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10.王子の悔恨
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「僕は失敗したんだ」
ある日の午後、私は前日に焼いたパウンドケーキを持て余し、王子を招いてお茶をしていた。一人だとホールサイズのケーキは全然減らなくて、そのうち飽きちゃうんだよね。王子たくさん食べてくれないかな。
紅茶を淹れてケーキを切り分ける。今日はお天気も良くてお茶会日和だ。
和やかにお茶の時間を楽しんでいたと思ったら、突然王子が語り始めた。
王子ってまだ病んでるのかな。顔を見てもイマイチ分からないんだよね。カエルだから。
「国王、僕の父はすごくやり手でね。数々の功績を上げてこの国を発展させてきた。我が国は小さいけれど隣国ともうまくやっていて、父の代になって戦争や争いごとが起こったことはないんだ」
「へえ、いつもあんな困った顔してるくせに。やり手なんだ」
「うん。内政もすごく上手くて、貴族の勢力争いなんかもそつなく治めてる。僕は父を尊敬してるんだ」
「そうなんだ」
「僕も父みたいになりたくて、すごく頑張っていたんだよね」
「ふーん」
「でもできなかった」
王子は顎が胸につくくらいうなだれていた。
「聖女には優しく大切にすべし。誠心誠意努めれば必ず願いは叶う、そう書いてあったのに。僕はできなかった。僕は失敗したんだ」
は?
失敗って私のこと?
それって私の前で言うこと?おいおい正気か王子!?
「失敗って私のことだよね。ごめんなさいね、失敗作で!!!」
苛立ちが怒りに変わり、ぐん、と室内の温度が下がった気がした。
「え?ち、ちがうよ!ユイのことじゃない!うわっ寒い!ちょっとユイやめてくれ!」
「うるさいわ!カエルって冬眠するんだっけ?寒いならお家に帰って冬眠してろ!」
「ちがうって!ごめん!怒らないで!ユイは悪くないって!!僕が悪い!ごめん!ごめんなさい!!」
王子がめちゃくちゃ謝るので、ちょっと大人げなかったかなと思って私は怒りを鎮めた。
「は~。ユイってさあ」
「なに?!?」
「いえ、なんでもないです」
すっかり凍えてしまった体を温めるため、もう一度お茶を淹れた。
熱いお茶をふうふう言って飲みながら、王子は再び話し始めた。
「ユイ、怒らないで聞いてほしい。僕はユイを責める気持ちは全然ないからね。分かってね」
私がすぐ怒るみたいに言わないでよね。
「僕は幼いころから優秀だと言われていた。あの父の子だと周囲も期待していたし、僕もその期待に十分に応えていたと思う。僕は才能もあったし、努力もできた。思ったことは何でもできたし、それはすごく自信になった。でも僕はそれに驕り高ぶることなく、よい王になるためにずっと頑張っていた」
へえ。そうなんだ。
「僕は僕より弱い者に対して許し、施すことをずっとしてきた。それをするべき立場にあると思っていたし、そうしたいと思っていた」
うんうん。立派だね。
「逆の立場になってみてそうされると僕はすごく傷ついた。それでユイの気持ちが少し分かった気がした」
……。
「この顔になってから、人に疎まれ、嫌がられることの辛さが分かった。仕事もなくなり、そうすると何を話していいか分からなくなった。みじめで、身の置き所が無かった。とても孤独だったよ」
王子は顔をあげる。まっすぐに私を見つめる瞳には誠実さがあった。
「ユイ、君を傷つけてすまなかった」
私は目の縁がじんわりと熱くなって、鼻の奥がツンとする。窓から入ってくる風は夏草のにおいがした。
「うん」
◇ ◇ ◇
季節の変わり目のせいか、数日間強い雨が降り続き、やっと明けたかという日のことだった。
ドアがノックされ、開けると王子が白毛の馬を伴って立っていた。
「ユイ、この長雨で地盤が弛んで、土砂崩れがあったみたいなんだ。西の山の方なんだが橋が崩れてしまったようで、僕が様子を見てくることになった。この辺りは大丈夫だと思うが、僕がいない間は戸締りをしっかりしてあまり出歩かないようにしてほしい」
さすが王子。王子が乗る馬はやっぱり白馬なんだな。王子はまだ王子として仕事をしているんだ。偉いな。そうだ、私のこの平屋だってきっと王子が手配したり様々なことをフォローしてくれていたんだろう。ちゃんと働いてるんだ。なんかお世話になりっぱなしで申し訳ない。などとぼんやり考えていたら自然と口が動いた。
「私も行こうかな」
王子はゆっくり振り向いた。
「王子、私も連れてってよ」
「ユイ……現場は危ないよ。その、何かしてくれようと思っているのか?」
「何ができるか、できるかどうか分からないから、こっそり私を運んでくれる?」
王子の馬を一頭立ての小さな二輪馬車につないで乗せてもらい現場に着いた。想像していたより大きな河川で、辺りはまだ完全に水が引いておらず、橋は落ち、倒木で道が通れなくなっていたり道の半分が崩落している状態だった。
どうしよう。自分の意志で力を使うことができるかな。やったことないけど、できるかな。
不安になり王子の顔を見ると、その顔はカエルで。
私はなんだか申し訳ない気持ちがぶわっと湧いてきて、すんなり力を使うことができた。
木製の橋だったようだが、私は崩れる前の橋を見てなかったので再現することはできなかった。雨にも風にも強い橋をお願いします、と祈って目を開けると眼鏡橋みたいなアーチ形の立派な石橋ができていた。
橋を見ながら王子はなんども私にお礼を言った。
「聖女、ありがとう。君は素晴らしい聖女だ。これで民は大いに助かるだろう。とても嬉しい。ありがとう、全て君のおかげだ。この国のためにありがとう」
私はちょっと感動した。
こんななりになっても、中身は変わらない。王子は立派な王子だ。
もう日が落ちかけていた。夕暮れの中で赤く染まる王子を見て私は言った。
「あなたは立派な王子だよ。失敗なんてしていない。あなたはずっと、何も変わっていない。立派な王子だよ」
「ありがとう」
王子は大きな瞳を潤ませて、くしゃりと笑った。
帰りの馬車で私はひどく疲れてぐったりとしていた。
背もたれに頭を預け目を閉じてうつらうつらしながら考える。
綺麗になった橋を見て、王子のカエルになった顔を見て。
私は自分が恐ろしい。
この力はなんだろう。
早くここから逃げ出したい。
元の自分に戻りたい。
ある日の午後、私は前日に焼いたパウンドケーキを持て余し、王子を招いてお茶をしていた。一人だとホールサイズのケーキは全然減らなくて、そのうち飽きちゃうんだよね。王子たくさん食べてくれないかな。
紅茶を淹れてケーキを切り分ける。今日はお天気も良くてお茶会日和だ。
和やかにお茶の時間を楽しんでいたと思ったら、突然王子が語り始めた。
王子ってまだ病んでるのかな。顔を見てもイマイチ分からないんだよね。カエルだから。
「国王、僕の父はすごくやり手でね。数々の功績を上げてこの国を発展させてきた。我が国は小さいけれど隣国ともうまくやっていて、父の代になって戦争や争いごとが起こったことはないんだ」
「へえ、いつもあんな困った顔してるくせに。やり手なんだ」
「うん。内政もすごく上手くて、貴族の勢力争いなんかもそつなく治めてる。僕は父を尊敬してるんだ」
「そうなんだ」
「僕も父みたいになりたくて、すごく頑張っていたんだよね」
「ふーん」
「でもできなかった」
王子は顎が胸につくくらいうなだれていた。
「聖女には優しく大切にすべし。誠心誠意努めれば必ず願いは叶う、そう書いてあったのに。僕はできなかった。僕は失敗したんだ」
は?
失敗って私のこと?
それって私の前で言うこと?おいおい正気か王子!?
「失敗って私のことだよね。ごめんなさいね、失敗作で!!!」
苛立ちが怒りに変わり、ぐん、と室内の温度が下がった気がした。
「え?ち、ちがうよ!ユイのことじゃない!うわっ寒い!ちょっとユイやめてくれ!」
「うるさいわ!カエルって冬眠するんだっけ?寒いならお家に帰って冬眠してろ!」
「ちがうって!ごめん!怒らないで!ユイは悪くないって!!僕が悪い!ごめん!ごめんなさい!!」
王子がめちゃくちゃ謝るので、ちょっと大人げなかったかなと思って私は怒りを鎮めた。
「は~。ユイってさあ」
「なに?!?」
「いえ、なんでもないです」
すっかり凍えてしまった体を温めるため、もう一度お茶を淹れた。
熱いお茶をふうふう言って飲みながら、王子は再び話し始めた。
「ユイ、怒らないで聞いてほしい。僕はユイを責める気持ちは全然ないからね。分かってね」
私がすぐ怒るみたいに言わないでよね。
「僕は幼いころから優秀だと言われていた。あの父の子だと周囲も期待していたし、僕もその期待に十分に応えていたと思う。僕は才能もあったし、努力もできた。思ったことは何でもできたし、それはすごく自信になった。でも僕はそれに驕り高ぶることなく、よい王になるためにずっと頑張っていた」
へえ。そうなんだ。
「僕は僕より弱い者に対して許し、施すことをずっとしてきた。それをするべき立場にあると思っていたし、そうしたいと思っていた」
うんうん。立派だね。
「逆の立場になってみてそうされると僕はすごく傷ついた。それでユイの気持ちが少し分かった気がした」
……。
「この顔になってから、人に疎まれ、嫌がられることの辛さが分かった。仕事もなくなり、そうすると何を話していいか分からなくなった。みじめで、身の置き所が無かった。とても孤独だったよ」
王子は顔をあげる。まっすぐに私を見つめる瞳には誠実さがあった。
「ユイ、君を傷つけてすまなかった」
私は目の縁がじんわりと熱くなって、鼻の奥がツンとする。窓から入ってくる風は夏草のにおいがした。
「うん」
◇ ◇ ◇
季節の変わり目のせいか、数日間強い雨が降り続き、やっと明けたかという日のことだった。
ドアがノックされ、開けると王子が白毛の馬を伴って立っていた。
「ユイ、この長雨で地盤が弛んで、土砂崩れがあったみたいなんだ。西の山の方なんだが橋が崩れてしまったようで、僕が様子を見てくることになった。この辺りは大丈夫だと思うが、僕がいない間は戸締りをしっかりしてあまり出歩かないようにしてほしい」
さすが王子。王子が乗る馬はやっぱり白馬なんだな。王子はまだ王子として仕事をしているんだ。偉いな。そうだ、私のこの平屋だってきっと王子が手配したり様々なことをフォローしてくれていたんだろう。ちゃんと働いてるんだ。なんかお世話になりっぱなしで申し訳ない。などとぼんやり考えていたら自然と口が動いた。
「私も行こうかな」
王子はゆっくり振り向いた。
「王子、私も連れてってよ」
「ユイ……現場は危ないよ。その、何かしてくれようと思っているのか?」
「何ができるか、できるかどうか分からないから、こっそり私を運んでくれる?」
王子の馬を一頭立ての小さな二輪馬車につないで乗せてもらい現場に着いた。想像していたより大きな河川で、辺りはまだ完全に水が引いておらず、橋は落ち、倒木で道が通れなくなっていたり道の半分が崩落している状態だった。
どうしよう。自分の意志で力を使うことができるかな。やったことないけど、できるかな。
不安になり王子の顔を見ると、その顔はカエルで。
私はなんだか申し訳ない気持ちがぶわっと湧いてきて、すんなり力を使うことができた。
木製の橋だったようだが、私は崩れる前の橋を見てなかったので再現することはできなかった。雨にも風にも強い橋をお願いします、と祈って目を開けると眼鏡橋みたいなアーチ形の立派な石橋ができていた。
橋を見ながら王子はなんども私にお礼を言った。
「聖女、ありがとう。君は素晴らしい聖女だ。これで民は大いに助かるだろう。とても嬉しい。ありがとう、全て君のおかげだ。この国のためにありがとう」
私はちょっと感動した。
こんななりになっても、中身は変わらない。王子は立派な王子だ。
もう日が落ちかけていた。夕暮れの中で赤く染まる王子を見て私は言った。
「あなたは立派な王子だよ。失敗なんてしていない。あなたはずっと、何も変わっていない。立派な王子だよ」
「ありがとう」
王子は大きな瞳を潤ませて、くしゃりと笑った。
帰りの馬車で私はひどく疲れてぐったりとしていた。
背もたれに頭を預け目を閉じてうつらうつらしながら考える。
綺麗になった橋を見て、王子のカエルになった顔を見て。
私は自分が恐ろしい。
この力はなんだろう。
早くここから逃げ出したい。
元の自分に戻りたい。
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