37 / 132
05.待つ者、追う者
5
しおりを挟む
**
「澪梨。作戦は伝えた通りだ」
「うん、分かってる」
澪梨、瑞稀ペアはスタートしてから一先ず、出来るだけ人のいない方へ走っていく。
単に邪魔されたくないのと、開けた場所の方が成功率が高いと踏んで。
これも打ち合わせ済みだった。
「まずはゴブリンを探さないと。でも、見つけても追いかけないように」
「あんたがゴブリンの気を引いて、その間に僕が動くーー!」
ザザ、と音を立てて二人は足を止めた。校舎裏の室外機の下の隙間に、ゴブリンが潜んでいる。
特性上、こういった狭いところを好む物が多いのだろう。
「ゴブリンにも、性格がある。すばしこく悪戯を好む性格の奴より、こういう臆病で警戒心の強い奴の方が、やりやすい」
「いい標的を見つけたね」
澪梨は、瑞稀の作戦を頭で反復した。
ーーまずは瑞稀がゴブリンの気を引く。
瑞稀はそっと一歩踏み出すと、深呼吸して魔力を集中させた。
澪梨に目配せをし、そして。
魔力を解放する。
(なに、この魔力…!)
澪梨は一瞬怯むが、ゴブリンを確認すると瑞稀の方を見て、少し震えているのが分かった。
ーー瑞稀が引きつけているあいだに、澪梨がゴブリンの魔力を測る。出来るだけ、似た魔力を纏えるように。
ゴブリンの魔力なんて、測った事がなかった。…と言うより、自分の魔力を鍛えることすらままならなかった今までを思い出す。
他者の魔力を感じ取り、それを真似て気配を“馴染ませる”。
瑞稀との約束を交わして約一ヶ月間、身体のトレーニングよりも優先してやってきた。
今朝の最後のミッションは、彰の魔力を真似て近付き、気付かれないよう彰の頭に葉っぱを一枚乗せる、というもの。
慎也は欺けなかったがーー無事クリアした。
瑞稀がゴブリンに一歩近付く。
あんな禍々しくて、出鱈目で大きい魔力、誰だって怖いだろうと澪梨は苦笑する。
ゴブリンが一歩後退った所まで、澪梨は接近していた。
なるべくゴブリンを怖がらせないよう、それに似た魔力を纏いながら、澪梨が鬼を捕まえた。
「暴れないで、安心して。僕らは敵じゃない」
すかさず、澪梨は声をかける。捕まった鬼は、まだジタバタと脱出を試みている。正直、とても 力が強いし 腕から出て行きそうだ。
「澪梨。作戦は伝えた通りだ」
「うん、分かってる」
澪梨、瑞稀ペアはスタートしてから一先ず、出来るだけ人のいない方へ走っていく。
単に邪魔されたくないのと、開けた場所の方が成功率が高いと踏んで。
これも打ち合わせ済みだった。
「まずはゴブリンを探さないと。でも、見つけても追いかけないように」
「あんたがゴブリンの気を引いて、その間に僕が動くーー!」
ザザ、と音を立てて二人は足を止めた。校舎裏の室外機の下の隙間に、ゴブリンが潜んでいる。
特性上、こういった狭いところを好む物が多いのだろう。
「ゴブリンにも、性格がある。すばしこく悪戯を好む性格の奴より、こういう臆病で警戒心の強い奴の方が、やりやすい」
「いい標的を見つけたね」
澪梨は、瑞稀の作戦を頭で反復した。
ーーまずは瑞稀がゴブリンの気を引く。
瑞稀はそっと一歩踏み出すと、深呼吸して魔力を集中させた。
澪梨に目配せをし、そして。
魔力を解放する。
(なに、この魔力…!)
澪梨は一瞬怯むが、ゴブリンを確認すると瑞稀の方を見て、少し震えているのが分かった。
ーー瑞稀が引きつけているあいだに、澪梨がゴブリンの魔力を測る。出来るだけ、似た魔力を纏えるように。
ゴブリンの魔力なんて、測った事がなかった。…と言うより、自分の魔力を鍛えることすらままならなかった今までを思い出す。
他者の魔力を感じ取り、それを真似て気配を“馴染ませる”。
瑞稀との約束を交わして約一ヶ月間、身体のトレーニングよりも優先してやってきた。
今朝の最後のミッションは、彰の魔力を真似て近付き、気付かれないよう彰の頭に葉っぱを一枚乗せる、というもの。
慎也は欺けなかったがーー無事クリアした。
瑞稀がゴブリンに一歩近付く。
あんな禍々しくて、出鱈目で大きい魔力、誰だって怖いだろうと澪梨は苦笑する。
ゴブリンが一歩後退った所まで、澪梨は接近していた。
なるべくゴブリンを怖がらせないよう、それに似た魔力を纏いながら、澪梨が鬼を捕まえた。
「暴れないで、安心して。僕らは敵じゃない」
すかさず、澪梨は声をかける。捕まった鬼は、まだジタバタと脱出を試みている。正直、とても 力が強いし 腕から出て行きそうだ。
0
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
バーンアウト・ウイッチ
波丘
ファンタジー
大昔のとある事件をキッカケに世界は二分され、魔女と魔法を使えないノーマルは長い争いを続けていた。
16歳の誕生日をむかえた魔女ヒイラギは、今は亡き母親の夢を叶えるべく故郷を旅立つ。
目指すはノーマルの首都であるトウキョウ。
そこでの、とあるノーマルの青年との出会いがヒイラギの運命を急速に動かしていく。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
魔物を駆逐せよ!と言われたけどムカついたので忘れてしまいました。
無職無能の自由人
ファンタジー
使命を忘れた最強の生命体。しかし彼は馬鹿だった。
ふと前世を思い出した俺!ただし詳細不明!
何か忘れちゃいけない大事な事があったような無かったような気がするが忘れた!
よくわからないから適当に生きるぜ!
どうやら思い出した力が引き継がれるようで?おや?この尻尾は?
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
転生したらチートでした
ユナネコ
ファンタジー
通り魔に刺されそうになっていた親友を助けたら死んじゃってまさかの転生!?物語だけの話だと思ってたけど、まさかほんとにあるなんて!よし、第二の人生楽しむぞー!!
アリシアの恋は終わったのです。
ことりちゃん
恋愛
昼休みの廊下で、アリシアはずっとずっと大好きだったマークから、いきなり頬を引っ叩かれた。
その瞬間、アリシアの恋は終わりを迎えた。
そこから長年の虚しい片想いに別れを告げ、新しい道へと歩き出すアリシア。
反対に、後になってアリシアの想いに触れ、遅すぎる行動に出るマーク。
案外吹っ切れて楽しく過ごす女子と、どうしようもなく後悔する残念な男子のお話です。
ーーーーー
12話で完結します。
よろしくお願いします(´∀`)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる