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第1章
第11話
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「ん……朝かぁ……」
黎明の陽の光が、地平線から村を照らすのと同じ頃。
愛しの硬い床の上で寝ていた私の体は、目を開くと同時に覚醒へと向かいました。
眠気を振り払うために立ち上がると、異世界でも習慣としているストレッチを少しして、完全に目を覚ますと、大きなあくびと共に背伸びをしました。
ベットの上では、ルーアが爽やかな顔で快眠を謳歌していて、お互いに今日はよく眠れたようです。
荷物を整え、スロゥルで身を包み、用意はしましたが、一人にすると何かと危険なルーアが起きるを待って、しばらくそのままいました。
「ふぅ……ん……」
とはいえやはり暇で、装備を全部外し、腕立て伏せ、背筋、腹筋の順で筋トレをしている間に、彼女は起きました。
ギシギシと揺れるベッドに不安感を抱いて起きると、そこに私が腹筋をしているのですから、無理もありません。
「……何してるの?」
心ゆくまで睡眠できなかったのか不満だったのか、不機嫌そうな顔をして、彼女はそう呟きました。
「ん、あれ何?」
そして、部屋の一角に置かれた装備品に興味を示したのか、指をさしてそれを聞きました。
「ん?あぁ……私の装備品。まあいろいろだけど、ナイフとかもあるよ?」
ベルトキットに付けられていたKa-Barナイフを鞘から取り出し、黒光りするその刀身を彼女に見せました。
支給されたナイフよりも扱いやすく、多目的に使えるよう設計してあるので、持っているだけでかなり使えます。
それは、P-90とファイブセブンさえあればいいんじゃね、的な感じだった前の私では考えられないほどでした。
「私の好みよりは少し短いけど……切れ味は良さそう」
刃長約20cm程度の長さでは、彼女のお気には召さなかったですが、それ以外のものには興味を示したようです。
「ルーアは、戦闘経験とかあるの?」
ナイフに興味を示すということは、そういった知識もあるのではないかと薄々気付いてしまいました。
場合によれば、二人でクエストなんかも出来そうな予感。
「あるよ。独学で双剣をね、家が貧しかったから……自衛のためもあるけど、肉とかを確保するのに必要だったからね」
なるほど、そういうことか~……。
期待の通りには行けなかった虚しみ半分、でも、僅かにある戦闘経験に希望半分と、微妙な気分ですが、三歩歩いて二歩下がるような感じに慣れたのは良いことです。
ルーアにギルドに行くから準備するようにと言うと、私はスマホを片手に、マイセットに登録した装備の「装着」という所を選び、ルーアが迷彩服を着終わる頃には、既に準備完了でした。
──────
「ルーア様の冒険者登録ですね、見たところ奴隷の方のようなので、黒恵様に合わせて冒険者レベルⅡから始められますが、どうしましょうか?」
場所は変わり、ギルドの冒険者登録受付前。
私は受付の女性が言った言葉に少し驚愕してしまいました。
「は、はい。できるなら、それでお願いします」
スロゥルで隠されたルーアの顔は、今どんな顔をしているのでしょうか。
申し訳なさで胸がいっぱいになりそうですが、渡りに船です。冒険者レベルⅡから始められるようお願いしました。
「分かりました、こちらのアンケート用紙に御記入された後、隣の四番カウンターにお願いします」
見るのは二度目の、アンケート用紙。
それを受け取り、適当なテーブル席に座ると、字は一応書けるとの事なので、あとはルーアに任せます。
時折涙ぐんだり、何かを忘れさせるように首を振る一幕もありましたが、拙い文字でありながらも、一応読める程度には上手く書いていました。
レベルⅠをすっ飛ばして行けるならと、私も現行の装備をそのままルーアの身長などに合わせて作り、装備一式と、連携用のヘッドホンマイクなどを調達するのでスマホ画面を見ていた時に、それは起こりました。
「お姉ちゃん!!」
突然、茶色の毛をした獣っ子がルーアに突撃してきたのです。
それをもろに受けたルーアは椅子から落ち、反射的に私はその正体へとファイブセブンを向けていました。
「いたた……だ、誰?」
その本人はルーアにぎゅっとしがみつき、私が離そうとしても離れませんでした。
粗末な革装備に身を包み、腰には短剣が二本。
そして、見慣れたスロゥルが、首元にあるだけで、突撃した勢いで翻ったような感じでした。
「もしかして……妹さん?」
必死にその子を引き剥がそうとするルーアが、頭だけを頷かせる。
色は銀と茶で違うけど確かに、似ているところはありました。
とりあえず、それが収まるまで周りの迷惑になるので、受付嬢さんに頼んで個室を用意してもらい、ズリズリとルーアを引っ張りながら行きました。
10代の女の子二人分の体重なので、流石に重かったです。
「さて、妹さんの方も収まってきたかな」
個室で三人、私と、ルーアと妹さんが対になるようにすると、花をすすり、涙を拭いて何とか正気に戻ってきた彼女の話を聞きました。
曰く。
彼女……いや彼女達の村は、連年続く不作に悩まされ、税を滞納していた為に、領主からルーアを貴重な白狼ということで高く買うことで強引に決められ、その後を追うにつれ奴隷になった事を知り、彼女を取り戻すために冒険者を始めてお金を集めていたとか。
昨日買い手がつき、奴隷館を去ったのを知り諦めていたけど、今日その姿を見つけ嬉しさのあまり突撃してしまったようです。
「んー、まあ、自然っちゃ自然だけど、一本間違えたら命が危なかったよ?」
驚きのあまり、咄嗟にファイブセブンを構えたのがそれでした。
セーフティーを解除していなかったから良かったものの、私の手が滑って発砲していたかもしれません。
「それは……申し訳ございません」
焦ったように頭を下げ、テーブルにゴンッと勢いよくぶつけてしまいました。
この子もこの子で心配な所がありそうですね……。
「あなた達の事情はわかったわ、でも、私にも事情がある。貴方が良ければ、私達とパーティーを組んでくれないかな」
ルーアは、僅かに戦闘経験があるだけで、銃の事を教える以上に体力基礎から入っていく必要がありそうだったので、即戦力として取り入れるには彼女はちょうど良かったのです。
「私で良ければ……あ、そういえば自己紹介がまだでしたね」
首から冒険者タグを引っ張り出し、それを見せながら、彼女は自分の事を名乗りました。
名前は、リーア。得意装備は双剣で、魔法の扱いも得意との事。
私も、冒険者タグを見せ、自己紹介を行い、お互いにパーティー仲間としてよろしくと、握手を交わしたあと個室を出ました。
「今日のうちは、軽いクエストを受けて、お互いの腕でも確かめあおうか。例えば……これとか」
私は、クエストボードに貼り付けてあった用紙を取り、彼女達に見せました。
それは、得られる金は高いのに、他にもクエスト用紙が多く見られるものでした。
《キャステイト討伐》
見た目はイノシシに似ていて、大きいものは人間の身長を超えることもあるらしいです。
特徴的なのは、厚くそこそこ硬い皮脂が全身を覆うようにある事。
剣を弾くほどに硬いわけではないですが、ちょっとやそっとの事では倒れない忍耐性を持つモンスターです。
通常は群れで行動し、家畜が野生化したサルピスというモンスターと同じように、農作物を荒らすことがあり、被害を受けた付近住民からの依頼がありました。
恐らく、付近を支配するロイスローが私のせいで数を100と少し減らしたので、その分やりたい放題した結果なのでしょうね。
腕に自身はあるというリーアも、渋い顔をしましたが、それでいいと頷き、私達はクエストを受注しました。
黎明の陽の光が、地平線から村を照らすのと同じ頃。
愛しの硬い床の上で寝ていた私の体は、目を開くと同時に覚醒へと向かいました。
眠気を振り払うために立ち上がると、異世界でも習慣としているストレッチを少しして、完全に目を覚ますと、大きなあくびと共に背伸びをしました。
ベットの上では、ルーアが爽やかな顔で快眠を謳歌していて、お互いに今日はよく眠れたようです。
荷物を整え、スロゥルで身を包み、用意はしましたが、一人にすると何かと危険なルーアが起きるを待って、しばらくそのままいました。
「ふぅ……ん……」
とはいえやはり暇で、装備を全部外し、腕立て伏せ、背筋、腹筋の順で筋トレをしている間に、彼女は起きました。
ギシギシと揺れるベッドに不安感を抱いて起きると、そこに私が腹筋をしているのですから、無理もありません。
「……何してるの?」
心ゆくまで睡眠できなかったのか不満だったのか、不機嫌そうな顔をして、彼女はそう呟きました。
「ん、あれ何?」
そして、部屋の一角に置かれた装備品に興味を示したのか、指をさしてそれを聞きました。
「ん?あぁ……私の装備品。まあいろいろだけど、ナイフとかもあるよ?」
ベルトキットに付けられていたKa-Barナイフを鞘から取り出し、黒光りするその刀身を彼女に見せました。
支給されたナイフよりも扱いやすく、多目的に使えるよう設計してあるので、持っているだけでかなり使えます。
それは、P-90とファイブセブンさえあればいいんじゃね、的な感じだった前の私では考えられないほどでした。
「私の好みよりは少し短いけど……切れ味は良さそう」
刃長約20cm程度の長さでは、彼女のお気には召さなかったですが、それ以外のものには興味を示したようです。
「ルーアは、戦闘経験とかあるの?」
ナイフに興味を示すということは、そういった知識もあるのではないかと薄々気付いてしまいました。
場合によれば、二人でクエストなんかも出来そうな予感。
「あるよ。独学で双剣をね、家が貧しかったから……自衛のためもあるけど、肉とかを確保するのに必要だったからね」
なるほど、そういうことか~……。
期待の通りには行けなかった虚しみ半分、でも、僅かにある戦闘経験に希望半分と、微妙な気分ですが、三歩歩いて二歩下がるような感じに慣れたのは良いことです。
ルーアにギルドに行くから準備するようにと言うと、私はスマホを片手に、マイセットに登録した装備の「装着」という所を選び、ルーアが迷彩服を着終わる頃には、既に準備完了でした。
──────
「ルーア様の冒険者登録ですね、見たところ奴隷の方のようなので、黒恵様に合わせて冒険者レベルⅡから始められますが、どうしましょうか?」
場所は変わり、ギルドの冒険者登録受付前。
私は受付の女性が言った言葉に少し驚愕してしまいました。
「は、はい。できるなら、それでお願いします」
スロゥルで隠されたルーアの顔は、今どんな顔をしているのでしょうか。
申し訳なさで胸がいっぱいになりそうですが、渡りに船です。冒険者レベルⅡから始められるようお願いしました。
「分かりました、こちらのアンケート用紙に御記入された後、隣の四番カウンターにお願いします」
見るのは二度目の、アンケート用紙。
それを受け取り、適当なテーブル席に座ると、字は一応書けるとの事なので、あとはルーアに任せます。
時折涙ぐんだり、何かを忘れさせるように首を振る一幕もありましたが、拙い文字でありながらも、一応読める程度には上手く書いていました。
レベルⅠをすっ飛ばして行けるならと、私も現行の装備をそのままルーアの身長などに合わせて作り、装備一式と、連携用のヘッドホンマイクなどを調達するのでスマホ画面を見ていた時に、それは起こりました。
「お姉ちゃん!!」
突然、茶色の毛をした獣っ子がルーアに突撃してきたのです。
それをもろに受けたルーアは椅子から落ち、反射的に私はその正体へとファイブセブンを向けていました。
「いたた……だ、誰?」
その本人はルーアにぎゅっとしがみつき、私が離そうとしても離れませんでした。
粗末な革装備に身を包み、腰には短剣が二本。
そして、見慣れたスロゥルが、首元にあるだけで、突撃した勢いで翻ったような感じでした。
「もしかして……妹さん?」
必死にその子を引き剥がそうとするルーアが、頭だけを頷かせる。
色は銀と茶で違うけど確かに、似ているところはありました。
とりあえず、それが収まるまで周りの迷惑になるので、受付嬢さんに頼んで個室を用意してもらい、ズリズリとルーアを引っ張りながら行きました。
10代の女の子二人分の体重なので、流石に重かったです。
「さて、妹さんの方も収まってきたかな」
個室で三人、私と、ルーアと妹さんが対になるようにすると、花をすすり、涙を拭いて何とか正気に戻ってきた彼女の話を聞きました。
曰く。
彼女……いや彼女達の村は、連年続く不作に悩まされ、税を滞納していた為に、領主からルーアを貴重な白狼ということで高く買うことで強引に決められ、その後を追うにつれ奴隷になった事を知り、彼女を取り戻すために冒険者を始めてお金を集めていたとか。
昨日買い手がつき、奴隷館を去ったのを知り諦めていたけど、今日その姿を見つけ嬉しさのあまり突撃してしまったようです。
「んー、まあ、自然っちゃ自然だけど、一本間違えたら命が危なかったよ?」
驚きのあまり、咄嗟にファイブセブンを構えたのがそれでした。
セーフティーを解除していなかったから良かったものの、私の手が滑って発砲していたかもしれません。
「それは……申し訳ございません」
焦ったように頭を下げ、テーブルにゴンッと勢いよくぶつけてしまいました。
この子もこの子で心配な所がありそうですね……。
「あなた達の事情はわかったわ、でも、私にも事情がある。貴方が良ければ、私達とパーティーを組んでくれないかな」
ルーアは、僅かに戦闘経験があるだけで、銃の事を教える以上に体力基礎から入っていく必要がありそうだったので、即戦力として取り入れるには彼女はちょうど良かったのです。
「私で良ければ……あ、そういえば自己紹介がまだでしたね」
首から冒険者タグを引っ張り出し、それを見せながら、彼女は自分の事を名乗りました。
名前は、リーア。得意装備は双剣で、魔法の扱いも得意との事。
私も、冒険者タグを見せ、自己紹介を行い、お互いにパーティー仲間としてよろしくと、握手を交わしたあと個室を出ました。
「今日のうちは、軽いクエストを受けて、お互いの腕でも確かめあおうか。例えば……これとか」
私は、クエストボードに貼り付けてあった用紙を取り、彼女達に見せました。
それは、得られる金は高いのに、他にもクエスト用紙が多く見られるものでした。
《キャステイト討伐》
見た目はイノシシに似ていて、大きいものは人間の身長を超えることもあるらしいです。
特徴的なのは、厚くそこそこ硬い皮脂が全身を覆うようにある事。
剣を弾くほどに硬いわけではないですが、ちょっとやそっとの事では倒れない忍耐性を持つモンスターです。
通常は群れで行動し、家畜が野生化したサルピスというモンスターと同じように、農作物を荒らすことがあり、被害を受けた付近住民からの依頼がありました。
恐らく、付近を支配するロイスローが私のせいで数を100と少し減らしたので、その分やりたい放題した結果なのでしょうね。
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