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9・弟じゃなかったみたいです 後
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「ああっ、やだぁ……また、またぁ……あああっ!」
びくびくと身体を痙攣させる度、クリスが嬉しそうに笑う。それでも満足することはないのか、また駆り立てるように私に声をあげさせる。
「ん、ひぁぁっ! お願い、クリス。……もう……いや、無理……っ!」
震える身体で切れ切れに言葉を絞り出すと、クリスはようやく身体を起こした。荒い息をついて茫然とする私を見ながら、着ているシャツを脱いでいく。目を伏せる前に視界に入ってしまい……私は目を離せなくなった。
シャツの下から現れたのは、すらりとした見た目より、ずっと筋肉質の肉体だった。華奢だったクリスからは想像もつかない。というか、一年ちょっとでこんな……目に見えるほど鍛え上げるなんて……?
「姉さま、騎士団の奴らの隆々とした体形が好きって言ってたでしょ」
「え……?」
確かに言った。でもまだ社交界へ出る前の話。そのころ読んだ小説にそういう主人公がいて、私はすっかり夢中になっていたのだった。でも貴族の令嬢らしからぬ好みなので、それ以来誰にも言っていなかったのに……。
まさか、四年も前のことを覚えていたの?
「団長のダニエルは無理でも、レオンくらいにはなれたと思うんだけどな」
照れたように笑うクリスに、負けた。
ここまでされて、落ちずにいられるわけがない。
「……レオンより、ずっと素敵だわ」
微笑む私に、クリスの目が見開かれる。
「姉さま?」
「好きよ、クリス」
「―――姉さまっ!」
ものすごい勢いで、クリスは私に覆い被さった。両手を顔の脇について、私の瞳を覗き込む。
「本当? いつもみたいに同情してるんじゃないだろうね?」
アクアマリンの瞳の青が薄い。その色はいつもより不安げで、揺れているみたいだ。私はゆっくり頷いた。
「同情じゃないし、流されてもいないわ、クリス」
「姉さま」
青い瞳が少しだけ潤んで、クリスは久しぶりに天使の笑みを浮かべ、私にそっと口づけた。そして顔を上げてまた微笑み、何度も繰り返し口づける。さっきまでの激しさはないけれど、ふわふわと浮かんでいるようで気持ちいい。
「いいよね? 姉さま」
半分身体を起こして、クリスは下穿きの紐をしゅっと解いた。
「あ……ぅ!」
押し当てられたクリスのものが、みしみしと押し入ってきた。さっきまで蕩けていたそこは、最初のうちこそそれほど辛くないかと思ったけれど……、聞いていたとおり、やっぱり痛い。
「ん……っ、ふ……」
「ああ姉さま、ごめん。もう少しだから……」
クリスの方が辛そうな顔をしているけれど、さすがにやめようとはしない。苦しいけれど、私もそうしてほしいとは思わなかった。
「ひ……ん、……あぁっ!」
ずん、と身体の奥に重いものを感じたとき、知らずに涙がひと筋こぼれた。
「大丈夫、姉さま?」
「……ええ」
本当は、押し広げられたままのそこが、まだ鈍くじんじんと痛んで……、すぐにもやめてほしいくらいだった。
するとクリスが噴き出した。
「嘘が下手だね、姉さま」
「だって……ああっ!」
その態勢のままぎゅっと抱きしめられ、私は痛みに一瞬顔を歪めた。
「ごめん、姉さま。あんまり可愛いから」
「だって……」
「悪いけど、まだまだこれからだよ?」
「え? ―――あ!」
口許を緩めたままのクリスが腰を引いた。抜けてしまうのかと思ったら、ぎりぎりのところでまた戻ってくる。
「ああ、クリス。……痛……っ」
「ごめん、ちょっとだけ我慢して? だんだん辛くなくなると思うから」
「うう……」
初めはゆっくりだったクリスの動きは、私の様子を見つつ、少しずつ早くなっていった。ぎゅっと目を閉じて耐えるだけだった私も、いくらか馴染んできたのかもしれない。最初ほどは辛くなくなった。
「辛い?」
「さっきよりは、大丈夫」
首を振って見せた私に微笑んで、クリスは角度を変え、さっきよりも激しく突いた。私は少しだけ顔をしかめたけれど、さっきまでの弱いところを擦られて、急に痛み以外の感覚が大きくなった。
「あ……」
「もう痛くない? 姉さま」
「や、分からな……っ! あ……ぁ!」
快感が痛みに勝ってからは早かった。クリスの目からも余裕が消えた。いつも微笑んでいるクリスが僅かに眉をひそめ、こめかみに汗を浮かべている。
「姉さま、マリィ姉さま!」
「やぁ……っ! もう、もうだめぇっ! あ、ああ――――――っ!」
その高い声が、自分の喉から出たとはとても思えない。気が付けばクリスが私の胸に顔を埋め、身体を震わせていた。
クリスは私の後始末をし、水を飲ませてくれた。それから枕に寄りかかって私を抱き寄せる。
「大丈夫、姉さま?」
私は頷いた。気恥ずかしくてクリスの顔を見られなかったけれど。そんな私を、クリスはおかしそうに笑う。
「もう、本当に可愛いな、姉さまは」
「ばかっ、クリスだから余計恥ずかしいのよ」
するとクリスが私の顎をつかんで、くいっと仰向かせた。
「でももう、弟じゃないよ?」
「分かってるわ。……だから恥ずかしいんじゃない」
「そんな姉さまが好きだよ」
思わず目を逸らした私に、クリスが口づけた。
「だって、社交界の薔薇なんて言われてる姉さまが、実はこんなに口が悪いとか。本当は意地っ張りだとか。知ってるのは僕くらいだろうからね」
「もう……っ!」
「愛してる、マリレーヌ」
再び押し倒され、のしかかる重みを愛おしいと思う自分が嬉しい。私はクリスの首に腕をまわし、時間を忘れた。
fin.
びくびくと身体を痙攣させる度、クリスが嬉しそうに笑う。それでも満足することはないのか、また駆り立てるように私に声をあげさせる。
「ん、ひぁぁっ! お願い、クリス。……もう……いや、無理……っ!」
震える身体で切れ切れに言葉を絞り出すと、クリスはようやく身体を起こした。荒い息をついて茫然とする私を見ながら、着ているシャツを脱いでいく。目を伏せる前に視界に入ってしまい……私は目を離せなくなった。
シャツの下から現れたのは、すらりとした見た目より、ずっと筋肉質の肉体だった。華奢だったクリスからは想像もつかない。というか、一年ちょっとでこんな……目に見えるほど鍛え上げるなんて……?
「姉さま、騎士団の奴らの隆々とした体形が好きって言ってたでしょ」
「え……?」
確かに言った。でもまだ社交界へ出る前の話。そのころ読んだ小説にそういう主人公がいて、私はすっかり夢中になっていたのだった。でも貴族の令嬢らしからぬ好みなので、それ以来誰にも言っていなかったのに……。
まさか、四年も前のことを覚えていたの?
「団長のダニエルは無理でも、レオンくらいにはなれたと思うんだけどな」
照れたように笑うクリスに、負けた。
ここまでされて、落ちずにいられるわけがない。
「……レオンより、ずっと素敵だわ」
微笑む私に、クリスの目が見開かれる。
「姉さま?」
「好きよ、クリス」
「―――姉さまっ!」
ものすごい勢いで、クリスは私に覆い被さった。両手を顔の脇について、私の瞳を覗き込む。
「本当? いつもみたいに同情してるんじゃないだろうね?」
アクアマリンの瞳の青が薄い。その色はいつもより不安げで、揺れているみたいだ。私はゆっくり頷いた。
「同情じゃないし、流されてもいないわ、クリス」
「姉さま」
青い瞳が少しだけ潤んで、クリスは久しぶりに天使の笑みを浮かべ、私にそっと口づけた。そして顔を上げてまた微笑み、何度も繰り返し口づける。さっきまでの激しさはないけれど、ふわふわと浮かんでいるようで気持ちいい。
「いいよね? 姉さま」
半分身体を起こして、クリスは下穿きの紐をしゅっと解いた。
「あ……ぅ!」
押し当てられたクリスのものが、みしみしと押し入ってきた。さっきまで蕩けていたそこは、最初のうちこそそれほど辛くないかと思ったけれど……、聞いていたとおり、やっぱり痛い。
「ん……っ、ふ……」
「ああ姉さま、ごめん。もう少しだから……」
クリスの方が辛そうな顔をしているけれど、さすがにやめようとはしない。苦しいけれど、私もそうしてほしいとは思わなかった。
「ひ……ん、……あぁっ!」
ずん、と身体の奥に重いものを感じたとき、知らずに涙がひと筋こぼれた。
「大丈夫、姉さま?」
「……ええ」
本当は、押し広げられたままのそこが、まだ鈍くじんじんと痛んで……、すぐにもやめてほしいくらいだった。
するとクリスが噴き出した。
「嘘が下手だね、姉さま」
「だって……ああっ!」
その態勢のままぎゅっと抱きしめられ、私は痛みに一瞬顔を歪めた。
「ごめん、姉さま。あんまり可愛いから」
「だって……」
「悪いけど、まだまだこれからだよ?」
「え? ―――あ!」
口許を緩めたままのクリスが腰を引いた。抜けてしまうのかと思ったら、ぎりぎりのところでまた戻ってくる。
「ああ、クリス。……痛……っ」
「ごめん、ちょっとだけ我慢して? だんだん辛くなくなると思うから」
「うう……」
初めはゆっくりだったクリスの動きは、私の様子を見つつ、少しずつ早くなっていった。ぎゅっと目を閉じて耐えるだけだった私も、いくらか馴染んできたのかもしれない。最初ほどは辛くなくなった。
「辛い?」
「さっきよりは、大丈夫」
首を振って見せた私に微笑んで、クリスは角度を変え、さっきよりも激しく突いた。私は少しだけ顔をしかめたけれど、さっきまでの弱いところを擦られて、急に痛み以外の感覚が大きくなった。
「あ……」
「もう痛くない? 姉さま」
「や、分からな……っ! あ……ぁ!」
快感が痛みに勝ってからは早かった。クリスの目からも余裕が消えた。いつも微笑んでいるクリスが僅かに眉をひそめ、こめかみに汗を浮かべている。
「姉さま、マリィ姉さま!」
「やぁ……っ! もう、もうだめぇっ! あ、ああ――――――っ!」
その高い声が、自分の喉から出たとはとても思えない。気が付けばクリスが私の胸に顔を埋め、身体を震わせていた。
クリスは私の後始末をし、水を飲ませてくれた。それから枕に寄りかかって私を抱き寄せる。
「大丈夫、姉さま?」
私は頷いた。気恥ずかしくてクリスの顔を見られなかったけれど。そんな私を、クリスはおかしそうに笑う。
「もう、本当に可愛いな、姉さまは」
「ばかっ、クリスだから余計恥ずかしいのよ」
するとクリスが私の顎をつかんで、くいっと仰向かせた。
「でももう、弟じゃないよ?」
「分かってるわ。……だから恥ずかしいんじゃない」
「そんな姉さまが好きだよ」
思わず目を逸らした私に、クリスが口づけた。
「だって、社交界の薔薇なんて言われてる姉さまが、実はこんなに口が悪いとか。本当は意地っ張りだとか。知ってるのは僕くらいだろうからね」
「もう……っ!」
「愛してる、マリレーヌ」
再び押し倒され、のしかかる重みを愛おしいと思う自分が嬉しい。私はクリスの首に腕をまわし、時間を忘れた。
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