。誰も、彼の代わりになんかなれないし、死んでしまった人への愛情が消えるなんてことは、もちろんない。でも彼のことを思うのに、なぜ涙が流れるの? それは、悲しみの涙ではないの? さっきコウ、言ったよね。それこそ、毛穴から血が吹き出そうなぐらい苦しいって。それって幸せっていうのかな? その悲しみが幸せだとでもいうの? 彼の言っていた前向きに生きるって、そういうこと?」
ショーンは立ち上がる。
「もし彼が、死んでもなお、一生コウを縛り付けることを望んでいるような人なら。コウが苦しみ続けているのを知っていて、それでもそれを望む人なら、俺はそんな人、認めない。そんな酷い人、俺は認めない。軽蔑する」
「ショーン!!」
羽柴が立ち上がって、ショーンの胸ぐらを掴んだ。ショーンは怯まず、羽柴を見上げる。
「殴りたいなら、殴ればいい。俺は、今のコウ、ちっとも幸せだと思わない。もし俺が彼の立場だったとしたら、俺なら愛する人に本当に幸せになって欲しいって思う。だって死んじゃった自分じゃもう、愛する人を幸せになんかできないんだもん・・・! それなのに、一生苦しみながら愛してくれだなんて、とても言えない・・・!!」
再び、ショーンの両目から涙が流れ落ちた。
だが、その瞳には強い光が宿っていた。
羽柴はギリギリと奥歯を噛みしめ、ショーンを放すと、ショーンに背を向けた。
「 ── 出て行ってくれ・・・。このままじゃ混乱して、君に何をするか分からない」
「コウ・・・」
「どうか・・・どうか・・・・」
羽柴は震える手で、両目をふさいだ。
ショーンは羽柴の背中に触れようとしたが、でもその手は結局握り拳になり、やがてそれはソファーの横に置いてある荷物を掴む手となった。
「コウがあの人を愛しているからって、俺は傷つかないよ。そんなコウが好きなんだから。── 俺は彼の代わりにはなれない。けど、また彼とは違う新しい日々の結晶をコウと積み上げていきたいって思ってる。コウは、素晴らしい人なんだ。だってコウからいっぱい勇気貰えたから、今俺はこうしていられるのに、それが嘘の強さだったなんて、そんなはずない。── 偉そうに聞こえるかもしれないけど、今コウは、やっと自分の中にある傷と向き合えたんだと思う」
ショーンは最後にそれだけ言うと、羽柴の部屋を後にした。
『ごめん、ショーン。連絡が遅くなって・・・』
受話器から聞こえてくるルイの声は、少し焦っている様子だった。
「全然問題ないよ。それで、スタジオの方は・・・」
『それが・・・。きちんとした設備の整ってるスタジオは軒並みクローネンバーグの圧力がかかっていて、俺の名前じゃ借りれないようになってた』
ショーンは、その言葉に愕然とする。
── 俺の名前ならまだしも、ルイの名前でダメだなんて、ルイが制裁を受けているようなものじゃないか。
「ルイ、ごめん・・・! 俺、ルイに凄い迷惑かけてる・・・」
受話器の向こうから笑い声が聞こえてきた。
『迷惑? それはショーンがかけてる訳じゃないじゃないか。それに、俺の仕事が干されてるんじゃないよ。現にバルーンの事務所から仕事の依頼がきてるからね。ようは、俺単独で動くことに関しては、警戒されているらしい。ほら、何たってあのチャリティーコンサートの主催メンバーだったし』
イアンもクローネンバーグも、ショーンがルイを頼りにすることはお見通しだったという訳だ。
「そうか・・・。どうしよう」
ショーンは思わず唇を噛みしめた。
薄皮が剥げて、少しピリリとする。
しかしすぐに、ルイの返事が返ってきた。
『安心しろよ』
「え?」
『ショーンの協力者は、何も俺だけじゃないんだから』
「?」
ショーンは眉間に皺を寄せる。
ルイは、その沈黙を十分楽しんだようだった。
『カートだよ。カート・ヒルが、彼の別荘にあるスタジオを貸してくれるって。だからロスまで来られるか? 雑誌の締め切りとの兼ね合いもあるから、なるべく早くがいい』
「分かった。飛行機のチケット、手配してみる」
『この時期だから大丈夫だろう。朝一ならまだチケットが取れるかもしれない』
「分かった。エニグマの編集部に電話して、チケットが取れ次第向かうよ」
『待ってるぞ』
ショーンは心底ホッとして、受話器を置いた。
ルイ以外にも音楽業界にまだ自分の味方をしてくれる人がいるだなんて、なんて有り難いことなんだろうと思う。
── コウ、喜んでくれるかな・・・。
羽柴のいないキッチンを見つめ、ショーンはそう思った。
その日、羽柴が帰宅したのは深夜12時近くのことだった。
「先に寝ていてくれてよかったのに」
羽柴は、リビングで起きていたショーンを見つけ、戸惑った顔を見せた。少し酒の匂いがする。
「この時間ならまだ起きてるよ」
ショーンが肩を竦めると、「そうだよな」と羽柴は苦笑いした。
少し投げやりな笑顔に、ショーンは表情を曇らせる。
まるでショーンと顔を併せるのが苦しそうな感じで。
ふとショーンは羽柴が小脇に抱えているブリーフケースの留め金が壊れていることに気が付いた。
「どうしたの? これ」
よく見れば、黒い革に覆われた表面にも、擦り傷のようなものが幾筋もついている。
「何か、あった?」
ショーンは不穏なものを感じて、羽柴を見上げる。
羽柴は、鞄をテーブルの上に置いて首を横に振ると、ネクタイを緩めた。大きく息を吐き出す。
「ちょっと人とぶつかって、落としちゃったんだよ。新しいのを買わないと駄目なようだ」
ショーンは益々眉間に皺を寄せる。
この鞄の有様、ちょっと落としただけでつくような傷じゃない。
途端に、心配になってきた。
「ケガは? ケガはなかった?」
ショーンは立ち上がり、羽柴の身体を見回す。
羽柴は再び苦笑した。
「大丈夫。ケガなんかしてないよ。ケガしたのは、鞄だけ」
羽柴はそう言って、ソファーにどっかりと腰掛けた。
やはり少し疲れているようだ。
ふと羽柴は、ソファーの横にあるショーンの纏められた荷物に気が付いた。
「ショーン、これ・・・」
「明日、ロスに発つよ。そこでないとレコーディングができないんだ。ルイから連絡があった」
「ロスか・・・。大変だな」
羽柴が呟く。
今ショーンがいるC市は、ワシントンやニューヨークとほど近い東海岸にあるから、西海岸のロスまではまさにアメリカ大陸を横断していかねばならない。時差も3時間あるし、気候もまるで違うから、別の国に行くような感覚だ。
「もちろん、行く当てはあるんだろうね」
「うん」
ショーンは、羽柴の隣に腰掛ける。
「バルーンのアルバムのプロデュースをしてくれてる人が、別荘のスタジオを貸してくれるって。多分そこに泊まることになると思う」
羽柴は眉間に皺を寄せる。
「バルーンのプロデューサー? 大丈夫なのかい?」
「大丈夫だと思う。彼は凄く俺のこと可愛がってくれた人だし、今回の件を承知の上で申し出てくれた。もちろん、秘密裏に進めてくれる手はずになってる。── 実は、他の貸しスタジオはクローネンバーグ社長が全て圧力をかけていて、借りられなくなってた。だから、もうそこしかないんだ」
羽柴がじっとショーンを見つめてくる。その彼の表情には、驚愕と苦悩が浮かんでいた。
「── そんな・・・、そんなことまで・・・」
ショーンはふっと笑った。
「想像はしてたよ。イアンはやるといったら徹底的にやる。この分じゃきっと、全米中の音楽系事務所にも圧力がかかってると思う。契約はできないだろうね」
その台詞に、羽柴は更なる衝撃を受けたように見えた。
「なんてことだ、ショーン・・・。君は・・・」
「だからって俺、負けないよ。コウが考えてくれたこのアイデアなら、イアンからの妨害は受けない。コウは素晴らしいチャンスを俺に与えてくれた。だから俺は、それに精一杯答えなきゃ。── 大丈夫。きっと上手くいく。コウの努力は絶対に無駄にしない。また、皆の前で歌えるようになるまで、がんばんなきゃ。その姿を、コウとコウが愛する『彼』に見てもらいたいもの」
そう言って真っ直ぐ羽柴を見つめるショーンを見て、羽柴は何を感じたのだろう。
羽柴はまたもや苦しそうに目を細めると、胸元を押さえて俯いた。
ハッと息を吐き出す羽柴の目尻は、少し潤んでいるようにも見えて。
ショーンは再び眉間に皺を寄せた。
「・・・何? どうしたの、コウ。やっぱりケガしてるんじゃないの?」
ショーンが羽柴の背中に手を置くと、羽柴は俯いたまま、首を何度も横に振った。
今まで見せたことがないような苦悶の表情を浮かべる羽柴に、ショーンも不安げな表情を浮かべた。
「何? どうしたの、コウ。俺、やなこと言った? コウを傷つけること言った?」
「そうじゃない・・・」
「じゃ何? 怖いよ、コウ。どうしたの?」
「ショーンが悪いんじゃない・・・。俺が悪いんだ・・・」
ショーンは大きく目を見開いて羽柴の前に跪くと、彼の両肩を掴んだ。
「何言ってるの? コウ、こっち向いて・・・。俺の方を見て・・・」
羽柴はなおも俯いて、何度も首を横に振った。
「 ── 俺に今の君は見られない・・・。眩しすぎて、見れない・・・」
「何だよ、コウ。訳が解んない・・・。ねぇ、こっち向いて。向いて!!」
ショーンが羽柴の顔を両手で掴んで、無理矢理顔を上げさせた。
大きく苦しげに息を吐き出す羽柴の両目は、真っ赤になって涙を溜めていた。
ショーンは愕然とする。
それは、以前羽柴が見せた涙とはまったく異質のもので、益々ショーンを不安にさせた。
ショーンがあまりのショックに言葉を失っていると、羽柴は鼻の頭も真っ赤にして、ようやく吐き出すようにこう言った。
「もう、終わりにしよう。こういうのは」
しばらくの沈黙。
その間に、まるでスローモーションのように羽柴の瞳から涙が一筋はらりと落ちた。
「 ── 何・・・? 何を終わりにするの?」
ショーンが囁くように言う。
「こういうのって、何?」
羽柴は再び俯いて、首を横に振る。
「だから・・・。無理をして、一緒にいることを」
「無理? 無理って何? 俺が無理をしてるとでも?」
「 ── これ以上、君の気持ちを宙ぶらりんのままにしておくのは惨いことだろう? 君はこんなにも素晴らしい人なのに、その君に我慢をしいているなんて・・・」
「我慢なんてしてない! コウが好きだもの。コウの傍にいられたら、辛いことは何もないよ」
「俺は、君の気持ちに応えてもいないんだぞ。君の好意を知っておきながら、それを誤魔化して、利用してる」
「それでもいいって、言ったじゃないか! 覚えてないの? それでもいいって、納得したのは俺だよ。どうしてそれを、コウがダメだって決めるつけるの?」
羽柴はまた首を横に振る。
ショーンは、そんな羽柴の顔を覗き込んだ。だが、羽柴の表情なんて見えない。
「コウ、俺のためを思ってそう言ってるんならやめて。そんなの俺のためなんかじゃない。そんな優しさなんていらない。── でも、俺の想いがコウに負担をかけてるんなら、話は別」
羽柴が顔を上げる。
ショーンは、自分でも涙声になっているのが分かった。
自分の頬を熱いものが流れて行くのを感じたが、一歩も怯むつもりはなかった。
「あの日、告白した日から、考えなかったことはないよ。俺の想いが、コウに負担をかけてるって。重荷になってるって。俺は到底『彼』には適わないし、コウの抱えた深い穴を埋めることなんてできない。そんなの、とうに分かってた。けどね、コウ。待っていたいんだよ、俺は。埋めることはできなくても、寄り添うことはできるでしょ?! それもダメだっていうの?!」
「ショーン・・・」
「俺のことが負担だと思うのなら、そう言って。俺のことが嫌いになったんなら、そう言うべきだ。優しい言葉はいらない」
口を惹き結んだショーンの両目から、ポロポロと大粒の涙が零れる。
羽柴は、そのショーンの頬に触れた。
「 ── ショーン・・・。君はまだ、19歳なんだぞ。どうして・・・どうしてこんな苦しい目に合う必要がある。俺は、不甲斐ない男だ。俺のせいで、君は君のキャリアを犠牲にした。スタジオはおろか、他の事務所まで押さえられてるだなんて・・・。それがどんな意味を示してるか、君の方がよく分かってるだろう。まさか俺も、相手がそこまでだとは思ってなかった。考えが甘かった。俺の考えたアイデアなんて、単なる付け焼き刃なだけだ。ひょっとしたら、相手を余計に煽るだけかもしれない。相手がそこまでやる気なら、もうアメリカの地で歌うことができないぐらいに潰してくる覚悟なんだろう。そんな状況に追い込んだのは俺だ。若い君に、それを強いたのはこの俺だ・・・」
羽柴の震える指が、ショーンの涙を拭う。
「俺は・・・君から君の大切なものを奪うことしかできない男なのかもしれない。現にもう、大切なものをいくつも奪った」
「おかしいよ、コウ。・・・おかしいこと言ってる」
ショーンが羽柴の手を握った。
「コウが俺から奪ったものなんて何もない。あれは、俺がしたいからしたんだ。前にもそう言ったよ。俺はあの時、あの場で歌えたからこそ、改めて自分の存在価値を見い出すことができたんだ。そこから得るものは沢山あった。── 表面だけ見てちゃダメだよ、コウ! 確かに今のこの状況は厳しいけど、希望はある。なぜそれを見ようとしないの? 最初にそう言ったのはコウなのに・・・。本当の理由は別にあるんだろ? 正直に言って。俺のことが嫌いになったって。そうでしょ? どうしてその一言を言わないの?」
羽柴は再度首を横に振った。
「 ── 嫌いじゃない・・・。君のこと、嫌いじゃない・・・」
「じゃぁ何で?! コウは時間が欲しいといった。俺は待つと言った。その間にコウが俺のこと嫌いになったんなら、それはしょうがない。俺だって諦めるよ。けど、そうじゃないんでしょ? なぜ答えも出てないのに、焦るの? 本当の気持ち、聞かせてよ。そんなんじゃ納得できないよ」
乱れた羽柴の前髪の先に、彼の戦慄く唇が見える。
またしばらくの沈黙が流れた。
そしてショーンは、小刻みに震える羽柴の手を見つめた。
彼自身の膝を掴む手。力が入り過ぎて、白くなっている手。
「 ── 何を、怯えてるの?」
羽柴の肩がピクリと震える。
ショーンは、静かに、そして穏やかに息を吐き出した。
「俺、解ったような気がする。── コウ、怖がってる」
前髪の間から、羽柴がショーンを見る。
「次の一歩をどう出していいか分からなくて、震えてる。コウ、自分と向き合うのが、怖いんだ」
それはさっきまでの感情の高ぶったショーンの声とはまったく違う、達観した者の放つゴスペルのようだった。
「そうでしょ?」
「 ── ああ・・・。そうさ」
歯を食いしばった合間から、羽柴の苦々しい声が零れ出た。
「俺は、怖がってる。昔のことが、俺を傷つけ、そして君をも傷つけることを。俺は、5年もかけて、当たらず触らず、ようやくここまでやってきた。ようやく生き伸びてきたんだ。今でも、あの時のことを考えると、骨が軋む。身体の毛穴から血が突き出すような感覚を覚える。それはアイツを独り切りにしてしまった俺の罪だ。なぜ彼を置いてアメリカにきてしまったのか。なぜ彼の死期に気付くことができなかったのか。それが運命だったなんて、簡単な言葉なんかでは片づけられない・・・」
羽柴が、泣きながら自分の両手を見つめる。
「他人を本気で愛してしまうのが怖い。もう一度、チャレンジするのが怖い。真一の愛情を裏切ってるような気がするし、かといって君のことも嫌いになんかなれない。── 苦しいんだ、それが! どうしていいか分からないんだ! こんな調子じゃきっと君を傷つける。今でも俺は真一を愛してるし、それを忘れることなんてできない。それなのに、それなのに君は俺を愛してくれるというのか?! そんな報われない恋愛を望むとでも?! 片方で他の男を愛していながら、一方で君に愛を囁く。そんな不実な男がいいとでも? 君が・・・君がそんな苦労をする必要がどこにある? 君は、こんなにも素晴らしい人だ。強くて美しい魂をしてる。才能があって、いろんな可能性を秘めている。そんな君が、こんな俺のことを好きだなんて・・・。好きだなんて・・・」
羽柴は、頭を抱えて泣いた。
「 ── 自分が恥ずかしい生き方を重ねていることはよく分かってる。この5年間に、俺は随分卑怯な強さを手に入れたんだからね。それは何重にも硬い鎧を重ねて得た強さだ。とても狡猾で安易な鎧だよ。・・・この5年で笑えるようにもなった。普通に仕事もできるようになった。人を慰めることもできるようになったし、冗談も言えるようになった。『どうか前向きに生きて』と真一が最期にそう言い残した言葉通り生きていけるように、今はダメだったとしても、これからも努力していく。きっといつか、そう思える日まで、耐えていこうと思う。これが俺のできる精一杯のことだ。精一杯のことなんだ」
羽柴は、両手で顔を覆う。
「俺は、今のままで十分幸せだよ、ショーン。だから、君が同情して気にかけてくれる必要はない・・・」
「 ── 幸せなら、なぜ泣くの?」
羽柴が、ゆっくりと顔を上げてショーンを見た。
ショーンは涙に濡れた瞳を真っ直ぐ羽柴に向けていた。
「前に、コウ、俺の前で泣いたよね。彼のことを思って泣いた。まるで心が凍り付いた人みたいに、さめざめと。幸せなら、なぜ泣く必要があるの? 苦しいんじゃないの? 本当は」
「ショーン・・・・」
「確かに、愛を貫くことは美しいって思う。誰も、彼の代わりになんかなれないし、死んでしまった人への愛情が消えるなんてことは、もちろんない。でも彼のことを思うのに、なぜ涙が流れるの? それは、悲しみの涙ではないの? さっきコウ、言ったよね。それこそ、毛穴から血が吹き出そうなぐらい苦しいって。それって幸せっていうのかな? その悲しみが幸せだとでもいうの? 彼の言っていた前向きに生きるって、そういうこと?」
ショーンは立ち上がる。
「もし彼が、死んでもなお、一生コウを縛り付けることを望んでいるような人なら。コウが苦しみ続けているのを知っていて、それでもそれを望む人なら、俺はそんな人、認めない。そんな酷い人、俺は認めない。軽蔑する」
「ショーン!!」
羽柴が立ち上がって、ショーンの胸ぐらを掴んだ。ショーンは怯まず、羽柴を見上げる。
「殴りたいなら、殴ればいい。俺は、今のコウ、ちっとも幸せだと思わない。もし俺が彼の立場だったとしたら、俺なら愛する人に本当に幸せになって欲しいって思う。だって死んじゃった自分じゃもう、愛する人を幸せになんかできないんだもん・・・! それなのに、一生苦しみながら愛してくれだなんて、とても言えない・・・!!」
再び、ショーンの両目から涙が流れ落ちた。
だが、その瞳には強い光が宿っていた。
羽柴はギリギリと奥歯を噛みしめ、ショーンを放すと、ショーンに背を向けた。
「 ── 出て行ってくれ・・・。このままじゃ混乱して、君に何をするか分からない」
「コウ・・・」
「どうか・・・どうか・・・・」
羽柴は震える手で、両目をふさいだ。
ショーンは羽柴の背中に触れようとしたが、でもその手は結局握り拳になり、やがてそれはソファーの横に置いてある荷物を掴む手となった。
「コウがあの人を愛しているからって、俺は傷つかないよ。そんなコウが好きなんだから。── 俺は彼の代わりにはなれない。けど、また彼とは違う新しい日々の結晶をコウと積み上げていきたいって思ってる。コウは、素晴らしい人なんだ。だってコウからいっぱい勇気貰えたから、今俺はこうしていられるのに、それが嘘の強さだったなんて、そんなはずない。── 偉そうに聞こえるかもしれないけど、今コウは、やっと自分の中にある傷と向き合えたんだと思う」
ショーンは最後にそれだけ言うと、羽柴の部屋を後にした。
0
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
【完結】嘘はBLの始まり
紫紺
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。
突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった!
衝撃のBLドラマと現実が同時進行!
俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡
※番外編を追加しました!(1/3)
4話追加しますのでよろしくお願いします。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。
春風の香
梅川 ノン
BL
名門西園寺家の庶子として生まれた蒼は、病弱なオメガ。
母を早くに亡くし、父に顧みられない蒼は孤独だった。
そんな蒼に手を差し伸べたのが、北畠総合病院の医師北畠雪哉だった。
雪哉もオメガであり自力で医師になり、今は院長子息の夫になっていた。
自身の昔の姿を重ねて蒼を可愛がる雪哉は、自宅にも蒼を誘う。
雪哉の息子彰久は、蒼に一心に懐いた。蒼もそんな彰久を心から可愛がった。
3歳と15歳で出会う、受が12歳年上の歳の差オメガバースです。
オメガバースですが、独自の設定があります。ご了承ください。
番外編は二人の結婚直後と、4年後の甘い生活の二話です。それぞれ短いお話ですがお楽しみいただけると嬉しいです!
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
あなたの隣で初めての恋を知る
ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる