21 / 75
第2章 召喚術師と黒魔術師
サムの失踪
しおりを挟む
あれから起きてきたラルフに、サムからの伝言を見せた。
しかしラルフは困った顔を浮かべただけで、特段驚きはないようだった。
そして今、2人でさみしく朝飯を食べている。
俺はサムの居ないこの空間に落ち込んでいた。
「あの野郎、きっと直ぐにでも戻ってくるさ。……それにしても昨日はいつも通りだったのになァ。喧嘩でもしたのか?オメェら」
「……別に」
ぶっきらぼうにそう答えると、ラルフは一つため息をついて、少し呆れた表情になる。
俺は昨晩の事を思い返す。
(俺はサムのことが好きだ。なぁ、それじゃダメなのか?)
あぁ、やってしまった―――
どう考えても、俺が告白したから避けられているよな。
だって、どう考えてもこんなタイミングで居なくならなくても良いじゃないか。
なかったことにしてくれないかなー――。
でも、サムはサムで何か抱えているようだった。
俺には言っていることが理解できないところがあったが。
俺なんかでも力になれることがあったらいいのに。
「……でも、こういっちゃなんだがなァ。あいつの気持ち、ちょっとわかるぜ。今のあいつにはオメェを見ているのが辛いんだろ。オメェはすごいからな」
そういうラルフはなぜだか照れ臭そうだった。
俺はラルフが見当違いなことを言っていることと、自分自身に苛立ちを覚えて、思わず机をガンッと叩いた。
「そんなんじゃない」
少し大きな声が出てしまって、周りの宿泊客がちらちらとこちらを見る。
ラルフはしゅんと萎縮して一回り小さくなった。
「わ、悪ィ……、そんな顔させるんじゃなかったな」
ラルフは窮屈そうにスープをスプーンで掬って、ちびちびすすり始める。
俺は自分の苛立ちをラルフにぶつけたのが、流石に申し訳なくなって、話題を変えることにした。
「……ユウリのおじいさんから、こんな紙を渡されたんだ。今日はそこに行ってみようと思う」
ユウリの家でおじいさんからあの日そっと渡された紙を、ラルフに手渡した。
魔女へと繋がる情報を得られると思う、ということだったはずだ。
正直、魔女を探す必要はないのだが、残念ながらこの旅にはイベントというものが必要なのだ。
「ユウリって、あの昨日の朝突然やってきたべっぴんのチビか」
「べっぴんのチビって……」
ユウリに言ったら間違いなく、怒られそうな一言である。
何をしでかすか分からないので、できるだけユウリは怒らせたくない。
ユウリとラルフの相性は―――悪そうな気がするな。
ラルフはちょっとばかり、鈍感というか、無遠慮なところがあるから、2人の間で問題にならないといいけど。
「この住所の所に何かヒントがあるってのか。下のはそのジィさんの名前か」
「あぁ。何があるのかは俺も聞いてないんだ。でもおじいさんの名前を出せば悪いようにはされないだろうって。その住所の人に会えってことなんじゃないのかな」
「……そうか。着々と進展してンな」
どこか落ち込んだ表情のラルフを見て、俺は今日はラルフと出かけようと思った。
サムの居なくなってしまった俺も、1人でいるのは気分が落ち込みそうだった。
「ラルフも一緒に行かないか、今日予定がなければだけど」
そう言うと、その提案は意外だったのか、ラルフは驚いた顔をしていた。
「お、おお。……じゃ、そうさせてもらうぜ」
とどこかラルフの表情は安心したように見えた。
ラルフは皿ごと持ち上げて、残りのスープを口に掻き込んだ。
しかしラルフは困った顔を浮かべただけで、特段驚きはないようだった。
そして今、2人でさみしく朝飯を食べている。
俺はサムの居ないこの空間に落ち込んでいた。
「あの野郎、きっと直ぐにでも戻ってくるさ。……それにしても昨日はいつも通りだったのになァ。喧嘩でもしたのか?オメェら」
「……別に」
ぶっきらぼうにそう答えると、ラルフは一つため息をついて、少し呆れた表情になる。
俺は昨晩の事を思い返す。
(俺はサムのことが好きだ。なぁ、それじゃダメなのか?)
あぁ、やってしまった―――
どう考えても、俺が告白したから避けられているよな。
だって、どう考えてもこんなタイミングで居なくならなくても良いじゃないか。
なかったことにしてくれないかなー――。
でも、サムはサムで何か抱えているようだった。
俺には言っていることが理解できないところがあったが。
俺なんかでも力になれることがあったらいいのに。
「……でも、こういっちゃなんだがなァ。あいつの気持ち、ちょっとわかるぜ。今のあいつにはオメェを見ているのが辛いんだろ。オメェはすごいからな」
そういうラルフはなぜだか照れ臭そうだった。
俺はラルフが見当違いなことを言っていることと、自分自身に苛立ちを覚えて、思わず机をガンッと叩いた。
「そんなんじゃない」
少し大きな声が出てしまって、周りの宿泊客がちらちらとこちらを見る。
ラルフはしゅんと萎縮して一回り小さくなった。
「わ、悪ィ……、そんな顔させるんじゃなかったな」
ラルフは窮屈そうにスープをスプーンで掬って、ちびちびすすり始める。
俺は自分の苛立ちをラルフにぶつけたのが、流石に申し訳なくなって、話題を変えることにした。
「……ユウリのおじいさんから、こんな紙を渡されたんだ。今日はそこに行ってみようと思う」
ユウリの家でおじいさんからあの日そっと渡された紙を、ラルフに手渡した。
魔女へと繋がる情報を得られると思う、ということだったはずだ。
正直、魔女を探す必要はないのだが、残念ながらこの旅にはイベントというものが必要なのだ。
「ユウリって、あの昨日の朝突然やってきたべっぴんのチビか」
「べっぴんのチビって……」
ユウリに言ったら間違いなく、怒られそうな一言である。
何をしでかすか分からないので、できるだけユウリは怒らせたくない。
ユウリとラルフの相性は―――悪そうな気がするな。
ラルフはちょっとばかり、鈍感というか、無遠慮なところがあるから、2人の間で問題にならないといいけど。
「この住所の所に何かヒントがあるってのか。下のはそのジィさんの名前か」
「あぁ。何があるのかは俺も聞いてないんだ。でもおじいさんの名前を出せば悪いようにはされないだろうって。その住所の人に会えってことなんじゃないのかな」
「……そうか。着々と進展してンな」
どこか落ち込んだ表情のラルフを見て、俺は今日はラルフと出かけようと思った。
サムの居なくなってしまった俺も、1人でいるのは気分が落ち込みそうだった。
「ラルフも一緒に行かないか、今日予定がなければだけど」
そう言うと、その提案は意外だったのか、ラルフは驚いた顔をしていた。
「お、おお。……じゃ、そうさせてもらうぜ」
とどこかラルフの表情は安心したように見えた。
ラルフは皿ごと持ち上げて、残りのスープを口に掻き込んだ。
0
お気に入りに追加
307
あなたにおすすめの小説
平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。
みなしご白虎が獣人異世界でしあわせになるまで
キザキ ケイ
BL
親を亡くしたアルビノの小さなトラは、異世界へ渡った────……
気がつくと知らない場所にいた真っ白な子トラのタビトは、子ライオンのレグルスと出会い、彼が「獣人」であることを知る。
獣人はケモノとヒト両方の姿を持っていて、でも獣人は恐ろしい人間とは違うらしい。
故郷に帰りたいけれど、方法が分からず途方に暮れるタビトは、レグルスとふれあい、傷ついた心を癒やされながら共に成長していく。
しかし、珍しい見た目のタビトを狙うものが現れて────?
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
なんか金髪超絶美形の御曹司を抱くことになったんだが
なずとず
BL
タイトル通りの軽いノリの話です
酔った勢いで知らないハーフと将来を約束してしまった勇気君視点のお話になります
攻
井之上 勇気
まだまだ若手のサラリーマン
元ヤンの過去を隠しているが、酒が入ると本性が出てしまうらしい
でも翌朝には完全に記憶がない
受
牧野・ハロルド・エリス
天才・イケメン・天然ボケなカタコトハーフの御曹司
金髪ロング、勇気より背が高い
勇気にベタ惚れの仔犬ちゃん
ユウキにオヨメサンにしてもらいたい
同作者作品の「一夜の関係」の登場人物も絡んできます
失恋して崖から落ちたら、山の主の熊さんの嫁になった
無月陸兎
BL
ホタル祭で夜にホタルを見ながら友達に告白しようと企んでいた俺は、浮かれてムードの欠片もない山道で告白してフラれた。更には足を踏み外して崖から落ちてしまった。
そこで出会った山の主の熊さんと会い俺は熊さんの嫁になった──。
チョロくてちょっぴりおつむが弱い主人公が、ひたすら自分の旦那になった熊さん好き好きしてます。
私の事を調べないで!
さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と
桜華の白龍としての姿をもつ
咲夜 バレないように過ごすが
転校生が来てから騒がしくなり
みんなが私の事を調べだして…
表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓
https://picrew.me/image_maker/625951
この道を歩む~転生先で真剣に生きていたら、第二王子に真剣に愛された~
乃ぞみ
BL
※ムーンライトの方で500ブクマしたお礼で書いた物をこちらでも追加いたします。(全6話)BL要素少なめですが、よければよろしくお願いします。
【腹黒い他国の第二王子×負けず嫌いの転生者】
エドマンドは13歳の誕生日に日本人だったことを静かに思い出した。
転生先は【エドマンド・フィッツパトリック】で、二年後に死亡フラグが立っていた。
エドマンドに不満を持った隣国の第二王子である【ブライトル・ モルダー・ヴァルマ】と険悪な関係になるものの、いつの間にか友人や悪友のような関係に落ち着く二人。
死亡フラグを折ることで国が負けるのが怖いエドマンドと、必死に生かそうとするブライトル。
「僕は、生きなきゃ、いけないのか……?」
「当たり前だ。俺を残して逝く気だったのか? 恨むぞ」
全体的に結構シリアスですが、明確な死亡表現や主要キャラの退場は予定しておりません。
闘ったり、負傷したり、国同士の戦争描写があったります。
本編ド健全です。すみません。
※ 恋愛までが長いです。バトル小説にBLを添えて。
※ 攻めがまともに出てくるのは五話からです。
※ タイトル変更しております。旧【転生先がバトル漫画の死亡フラグが立っているライバルキャラだった件 ~本筋大幅改変なしでフラグを折りたいけど、何であんたがそこにいる~】
※ ムーンライトノベルズにも投稿しております。
オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる