* 闇の白虎

慈雨

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05.待つ者、追う者

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「澪梨。作戦は伝えた通りだ」

「うん、分かってる」

澪梨、瑞稀ペアはスタートしてから一先ず、出来るだけ人のいない方へ走っていく。
単に邪魔されたくないのと、開けた場所の方が成功率が高いと踏んで。

これも打ち合わせ済みだった。


「まずはゴブリンを探さないと。でも、見つけても追いかけないように」

「あんたがゴブリンの気を引いて、その間に僕が動くーー!」

ザザ、と音を立てて二人は足を止めた。校舎裏の室外機の下の隙間に、ゴブリンが潜んでいる。
特性上、こういった狭いところを好む物が多いのだろう。


「ゴブリンにも、性格がある。すばしこく悪戯を好む性格の奴より、こういう臆病で警戒心の強い奴の方が、やりやすい」

「いい標的を見つけたね」


澪梨は、瑞稀の作戦を頭で反復した。

ーーまずは瑞稀がゴブリンの気を引く。


瑞稀はそっと一歩踏み出すと、深呼吸して魔力を集中させた。

澪梨に目配せをし、そして。
魔力を解放する。


(なに、この魔力…!)

澪梨は一瞬怯むが、ゴブリンを確認すると瑞稀の方を見て、少し震えているのが分かった。

ーー瑞稀が引きつけているあいだに、澪梨がゴブリンの魔力を測る。出来るだけ、似た魔力を纏えるように。


ゴブリンの魔力なんて、測った事がなかった。…と言うより、自分の魔力を鍛えることすらままならなかった今までを思い出す。

他者の魔力を感じ取り、それを真似て気配を“馴染ませる”。
瑞稀との約束を交わして約一ヶ月間、身体のトレーニングよりも優先してやってきた。

今朝の最後のミッションは、彰の魔力を真似て近付き、気付かれないよう彰の頭に葉っぱを一枚乗せる、というもの。
慎也は欺けなかったがーー無事クリアした。


瑞稀がゴブリンに一歩近付く。
あんな禍々しくて、出鱈目でたらめで大きい魔力、誰だって怖いだろうと澪梨は苦笑する。

ゴブリンが一歩後退った所まで、澪梨は接近していた。
なるべくゴブリンを怖がらせないよう、それに似た魔力を纏いながら、澪梨が鬼を捕まえた。


「暴れないで、安心して。僕らは敵じゃない」

すかさず、澪梨は声をかける。捕まった鬼は、まだジタバタと脱出を試みている。正直、とても 力が強いし 腕から出て行きそうだ。
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