悪役令息、皇子殿下(7歳)に転生する

めろ

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12-2 前世

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「いや、噂のせいだよ。最近君が目立ってるの」

 すっかり板についてしまったこの冴えないスタイルからどう抜け出そうか、なんてぼんやり考えていた僕の前に再びキラキラ男が現れた。先日、あまりにもしつこく絡んでくる同級生たちに耐えかねて、僕が苦言を呈した場面を目撃したであろうこの男。面倒な予感しかしないため今回もそそくさと逃げ出そうとしたのだが、逃さないとばかりにガシッと肩を掴まれて近くの木陰に座らされた。
 自室に帰りたくて仕方ない気分だったが、相手は明らかに上級生かつ高位貴族。無下にすることもできず嫌々会話に応じていると藪から棒にそんなことを言われた。

「噂?」

「うん。君、今までは地方の没落男爵家の末裔で通してたらしいけどこれからはそうはいかないと思うよ?」

「……まさか」

「いやぁ、あの”悪役令嬢”の息子とはね!僕ですら知ってるくらいの有名人だもん。噂になっても仕方ないよ」

 そう言われて僕は目を瞑ったまま空を仰いだ。瞼越しに透ける陽光が非常にうっとおしい。
 できればバレたくなかった。入学以来、目立たないよう頑張ってきたのはそのためでもあったのに全て水の泡だ。

「……せめてグリューエル商会の跡取り息子と言ってくれませんかね」

「いや、それおんなじじゃん。ってかむしろお父上は君を後継だと認めてないらしいじゃん?それも噂になってるよ」

 苦し紛れにそう言ってみたが、想像以上に手酷い切り返しに遭った。そこまで噂になってるなんて。こっちは今すぐ泣き出したいくらいの気持ちだっていうのに、キラキラ男は学園で密かに噂されているという僕の身の上話を事細かに披露してくれた。懇切丁寧な説明だが、全く持ってありがたくない。他人のコンプレックスを本人の前で嬉々として語らないでほしい。

 やっぱり関わるんじゃなかった。上級生だろうが、高位貴族だろうが知ったこっちゃない。僕はもう帰る。

 そう決めた僕は表情を取り繕うのをやめ、一刻も早くこの場から去るために片膝を立てた。のだが、またしてもガシリと肩を掴まれてしまった。身長は僕よりも少し低いくらいだが、この男やけに力が強い。いちいち忌々しい野郎だ。

 僕はいよいよ痺れを切らして、一言文句を言ってやろうと彼の方へ乱暴に向き直った。しかし、彼の瞳を見て僕は動きを止めた。

 彼は心から嬉しそうな雰囲気を滲ませていたのだ。それも、こちらが息を忘れるほどに。

「まぁ、君がどういう生い立ちなのかは実はそんなに興味ないんだよね。それより僕は君自身の方が気になってるんだけど――ねぇ、エヴァレット・グリューエル?」
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