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第1章
第4話
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「はい。冒険者登録ですね。黒恵様で間違いないですか?」
しばらく待っていた冒険者登録の4番カウンターで、やっと自分の番が回って来ました。
受付の女性がアンケート用紙を受け取り、各項目の記入漏れがないかを確認し、そして私の名前を伺います。
これが通れば、あとは宿屋の確保と今後の予定決めなど……やることはたくさんありますから急がなければなりません。
「はい、間違いありません」
これから冒険者になるんだという緊張と、近代兵器を使ってモンスター相手に無双するという楽しみで、半ば浮かれ気味にはっきりと頷きました。
「それでは、登録料として大銅貨5枚を頂きます」
あれ、そういえばP-90諸々を買った残金どのぐらい残ってたっけ……。
一桁ぐらいしかポイントがなかったような記憶が脳裏を過ぎり、線が引くように真っ青になった私を見て、受付の女性が不思議そうに、焦点の合わない目線を合わせようとします。
「すみません、大銅貨は────」
「はい。大銅貨5枚!」
小銀貨は持ってない。と言おうとした瞬間、横から木でできた受け皿にちょっと大きい消しゴムの様な大きさの質量ある大銅貨1枚が、ゴトンと音を立てて置かれました。
その主は……さっきの冒険者の女性です。
「さっきの些細なお礼。受け取って。それじゃ、頑張ってね~!」
そう言うと風のように走って人混みの中へと消えてしまいました。マイペースな人ですね……。
投資、なのでしょうか?有難く頂いておきましょう。
機会があれば返せることですし、これが最後な気もしないのです。
「で、では受けとりました。それでは、冒険者について説明しますね」
受付女性が説明を始めます。
話すと長くなるので要約していきましょう。
冒険者とは、モンスターを討伐し、その素材で装備を強化し、更なる強敵を求め半ば悦びを感じながら狩り続けるモ〇ハンのようなものではなく、その仕事の幅は多岐に渡ります。
代表的なのは、
魔物退治専門 ── モンスターハンター
遺跡、迷宮専門 ── トレジャーハンター
護衛任務専門 ── ガーディアン
対魔術師専門 ── 魔術師殺し
対人戦専門 ── 傭兵、賞金首ハンター
などらしいです。私が想像してたのは「生きよ、この大地とともに(だっけ?)」で有名なモンスターハンターですが、代表的な物の他にさらに細かく専門分野が分かれている様で、ぶっちゃけ何でも屋さんみたいです。
恐らく、方針的にも戦闘系の種類に入ることは間違いでしょう。
冒険者のランクは ──
レベルⅠ
レベルⅡ
レベルⅢ
レベルⅣ
レベルⅤ
の5段階に分類されます。
初心者はレベルⅠで、最高がレベルⅤ。
「今からお渡しするこの冒険者タグは、レベルⅠから始まります。各レベルの昇格クエストを受け、成功した際にレベルが上がります」
受付の女性の手から冒険者タグを渡されました。
この薄くて硬い金属製のタグが、冒険者を示す資格票になるようです。
大きさは前世の兵士が持っているドッグタグほど。
前に、自衛隊のイベントでCH-47という大型の輸送ヘリに乗った時、ドックタグを持った事があるのですが、それよりも軽い感じがします。
その上に名前、冒険者レベル、魔術の有無、信仰する宗教が、魔術によって刻まれている。細かく鮮明に刻まれているそれを見て改めて魔術ってすごーっと思ってしまいました。
そして、このタグについて禁則事項も聞かされました。
本人以外の使用禁止。
貸し出し禁止。
タグの売買禁止。
偽造・勝手な内容変更禁止。等々。
盗難・紛失の場合、すぐさま使用不可にするので、すぐにギルドへ届けを出すこと。
再発行する場合、面談と最発行料として登録料の倍以上のお金ががかかるとのこと。
以上の決まり事に反する行為を行った場合、レベルの降格。
最悪、ギルドから退会させられ二度と登録してもらえなくなることなど……。怖み。
また、もしクエスト中にタグを発見した場合、ギルドに持ち帰ると謝礼金が出るらしいのです。
何故と聞くまでもなく、冒険者タグでもドックタグと同じような意味合いがある様でした。
仕事を受ける方法は、
①募集掲示板から、仕事を選択し依頼を受ける。
②窓口で相談の上、仕事を選択する。
③依頼主から直接、依頼を受ける。
④ギルドから本人に直接、仕事を依頼する。
⑤その他(突発的に依頼仕事に巻き込まれる等)。
の5パターンがあります。
当然といえば当然ではありますが、レベルⅠの冒険者が、レベルⅤの仕事を請け負うことはできません。
高レベル冒険者が受けたレベルⅤのクエストに、レベルⅠの冒険者を同行させることも禁止されています。
その訳は、レベルⅤのクエストは高い報酬金が支払われるものの、命にかかわる極限状況が殆ど。
足手まといを増やし、貴重なレベルⅤの人材を最悪死亡させてしまうケースもあるためだそうです。
ですが、逆にレベルⅤの人がレベルⅠの仕事を受けても問題なし。罰則もなし。
だけどかなりタブーとされているようです。
「ここまでの説明で何か分からなかったことはありますか?」
わからないも何も、私が噛み砕いて説明ができるほど (出来ているかは保証できませんが) 優しく分かりやすい説明に、わからない所があるという方が不思議と言えました。
「いえ、ありません。ですが一つ質問があります」
「何でしょうか?」
それは、この世界に来た理由の一つである、魔王討伐。
近代兵器をありったけ利用し彼の者を屠るのに必要不可欠なもの。
「将来的に軍団を建てようと思っていますが、創設条件があれば教えて頂きたく思います」
まだこの世界の情勢を詳しくは理解していませんが、魔王討伐以降も世界最強の軍団と名乗れる程の戦力を有す組織にしたいと考えています。
兵器を運用できる程の能力は少なくとも有しておきたいですね。
「はい。分かりました。軍団の創設条件は────」
・軍団創設には、発起人としてレベルⅤ×1人に加えてレベルⅣ×2人以上の署名が必要になる。
・軍団を旗揚げした場合、毎年売り上げ金額によって、ギルドに一定額の税金を納める義務があり、この税金を納める事で、優良クエストやご希望のクエストを優先的に斡旋し、希望の人材を紹介をしてくれるそうで、一応メリットもあるようです。
もちろん税金の数字を誤魔化した場合追加徴税があり、最悪軍団の権利を剥奪されます。
最後に軍団の揉めごとには一切、ギルドは関わらないと断言されました。
「説明は以上です。クエスト受付は1番、2番カウンターでお願いします」
「ありがとうございます!」
一礼をして次の人の為にカウンターから小走りで離れます。
早速冒険者タグを首にかけて、外に出しておくのもアレだと思いましたので、胸元にしまいました。
「さて、最初のクエストは何にしましょうか……」
掲示板の前で腕を組み考えます。
良さげなクエスト探してみたものの、レベルⅠでは草むしり、引っ越しの手伝い、行方不明のペット捜索、家庭教師のバイト(これはやや高額)などの実戦的なものが無く雑用系クエストが多いようです。
そりゃ、最初っから稼ぎのいいクエストなんてあればみんな冒険者になってますもんね……抜かりました。
実戦的なものがあるのはレベルⅡからで、周辺の魔物退治がありました。
段飛びしようとしているのは十分承知ですが、P90の性能と自分の実力を図るにも魔物退治をやってみたいと興奮気味に心拍が上がりました。
「うぅ……一か八か、ダメ元でやってみましょうッ!」
自身の欲求に耐えきれず、私は1番カウンターへと走っていきました。
この世界の命運を握る者の第一歩は、その力ゆえに大股歩きをした瞬間でした。
ここテスト出ますよー。
しばらく待っていた冒険者登録の4番カウンターで、やっと自分の番が回って来ました。
受付の女性がアンケート用紙を受け取り、各項目の記入漏れがないかを確認し、そして私の名前を伺います。
これが通れば、あとは宿屋の確保と今後の予定決めなど……やることはたくさんありますから急がなければなりません。
「はい、間違いありません」
これから冒険者になるんだという緊張と、近代兵器を使ってモンスター相手に無双するという楽しみで、半ば浮かれ気味にはっきりと頷きました。
「それでは、登録料として大銅貨5枚を頂きます」
あれ、そういえばP-90諸々を買った残金どのぐらい残ってたっけ……。
一桁ぐらいしかポイントがなかったような記憶が脳裏を過ぎり、線が引くように真っ青になった私を見て、受付の女性が不思議そうに、焦点の合わない目線を合わせようとします。
「すみません、大銅貨は────」
「はい。大銅貨5枚!」
小銀貨は持ってない。と言おうとした瞬間、横から木でできた受け皿にちょっと大きい消しゴムの様な大きさの質量ある大銅貨1枚が、ゴトンと音を立てて置かれました。
その主は……さっきの冒険者の女性です。
「さっきの些細なお礼。受け取って。それじゃ、頑張ってね~!」
そう言うと風のように走って人混みの中へと消えてしまいました。マイペースな人ですね……。
投資、なのでしょうか?有難く頂いておきましょう。
機会があれば返せることですし、これが最後な気もしないのです。
「で、では受けとりました。それでは、冒険者について説明しますね」
受付女性が説明を始めます。
話すと長くなるので要約していきましょう。
冒険者とは、モンスターを討伐し、その素材で装備を強化し、更なる強敵を求め半ば悦びを感じながら狩り続けるモ〇ハンのようなものではなく、その仕事の幅は多岐に渡ります。
代表的なのは、
魔物退治専門 ── モンスターハンター
遺跡、迷宮専門 ── トレジャーハンター
護衛任務専門 ── ガーディアン
対魔術師専門 ── 魔術師殺し
対人戦専門 ── 傭兵、賞金首ハンター
などらしいです。私が想像してたのは「生きよ、この大地とともに(だっけ?)」で有名なモンスターハンターですが、代表的な物の他にさらに細かく専門分野が分かれている様で、ぶっちゃけ何でも屋さんみたいです。
恐らく、方針的にも戦闘系の種類に入ることは間違いでしょう。
冒険者のランクは ──
レベルⅠ
レベルⅡ
レベルⅢ
レベルⅣ
レベルⅤ
の5段階に分類されます。
初心者はレベルⅠで、最高がレベルⅤ。
「今からお渡しするこの冒険者タグは、レベルⅠから始まります。各レベルの昇格クエストを受け、成功した際にレベルが上がります」
受付の女性の手から冒険者タグを渡されました。
この薄くて硬い金属製のタグが、冒険者を示す資格票になるようです。
大きさは前世の兵士が持っているドッグタグほど。
前に、自衛隊のイベントでCH-47という大型の輸送ヘリに乗った時、ドックタグを持った事があるのですが、それよりも軽い感じがします。
その上に名前、冒険者レベル、魔術の有無、信仰する宗教が、魔術によって刻まれている。細かく鮮明に刻まれているそれを見て改めて魔術ってすごーっと思ってしまいました。
そして、このタグについて禁則事項も聞かされました。
本人以外の使用禁止。
貸し出し禁止。
タグの売買禁止。
偽造・勝手な内容変更禁止。等々。
盗難・紛失の場合、すぐさま使用不可にするので、すぐにギルドへ届けを出すこと。
再発行する場合、面談と最発行料として登録料の倍以上のお金ががかかるとのこと。
以上の決まり事に反する行為を行った場合、レベルの降格。
最悪、ギルドから退会させられ二度と登録してもらえなくなることなど……。怖み。
また、もしクエスト中にタグを発見した場合、ギルドに持ち帰ると謝礼金が出るらしいのです。
何故と聞くまでもなく、冒険者タグでもドックタグと同じような意味合いがある様でした。
仕事を受ける方法は、
①募集掲示板から、仕事を選択し依頼を受ける。
②窓口で相談の上、仕事を選択する。
③依頼主から直接、依頼を受ける。
④ギルドから本人に直接、仕事を依頼する。
⑤その他(突発的に依頼仕事に巻き込まれる等)。
の5パターンがあります。
当然といえば当然ではありますが、レベルⅠの冒険者が、レベルⅤの仕事を請け負うことはできません。
高レベル冒険者が受けたレベルⅤのクエストに、レベルⅠの冒険者を同行させることも禁止されています。
その訳は、レベルⅤのクエストは高い報酬金が支払われるものの、命にかかわる極限状況が殆ど。
足手まといを増やし、貴重なレベルⅤの人材を最悪死亡させてしまうケースもあるためだそうです。
ですが、逆にレベルⅤの人がレベルⅠの仕事を受けても問題なし。罰則もなし。
だけどかなりタブーとされているようです。
「ここまでの説明で何か分からなかったことはありますか?」
わからないも何も、私が噛み砕いて説明ができるほど (出来ているかは保証できませんが) 優しく分かりやすい説明に、わからない所があるという方が不思議と言えました。
「いえ、ありません。ですが一つ質問があります」
「何でしょうか?」
それは、この世界に来た理由の一つである、魔王討伐。
近代兵器をありったけ利用し彼の者を屠るのに必要不可欠なもの。
「将来的に軍団を建てようと思っていますが、創設条件があれば教えて頂きたく思います」
まだこの世界の情勢を詳しくは理解していませんが、魔王討伐以降も世界最強の軍団と名乗れる程の戦力を有す組織にしたいと考えています。
兵器を運用できる程の能力は少なくとも有しておきたいですね。
「はい。分かりました。軍団の創設条件は────」
・軍団創設には、発起人としてレベルⅤ×1人に加えてレベルⅣ×2人以上の署名が必要になる。
・軍団を旗揚げした場合、毎年売り上げ金額によって、ギルドに一定額の税金を納める義務があり、この税金を納める事で、優良クエストやご希望のクエストを優先的に斡旋し、希望の人材を紹介をしてくれるそうで、一応メリットもあるようです。
もちろん税金の数字を誤魔化した場合追加徴税があり、最悪軍団の権利を剥奪されます。
最後に軍団の揉めごとには一切、ギルドは関わらないと断言されました。
「説明は以上です。クエスト受付は1番、2番カウンターでお願いします」
「ありがとうございます!」
一礼をして次の人の為にカウンターから小走りで離れます。
早速冒険者タグを首にかけて、外に出しておくのもアレだと思いましたので、胸元にしまいました。
「さて、最初のクエストは何にしましょうか……」
掲示板の前で腕を組み考えます。
良さげなクエスト探してみたものの、レベルⅠでは草むしり、引っ越しの手伝い、行方不明のペット捜索、家庭教師のバイト(これはやや高額)などの実戦的なものが無く雑用系クエストが多いようです。
そりゃ、最初っから稼ぎのいいクエストなんてあればみんな冒険者になってますもんね……抜かりました。
実戦的なものがあるのはレベルⅡからで、周辺の魔物退治がありました。
段飛びしようとしているのは十分承知ですが、P90の性能と自分の実力を図るにも魔物退治をやってみたいと興奮気味に心拍が上がりました。
「うぅ……一か八か、ダメ元でやってみましょうッ!」
自身の欲求に耐えきれず、私は1番カウンターへと走っていきました。
この世界の命運を握る者の第一歩は、その力ゆえに大股歩きをした瞬間でした。
ここテスト出ますよー。
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