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異世界だってネットは大事3

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1章 「確かめ」


 僕は、桑塚麻音。この世界ではアサト・クワヅカという名前で生活している。
 そんな僕は今、帝都ルグナムの王城の1室にてスマホを持ち、魔法を唱えようとしていた。
 「ファイヤ」
僕は控えめな声で火属性魔法を唱えた。この魔法は古代魔法というらしく、この世界ではレアな属性なようでこの世界でも使える人は少ないらしい。なんとも元の世界の基本とは違うようだ。
 これから行おうとしていることは実験。趣旨は魔法とスマホのバッテリーの関係性を調べること。
 以前、魔法を使った際、バッテリーが増えるという現象が起きた。それについて確かめている。

 今回の実験前のバッテリーは95%だった。さて、バッテリーは増えているのか。
 
 『96%』
 微かだが1%増えた!
 もちろんコンセントは差していないし、それ以前にこの世界にはそんなものは無いはずだ。
 やはりこれは魔法の影響だろうか?
 という事はこれからは、バッテリーに困ることは無いということだ。
 しかし、何に使えるのか?懐中電灯?時計?メモ?使えたとしても魅力的な物は無い。
 
(魔力を媒介にしてバッテリーが増えるなら、このスマホでも、この世界の通信魔具とやらとも接続出来るかもしれない。それなら、その応用でネットだって…。)
 桑塚麻音は、何か確かめる方法がないか考える。
 まずは本物を見てみる必要があるな。
 研究室なら魔具の1つや2つは簡単に置いてあるだろう。
 明日にでも研究室に行って、アンさんに相談してみよう。
 
 そういえば。僕はお金を1銭も持っていない。
 確かシズーラさんと行ったギルドには、掲示板のようなものがあった。そこに仕事はあるはずだけど、1人で行けるだろうか?もし戦闘にでもなったら…。
 大丈夫だ。僕には全属性魔法がある。自信過剰な訳じゃないけど、凄いらしいし。
 でも、一応シズーラさんに確認してみよう。騎士団としての仕事の方が大切だ。
 「そうと決めたら準備をしよう。…。服ぐらいしかないか。」
 僕は一応、騎士団の制服で行くことにした。
 
 「寝よ。」
僕は魔法を使いすぎたのか、疲れたので寝ることにした。僕にはいわゆるMPというのが足りないようだ。RPGのようにステータスが見れればいいのにな。
 
 あ、使えるんだった魔法。
「サーチ!」
 そう叫ぶと、ポンッと目の前に半透明のプレートが浮遊した。

桑塚 麻音

17歳
属性:火・水・光・闇etc
得意魔法:クラフトシード(解析)
職業:無し
HP:690/690
MP:150/500

 
 HPが690、MPは500。MPに関して350P程減っている。今日は魔法を10回近く使ったから、1回あたり35Pぐらいということか。でもすべての魔法のMP消費量が同じじゃないことも考えられる。
 しかも、MPの多さなんて基準が無いから分からないが、いずれにしてもポンポン簡単には打てないということだろう。
 シズーラさんの数値も調べておけば良かった。
 ん?よく見たら、このステータスにはレベルが記されていない。もしかしてこの世界には、RPGのようなレベルの概念は存在しないのかな?
 それに得意魔法とやらのクラフトシード。作る種?種を作る?農業系?
 そもそも得意魔法というものが分からない。それに使ったことない魔法だ。使ってみようか?
 …いやいや、クラフトとも言うのだし、何か大きなものでも出てきたら大変だ。とりあえずは保留。
 種を作る。農業なんて知識ないし、大丈夫かな?
 本当にこの世界はツッコミどころ満載で暇を持て余すことがありえない。魅力的だとは思うがそれを考えただけで、疲労感が一気に溜まっていくのが感じられる。
 しかし…、疲れた。
 ただでさえ今日は魔法を酷使したのにこのトドメの1発サーチ。
 今は寝るのが第一目標だ。
 僕は明日の予定を確認しながら静かに瞼を閉じると、よほど疲れていたのか、第一目標は一瞬で達成されることになった。



2章 「魔法と道具」


 朝の窓から指す光が僕を照りつけ、僕は気持ち良く目を覚ます。
 この世界での2度目の朝だ。今日は昨日よりも天気は良いようで、より一層部屋が明るく感じた。
 今は、日本時刻で7時半。いつもよりは少し遅い目覚めだ。昨日の魔法の使用の影響がまだ少し残っているようだ。僕は未成年なので分からないが、これは恐らく元の世界の『二日酔い』と感覚が似ているのだろう。
 身体に物凄い脱力感が漂う。
 
 今日はギルドと研究室に行く予定。
 僕は机の上の新品の騎士団の制服に袖を通す。サイズはピッタリのようで、魔法様々と言ったところ。
 採寸された覚えはないので、そういう魔法があるのだろう。
 
 まずは、研究室に行こう。
 食事は、部屋に置いてあったのを食べていく。
 研究室に行ったあと手頃な依頼をギルドで受けてみようかな。
 場所に関しては、昨日アンさんと会った所なので、恐らくたどり着けるだろう。
 
一応、部屋の前にたどり着くことが出来たが、それにしても城内は恐ろしく広い。うー、自宅が欲しい…。
 僕が扉に手を掛けると、朝早くから熱心に研究をしていた研究員達が、もれなく僕の格好を見てきた。アンさんも同じ様に作業しており、同じく僕を凝視している。
 確かに僕の格好は騎士団の制服だ。目立つのは必然と言ってもいいだろう。近々、自己紹介がてらしっかり説明する必要がありそうだ。
 
 とりあえず、僕は本題のため、研究室の端で作業していたアンさんに声を掛けることにした。
  「アンさん、研究中すいません。あの、良かったらこの研究室にある通信魔具を見せてくれませんか?僕の研究の一貫として、参考にしたいんですけど…。」
アンさんは少し困ったような顔をして返答をしてくれた。
「えっと、本当に騎士さんなんですね。騎士服は格好良いですが、出来ればここに来る時の服はこれを…。」
そう言って自分の実験服を伸ばしてアピールしてくる。
 「んあ!あ、アンさん…。」
僕はこれを見ていいのだろうか。
「どうしました?もしかしてこれ持ってませんでしたか?」
 「い、いえ、持ってます、。」
本人は特に気にしていないのか、ボタンで前を止められた実験服を伸ばすと、チラチラと白い肌が前隠れしている。恐らく、実験服の中はHADAKAだ。  
 どうして中に服を着ていないんだ?まさかそれがこの世界の常識なのか?
 あーもう、今度は胸を張らないでくださいよ!!
 どこに目を置けばいいのか分からずキョドキョドしてしまう。
 「え、えーと、、、あ。はい!次からちゃんと、き、着てきますぅ。」
 なんか噛み噛みになってしまった。アンさんも不思議そうな目で見つめてくる。まるではてなマークといったところだ。

 「え、あ、そう、通信魔具!そうだ見せてくれませんか、?」
「あ、そうそう。ちょっと待ってて、今持ってくるから。」
  そう言うとアンさんは別の部屋から、大きな台車に乗せて運んでくる。
 
で、でかいっ!!
  大きさはシズーラさんが言っていた通りに、両手を広げても足りないぐらい大きく、そのせいかどこか禍々しい雰囲気を放っているように思えた。 
 大きさもそうだが、色を見ても、それは黒々と光る、まさに闇と言った感じの物だった。
 「ありがとうございます。触っても大丈夫ですか?」
 「ええ、でも一応精密機器だから大事にね?」
 このサイズの物を壊せる自信はないが慎重に扱おう。
 
 大きいだけあってずっしりしており、重さはもちろん持てないので分からないが、恐らく500kgは軽々と超えてくるという見た目な代物だ。
 形は球体と正方形の箱がパイプのようなもので繋がっているもので、球体の方は、少し浮いているようにも見える。もちろん球体の方もかなりの質量を要しているはずの見た目だ。全体の大きさの約3分の1を占めているだろうか

 あの箱の角に頭ぶつけたら痛いんだろうなー。小指なんてぶつけたら1発で天国生きだろう。気をつけよう。

 「どこから相手の声が聞こえるんですか?」
「ほら、よく見て。この窪みから相手の声が届いて、隣の出っ張りに声を掛けると相手に届くの。」
 確かによく見ると箱の方には小さな窪みと出っ張りがあった。この本体にこの受話器か。明らかにサイズ比がおかしい。
「で、この球体はなんですか?なんか浮いているように見えるんですけど。」
「あー、ここには光属性のロングヒアリングていう魔法の魔力が込められているの。浮いてるのは、魔力が空気より軽くて、こんな外殻は簡単に持ち上げてしまう力あるから。」
「え?という事はこれは、魔力だけで動いているんですか?回路とかなしで?」
「カイロ?そもそも通信魔具は光魔法が使えない人が通信できるように光魔法を貯めて、応用したものだよ?他の魔具もそんな感じだよ?」
 「魔法って、属性の適性がある人ならその属性のどんな魔法でも使えるんですか?」
「ん?いや、熟練度にもよるけど、高位の魔法は限られた人にしか使えないはずだよ?この通信魔具も第一騎士団の騎士さんに定期的に込めてもらってるの。」
 そ、そうなのか。そんな魔法自体初耳だったけど、魔具の意味も知らなかった。
とりあえず、他に発見がないかゆっくり見てみよう。

 Yes?
  No?

 ん?なにかの表示が目の前に出た。ステータスの時の表示に似ているが、YesとかNoなんて、選択肢はなかったはずだ。これは何だろうか?
 とりあえず、
「Yes。」
「はい?どうかしました?」
「い、いえ、何でもないです。」
 
 すると目の前でカードのようなものが回転して浮遊して発生した。それは微かに光っているようにも見える。
 僕はそれを手に取ると、すぐに調べてみることにした。
「サーチ。」
「はい?どうかしたんですか?」
「何でもないです~。」


シードカード(通信魔具)
効果:クラフトシードにより生まれた種。この種を使うと『通信魔具』が再現される。

 
 本当に解析魔法は優秀なようだ。
 それにシードカード。これが僕の得意魔法の効果ということか。まだよく分からないけど、これを見ると、この魔法は自分が見た物のカードを作って、さらにそのカードは見たものと同じものに変化するのかな?大体コピーという事だろう。
 発動条件はなんだろう?特に何かを唱えた覚えはないし、した事といえばじっくりそれを見ただけ…。まさか、それが発動条件なのか?
 得意魔法には、声を出さなくてもその魔法が発動できるという特徴だということかな。それも今は憶測でしかないけど。

 「ここので通信はできないけど、街のギルドとか商店でなら実際に使っているところが見れはずだけど、そういえば君は…。」
「僕がなんですか?」
「えっと、そもそも研究っていうのは、各属性の魔法の代用ができる魔具を作るためのものなんだけど、ここの研究室では自分が使える1属性を研究してて、今は、基本5属性のうち、光・闇・防護・洗脳がこの研究員が調べられるんだけど、アサト君はなんの属性が使えるのかな?」
 えっと、基本5属性ていうのは恐らく古代属性以外の属性だろう。もちろん解析属性は僕でも使えるはず。
「僕は、一応解析魔法は使えますが、まだ経験は浅いので何とも言えないです。でも、まだ使える属性もありますよ?」
「ほー、君は優秀なんだね!今この部屋には1属性ずつしか使えない研究員しかいないから、2属性持ちはラッキーなんだ。これで混属性魔具もつくれるね。それで、あとは何の魔法が使えるの?」
「光と闇と解析、洗脳、防護に火、水ですかね。」
 そう僕が言った瞬間、研究室中が静まり返り、また僕に視線が集まった。目の前にいるアンさんも目を丸くして僕の顔を真っ直ぐに覗いている。注目されるのは嬉しくないわけじゃないけど、実際、こう何度も注目されると流石に恥ずかしいものだな。

 そんな中、アンさんは顔をそのままキープしながら、僕に質問をしてくる。
 「え?5属性つかえて、さらに古代魔法2属性も?じょ、じ、じょ冗談だよね?全属性持ちなんて私は聞いたことないよ??」
「えっと、本当ですよ?試して出来ましたし、」
 アンさんは半ば興奮したまま、質問を繰り返す。
 「待って待って、本当に?それなら是非是非ここで働いてください、ってもうそんなんだっけ。まぁ、改めてこれからよろしくね。」
 「は、はい。それでは僕は行く所があるので、また。明日の内にはまた来ます。」



3章 「狩猟解禁!!」

 モンスターと戦闘するには、魔法が必須なはず、城内に図書館があったので魔法を調べるために行ってみてもいいかな。
 場所は確か、僕の部屋の近くにあったはずだ。
 僕は多少迷いながらも、図書館の前につく事が出来た。
 扉の大きさはユマ様の部屋のそれよりも大きく、開こうとしても、ずっしりとしていて簡単にはあかないような物だった。
 ギィギィィーン。普段あまり開けられていないのか、物凄い音を上げて開いた。
 あぁ、556が欲しい。
 よし、本を探そう。
「えーと、ИЪЭучыБにЖЫЪкй。…。読めない。」
 シズーラさんに助けを求めるか?いや、それは迷惑だろうし、少し恥ずかしい。何か宝探し的な魔法は無いのかな?
 それっぽい言葉かー。そんなに英語は得意じゃないしなぁ。英語?英語じゃなくて普通に日本語でもいいんじゃないか?試しに。
「魔法が載っている本はどこ?」
 Siriかよ。流石にこれじゃあ…
ポーン、
 (なんか本が光ってる。)
 僕はその本に歩み寄り、恐る恐る中を覗く。
 その中には大量の異文字が記されていた。
 だけど、これだけの量の魔法(?)、覚えるにしても大変だし、第一なんて書いているのか読めない。
 うーん、あ!魔法だ。
「コントロール!!」
 昨日、シズーラさんに使った魔法だ。自分を洗脳して、強制的に脳に叩き込む。
 時間があったらここの本全部覚えてみたい。そしたら一気に神童だ。
 とりあえずはこの本だけで、火属性と水属性は、記載が少ないようで、あまり頭に魔法が入ってこない。知られていないのか、そもそもの数が少ないのか。まぁ、これだけの量の魔法があれば大丈夫だろう。
 次は、ギルドかな?
 僕は図書館を出て、場外へと向かう。
  以前に個証書をギルドで発行していたので、ギルドの場所は分かっている。
 僕は城を出て、街を少し歩き、ギルドの前にやって来た。そこは以前にやってきた大きな剣の紋章が目立つ建物だ。僕は早速ギルドの中に入ると以前のように職員に声を掛けられる。
 「こんにちは、どのようなご要件で?」
「は、はい。えーと、仕事を探してて。掲示板を見に来たんですけど。」
そう僕が言うと、職員は大きなボードの前に案内してくれた。
 「こちらが掲示板です。クエストをお決めになりましたら、カウンターにご申請ください。」
 
えーと、どんなクエストがあるのかな?
・ホワイトスライム群の討伐:E
・グリムゴブリン群の討伐:E
・黒炎帝龍の討伐:SSS
・白炎帝龍の討伐:SSS
・ヒートウッディの討伐:C

スライムにゴブリン、龍にウッディ。龍は凄く場違いだが、まるで日本にあったゲームの、えーと、モンス…、あっ『ハンターモンスター』だ!そうそうHMだ。本当に似てるな。
 でも案外楽しそうだ。結構やり込んでたし。

 それで何のクエストを受注しようか、最初はスライム?少しランクを上げてウッディ?実際、魔法は充実しているから龍にも行ける?
 よし!龍を狩ろう。
 個人的に白い方が好きだから、この白炎龍の討伐ってのを受注してみよう。
 
 「あの、このクエストを受注したいんですけど、」
「は、はいー!って、え?このクエストですか!?SSSランクですよ?一介の冒険者100人相当の魔獣、と言うより龍は魔神の部類ですが、それがSランクのレベル。それの3倍で、300人相当ですよ?あなたはギルドに最近加入したばかりですよね?本当に大丈夫ですか?」
 300人相当か、ちょっと怖いけど、やばそうだったら逃げればいいかな。
「はい。それに僕は騎士ですから。」
 職員は僕の格好を見て、少し納得したようだが、それでも念を押して話してくる。
「騎士様なのはわかりました。それでも相手はSSSランクですから、一応この転移結晶をお持ちになってください。場所はこの街の中心部の転移門から天界へと行ってください。報酬は、モンスターの核をお持ち頂ければお渡しいたします。」
「わかりました。気を付けます。では、失礼します。」
 天界か、いきなり色々すっ飛ばして来た気もするけど頑張ってみよう。

 僕はギルドを後にすると適当な武器を見ることにした。お金は持っていないけど僕には反則級の裏技があるからな。
 というわけで今、僕は武具屋に来ている。この武器屋は転移門にも近く、割と大きな建物なようだ。中に入ると、大きな男1人が経営する店のようだ。
「いらっしゃーい!」
 店に入るといきなり威勢の良い声が響いてきた。
僕はその声を無視して、店内で、まるで万引きをするかのように商品を見つめていた。
 目の前のこの、黒く輝き異様なオーラを発する剣。
「お、この剣はすごく格好良いな!えーと聖剣トラウルス
ス。え!?聖剣?」
 まさか、店に聖剣が売っているとは思わなかった。
 すると、後から店主が近づいてくる。
「お!お客さんお目が高い。それに騎士様じゃねぇか!それはうちの宝刀トラウルス。ちょっと高いが、いい剣だ!お客さん、どうだ?買わんか?」
いち、じゅう、ひゃく、せん、まん……。500万!?
「えーと、いや…、考えます。」
そう言うと店主は、また違う客に話しかけにいく。
 流石にこれは買えないので、僕は少しセコい手を使う。クラフトシードだ。 
 僕はじっくり聖剣トラウルスを見つめる。

 Yes?
  No?

 Yes。
 僕は研究室の1件の要領でカードを出現させる。
 よし、1枚目。
 次は防具。この店は防具屋も兼ねており防具もしっかり置かれていた。
 そして適当な防具をいくつか見繕って、同じようにカードにしていく。

 僕は武具屋で装備を盗み、もといコピーして、中心部の転移門へと向かう。
 僕は転移門近くの広場でシードカードを使用する。
 しかし、どう使えばいいのかな?とりあえずカードを出して空に掲げてみる。
…。特に何も変化は無い。次にカードに魔力を注いでみる。
 すると、現物そのままの聖剣がカードから排出される。本当に聖剣がコピーされた。
 それも驚きだが、カードを使用してもカード自体は消滅されていないし、カードの内容も変わっていない。このカードは、1度だけではなく複数回使用できるということか。やっぱりつくずくチートな魔法だな。あんまり使わないようにしよう。流石に店主にも申し訳ないしな。
 僕は装備を一式付け転移門の中へと向かう。
「クエスト開始だ!」

 
さて、天界にやってきた訳だが、もう既に目の前には白炎龍が待機していた。
「お、おい!いきなりかよ!?」
 早速の戦闘だが、まずは焦らずに魔力底上薬を口に入れる。これも街で具現化させていたものだ。これは魔力の減少を一時的に少なくさせる薬だ。僕には丁度いい薬だ。
 まずは、一通りの身体強化魔法を掛けよう。これも光魔法の一種で光の加護と言うらしい。
 スピードとパワー、反射に耐性。
 耐性に関しては防護魔法のようだ。
「ソル!」
「ストローグ!」
「ソル!」
「ポテンシャル!」
 魔法により体から力が湧いてきた。そこから攻撃に移行する。
 ガァァァァロォォォンゥ!!
白炎龍は武具屋の店主ばりの声を上げて僕の方へ飛翔してきた。
 それに対抗してトラウルスを構える。少し萎縮して足がすくむが、そこは闇魔法の恐怖耐性の魔法を掛けて耐える。
 すると、白炎龍が僕に向かい突進際に炎を吐いてきた。やはり、白炎龍と言うだけに火を使えるようだ。
 「バリア!」
僕は、バリアで炎を防ぐが、壁に炎が降り注ぎ、あっさりとバリアが突破されてしまう。僕は急いで後方へ回避して姿勢を整える。
 
 僕は、反撃として聖剣で切りかかる。
キィーーン!!
 白炎龍の体表で剣が弾かれてしまう。これが聖剣の威力?それとも白炎龍が強いのか?いや、しっかり能力が発動されていないだけ?
 それなら、こうだ、
「ファイヤーコート!」
 それによって、トラウルスに炎の渦が巻き付く。これで威力が上がっていたら良いんだけど。
 僕はもう一度白炎龍に切りかかる。すると黒と赤の斬撃が白炎龍の体表をけずる。
 グァァァァァロゥ!!
白炎龍は悲鳴を上げ、動きが鈍る。体表にも大きな傷が付いているようで、大量の赤黒い血が流れている。おぉ?これが聖剣の威力か?明らかに1撃目とは勢いが違った。聖剣は属性の加護で威力が上がるのかな?これは有効利用できそうだな。僕はその隙に白炎龍のステータスを調べる。

白炎龍 Lv.276
 魔神、神龍種、覚醒個体
属性:光、火
 
 なんだかよく分からないけど、レベル276は尋常じゃない。神龍種に覚醒個体?なんだか凄くやばそうな字面が並んでいる。
 白炎龍はステータスの確認を待たず、こちらを見る。
 すると、白炎龍は重ねて攻撃をしてくる。今度は翼を大きく動かして豪風を送ってくる。それに僕は体を揺らしてしまう。
 「ドローイング!」
 僕は、豪風を耐えつつ間合いに入り魔法を放つ。このドローイングは相手の気力を奪う魔法だ。それによって白炎龍はさらに動きを鈍らせ、白い息を吐き始める。
 
 ウオォォォグゥェルゥゥゥ!!
白炎龍はまた大きな咆哮を上げる。すると白炎龍は目の色を変えて、何発もの大きな火球を放ってきた。バリアで受け切れないのは分かっているので、素直に後に回避する。
 しかし火球はコースを変えて、僕を追撃してくる。あの咆哮以来、動きが元に戻る、いや最初以上になっているか?それよりこの火球だ。いつまでも回避し続ける訳にはいかない。とりあえず、何か魔法で対抗しよう。
「ダークボール!」
 しかし、こちらの魔法はいとも簡単に粉砕されてしまう。
 火ならあれか?そう考えた僕は、
「ウォータバルーン」
 手から発射された水の泡は勢いよく火球とぶつかり、放電現象の後、お互いに消滅した。
 闇は効かなくても、RPGお決まりの法則で、炎に水は有効打なようだ。
 
 それにしても、今までの有効打といえばトラウルスでの一撃のみ。致命傷にはなっているようだが、対策されては意味が無い。何か、他の手は無いのか?
 洗脳魔法!…いや、RPGの法則。
※長いのでR法と言います。ご了承ください(´;ω;`)
R法に則れば、こういうボス系のモンスターには効かない。
 うーん、考えていてもキリがないなぁ。僕はそんなに頭は良くないんだー。
 
 GO  RI  O  SHI!!!

ゴリ押しじゃー!!
5分後…。

「よっし!討伐完了!!」
  ここにゴリ押し最強説が証明された。案外あっさりした最後だった。
 
 すると、白炎龍は白い蒸気を上げて消滅して行った。視界が戻ると、龍がいた場所には赤い球体が、地面にめり込んでいた。
 「サーチ。」

龍の核
 特に効果はないが、武器に付与すると、最大攻撃力が上がる。
 
これが核か。これをギルドに持ち帰れば、クエストかんりょ…、うぅー、っと、いぃよいしょー!
「重すぎー!!」
 もう、魔力がー。

Yes?
No?

いえすぅ!
 クラフトシードがない冒険者はどうやってこれを運ぶんだろうか。こういうのは事前に言っておいて欲しいものだな。帰ったら絶対、2ちゃんで愚痴ってやる。
 
 僕はギルドで貰った転移結晶で、直接ギルドへと帰る。

 ポワン、ギルドだ。僕はカウンターへと歩み寄り、核をお姉さんの前に出現させる。
 「あのー、クエスト完了しました、これ、核です。」
「でか!?これは、まさか白炎龍ですか??」
「は、はい。そうですけど。」
 ギルドのお姉さんは、急いでお奥へと走っていき、鎧を着た、偉そうな、巨体の男を連れてきた。
「お、おー貴方か、長い間天空に住みついた、白炎龍を倒した者とは!よし、今すぐ報酬を授けよう。」
 すると男は、手に持ったボウリングのボール程の膨らみを見せる、袋を差し出す。
「ここに、金貨500枚が入った袋がある。近いうちに、王族からの表彰があると思うが、とりあえずはクエスト完了の報酬として受け取ってくれ。」
金貨500枚!?金貨1枚で相場が2万。合計で1000万!?
聖剣が2本買える値段だ。正直、持っているのが怖い。
 まぁ、貰えるものは貰っておく。
「あ、ありがとうございましゅぅ!!大切につ、使わせていただきます!」
 とんでもないものを受け取ってしまった。とりあえずギルドを出よう。こんな大金持ち歩けない。

…。おっと、僕は天才かもしれない。これをクラフトシードでコピーしたら…。
「人生お疲れ様です!!」
 

「Yes!!」
                       next 「研究」




あとがき


 どうも、たぷーです!!異世界ネット、第三話でございます!!
 更新頻度がちょっとやばいですが、これから修正していきたいと思います。まぁ、今年受験生なんですけどね笑

 そんな中、2作目として、「ロードライフ・キーリング」
という作品も書き始めたいと思っています。異世界ネットの輪、ロードライフの輪が、広がっていったらいいな!と思っています!
 では、自話等を是非是非、お楽しみください!、





 




 

 
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