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4-2. 公爵令嬢と皇后陛下
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僕の思考がどんどん脱線していく中、イザベラが再び口を開いた。気を取り直して彼女の穏やかな声音に耳を傾ける。
「妹とはなかなか会えなくなってしまいましたが、兄とはいまだに毎日のように顔を合わせていますの。今朝も相談事があって兄の部屋を訪ねたのですが、なぜか途中から義姉と甥が可愛くて仕方ないという惚気話を延々と聞かされて」
イザベラは一見すると物静かで儚げな印象だが、意外とおしゃべりのようだ。上品な語り口ながらもきょうだいについて様々な話を聞かせてくれた。どの話も淀みなく、楽しげに語られる辺り、彼らきょうだいは本当に仲がいいらしい。
だから、つい相談したくなった。
「僕は少しイザベラ嬢が羨ましいです」
「……私ったら少々話し過ぎてしまいましたわ。お疲れになっていらっしゃいませんか、殿下?」
僕の言葉をどう受け取ったのか、イザベラの表情が固くなる。嫌味や皮肉に聞こえてしまったのだとしたら申し訳ない。誤解を解くためにも、これは単刀直入に話した方が良さそうだ。
「いえ、違うのです。実は……」
きょうだいではないものの、歳の近いある少年と最近よく一緒にいるということ。仲良くなりたいと思っているものの、なかなか上手くいかないことを掻い摘んで説明する。そう、ルヴィエのことだ。
すると、事情を聞いたイザベラは一段と柔らかに微笑んでこう告げた。
「あくまで私の考えですが、殿下のお悩みはいずれ時が解決してくれるのではないでしょうか。最初は上手くいかなくとも、同じ時間を共に過ごすことで育まれる絆もありますのよ」
「というと……?」
「出会った頃はあまり好感を感じていなかった相手でも、何度も顔を合わせて、言葉を交わしていくうちに少しずつ心が打ち解けて、気がつけば自分にとってかけがえのない存在になっていた、なんてことが人生には起こりうるのですわ」
それは要するに、”愛着が湧く”というやつだろうか。感覚としては理解できるが、ルヴィエが僕に対してそういうふうに思うようになるかといったら甚だ疑問である。「敢えて申し上げるのであれば、殿下は気長にお待ちくださいませ。次第にお相手の反応が変わってくるかと」と言い添えてくれたイザベラには申し訳ないが、僕はなんとも言えない気持ちになっていた。
とはいえ、イザベラの話に納得した素振りを見せておくことにする。せっかく助言してくれたのだから無下にはしたくなかった。
「なるほど。確かにそういうこともあるかもしれませんね。イザベラ嬢はごきょうだいとそんなふうに仲良くなられたのですか?」
「いえ、兄と妹は家族ですから。考えるまでもなく物心ついた頃にはすでに仲が良かったという感じでしたの。でも、人と人との関係は必ずしもそうではないのです。特に、お話を聞く限り今回の場合は……殿下、お待ちくださいませ」
突然イザベラが話を遮った。どうしたのかと思い彼女の顔を見ると、前を向くようにと視線で促される。
「妹とはなかなか会えなくなってしまいましたが、兄とはいまだに毎日のように顔を合わせていますの。今朝も相談事があって兄の部屋を訪ねたのですが、なぜか途中から義姉と甥が可愛くて仕方ないという惚気話を延々と聞かされて」
イザベラは一見すると物静かで儚げな印象だが、意外とおしゃべりのようだ。上品な語り口ながらもきょうだいについて様々な話を聞かせてくれた。どの話も淀みなく、楽しげに語られる辺り、彼らきょうだいは本当に仲がいいらしい。
だから、つい相談したくなった。
「僕は少しイザベラ嬢が羨ましいです」
「……私ったら少々話し過ぎてしまいましたわ。お疲れになっていらっしゃいませんか、殿下?」
僕の言葉をどう受け取ったのか、イザベラの表情が固くなる。嫌味や皮肉に聞こえてしまったのだとしたら申し訳ない。誤解を解くためにも、これは単刀直入に話した方が良さそうだ。
「いえ、違うのです。実は……」
きょうだいではないものの、歳の近いある少年と最近よく一緒にいるということ。仲良くなりたいと思っているものの、なかなか上手くいかないことを掻い摘んで説明する。そう、ルヴィエのことだ。
すると、事情を聞いたイザベラは一段と柔らかに微笑んでこう告げた。
「あくまで私の考えですが、殿下のお悩みはいずれ時が解決してくれるのではないでしょうか。最初は上手くいかなくとも、同じ時間を共に過ごすことで育まれる絆もありますのよ」
「というと……?」
「出会った頃はあまり好感を感じていなかった相手でも、何度も顔を合わせて、言葉を交わしていくうちに少しずつ心が打ち解けて、気がつけば自分にとってかけがえのない存在になっていた、なんてことが人生には起こりうるのですわ」
それは要するに、”愛着が湧く”というやつだろうか。感覚としては理解できるが、ルヴィエが僕に対してそういうふうに思うようになるかといったら甚だ疑問である。「敢えて申し上げるのであれば、殿下は気長にお待ちくださいませ。次第にお相手の反応が変わってくるかと」と言い添えてくれたイザベラには申し訳ないが、僕はなんとも言えない気持ちになっていた。
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「いえ、兄と妹は家族ですから。考えるまでもなく物心ついた頃にはすでに仲が良かったという感じでしたの。でも、人と人との関係は必ずしもそうではないのです。特に、お話を聞く限り今回の場合は……殿下、お待ちくださいませ」
突然イザベラが話を遮った。どうしたのかと思い彼女の顔を見ると、前を向くようにと視線で促される。
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