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第七十三話 魂の声

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「今だ!!今のうちにトドメを刺すんだ!!はやく!!」

 カリータ「エリオン先生!?」

 ローゼンを拘束している男はシドウが担当するEクラスを以前担当していたエリオンという男である

 ローゼン「貴様、まだ死んでなかったのか」

 リナ「エリオン先生!!そんな体で動いたら駄目です、はやくそいつから離れてください」

 フレイ「エリオン先生が……生きてたの……良かったです」

 リナとカリータは地下ですでに再開していたのだが事情を知らないフレイは涙を流している
 

 エリオン「教え子達に任せてノコノコと避難するわけにもいかないでしょうが!!そうでしょう?シドウ先生」

 シドウ「……その通りです」

 ローゼン「弱った雑魚が!!調子に乗るなよ」

 ローゼンはエリオンを振り解こうとして体を大きく揺さぶろうとするが

 エリオン「チェーン……アレスト」

 エリオンが呪文を唱えると鎖が周りから現れてローゼンとエリオンは共に拘束されて身動きができなくなってしまった

 エリオン「はやく……やるんだ この鎖もそう長く持たない」

 シドウ「…………」

 エリオン「私の事は構わずにコアを攻撃するんだ!! 今はこいつを討つ事が優先だろう!!」

 カリータ「そんな事は駄目です!!」

 リナ「そうですよ……先生が犠牲になる必要なんて……ないです」

 シドウ「了解しました……エリオン先生」
 
 フレイ「シドウ先生!!私は反対です……せっかく会う事ができたのに……そんなの酷いです」

 教え子の三人は反対しているがシドウは覚悟を決めて魔力を込めた手刀をローゼンとエリオンに向けて構える

 シドウ「エリオンが決めた道だ……気持ちは分かるが覚悟を決めろ」

 覚悟など決まるはずもなかった三人はシドウを抑えようとするがシドウは素早く抜け出して一直線に進んで行く

 ローゼン「クソッタレ!!何で俺がこんな奴らに」

 エリオン「皆さん……ごめんなさい……シドウ先生、後は頼みましたよ」

 ローゼンは捨て台詞を吐きエリオンはシドウに全てを託しローゼンの黒いコアがシドウの手刀によって貫かれる

 ローゼン「グォォ……この程度の奴に……」

 しかし次の瞬間に上空にある天空城が完全に崩壊してしまい瓦礫となってシドウとローゼンがいる場所へと降り注ぐと同時に魔獣と上で戦っていた人も降ってきて全員が浮遊魔法によって遥か奥に着地し次は地上で戦闘となる

 その影響によりシドウ、エリオン、ローゼンの三人は生き埋めになってしまい先生を二人も失った悲しみからカリータ、リナ、フレイの三人は大きな声で泣き叫んでおりその場から動けずにいる

 カリータ「エリオン先生……シドウ先生」

 

 カンナ「おい!!大丈……クソ、目を離せない」

 サブナック「それにさっきの音は一体……それに援護も止んでしまったぞ」

 状況を何も知らない二人はただ大きな音が聞こえただけでありひたすらにザンギャグロスと戦闘を続けている

 瓦礫は後衛の学生の方にも降り注いでおり何人かが怪我をしているようで治療をしており援護が薄くなってしまっているのだ

 そしてザンギャグロスを止めるという目的を忘れてしまった三人は瓦礫の山に向かってひたすら泣き叫んでいた

 リナ「先生、ううっ……そんなのって……ないよ」
 
 フレイ「先生……何で先生からもっと教わりたい事たくさんあったのに……」

 シドウ「それはどっちの先生だい?」

 瓦礫の底からシドウの声が聞こえたと思うと瓦礫が勢いよく吹っ飛びエリオンを片手で抱えたシドウが姿を現す

 カリータ「シドウ先生!!エリオン先生は生きてるのですか!?」

 シドウ「まーな……心臓はギリギリで避けたからまだ生きている」

 リナ「……本当に……良かったです」

 フレイ「はい……」

 すぐにシドウの元へと駆け寄りリナはエリオンに治癒魔法を唱えている

 エリオン「リ……ナ ありがとう……」

 シドウ「心配するな、眠っただけだ」

 エリオンは目を閉じて眠りにつきシドウも同様に横になってしまう

 シドウ「もう……体が」

 フレイ「無理しないでください 先生も酷い怪我なんですから」

 ボロボロになったシドウは倒れた状態でザンギャグロスとカンナの方向を指差す

 シドウ「俺のことはいい……はやくあいつらの援護を」

 ローゼン「フハハハハ!! 本当に死ぬ所だったぞ!!」

 聞きたくもない声が聞こえてると大きな音を立てて瓦礫を破壊して黒い魂となったローゼンが現れる

 シドウ「お前……俺は確実にコアを貫いたはずだ」

 ローゼン「お前の敗因は魔獣となった俺の脳みそを貫かなかった事だ」

 カリータ「そんな……」

 ローゼン「だがコアを破壊され肉体が無くなってしまったがな……しかしそこに丁度いい依代がある」

 霊体となったローゼンはカンナと戦っているザンギャグロスを見つけてそちらに向かっていく

 そしてザンギャグロスの中へと入ったと思うと黒い光に包まれて今まではうめき声しかあげてなかったザンギャグロスがローゼンの声で喋り出す

 ザンギャグロス「死ね!!全て消えてしまえ!!」

 カンナ「こいつ……ザンギャグロスの中に入りやがったのか」

 動きがさらに凶暴になったのでカンナとサブナックは後退してカリータ達に合流する

 カンナ「あいつが取り憑いてからさらに動きが速くなった」

 サブナック「そーだな、でも残るはあいつだけだ」

 残るはザンギャグロスだけなのだがこちらも消耗しておりシドウも動けるような状態ではなく残るは学生しかいない状況である

 カリータ「皆疲れてる……何かいい方法は無いの……」

 迫り来るザンギャグロスを前に全員何も言えなかったのだがシドウが思い出したかのように口を開く

 シドウ「いや……希望はまだある」

 パック「何か打開策があるのですか?」

 シドウ「まーな、カンナ、カリータ、お前達がやるんだ」

 シドウの言葉に二人は疑問を浮かべるが続けて

 シドウ「お前ら二人が融合してあいつを倒す、それしか道は残されてないだろ」

 カンナ「……しかし」

 カリータ「あの魔術は実戦で決めるのは難しいですし……それに……」

 カリータのいう事も事実であるがそれ以外の理由もあるようで顔を赤くしている……しかし

 シドウ「そんな事を言ってる場合か!!お前達がやらないと全員が死ぬんだぞ それは分かっているのか」

 カンナ「カリータ、皆を救うためにやるしかないだろう」

 カリータ「……もう後には引けませんね、実戦ですがしっかりと一撃で決めてみせましょう」

 カンナ「そうだ、やるしかない」

 二人とも覚悟をきめた目で互いを見つめると手を取り合う

 カリータ「皆さん!!私とカンナでけりをつけます、ですから少しの間だけ頑張って下さい」

 カリータの呼びかけに全員が頷きザンギャグロスへ突っ込んでいく

 カリータ「カンナ、一週間前ですが動きと呪文は覚えてますよね?」

 カンナ「バッチリだ 全て覚えてるさ、カリータから頼むよ」

 カリータ「うん、それじゃいくわ」

 カンナ「おう」

 二人は一定の感覚を開けてカリータは深く息を吸った


 カリータ「我々は肉体と魂を一つに繋ぎ更なる力を望む者なり」

 
 カンナ「二つの存在がひとつなぎとなりて生まれる命は人智を超えた存在となりて敵を蹴散らすであろう」
 

 カリータ「肉体の結合よ!!」

 カンナ「魂の交錯よ!!」

 カンナ&カリータ「か弱き我らに力を与えたまえ!!」

 久しぶりではあるが動きは以前よりもさらに良くなっておりお互いの片手を繋いで天へと掲げる

 二人は白い光に包まれると一人の人間となりザンギャグロスを睨みつける

 カリーナ「私があなたを倒します、ローゼン先生」

 ザンギャグロスとなったローゼンは雄叫びをあげている、その下ではサブナック、パック、フレイ、リナが時間稼ぎのために戦っておりパックとリナが鋭い爪で切り裂かれようとしていた

 カリーナ「やらせない」

 カリーナは仲間のピンチに素早く駆けつけリナとパック
を抱えて大きく後退する

 助けられた二人はお礼を言いその事を察したサブナックとフレイもカリーナの元へ合流する

 カリーナ「私がフルパワーで戦いますので隙を見つけて攻撃してください」

 カリーナは一言だけ言い残してフェンリルに合図を送ってザンギャグロスへ突っ込んでいく

 シドウ「動けるやつはカリーナの援護をしろ……奴もだいぶ弱ってるはずだ」

 グライス「カンナとカリータが戦ってるんですね」

 マリア「もう後がない、やるしかないわよ」

 後ろにいたグライスとマリアも合流しその場にいた全員はシドウの指示を聞いてカリーナの援護へと向かう

 その一方でカリーナは両手に魔力の剣を纏って競技祭では見せたことのないパワーとスピードで戦いフェンリルと息を合わせて攻撃している

 カリーナ「倒れろ!!」

 ザンギャグロス「何故だ!? 競技祭の時はそんなスピードとパワーではなかったはずだ」

 カリーナ「私にも分かりませんね」

 競技祭とは別人のような動きにローゼンは圧倒されそれを見ていたサブナック達も同じような事を感じていた

 グライス「競技祭の時よりもさらに強くなってる」

 マリア「確かにそうね、理屈は分からないけど」

 シドウ「お前達は気づかなかったのだろうがあいつは手を抜いていたのさ」

 シドウが片手を抑えながら現れて全員が注目する

 フレイ「どういう事ですか?」

 シドウ「単純な話だ、競技祭の時のカリーナの相手は人で相手を傷つけないように無意識のうちに力をセーブしていたのだよ」

 グライス「でも競技祭の結界の中だとそんな事しなくても大丈夫じゃないですか」

 シドウ「俺もそれは何度も言ったが治る事はなかったな、そしてしまいには俺に対しても加減する始末だったからな」

 リナ「そうだったんだ……二人とも優しいから相手を怪我させたくなかったんだね」

 シドウ「そういうことだ、あれが本来の力なのだろう」

 ザンギャグロス「馬鹿な……この俺が学生ごときに」

 カリーナ「もう勝負はつきました、諦めてください」

 カリーナはザンギャグロスの両足を目にも止まらぬ速さで斬りつける

 カリーナ「スピリッツ!!エクスカリバー!!」

 それでも抵抗してきたので胴体を巨大な魔力剣で攻撃するとザンギャグロスは大きな音を立てて倒れる

 カリーナ「……終わりましたか」

 ?(助け……て)

 カリーナ(誰の声? もしかしてこの古龍から?)

 シドウ「……ん? カリーナ!!まだだ そいつはまだくたばってないぞ」

 ザンギャグロス「残念だったな もう遅い」

 やられたふりをしている事に気づいたシドウがカリーナに呼びかけるがザンギャグロスの目標はカリーナではなくシドウ達の方へ火の玉を吐く

 突然火の玉が目の前に迫りシドウ以外の全員は目を瞑っているがカリーナが全て防いで全員を守る

 シドウ「全く……最後まで油断をするなよ」

 カリーナ「はい……」

 シドウ「何かあったのか?」

 カリーナ「分かりませんがあの龍の声が聞こえたような気がします」

 シドウ「あの龍の声だと!?」

 カリーナ「助けを求めるような……そんな感じです」
 
 シドウ「だが 今はそんな状況ではないぞ!!」

 カリーナ「分かっています、まずはローゼンをあの龍から引き離します、それでも暴れ続けるようなら私が倒します」

 シドウ「そんな事ができるのか?」

 シドウを無視してザンギャグロスへと突っ込んでいき右手に魔力を込めて集中する

 シドウ「あれは……光魔法か」

 カリーナの右手は虹色に輝きを放ち手のひらをザンギャグロスの胴体へ押し付ける

 カリーナ「スピリッツ パニッシュメント」

 その手を押し付けられたザンギャグロスからは黒いオーラが漏れだすと同時にローゼンの断末魔が聞こえてくる


 シドウ「あれがあいつの最後か……哀れだな」

 黒いオーラが消え去ってローゼンの気配が完全に消えたので古龍は大人しくなるかと思っていた

 カリーナ「やっぱりコイツも倒すしか……」

 傷ついていた両足は再生し再び暴れ出そうとしている

 本当なら助けられるかもしれないのだがそれ以上に仲間の事が大事なのでカリーナは割り切って右手を天に掲げる

 カリーナ「ゴメンね……スピリッツ エクスカリバ……」

 剣を振り下ろそうとしていると猛スピードで誰かが飛びついてきたのでカリーナは地面に倒れ込む

「お姉ちゃん辞めて!!あの龍の声が聞こえてるんでしょ!!」

 シドウ「誰だあの少女は」

 リナ「可愛らしいですが……何か違う雰囲気を感じます」

 その少女はカリーナ飛びつき上に乗っかっておりカリーナは何が起きたのか理解できなかったのだがその少女を見て驚くがそれと同時に安心する

 カリーナ「アリス……来てくれたのか」

 
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