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12.灯りの途絶えぬ一夜 2
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そのすぐ後だった。
瑞稀は後ろから何かに引っ張られ、静止する。
慎也達3人はあっという間に見えなくなった。
「ーーやっと見つけた」
聞き覚えのある幼い声。
悪戯を仕掛けるような、陽気で弾んだ声。
瑞稀と後ろの人物は立ち止まっているが、岩場を避ける川のように、周りの人達は自然に流れていく。
瑞稀は口に含んでいたものを飲み込んだ。
「ストーカーかよ」
「何で魔術使わなかったの? 僕、ずっと待ってたのに」
「…だからだよ」
ため息を吐いて、そう答えた。
瑞稀は慎也とノスタルジアに行った日から、魔術を使わず過ごしていた。
WGの任務も転移は慎也に任せ、他は黒刀“椿”を使って。
それは、後ろの人物ーーヒカリに察知されるのを防ぐ為だった。
「浴衣着て、そんなにいっぱい持って、楽しそうじゃん」
「…まあね。ヒカリもこういう楽しみ方すれば?」
まるでそこの空間だけ切り離されているようだ。
2人が止まり、喋っているのに誰も気にしない。嫌な顔一つしない。
「ーー昔は楽しかったけどね。こういう普通なの、飽きちゃうんだよ」
本当につまらなそうに言う。
瑞稀は振り返らずとも、ヒカリの表情が想像出来た。
ヒカリが掴んだ 瑞稀の浴衣の袖をツンと引っ張る。
「それで、僕らの仲間に入る気になった?」
まるで物を強請る子供の姿だ。
ヒカルはとても単純で分かりやすい性格をしている。瑞稀にも容易に、ヒカルの言動の想像がつく。
「悪いけど、子供の遊びに付き合うほど暇じゃないんだ」
りんご飴を舐めながら言う台詞ではないが、瑞稀は至って冷静に、真面目に答えたつもりだった。
それで引き下がる相手だとも思っていないが。
「今の君は、WGに管理されてるだけじゃないの?
リュストルに来ればもっと自由になれる。瑞稀のしたい事、していいんだよ」
そして、思ったよりは 瑞稀の事を、深くまで調べているのかも知れない。
いつの間にか名前を呼び捨てにされていることに気付いたが、それは親しみを表して警戒心を解こうとしてなのか。
「WGに苦しめられたのに、WGに尽くすのって、辛くない?
僕は理解してあげられる。リュストルはみんな仲間なんだよ」
瑞稀は無言でヒカリの話を聞いていた。
ーー的を射ている。
まるで瑞稀の人生 全部見ていたかのように、その言葉は瑞稀にスッと入って来た。
瑞稀は後ろから何かに引っ張られ、静止する。
慎也達3人はあっという間に見えなくなった。
「ーーやっと見つけた」
聞き覚えのある幼い声。
悪戯を仕掛けるような、陽気で弾んだ声。
瑞稀と後ろの人物は立ち止まっているが、岩場を避ける川のように、周りの人達は自然に流れていく。
瑞稀は口に含んでいたものを飲み込んだ。
「ストーカーかよ」
「何で魔術使わなかったの? 僕、ずっと待ってたのに」
「…だからだよ」
ため息を吐いて、そう答えた。
瑞稀は慎也とノスタルジアに行った日から、魔術を使わず過ごしていた。
WGの任務も転移は慎也に任せ、他は黒刀“椿”を使って。
それは、後ろの人物ーーヒカリに察知されるのを防ぐ為だった。
「浴衣着て、そんなにいっぱい持って、楽しそうじゃん」
「…まあね。ヒカリもこういう楽しみ方すれば?」
まるでそこの空間だけ切り離されているようだ。
2人が止まり、喋っているのに誰も気にしない。嫌な顔一つしない。
「ーー昔は楽しかったけどね。こういう普通なの、飽きちゃうんだよ」
本当につまらなそうに言う。
瑞稀は振り返らずとも、ヒカリの表情が想像出来た。
ヒカリが掴んだ 瑞稀の浴衣の袖をツンと引っ張る。
「それで、僕らの仲間に入る気になった?」
まるで物を強請る子供の姿だ。
ヒカルはとても単純で分かりやすい性格をしている。瑞稀にも容易に、ヒカルの言動の想像がつく。
「悪いけど、子供の遊びに付き合うほど暇じゃないんだ」
りんご飴を舐めながら言う台詞ではないが、瑞稀は至って冷静に、真面目に答えたつもりだった。
それで引き下がる相手だとも思っていないが。
「今の君は、WGに管理されてるだけじゃないの?
リュストルに来ればもっと自由になれる。瑞稀のしたい事、していいんだよ」
そして、思ったよりは 瑞稀の事を、深くまで調べているのかも知れない。
いつの間にか名前を呼び捨てにされていることに気付いたが、それは親しみを表して警戒心を解こうとしてなのか。
「WGに苦しめられたのに、WGに尽くすのって、辛くない?
僕は理解してあげられる。リュストルはみんな仲間なんだよ」
瑞稀は無言でヒカリの話を聞いていた。
ーー的を射ている。
まるで瑞稀の人生 全部見ていたかのように、その言葉は瑞稀にスッと入って来た。
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