悪役令息、皇子殿下(7歳)に転生する

めろ

文字の大きさ
上 下
22 / 52

7-3

しおりを挟む
「〖魔法:空間転移ゲート〗ッ!」

 じぃちゃんが見せてくれた手品が実は魔法と言う事実を、ばぁちゃんに教えてもらった僕は、この世界でも魔法が使える事を知った。
 それならば僕も魔法が使えるはずだ…と、必死に魔法を使おうとする。

 だが、何度やっても魔法は発動しない…だだ、それでも諦めずに魔法を使おうとすると何度目かは分からないが、身体から何かが失われた感覚に陥る。
 この感覚は魔法を使った時みたいな…だが、残念ながら魔法が発動した気配がない。

「クソッ!やっぱり・・・・失敗した!!」

 そう、この世界に戻って直ぐ、今までの事は夢だったのか?と思い、魔法を使おうとした。
 その結果、何度試しても魔法は使えなかったのである。

「あらあらあら、正義マサヨシさんは普通に使えていたのに、何が悪いのかしら…。」

 僕とじいちゃんの違い…本当に、何の違いがあるのか僕が知りたいくらいだ。

「そう言えば、結局、私は使わずじまいだったのだけど…。」

 と言って、ばぁちゃんは家の中へと入っていってしまう。
 それから暫くして、ばぁちゃんが戻ってきた。
 その、ばぁちゃんの手には、何だか不思議な感覚のする小さな箱があった。

「ばぁちゃん、それは?」
「これはね、正義マサヨシさんが私にプロポーズしてくれた時に、私にくれた物よ。」
「へ~、じぃちゃんが…。」

 正直、プロポーズした時の物と言われても興味はない。
 それがあれば、プリン達の所へ戻れると言うのなら話は別だが…。

「でもね?私は正義マサヨシさんに幸せを、いっぱい貰ったから…これは夢幻ムゲンちゃんにあげるわ。
 多分、夢幻ちゃんに必要な物だと思うの。」

 そう言って渡された、小さな箱を、恐る恐る開ける。
 するとそこには…見た事もない石が付いているリングである。

「これは…指輪だよね?」

 何処から見ても指輪だが、何故か当たり前の事を聞いてしまう。
 まぁ、プロポーズの時と言うのだから、指輪を贈るのは至極当然の事だと思う。

「そうね、確か…正義マサヨシさんが言うには『願いの指輪』と言っていたかしら?
 その指輪は、持ち主の本当に叶えたい願いを、一度だけ叶えてくれるそうよ。
 まぁ、私は願いは正義マサヨシさんが全部叶えてくれたから試した事無いのだけど…。」

 そう言って、僕にウインクをする、ばぁちゃん…。
 何度か若い頃の写真を見た事があるが、このタイミングでそんな事をされたら…ばぁちゃんが、もし若かったら、僕もじぃちゃんみたいに、恋に堕ちていたかも知れない。

「って、待った!!そんな大事な物、貰えないよ!」

 気付くのに遅れたが、ばぁちゃんは使わなかったとは言え、プロポーズと一緒に渡されたのであれば、これは婚約指輪である。
 つまり、これは…ただの指輪などではなく、じぃちゃんの形見と言う事でもある。
 そんな大事な物を、『はい、そうですか』と簡単に貰う訳にはいかない品物だった。

「いいえ、それは違うわ。
 今の、夢幻ちゃんだから、私は上げたいの…だって、夢幻ちゃんは男の子じゃない!
 だったら、夢幻ちゃんは、惚れた女の子を幸せにしてあげる義務があるわ。
 そう、正義マサヨシさんが、私を幸せにしてくれた様に!」

 まさかのダメだし…だが、ばぁちゃんの言う通りである。
 じぃちゃんなんか、惚れた女の為に、世界まで救ったのだから…。
 しかも、貴重な『願いの指輪婚約指輪』を使わせる事なく、幸せにしたと言われたら、じいちゃんと、ばあちゃんの孫である僕が、自分の惚れた女の一人や二人…いや、正確には四人だが…幸せに出来ないでどうするって話だ。

「あ、あ~ぁ、もう!分かったよ、ばぁちゃん!!」

 僕はそう言うと、ばあちゃんから『願いの指輪』を受け取ると指に填める。
 そして…あちらの世界に行く事を強く…強く強く願った。

【…ジ…ジジ…聞こ……?…てるかな?】
【お~い、聞こえますか~?】

「…その声は…もしかして先生?」
「あら?今の声、私にも聞こえたわ。」

 どうやら、先生の声は、何故か僕だけではなく、ばぁちゃんにも聞こえている様だ。

【良かった、繋がった!】
【何故か、急に強い力を感じたから逆探知してみたんだけど、やっぱり貴方だったのね!】

「え、えぇ…でも、何で先生が?」

【何でって…こっちの世界に来たいって強く望む声が聞こえたから?】

「え?それって…。」

【えぇ、来れるわよ?でもね?
 今度は私が召喚する訳じゃないから二度と帰れないし、今度こそ死んだらそれでお終い…それでも良いの?】

 そう言われて、僕は思わず、ばぁちゃんの顔を見る。
 もし、このまま向こうの世界に行く事になれば、もう、ばぁちゃんや家族とも会う事が出来なくなると言われたのだ。
 それでも、それでも僕は…。

「もう、夢幻ちゃんったら、何を迷ってるフリをしてるの!
 貴方は、世界のことわりさえ、その意思で覆したじゃないの!」
「え?僕が、世界の理を?」
「そうよ、プリンちゃんが死んだ時、それでも夢幻ちゃんは諦めず世界の理を捻じ曲げ、彼女を救ったのよ?
 だったら、今度も、そんな『世界の理ルール』なんて捻じ曲げちゃえば良いのよ!」

【ちょッ!?何言ってんの貴女!】
【私、あの後、綻び直すのに三日間も徹夜しまくったんだからね!】

「あ~もう、五月蝿うるさいわね!お姫様で聖女だった私が許す!夢幻ちゃん、やっちゃえッ!!」

【だから、煽らないでってば~!】

 ばぁちゃん、それは傲慢とも言える理屈ですよ?
 だが、あの一件で先生から何か言われそうだと思っていたけど、何も無かったのはそう言う事三日間徹夜があった訳か…。

「ププッ…流石、ばぁちゃんお姫様、言う事が違う!
 そうだよな…好きな子を幸せにする為なんだもん、世界の一つや二つ、敵に回したって、どうって事ないよな!」

 ばぁちゃんに感化されたからか、そう思ったら、何も心配する事が無くなっていた。
 次の瞬間…指にはめた『願いの指輪』が激しく光り出す。
 今なら、使えなかった魔法も使える様な気がする。

「ばぁちゃん、、行ってくるよ!」
「あら、やだ…いつの間にか、夢幻ちゃんも、男の顔出来る様になったじゃない。
 だったら、これは私からのお呪まじない…もう、おばあちゃんだから効果は期待出来ないけど…。」

『チュッ』

 そう言って、ばぁちゃんが、俺の額にキスをする。

「聖女様の祝福なんて、勇者セイギマサヨシさんにしかしなかったんだから…絶対に負けんじゃないよ!」
「あぁ、任せとけ!速攻で、ぶっとばしてくる!」

 そう言って、ばぁちゃんから距離を取る…そして…。

『パチン!パチン!パチン!パチン!パチン!パチン!』

 六芒星を描く様に腕を動かし、その頂点となる部分で指を鳴らす。
 チートスキル〖森羅万象〗…その効果がヤバ過ぎて、今までは使う事自体、良くない事だと思っていた為、極力、使わない様にしていた能力を、コレでもかと言うほどフルに発揮する。

 そして、僕は頭に浮かんだ呪文を唱える。

「世界と世界を繋ぐ門、我が意を受け、我の望みし世界の門を開け!
 願わくば、我が望みし時へと我を誘え!」

 目の前の空間がバチバチと音を立てている。
 だが、まだ門は開いていない。
 何か、邪魔する力が働いている様に気がする。

【あ~、もう!良いわよ良いわよ!】
【今度は何日掛かるか分かんないけど、許可すれば良いんでしょ!】
【…まぁ、貴方達の願い・・・・・・は既に、七夕・・の時に受理しちゃてるし…ね。】

 すると、今まで邪魔していた力が霧散したのを、確かに俺は感じた。
 次の瞬間、俺は再度、詠唱し魔法を発動させる。

「〖魔法:次元転移門《アナザーゲート》〗!」

『バキン!』

 先生が許可したからか、目の前に空間が罅割ひびわれ、ついにゲートが開く。


「ばぁちゃん、俺、行ってくる!」
「えぇ、今度はお嫁さん達を連れて遊びにおいで。」
「あぁ、絶対に戻ってくるから!みんな良い子達だから楽しみに待ってってくれよ!!」

 俺はそう言うと、こちらの世界とあちらの世界異世界を繋ぐ門を潜るのだった…。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼毎週、月・水・金に投稿予定 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…

彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜?? ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。 みんなから嫌われるはずの悪役。  そ・れ・な・の・に… どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?! もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣) そんなオレの物語が今始まる___。 ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

BLゲームの世界でモブになったが、主人公とキャラのイベントがおきないバグに見舞われている

青緑三月
BL
主人公は、BLが好きな腐男子 ただ自分は、関わらずに見ているのが好きなだけ そんな主人公が、BLゲームの世界で モブになり主人公とキャラのイベントが起こるのを 楽しみにしていた。 だが攻略キャラはいるのに、かんじんの主人公があらわれない…… そんな中、主人公があらわれるのを、まちながら日々を送っているはなし BL要素は、軽めです。

攻略対象者やメインキャラクター達がモブの僕に構うせいでゲーム主人公(ユーザー)達から目の敵にされています。

BL
───…ログインしました。 無機質な音声と共に目を開けると、未知なる世界… 否、何度も見たことがある乙女ゲームの世界にいた。 そもそも何故こうなったのか…。経緯は人工頭脳とそのテクノロジー技術を使った仮想現実アトラクション体感型MMORPGのV Rゲームを開発し、ユーザーに提供していたのだけど、ある日バグが起きる───。それも、ウィルスに侵されバグが起きた人工頭脳により、ゲームのユーザーが現実世界に戻れなくなった。否、人質となってしまい、会社の命運と彼らの解放を掛けてゲームを作りストーリーと設定、筋書きを熟知している僕が中からバグを見つけ対応することになったけど… ゲームさながら主人公を楽しんでもらってるユーザーたちに変に見つかって騒がれるのも面倒だからと、ゲーム案内人を使って、モブの配役に着いたはずが・・・ 『これはなかなか… 面白い方ですね。正直、悪魔が勇者とか神子とか聖女とかを狙うだなんてベタすぎてつまらないと思っていましたが、案外、貴方のほうが楽しめそうですね』 「は…!?いや、待って待って!!僕、モブだからッッそれ、主人公とかヒロインの役目!!」 本来、主人公や聖女、ヒロインを襲撃するはずの上級悪魔が… なぜに、モブの僕に構う!?そこは絡まないでくださいっっ!! 『……また、お一人なんですか?』 なぜ、人間族を毛嫌いしているエルフ族の先代魔王様と会うんですかね…!? 『ハァ、子供が… 無茶をしないでください』 なぜ、隠しキャラのあなたが目の前にいるんですか!!!っていうか、こう見えて既に成人してるんですがッ! 「…ちょっと待って!!なんか、おかしい!主人公たちはあっっち!!!僕、モブなんで…!!」 ただでさえ、コミュ症で人と関わりたくないのに、バグを見つけてサクッと直す否、倒したら終わりだと思ってたのに… 自分でも気づかないうちにメインキャラクターたちに囲われ、ユーザー否、主人公たちからは睨まれ… 「僕、モブなんだけど」 ん゙ん゙ッ!?……あれ?もしかして、バレてる!?待って待って!!!ちょっ、と…待ってッ!?僕、モブ!!主人公あっち!!! ───だけど、これはまだ… ほんの序の口に過ぎなかった。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

処理中です...