上 下
6 / 6

戦いの後

しおりを挟む
それからの魔法少女と魔王軍の行動は迅速だった。
 魔法と能力で廃工場を元の状態に戻し、それぞれの母艦に帰還した。
 業務的な行動に驚く。
 もっと誉めあったりしてもいいのではと思ったが、それがこちらの文化なのだろう。
「未来、我らはこの星を去ることにする。またいつやつらが現れるかわからないからな。何度倒しても新しい女王が生まれて同じことの繰り返しだ。これ以上地球に迷惑はかけられない」
 あっさりとしたお別れに寂しさは感じるけれど、私にはどうしようもない。
「そうですか」
 そんな言葉しか出なかった。
 そのかわり、ボンバーくん、マッドちゃん、クロくんとは泣きながらお別れをした。
 最初こそ大泣きする私たちを落ち着かせる役だったクロくんも空気にのまれてもらい泣きをし、最終的には抱き合って泣いた。
 それでも最後は笑ってちゃんとお別れができた。
「それでは、さようなら」
「うん、さようなら」
 家の近くの公園に移動してもらい、送り役のクロくんに最後のあいさつ。
 お互いに手を振って、消えるクロくんを見送った。
「未来」
 と、後ろから話しかけられる。
 振り向くとフローラが立っていた。
「ここで待っていれば会えると思いまして」
 ここはフローラと初めて会った日に彼女から逃げ出した公園だ。
「ごめんなさい」
 突然フローラが頭を下げる。
「どうしたの!?」
「わたくしのわがままで未来を戦いに巻き込みました。新人戦だけならともかく、やつらとの戦いにまで駆り出されて。全部わたくしのせいです。ごめんなさい」
「いいよ、今さらそんなこと。なんやかんやで私は楽しかったし友達もできた。確かにフローラに利用されてるって腹を立てたこともあったけど、もうなんとも思ってない。私はフローラにお礼を言いたいよ。一緒に戦ってくれて、守ってくれてありがとう」
「お礼を言うのはわたくしの方です。コンプレックスだったわたくしの固有魔法が誰かの役に立つとわかったのは未来との戦いのおかげです」
 私たちは笑いあい、握手をした。
「魔法女王になってね」
「ええ、必ずなってみせます。その時はまた地球にお邪魔しますね」
「今度はこっそり来てね」
「……それでは」
「うん、じゃあね」
 握手がはらりとほどけると、もうそこにはフローラはいなかった。
 まるで夢を見ているような、そんな感覚だった。



 魔法少女と魔王軍がいなくなったことは大ニュースになり世間を賑わせた。
 しかし、それも数日のことで、今では話題になることすらない。
 きっとこのまま忘れ去られてしまうのだろう。
 でも、きっとそれでいい。
 元々彼らはこの星には必要のない存在だったのだ。
 私は相変わらず学校と家の往復の毎日。
 時々遊びに行ったりと中学生活を満喫している。
 あの魔王軍として戦ったおかげで少し自分に自信を持てるようになった気がするし、ちょっとは成長したのかもしれない。
「いってらっしゃい」
「いってきます」
 お母さんの声に返事をして家を出る。
 今日もきっと平和な1日になるだろう。
 私の部屋のクローゼットには、あの日そのまま持ち帰ってしまった戦闘服と武器が大切に仕舞われている。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

前略、旦那様……幼馴染と幸せにお過ごし下さい【完結】

迷い人
恋愛
私、シア・エムリスは英知の塔で知識を蓄えた、賢者。 ある日、賢者の天敵に襲われたところを、人獣族のランディに救われ一目惚れ。 自らの有能さを盾に婚姻をしたのだけど……夫であるはずのランディは、私よりも幼馴染が大切らしい。 「だから、王様!! この婚姻無効にしてください!!」 「My天使の願いなら仕方ないなぁ~(*´ω`*)」  ※表現には実際と違う場合があります。  そうして、私は婚姻が完全に成立する前に、離婚を成立させたのだったのだけど……。  私を可愛がる国王夫婦は、私を妻に迎えた者に国を譲ると言い出すのだった。  ※AIイラスト、キャラ紹介、裏設定を『作品のオマケ』で掲載しています。  ※私の我儘で、イチャイチャどまりのR18→R15への変更になりました。 ごめんなさい。

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

理想の王妃様

青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。 王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。 王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題! で、そんな二人がどーなったか? ざまぁ?ありです。 お気楽にお読みください。

処理中です...