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2-2. 仲良くなれる気がしない

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 皇帝にルヴィエを紹介された際、「これからイリヤにはルヴィエと行動を共にしてもらう」と言われたがあれは本当だった。毎日顔を合わせる程度かと思いきや、ほぼ四六時中彼と一緒に過ごす羽目になっている。
 現在のように私室の中で過ごすときはもちろん、私室の外に出る時もルヴィエはくっついてくる。護衛騎士よろしくどこへ行くにもニコイチ状態だ。実際には本物の専属護衛騎士・ハインリも僕らの後ろからついてくるので、サンコイチというのが正しいだろうか。
 日中は大抵この三人で行動していて、その日の予定に応じて様々な場所へ赴いている。最初の頃はイリヤの体調が万全でないということで、私室の奥に位置する寝室で横になっていることが多かったのだが、最近はもっぱら授業を受けるために外へ出ることが増えつつあった。

(ただでさえルヴィエとの会話が弾まなくてしんどいってのに……授業がなぁ……はぁ、今日の午後はなんだっけ)

 不愛想すぎるルヴィエと重たすぎる授業。目下、僕はこの二つに苦しめられていた。
 
 幼いながらもイリヤは皇子殿下。以前から様々な授業を受けていたという話はゾラから聞いていた。
 とはいえ、正直舐めていた。というのも相変わらず前世の記憶はぼんやりとしているものの、どうやらかつての僕はそれなりに学があったようで、先程ルヴィエが読んでいたような難しそうな本の内容も粗方理解できたし、大人たちの会話にも問題なくついていけた。どこで身に着けたのか基本的な礼儀作法もばっちりだった。
 だから、余裕だと見越していたのだ。いくら皇子とはいえ、所詮は七歳児向けの授業。皇室独自の礼法や帝王学についてはさておき、一般的な授業であれば何の問題もないだろうと。
 
 しかし、そんな心づもりで最初の授業に臨んだ僕は度肝を抜かれた。以前のイリヤが最も得意としていたという歴史の授業は、どう考えても七歳児向けではなかった。控えめに見積もっても高等貴族学園並み、部分的にはそれ以上のレベルの内容だった。

 授業後、慌ててどういうことかとゾラに詰め寄ったところ、不思議そうな顔をされてしばらく話が噛み合わなかったのもなかなかの恐怖体験だった。そして発覚したのだ。どうやらイリヤは神童と呼ばれるほどに賢く、何でもできる子供だったらしい。
 精神的にも七歳児とは思えないほど大人びていて、本人も子供扱いされるのを嫌がっていたのだとか。性格や言動に多少変化があるものの、記憶を失ってからも以前と同じくらい受け答えがしっかりしていたためすっかり伝え忘れていたとゾラに謝罪されてしまった。

(幸い、今のところはどうにか元のイリヤよろしく神童っぽさを演出できてるけど、結構ギリギリなんだよなぁ……)

 正直、気合と根性で綱渡りしている感が否めない。先生方からは「ご体調を崩されていたとお聞きしましたが、いやはやさすがです」「この範囲についてはまだお教えしていなかったかと思いますが、もしやご自身で学ばれたのですか?」「むしろ以前よりお上手になっておいでですわ~!」とご好評いただいているものの油断できないのが実情だ。

 だけど、これからもどうにかして元のイリヤの才気あふれるイメージをちゃんと維持しなければ。イリヤ本人でないと疑われるのは何としても避けたい。
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